【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆240 五年後
二〇一一年三月。私は麻帆良にあるマンションの最上階で目を覚ました。
麻帆良は今や魔法教育の中心地として扱われ、住宅需要が急上昇。それを見越していた私は、『ねこねこ動画』の収益金でマンションを複数建てていた。私が今いるのは、その新築マンションの一つで、最上階を私の家として扱っている。
子猫の技術で短期間のうちに完成したマンションの部屋は飛ぶように売れ、その収益で私はいくつか新規事業を起こした。
先日大学を卒業した私は、それらの事業を扱う『ねこねこテクノロジー』社の社長として、引き続きここ麻帆良で指揮を執っていくことになる。
だが、それもまあ四月からの話だ。新社会人になるまではまだロスタイム。私は、最後の春休みを全力で満喫していた。
「はー、働きたくないですねぇ」
「何をたわけたことを言っているんだ、お前は」
朝ご飯を食べながらぼやいた私に、ちう様がスマホから実体化してそんな突っ込みを入れた。
「おおっと、ここは私のプライベート空間。何を言ってもノーカンですよ」
「社長の行動に新社会人の私の命運がかかっているんだ。しっかり頼むぞ」
「ネットセキュリティ部門の室長様が新社会人とか、何を言っているんだって感じですね」
ちう様は、学生時代から私の『ねこねこテクノロジー』で働いていて、魔法ウィルスや電子精霊によるハッキングが横行する現代のインターネット事情に対応する部門の責任者を務めている。
魔法ウィルスはその気になれば、ネット越しに相手を呪殺することも可能であり、急速に発展する魔法科学社会では魔法に詳しいネットセキュリティソフトの開発が急がれていた。そこに目を付けたちう様が私に出資を頼んできて、彼女と一緒に事業を起こしたというわけだ。
ちなみにちう様の部屋は最上階の一つ下の階にちゃんとあるが、本体は私のスマホの中にあるのでこうやって突然部屋にやってくることがある。
プライバシーも何もあったものではないが、そもそも私のスマホの中から外の様子を常に観察しているようなので、今さらだと思って気にしないようにしている。仮契約のパートナーだしね。ちう様はキティちゃんと仮契約する予定を変更して、私を仮契約の主に選んだのだ。
「それよりも、今日は『
「ああ、ハガキが来ていましたね。ネギくんの主催でしたっけ」
「部長はお前なのに、ノータッチなんだな……」
「元部長です。もはや解散したネギま部の責任者ではないのですよ。まあ、メンバーがそろっていないなら『ドコデモゲート』を出しますよ」
そう、ネギま部は高校三年の春、ナギさんの救出をもって解散した。元々がナギさんの行方を捜し出すための部活だったからね。救出した以上、存続する理由がなかった。
大学に入る頃にはそれぞれが将来の為に動き出していて、全員がそろうことも滅多になくなった。
だからか、大学に進んだメンバーが卒業したこのタイミングで、同窓会を開いたのだろう。
私は懐かしのネギま部メンバーを頭に思い浮かべながら朝食を終え、少しお腹を休ませてからシャワーを浴びる。
そして、おめかししてからマンションの外へと繰り出した。
「そういえば、あの噂知っているか?」
桜が満開の通りを歩いていると、隣を歩くちう様が、唐突にそんなことを言い出した。
「噂ですか?」
私が問い返すと、ちう様が答える。
「下着強盗が横行しているって」
「下着泥棒じゃなくて、下着強盗ですか……」
「ああ。なんでも、異形の化け物が女子生徒を襲って、怪我をさせることなく下着だけ奪っていくそうだ」
「また珍妙な……そういえば、予言の書の最後にそんなエピソードがありましたね」
「ああ、犯人はパイオ・ツゥだろうな」
『魔法先生ネギま!』に登場する魔族の名を挙げながら、ちう様が腕を上げる。そして、そこから無詠唱で氷の魔法を放った。
すると、こっそり私達に近づいていた蟲の魔獣が、氷漬けになる。
「なるほど、これが犯人の操る魔獣ですか」
「近くに本体もいるな」
ちう様がさらに魔法を無詠唱で連打し、隠れていた魔獣を次々と凍り付かせていく。
「む、本体が逃げるぞ」
「お任せを」
私は『ドコデモゲート』で、犯人を目の前に呼び出した。
「ムホッ、転移罠!?」
全身をおおうタイプの服を着こんだ犯人が、驚きつつも瞬時にこちらに襲いかかってくる。
その狙いは……私の胸部!
