銀魂の世界に蓬莱のお姫様が迷い込んだ話   作:芋けんび

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東方原曲の竹取飛翔を流しながら読むとギャグもシリアスっぽく見える謎現象。


籠の中のお姫様

 

中華服を身にまとった可愛らしい少女、神楽ちゃんとお友達になった。家族に等しい人はいるが、友達と呼べる人が今までいなかったから、かなり戸惑ってしまう。

 

妹紅は腐れ縁であって、友達ではないしね。

 

神楽ちゃんと色々話してて分かったことが幾つかある。

 

どうやら此処は江戸で、今自分たちがいる場所はかぶき町と言うらしい。人間以外にも天人なる異星人も地球に住み着いているみたいね。

 

「(私の知っている江戸とは訳が違うのかしら?)」

 

私の隣で番傘を差して何やら薄っぺらい食べ物を口に咥えてる神楽ちゃんは『夜兎族』と呼ばれる宇宙3大傭兵部族の一角らしい。日光が苦手で、番傘はそれを防ぐ為に必要不可欠。また、攻撃にも使える武器にもなるようで、番傘には銃が仕込まれていると言う。

 

日光避けにも武器としても使えるなんて…便利ねぇ。幻想郷に戻ったら川にいるエンジニアにでも作ってもらいましょうか。

 

「酢昆布食べるアルか〜?ぐーやん」

 

「さっきから気になっていたのだけど、どうしてぐーやんなの?」

 

「輝夜だから略してぐーやん。私の中でこの呼び方が何かしっくりきたネ」

 

「なるほど、ね」

 

酢昆布を一枚手渡しながら、弾けるような可愛らしい笑顔を見せてくれる神楽ちゃん。私は「ありがとう」とお礼を述べながら酢昆布を1口齧る。

 

「…なんだか独特な味ねぇ」

 

「これが美味しいネ。ぐーやんもきっと病み付きになるアル」

 

不味くはない。不味くはないが、それ以上に何とも言えない酸味が口の中いっぱいに広がる。生まれて初めて体験する未知の味に少しだけ戸惑ってしまう。江戸の人間たちはこんな酸っぱい食べ物を好んで食べているのね。

 

「ぐーやんは何処からきたアル?」

 

「ふふっ、気になるかしら?そうねぇ…私は江戸の外、そして此処じゃない“遥か遠い土地”からやって来たの」

 

ありのまま伝える。

嘘は言っていない。私が、私達が居た土地、『幻想郷』は日本の山奥に存在する。最も、結界で隔離されてるから、外の人間達が認識する事や、行き来する事は出来ない。しかし、ごく稀に人間が幻想郷に迷い込むこともある。

 

「…永遠亭の皆は元気かしら」

 

「?今、なんて言ったの?強風で聞こえなかったヨ」

 

「何でもないわ。それよりも、神楽ちゃんについてもっと教えてくれるかしら?」

 

「私のことアルか?お易い御用ネ!えっとねー…」

 

外の世界は、私にとって憧れそのもの。目に入る全ての物が新鮮で新しい発見ばっかり。外で暮らしてる人間達からすれば、別段驚くことも興味を惹かれることもないこと。こんなもので驚くの?みたいな『ごく普通の当たり前のこと』でさえ、私には初めての経験。

 

長年生きてきたけど、まだまだ世界には私の知らないことが沢山あるのねぇ。

 

それから、公園のベンチで雑談していた時、不意に神楽ちゃんが「家においでヨ!」と誘ってくる。「私が突然お邪魔したら、御家の方々に迷惑ではないかしら?」と問えば「別にいいアル!仮に断られたとしても私が強硬手段に出ればいいだけネ!」なんて物騒な返答が返ってきた。もし永琳がここにいたらいたら「例え納得が行かなくても、暴力沙汰はダメよ」って言ってそうね。

 

…などと考えていると、神楽ちゃんがある建物の前で歩みを止める。上を見上げると看板には“万事屋 銀ちゃん”と書かれていた。

 

「ここアル!ほらほら、早く入るネ!」

 

「ちょ、ちょっと待って!神楽ちゃ…」

 

早く、早くと右腕を掴まれて半ば強引に玄関の中へと引っ張りこまれる。ここまで来たら行く以外の選択肢はない。第一、もしここで仮に断れば、ウキウキ顔の神楽ちゃんに申し訳ない。

 

「お邪魔します」と言ってから靴を脱いで居間に入る。

 

「銀ちゃ〜ん!私の新しい友達のぐーやんアル!ほらほら、早く自己紹介しろヨ。野郎共」

 

「友達だァ?…お前なー、家にダチ来んなら、先ずは家主に許可取ってからにしろって口が酸っぱくなる程言ったろーが。坂田家には坂田家のルールがあんの。そこんとこ理解してる?」

 

「ぐーやん、適当にソファに座ってていいアルヨ。お茶しかないけどゆっくりしてってネ」

 

「え、そ、そう?私、邪魔じゃないかしら…」

 

「人の話を聞けやぁぁぁ!ゴラァ!」

 

くせっ毛が目立つ銀色の天然パーマ。やる気をまるで感じない脱力感と無気力に満ちた特徴的な瞳。黒の上下服の上に流水紋が入った白い着物を右側だけ脱いで着崩した男性が激昴するが、神楽ちゃんはまるで気にした様子がない。

 

「銀ちゃん銀ちゃん。新八は何処に行ったアル?」

 

「ったくよー。お前は毎回毎回…あ?新八?便所のトイレットペーパーが無くなったから今買いに行ってるとこだ。もうそろそろ帰って来んじゃね?んなことよりよー、お前にこんな超絶べっぴんなお友達がいた事に俺はビックリなんだが」

