銀魂の世界に蓬莱のお姫様が迷い込んだ話   作:芋けんび

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支援絵をいただきました(歓喜)
本当にありがとうございます。


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人間に宿るは儚い霊

 

 

「色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず〜」

 

地面に転がる徒士達をスルーして城内へ向けて足を進める。

 

これは弾幕勝負じゃない。

 

本物の戦場。少しでも武器を振るうことを躊躇えば標的となるのは自分。国に害を為す賊の鎮圧が彼らの使命。

 

役人達の数は減る所か見る見る内に数を増していく。

 

「あら?これは何かしら…」

 

仰向けに倒れ込んでいる徒士の傍には右側が黒、左側が白という左右で色が異なる不思議なお面が落ちていた。

 

お祭りで売っている可愛らしいデザインではなく、骸骨を象ったような不気味な形をしている。

 

「んー、珍しい物だけど…私の趣味には合わないかし…!?と、取れな…!」

 

輝夜の珍品コレクター魂が騒いだのだろうか。興味津々で顔に付けてみたまでは良かったものの、上手い具合に顔にハマりこんで取れなくなってしまった。

 

どんなに引っ張っても頑なに顔から離れてくれないお面に嘆声とも嘆息とも取れる息を吐いた。

 

「着物姿でこんな格好をしていたら完全に不審者ねぇ…」

 

誰が何のために何に使用するのか?

 

地上にはまだまだ知り得ぬ事が多い。さて、どうやってあのお爺さまを救出するべきか考えようかしら。あの缶蹴りの一件は銀ちゃんさんの行動を止められなかった私にも責任がある。

 

自分の能力を過信し過ぎたが故の失敗。意識を集中させれば何時でも発動できるからと判断を誤ったのは私。

 

永琳ならば「姫様が責任を感じる必要はございません」ときっぱり言うんでしょうねぇ。人間を見下す態度が以前よりは緩和されてるのは、彼女なりに思う所があったと言うことかしら。

 

「話し声…?」

 

少し空いた襖の奥で声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

「舞蔵、鈴蘭がまだ生きていると聞けばお前は喜ぶか?だが、残念ながらもう長くないとの事だ。たまげたものよのう。来るはずのない男を本当に死ぬまで待ち続けると言うのだから。あれから何度満月が過ぎたか。もう許されてもいい頃合いだろう」

 

「………」

 

闇夜に広がる星々に一際大きな満月を感傷深く眺めながら頻りに頷く先代将軍。舞蔵はそんな先代将軍の背を座礼の状態のまま横目で見つめる。

 

「城中に賊を招き入れた責任、とでもしておこうか。ーー腹を切れ、鈴蘭が地獄で待っていよう」

 

無造作に投げ渡された短刀に舞蔵の両目が大きく見開かれる。

 

「……せぬ」

 

「ん?今なんと申したんだね?」

 

「できませぬ」

 

「……お前は自分の立場がわかっているのかね?主の命令は絶対、そうだろう。それをできませんの一言で済ませられると本気で思っているのか」

 

「さ、定定さま!大変でございます!」

 

「なんだね?今は取り込み中だ。後にーー何?下手人が脱獄した?」

 

城の外から緊急を知らせる呼子笛が鳴り響く。先代将軍が露骨に目を細めて「もう直死ぬ女の為にここまで躍起になるとは…理解に苦しむな」と苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

「先代将軍、徳川定定様。お初にお目にかかります。断りもなくこのような姿で御前に座る御無礼、お許しください」

 

「む?一体誰だーー」

 

上品な着物に、艶のある長く美しい黒髪。座礼するその女の顔には骸骨のような不気味なお面が付けられていた。

 

「六転舞蔵様は、ただ私の指示に従っただけ。下手人を脱獄させたのも自分でございます」

 

「なっ!?何を仰って…!」

 

「ほう?此度の騒動は全て貴様の仕業だと…?」

 