私は、胸に手を伸ばそうとする犯人にカウンターで拳を何発も叩き込む。
すると、手に金属パーツがひしゃげる感触が返ってきて、大男の姿だった犯人の中から、素っ裸の少女が飛び出してくる。
六本腕の魔族。パイオ・ツゥに相違ない。
パイオ・ツゥは、さらに私の服を脱がそうとその六本の腕を伸ばしてくるが、私はそれを避け拳を叩き込む。そこへ横からちう様の氷の捕縛魔法が炸裂し、パイオ・ツゥは氷で拘束された。
「ムウッ! かの伝説の傭兵剣士『千の刃』直伝の『無音・脱がし術』が効かぬだと!」
「またあのおっさんは、余計なもんを他人に教えやがって……」
ちう様が呆れたように言う。まあ、その技術はすごいのだろうが、残念ながら私には通用しなかったね。
そして、パイオ・ツゥに封印魔法をかけた私は、麻帆良の警備員に彼女を引き渡した。
「時間がやばいな。少し急ぐぞ」
ちう様がそんなことを言い出したので、私達は『ドコデモゲート』で集合場所に向かった。
すると、そこには解散時より少し成長したネギま部メンバーがそろっていて、懐かしさに思わず笑みがこぼれるのだった。
◆241 紅き翼
ネギま部と合流した私達は、そのままネギくんの案内で一つの建物の中に入る。
そこは麻帆良が展望できるオシャレな飲食店で、外に見える満開の桜並木が絶景であった。
そんな店内を進んでいくと、奥の方の席にナギさんとジャック・ラカン、アルビレオ・イマ、詠春さんら『
「あれー? ナギさんじゃん! ラカンまでいるし!」
ハルナさんがそんな声を上げ、他のネギま部メンバーも思わぬゲストに驚いている。
「ナギさん、お体は大丈夫なんですか?」
夕映さんが、ナギさんに向けてそんな言葉をかける。
すると、ナギさんはニッと笑い返してきた。
「ああ、魔素中毒は完治したよ。今は頑張って職探し中さ」
「ふん、未来の夫が無職では体裁が悪い。さっさと仕事を見つけろ」
キティちゃんがそう言うと、ネギま部メンバーは驚いて声を上げる。
「えっ、エヴァちゃん、ナギと結婚するの?」
「マジで? 『白き翼』結婚一番乗りじゃん!」
「エヴァンジェリン先生がネギ先生の義理の母親になるのか……」
すると、キティちゃんはふふんと笑って言う。
「結婚式には招待してやる」
この余裕の表情! まったく、幸せになりやがって。
「夏凜さん的には、二人の結婚はどうですか?」
私がキティちゃんの隣に座る夏凜さんに尋ねると、彼女は複雑な表情をしながら答える。
「エヴァンジェリン様の幸せが一番よ」
なるほど、ナギさんは夏凜さんのお眼鏡に適ったというわけだね。
「しかし、なんでまた『紅き翼』が集まっているアル?」
古さんが、そんな疑問をネギくんに投げる。
すると、ネギくんは笑みを浮かべて言う。
「今日は、あらためて皆を父さんに紹介したくて」
「なるほど。『紅き翼』と『白き翼』の顔合わせということでござるな」
楓さんが、納得顔でうなずいた。
そして、ネギくんがナギさんに向き直る。
「父さん、僕の自慢の教え子……いえ、仲間です」
ナギさんの前に私達を見せびらかすようにして言うネギくん。すると、ナギさんは立ち上がってネギくんの前へと向かう。
「女ばっかじゃねーか! わはははは!」
「女子校だから仕方ないじゃないですかー」
「わはは、俺の仲間は全員男だぞこんちくしょう」
ナギさんとネギくんはそう言葉を交わしながら、どつき合う。仲いいな、この親子。
そして、ナギさんとネギくんのじゃれ合いはしばらく続き、場は笑いに包まれるのだった。
◆242 私達の未来
改めて私達は席に着き、ネギま部メンバーで今後の進路について報告し合うことにした。
「私は新オスティアに渡って、ウェスペルタティア王国の再興ね。国として復活するか分からないけど、沈んだ浮遊島を復活させる計画を進めるつもりよ」
トップバッターの明日菜さんが、そんな壮大な計画を口にした。なるほど、廃都オスティアの魔力消失空間はすでになくなっているから、浮遊島はいつでも復活できる状態にはあるんだよね。
ただ、建物は建て直さなければいけないだろうし、世界中に散った国民が集まるかどうかも不透明だ。彼女の道行きは困難を極めるだろう。それでも、明日菜さんの表情は希望に満ちあふれていた。
ちなみに明日菜さんは大学に入ってから高畑先生に猛アタックを繰り返し、見事付き合うことに成功した。中等部の卒業式の日に失恋の相が消えたというのは本当だったんだなぁ。
さて、次の報告はあやかさんだ。
「雪広家から宇宙開発部門の責任者を任されました。ネギ先生やアーニャさん、夕映さん、のどかさんと一緒に、宇宙開発を進めていきます。麻帆良にも、そのうち軌道エレベーターが建つ予定です」
