コンコン…
ドアをノックしても返事は返ってこない。
コンコン…コンコン…
無駄だと分かっていても彼女はノックをする、それが何かの儀式であるかの様に。
そっとドアを開いてもそこには誰もいない。
「……お兄ちゃん…」
灯りの無い暗い部屋、シーツや布団がかけられていないベッド。
そんな部屋の中で彼女は膝を抱えて涙ぐむ。
「お兄ちゃん…おにいちゃぁん……ごめんなさぁい、帰って来てよぉ…。小町、寂しいよぉ」
失ってしまった兄との絆。
もう一度取り戻したいと彼女は一人涙する。
ー◇◆◇ー
八幡~
「小町が学校に行ってない?」
二時限目が終わった後の休み時間にお袋から電話が来た。
学校から「娘さんが来てないんですが病欠ですか?」と連絡があったそうだ。
『たぶんだけどあの娘、あんたの所に行ったんだと思うの』
「根拠は?」
『小町、昨夜はあんたの部屋で寝てたのよ。起こしに行った時、自分の部屋にいなかったからもしかしてとあんたの部屋を覗いてみたら毛布に包まっていたわ。泣いていたんでしょうね、頬に涙の後もあったし』
「小町に電話は?」
『したわ、でもすぐに切れてその後は電源を切ったらしくつながらないの』
「俺が今住んでる爺ちゃんの家の場所は知ってるんだよな」
『ええ』
俺は少し考えて返事をする。
「分かった。今日はなるべく早く帰るよ」
『お願いね八幡、それと…』
「ああ、責めたり追い返したりはしないよ。俺もいい加減向き合わないといけないと思ってたからな」
『成長したわね八幡。志摩…、リンちゃんのおかげかしら?」
「ち、ちがうし!しまはぜんぜんかんけいないし!』
『じゃあ、なでしこちゃん?』
「あーもう!授業始まるから切るぞ」
『ふふふ』
くそっ!
あいつらの事なんか教えるんじゃなかった。
それにしても…
「何してんだよ小町」
本当に俺に会いに来るのか?
何で今更……
ー◇◆◇ー
八《相談がある》
昼休みにグループラインを開いてそう打ち込む。
戸《どうしたの八幡》
八《どうやら小町がこっちに来るらしい》
川《来るらしいってどういう事?》
八《今日、学校を無断欠席したとお袋から連絡があった》
戸《八幡に会いに行く為にだね》
川《そう言えば大志もこの頃小町ちゃんの様子が変だって言ってたよ》
材《それで八幡はどうするつもりなのだ?》
八《どうするもなにも、普通に話をするが》
戸《うん、やっぱりそれが良いよ》
材《うおおお~~~~~ん!》
川《な、何だよ》
材《か、会話が。初めてまともな会話のキャッチボールが》
八 画像
(メラゾーマではないメラを放つ大魔王バーン)
川《余計な茶々入れるなら黙っておきな》
戸《そうだよ材木座君、真面目な話をしてるんだからね》
材《はい…》
戸《それで八幡、大丈夫なの?》
八《ちゃんと向き合うよ、もうお互いにそう言う時期なんだと思う》
川《ああ、それが良いよ》
戸《成長したね八幡。これも志摩ちゃんのおかげかな》
八《違うって》
川《じゃあ、なでしこって娘?》
八《お前達までお袋みたいな事言うなよ》
戸《自覚無いんだ》
材《r aj ub k h t s y 》
戸《?》
川《何言ってんのあんた》
八《東大王か…》
戸《ああ、なるほど》
川《え~と、解読すると…》
戸《材木座君…》
材《だって、だって》
八《まあ、小町とは仲直りしたいからな。本当はずっと後悔してたんだ》
戸《八幡…》
川《やっと本音を言ったね》
戸《がんばってね》
川《応援してるよ》
八《サンキュー》
材《ねえ、せめて罵倒して。無視される方が辛い》
材《……》
材《読んでる?見てる?既読、つかないんだけど》
材《……》
材《我は貝になりたい》
ー◇◆◇ー
全ての授業が終わり、家に帰ろうとすると何時もの様に各務原が野クルに誘って来たが「今日は大事な用事がある」と言うと急いでいる事を察してくれたのか「そっか」とあっさりと開放してくれた。
志摩にも《今日は大事な用事があるから帰る》とラインを送ると《急ぎすぎて事故に合うなよ》と返信して来た。
「あれ、わざわざ志摩に言う必要あったか?」
まあ、それはそれとして早く帰らなくては。
小町が来ていればいいが、もし来なければ本格的に行方不明だ。
家に帰ってみれば玄関の脇に膝を抱えて座り込み、顔を膝に埋めている小町がいた。
近づくと俺の足音に気付いたのか肩をビクっとさせる小町の頭に手を乗せるとようやく顔を上げた。
「何やってるんだよ小町」
「…お、おにいぢゃ……ん゛。ぐすっ」
「とにかく上がれ」
手を掴んで立ち上がらせ、玄関を開けて中に招き入れる。
居間に座らせてる間にコップに水を汲む。
冷蔵庫にはマッ缶の備蓄があるのでインスタントコーヒーなんて洒落たものは無い。
ちゃぶ台にコップを乗せマッ缶を飲むと小町は俺を見ながら
「私もまっくすこーひーがいい」
と言った。