「左様でございます。裁くならどうか私を裁いてくださいませ」

 

「逃げきれぬと悟り、自らを差し出して事を収めようとするか。ならば、そなたが腹を切るか?さすれば、私も度重なる無礼を許そう」

 

「お、お待ちくだされ!違います、全ては私めの責任なのです!彼女は関係ございませぬ!どうかお考え直しを…!」

 

舞蔵が地面に額を擦り付けて必死に再考するように懇願する。だが、先代将軍の決意は変わらなかった。

 

「諄いぞ舞蔵。私の意思は変わらぬ」

 

両手で短刀を手に取った女は大きく息を吐く。やがて、鞘を引き抜くと白銀の光を帯びた刀身が露わになる。

 

尖った先端を自身の腹部に向けると、一変の躊躇いもなく勢いよく突き立てた。

 

 

紅い鮮血が畳を汚す。

 

 

程なくして女の体が力なく崩れ落ちた。

 

 

舞蔵が慌てて女に駆け寄るが既に息絶えていた。動かぬ亡骸に縋り付いて繰り返しひたすら謝り続ける。その姿が先代将軍には滑稽に思えた。

 

「ホッホッホ。実に面白い余興だった。残った下手人は一匹残らず皆殺しにするように全員に伝えなさい」

 

人の上に立つ者らしからぬ下卑た笑いを浮かべる。

 

(将軍)に害を為すは国家反逆罪と同義。

残った活動家不穏分子を許すつもりなど、この男には最初からなかったのだ。

 

「舞蔵。責任を全て女に転嫁した事で、無意味に腹を切らなくて良かったではないか。せめてもの情けだ、下手人の亡骸の処理は貴様に任せよう。精々詫びの言葉を投げ掛けてやるがよい」

 

背後で「申し訳ない…申し訳ない…」と咽び泣く舞蔵に背を向けて開けられた襖の奥へと消えていく。

 

「何故、見ず知らずのジジィなどを庇ったのですじゃ!全ての責任はこの六転舞蔵にあると申すのに!若者が命を投げ出す必要など…」

 

「そうかしら?上様のあの様子を見る限り、遅かれ早かれお爺さまを切り捨てていたのは明白よ」

 

崩れ落ちた女の体が再び動き出す。腹部に刺さったままの短刀を「痛たた…」と言って引き抜くと、着物の袖で己の血を拭いとって鞘に戻した。

 

「な、な…!」

 

有り得ないものを見たと脂汗を流しながら口をパクパクと必死に動かすが驚きで声が出ない。

 

「やっぱり痛いものは痛いのねぇ。久方ぶりに死ぬかと思ったわ」

 

「お主は…し」

 

「死んだ筈と、仰りたいのよね?あれは演技よ。本当は死んでないわ」

 

「だが、お主は確か「それよりも、お爺さまは大丈夫かしら?」」

 

これ以上問い詰められるのは不味いと思った女は無理やり言葉を遮って話題を変える。

 

「も、問題ないですじゃ」

 

「元気そうでなにより。積もる話もあるでしょうけど、まずは早くここから脱出しましょう」

 

「どうーー」

 

「どうやって」と問う前に両足を持たれて抱えられる。舞蔵は俗に言うお姫様抱っこをされていた。

 

「大丈夫。お爺さまはただ私に身を委ねてくれるだけでいいの。私、見つからない事には少し自信があるから」

 

「な、なるべく安全にお頼み申すですじゃ。ジジィの体がバラバラになってしまいますゆえ…」

 

「そんな時は緊急脱出すれば問題ないわ。それに、お爺さまが瞬き一つする頃には此処から逃げられてると思うからご安心なさって」

 

「何ゆえ見ず知らずの老いぼれを…」

 

「貴方の顔が私を育ててくれたお爺さまに似ていたからかしらねぇ。昔を思い出してしまって居ても立っても居られなかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