ああ、確かに現在建物の基礎を作っている段階だね。軌道エレベーターは巨大な塔ではなく、宇宙から地上にケーブルを吊り下げる仕組みなのだが、それはそれとして人が乗る基礎部分はしっかり作ってやる必要がある。
赤道以外に軌道エレベーターを作ることは技術的に難しいのだが、そこは子猫達が技術を提供している。
「そして、ゆくゆくはネギ先生と結婚を!」
「あはは、まだ言っているの?」
あやかさんの結婚宣言に笑う明日菜さんだが……あやかさんは余裕の表情を崩さない。
それを見た明日菜さんは、キョトンとしてあやかさんに問う。
「え? 本気?」
「清い交際をさせていただいておりますわ」
なんと、長年の執念で、あやかさんがネギくんをかっさらっていった! ネギくんも、満更じゃない感じで微笑んでいる。
すると、明日菜さんが、夕映さんとのどかさんを見て言う。
「あんた達はそれでいいの?」
「よくはないです」
「恋に破れた以上はどうしようも……でも、百年後にまた想いを伝えます」
ああ、夕映さんとのどかさんは不老化処理をされているし、ネギくんは竜の因子で超長生きすると推測されているからね。不老長寿特有の時間感覚でネギくんを奪還する計画のようだ。
「ホホホ、私は人として生きますが、一二〇歳まで生きる予定ですわよ」
あやかさんが、余裕の表情でそう言い返す。
いやー、魔法医療の研究が進んでいるから、本気で人間が一二〇歳まで生きられるようになっても不思議ではないんだよね。原作漫画の並行世界のあやかさんって、一一五歳まで生きたはずだし。
さて、次だ。木乃香さんと刹那さん。
「ウチらはトレジャーハントを続けた資金で宇宙船を買ったで。今後は太陽系に点在する宇宙遺跡を発掘して、ネギ君に受け渡す仕事やな」
「先日も、金星で『アカシャの天輪』という移動図書館を発掘しました。名前から、図書館島と関わりがあるのではと、研究が進められているそうです」
あー、『UQ HOLEDER!』の終盤で出てきた巨大宇宙船か。一万二千年前の古代金星文明の遺物だね。
しかし、トレジャーハントか。図書館探検部の経験が、こんな形で活きるとは面白いものだ。夢のある仕事で、うらやましい限りだね。
次、水無瀬さん。
「趣味でやっていた占いが思いのほか当たって、占い師としてやっていくことになったわ。先日はアーニャに世話になったわね」
「ああ、あれね。未だにロンドンから戻るようしつこく言われていたから、代わりの魔法占い師として紹介したのよね。占いの腕は、悔しいけどサヨコの方が上だし」
アーニャが腕を組んでそんなことを言った。確かに、水無瀬さんは最近テレビでよく見るようになったね。魔法使い芸能人として、引っ張りだこのようだ。確かにこれは、かつてのアーニャと同じ道を歩んでいる。
次、のどかさんと夕映さん、アーニャの三人。
「ネギ先生の助手として、雪広グループの宇宙開発部門に就職予定です。まだ数少ないフォトン技術者としても期待されています」
「アーニャさんが上司というのが、微妙にやりづらいですね……」
夕映さんのそんな言葉に、アーニャが「何か文句あるの?」とにらみつけた。それをネギくんがまあまあとなだめて、場は収まる。
うん、なんかネギくんの周りは変わらず騒がしくて楽しそうだね。
次、ハルナさん。どこかの芸大に進んで、その後中退したらしいのだが……。
「週刊少年ジャンプで魔法スポーツ漫画を連載中よ! 今日もスケジュールの合間を縫って、なんとか参加できたんだから!」
うん、ジャンプ本紙でデビューしたときの読み切りがそのまま連載化して、未だに続いているんだよね。綿密な魔法知識に裏打ちされた魔法と気を扱う少年サッカー漫画で、ちょっと社会現象になりかけている。
ハルナさんの漫画が、今後のスポーツ界の魔法と気の導入に影響を与えるのではないかとまで言われていて……これは本気で、彼女がいつか夢見た一億部突破も、ありえるのではないだろうか。
次は古さん。
「崑崙で道士として修行の毎日アル。今日は久しぶりに外に出たアルネー」
古さんは大学に進まずに、高等部を卒業してから国元に帰った。そして、そのままチベットに渡り崑崙入りしたようだ。
自前の転移術でたまに麻帆良に訪れているのを見かけたが、ここ一年ほどは会っていなかったから、本気で修行に打ち込んでいたようだ。
いつか、仙人になった古さんを見る日も来るのだろうね。
次、楓さん。彼女も、大学には進まなかった。