 

「ぐーやんは遠い土地のお姫様アル。ブルジョワネ」

 

「どうぞお嬢様、お茶でございます。何分急な来訪で安っぽい粗茶しか御座いませんが、どうぞ幾らでもゆっくりしていって下さいませ」

 

「まぁ、ありがとう…銀髪の殿方。優しいのね」

 

「変わり身はえーなオイ」

 

「はっはっは!一体何のことでしょうか?私は全く記憶に御座いませんね」

 

「さっき鼻ホジりながらソファにだらしなく座っていたのはどこの誰ネ。今更になって帳消しに出来ると思うなよ天然パーマが」

 

「ばっかお前!それを言うなよ!」

 

取っ組み合いの喧嘩をし始める2人を他所に、私は「美味しい…」と呟きながらお茶を啜る。仲裁に入るべきか悩んだけど、ただじゃれあってるだけのようだし、ここは見守りましょうか。

 

「ただいま帰りました…って、何やってんですか!?」

 

「だって銀ちゃんが…」

 

「だって神楽が…」

 

「だってじゃないですよ!?お客さんそっちのけで喧嘩しないで下さいよ。2人が本当にすみません…」

 

眼鏡の男の子が申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「ふふっ、大丈夫よ。気にしなくていいわ」

 

「お客さんじゃないネ 。ぐーやんは私の友達アル」

 

「え、神楽ちゃんのお友達なんですか?」

 

「ええ。とは言っても、なったのはついさっきだけどね。公園で困ってた私を助けてくれたの」

 

「遠い土地のお姫様なんだとよ。通りで育ちが良いはずだぜ。明らかに漂ってるオーラが俺ら一般市民とは違ぇ。だって背後にキラキラした品格の塊みたいなエフェクトが見えるもん。こんなのジャンプでもなかなか見ねーぞ」

 

「何の話をしてるですか銀さん…」

 

「ぐーやんは“ブルジョワ”アルからな」

 

「神楽ちゃんはそれ言いたいだけでしょ」

 

いいわね、こんな感じのほのぼのとした雰囲気。あっちじゃ私の話し相手になってくれる人なんて永遠亭の皆くらいしかいなかったから、こういう『素で何でも言い合える存在』に憧れてしまう。

 

「なぁ、名前教えてくれねーか?いつまでもお姫様って呼ぶのは悪いからな」

 

「輝夜、蓬莱山 輝夜よ。蓬莱山って呼ばれ慣れてないから、輝夜って呼んでくれると嬉しいわ」

 

「僕はここ万事屋の従業員の志村 新八って言います。よろしくお願いします輝夜さん。ちなみに、神楽ちゃんも僕と同じで万事屋で働いてるんですよ」

 

「輝夜ねー。俺は坂田 銀時つって、ここ万事屋の社長だ。万事屋ってのは要するに何でも屋な。もし何か困ったことがありゃ遠慮なく俺達に言ってくれよ。もちろん、金は貰うけどな」

 

「ワンッ!」

 

「んで、コイツが定春だ。あんま不用意に近付かない方がいいぞ。頭パクッと食われるからな」

 

「これは…犬、かしら?随分と大きいわね。愛らしい──」

 

真っ白いモフモフに耐え切れず、頭を撫でようとしたら急に視界が暗くなる。

 

「定春何してるネ!?早く吐き出すアルゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「…銀さん。もう遅いです」

 

「ぎゃああああぁぁ!?何してんだこのバカ犬ぅぅぅぅぅぅ!!てめぇ分かってんのか?姫さんに怪我なんて負わせてみろ、不敬罪で俺達全員の首が飛ぶぞ!いいのか!?このアニメ終わんぞ!?」

 

ドタバタと、慌ただしい音が外から聴こえる。視界が真っ暗で何も見えないが、かなり焦っているのだけは伝わってきた。

 

身動きが取れない状態のまま、生温かい息が顔にかかる。

自分が“噛み付かれている”と認識したのはその時だった。

 

突然のことで困惑していると、誰かが私を強引に引っ張り出して救出してくれた。

 

「随分と元気いっぱいなのね。元気なのは良いことよ。定春は何を食べるの?ドッグフード?」

 

「いやいや!頭から血流しながら言う人のセリフじゃないですよねそれ!?と言うか、何でそんなに冷静なんですか!?」

 

「え?どうして?ああ、ひょっとしてこの怪我のことを心配してくれてるの?大丈夫よ。これぐらい何でもないわ」

 

「だからあり過ぎなんですよ!?」

 

「ち、血だらけで笑いながら定春の頭撫でてんぞオイ。このお姫さん肝が据わりすぎだろ。どんな強靭なメンタルしてんだよ。超合金か?それともガンダリウム合金で作られてんのか?」

 

「ぐーやんは“ブルジョワ”アルからな」

 

「ブルジョワ関係なくねっ!?」

 

微笑みながら定春の頭を撫でていると、「コイツやばい」とでも言いたそうな顔で見られてしまった。

 

どうしてかしら?

 

私にとって怪我なんて欠片も興味ないもの。どうでもいいことなのに。

 

…そういえば、万事屋って何でも屋さんなのよね。だとしたら私のお願い(・・・)も聞いてくれるのかしら。




輝夜さまは、自身の怪我には無頓着ですが、他人の怪我には敏感で、やや心配性な面があります。

【追記】
誤字報告ありがとうございます。

輝夜の戦闘描写はあった方がいい?

  • できればあった方が良い
  • 無くてもいい
  • 作者に任せる
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