「でもお前、こいつは甘すぎると敬遠してたじゃないか」
「まっくすこーひーがいい…ぐすっ」
「ちょっと待ってろ」
鼻を啜りながらそう言うので取りに行き、戻って来ると俺の飲みかけのマッ缶を飲んでいた。
間接なんとかだぞと言おうとしたが、逆にややこしくなりそうな気がしたので黙っておく事にした。
しばらくして、ようやくすすり泣きが止まった所で話しかける。
「それで小町、何で此処に来たんだ?お袋も心配してたぞ」
「…もって、お兄ちゃんも心配してくれたの?」
「当たり前だろうが」
頭をかきながらぶっきらぼうにそう言うと小町の瞳からはまた涙が零れだした。
「ふええぇ~~~~ん」
「ど、どうした?」
「だって、だっでぇ~~~。小町、お兄ぢゃんにぎらわれだままだと思っで~~~。ふえぇ~~~ん!」
「小町…」
ちゃぶ台に突っ伏して泣き出した小町の頭に手を乗せて撫でると涙と鼻水でぐちゃぐやになった顔を上げたのでティッシュを差し出すとちーんと鼻をかむ。
「ご、ごめんね゛、ごめんなざ~~い」
「ごめんって何がだ?」
しまった、今のは流石に意地が悪かった。
「こ、小町、よく事情知らない゛のに…、お、お兄ちゃんが悪いっでぎめつけて…、お兄ちゃんの事、責めぢゃった」
「…もう良いよ」
「良くないよ!こ、こま…小町が自分を許せ゛ないもん゛!ずっと、謝りだがったのに、全然謝れなぐて」
「小町」
「お兄ちゃんいなぐて、ざみしぐって…ぐすっ、ごめんなさい、ごめんなさい~~!…ふぇ?」
泣き続ける小町を俺は思わず抱きしめていた。
「おにい…ちゃん?」
「だからもう良いって。意地張ってたのは俺も同じだ」
「ぐすっ」
「ごめんな、小町」
「おにいちゃん、お兄ちゃん。ありがとう、ごめんなさい!うわあぁ~~~~ん!」
正直まだ蟠りはあった。
だけど小町はちゃんと自分の足でここに来た、ちゃんと自分の言葉で謝って来た。
だったら俺も意地を張り続ける必要は無い、俺達はまた兄妹に戻れる。
「あ~~、腹減った。小町、久しぶりに小町の飯が食いたい」
「うん、うん。小町、思いっきり腕をふるうよ」
ー◇◆◇ー
台所からは「ふん、ふ~~ん」と料理をしている小町の鼻歌が聞こえて来て、俺はその間にお袋に連絡しておこうと電話をかける。
「お袋」
『八幡、小町は?』
「ああ、やっぱりこっちに来ていたよ」
『それで?』
「色々と話し合ってな、取り合えず仲直りしたよ」
『そう、良かった。小町はどうしてるの』
「飯を作ってくれてる。久しぶりだから楽しみだよ」
『うふふ。じゃあ、今日はそっちに泊まらせてあげて』
「分かった。所で親父は?」
『さあ?さっき帰って来た時に小町が学校に行っていない事を言ったら慌てて探しに出かけたわ。何処を探しているのやら』
「切りの良い所で教えてやれよ」
『今言うとそっちに向かってややこしくなるでしょう。明日の夕方にでも迎えに行かせるわ』
「了解した。じゃあな」
『ええ、小町をよろしくね』
電話を終えて部屋着に着替えると丁度料理が出来たらしくちゃぶ台の上には美味そうな料理が並んでいた。
「おお、美味そうだな」
「えへへ、小町頑張ったよ」
その後、小町の飯を堪能してお互いに色々と話をした。
「ふ~ん、お兄ちゃんキャンプをしてたんだ」
「爺ちゃんのキャンプ道具を譲ってもらったからな」
「小町が寂しがってる時、他の女の人と楽しくキャンプしてたんだ」
「小町ちゃん、何が言いたいのかな?」
「何でもないよーだ、つーーん!」
小町は拗ねてつーんなどと言いながら顔を反らすがかえって安心した。
まだ少しぎこちないが俺達の仲は元通りに戻っていっている。
「さて、今日は此処で寝ろ」
客間に布団を敷こうとしていると小町は枕だけを持って客間から出て行く。
「おい、小町」
小町の後を追うと俺の部屋へと入り、ベッドの上に枕を置く。
「小町もここで寝る」
「いや、それは…」
「ここで寝る」
「だからあのな」
「ここでねるの」
「…分かったよ」
ぷくーと頬を膨らませて動こうとしないので俺が折れた。
えへへと笑いながらベッドに入り、自分の横をポンポンと叩く。
す~、す~と俺に抱きついて寝息を立てる小町を見ながらまだお互いに子供だった頃の事を思い出し、小町との絆を取り戻せた事に安心して俺も眠りに付く。
(`・ω・)と言う訳で仲直りした二人でした。
まあ、小町は一旦千葉に帰るので出番はしばらくお預けになります。
次回は志摩達との顔合わせですかね。
材木座の扱い方。
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材木座君が可哀想です。優しくしてあげて。
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別にいいんじゃネ?このままでおk。