「ちぃ、次から次へとしつけぇ!おめーらはお呼びじゃねーんだよコンチキショー!いたいけな美少女に生まれ変わって出直してきやがれ!」

 

「銀さん!これじゃキリがないです!」

 

「ゾロゾロ湧いて出てくるアル!」

 

「階段の上にもアイツらの援軍がズラっと待ち構えてやがんぜ。ったく、むさい野郎共に迫られても嬉しくはねーっての!くらいやがれ!糖の呼吸、壱ノ型。ぶっ込み斬りィィィィィ!」

 

「それ別作品の技だろうがァァァァァ!僕達がパクるのは不味いですって!!」

 

「何やら困り事のようだな。俺が助太刀致そうぞ!はぁ!」

 

夜の闇に轟く爆発音。爆風によって役人達が吹っ飛んでいく。颯爽と登場する髑髏の眼帯を付けた黒い服に身を包んだ長髪の男。その隣には【共に戦おう】と書かれたプラカードを手に持つ真っ白い謎の着ぐるみが立っている。

 

「お、お前は…ヅ、ヅラ!?」

 

「ヅラじゃない。キャプテンカツーラだ。江戸城の門前でずっとスタンバってました!」

 

「何でテメーがこんな所にいやがんだ!?ひょっとして俺達を助けに…!」

 

「俺はここで『25時間テレビ』のランナーが走ると言うから一目見ようと来ただけだ。今回はどうやら欽ちゃんが走るらしくてな」

 

「何年前の話してんだ!かなり昔だよそれ!てか、こんな所をランナーが走るわけねーだろうが!」

 

「馬鹿な…!欽ちゃんに会うのを楽しみにしていたというのに。その道は閉ざされてしまったのか…!」

 

「閉ざされた所か、とっくに終わってんだっつーの!ンなことより早く手伝え!人手が足りねーんだよ!」

 

「やっとこの腐った国を一緒に変える気になったか銀時ィ!俺は待ちわびていたぞ!」

 

迫り来る群集に木刀を振りかざし、銀時の背後から襲い掛かる徒士を蹴り飛ばすキャプテンカツーラ。

 

「俺がいつヅラと一緒に国変えるなんて言ったんだよ!勝手に話を捏造すんじゃねー。俺ァただババアとの約束を果たす為に国と上様に喧嘩売ってるだけよっ!」

 

「信女さん。彼等を護衛して差し上げなさい。私も後で向かいます」

 

「ん」

 

一言返すと目前の役人達の武器だけをバラバラに切り裂いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城内まであと少しという所で、思わぬ人物と鉢合わせることになる。

 

「国家反逆者をわざわざお出迎えとは随分お優しいじゃねーか。誰だテメーは」

 

「私が感じた気配の正体…コイツ。死ぬ気で行かないと殺られる」

 

「昨日ぶりね、万事屋さん」

 

「…?主の知り合いか?銀時?」

 

「…!?お前…何で俺達を知ってんだよ?大体何だ、その屋台でもロクに売れねーような仮面はよォ。ブ○ーチの虚化にでも憧れてんのか?死神でもなりてーのか?」

 

「違うぞ銀時。あれはブ○ーチなどではない。荒れ狂う猛獣を思い出させるそのマスク。間違いない、奴はタイガーマスクだ!」

 

「タイガー要素全くねーじゃねーか!お前の目には一体何が見えてんだよ!?」

 

前方に立つ人物はそっちのけで漫才を繰り広げる白夜叉と狂乱の貴公子。張り詰めた空気が一気に霧散していく。

 

新八が「あれ?」と何かを思い出したような声を上げる。

 

「でも何か服装が見たことあるような…」

 

ぐーやん!会いたかったアルーー!!

 

地面を蹴って駆け出すと、すぐに目前の人物に神楽が抱きついた。

 





追記
アンケートにお答えいただきありがとうございました。

輝夜の戦闘描写はあった方がいい?

  • できればあった方が良い
  • 無くてもいい
  • 作者に任せる
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