「この世界の鬼一法眼殿を見つけ出して、弟子入りしようとしたでござるが……それだけの腕を持つのに今さら弟子入りとかいらぬだろうと拒否されたでござる。それ以来、互いの技を教え合う修行仲間になったでござるな」
楓さんはなぁ。常闇聖霊の力で第二覚醒して以来、どうも人間を超えた存在に昇華したっぽいんだよね。それも、妖魔というよりは神聖な存在として。だからか、世の中の妖魔には恐れられ、高位の存在は敬意を持って彼女に接するようになった。
いつか神仏の域まで到達しても、私は驚かないぞ。
次、キティちゃんと夏凜さんのコンビ。
「四月から、麻帆良で新任教師だな。私は麻帆良学園本校女子中等部……かつてのぼーやと同じ立場だな」
「私はウルスラ女子高等学校の教師ね。ミッション系の学校だから、そんなに慣れるのにも苦労しなさそうね」
キティちゃんはエステで今や完全な大人の女性となっており、もう〝キティちゃん〟って見た目じゃなくなった。
そして、予定通り麻帆良で魔法教師をやるようだ。
夏凜さんは……ミッション系の学校ということで、イスカリオテのユダということはバレないように頑張ってほしい。背中に彫られた刺青の文字とか、めっちゃそれっぽい材料があるから、本当にバレないようにね。
次、この場にいない小太郎くん。
「魔法世界へ武者修行の旅に向かったみたいです。葛葉刀子先生が仕事を辞めてコタロー君を追っていったようですね」
「なんや、小太郎くん、刀子先生と仲がええの?」
ネギくんの説明に、木乃香さんが質問を投げる。
「ええ、ずいぶん仲が良いみたいですね。刀子先生は麻帆良に連れ戻したいみたいでしたけど……」
そんなネギくんの言葉に、私は補足を入れる。
「この場にいなかったから『ドコデモゲート』で連れてこようと思ったのですが、刀子先生とイチャイチャしていたので放っておきました」
「ずいぶんな姉さん女房やなー」
小太郎くんは十代で、刀子先生はバツイチの三十代後半だからね。まあ、本人達が幸せならとやかく言うものじゃない。
次、ネギくん。
「あやかさんと一緒に、雪広グループの宇宙開発事業を任せてもらっています。人類が太陽系を飛び出す日も、そう遠くはないでしょう」
地球の人口は、近年急増している。私がもたらした子猫の科学技術とオラクル船団のフォトン技術で、人類全体が豊かになったからだ。
そうなると、いずれ人類は地球に収まらない規模に膨れあがるだろう。
そのとき、ネギくんが進める宇宙開発が希望となるだろうね。まずは、テラフォーミングを完了した火星への進出だろうか。あそこは今、植物と動物が住み着いているだけで、人はほとんど住んでいないからね。
さて、残りは我が『ねこねこテクノロジー』のスタッフだ。
まずは茶々丸さん。
「『ねこねこテクノロジー』の農業部門で、砂漠に農地を作る事業に従事しております。品種改良して作った、人も猫も子猫も食べられるまたたびの実をお土産に持ってきましたので、皆様是非お持ち帰りください」
茶々丸さんは、麻帆良の学園結界の対象外になって不自由でなくなったキティちゃんから独立した。そして、私のもとにやってきて、猫や子猫達のために働きたいと頼み込んできた。
なので、農業部門を任せ、人が食べられて子猫も食べられる食物の研究を進めてもらっている。かつて発展途上国と言われていた国はフォトン技術によって大発展を遂げていて、農業人口の減少が予想されている。食糧危機に備えて、農業従事者が少なくて済む農業技術の開発も進めている。
いずれ、地球は寒冷化と温暖化に襲われることが『UQ HOLDER!』の記述によって分かっている。なので、それに備えてより高度な農業技術を用意しておく必要がある。茶々丸さんには、いずれ地球の救世主となってもらうよ。
次、相坂さん。
「『ねこねこテクノロジー』が主催している、魔動エアバイクレースのレーサーになりました! 優勝目指して頑張ります!」
実はスピード狂の相坂さん。そんな彼女を活かせる場所が無いかと考えた結果……私は思いきって、新しい魔法スポーツを作り出すことにした。
参考にしたのは、『UQ HOLDER!』で出てきた空飛ぶバイクレース。魔法世界には似た乗り物がすでにあって、それを持ちこんで改造して、レースを開催した。『ねこねこ動画』に流したそのレースは見事に当たって、世間では魔動エアバイクレースのブームが到来している。
次、ちう様。
「『ねこねこテクノロジー』のネットセキュリティ部門の室長をしている。最近、マジで魔法犯罪が増えているが、私がいる以上、ネットは守り切ってみせるぞ」
魔法とフォトンが科学技術に合流し、さらに私が世間にスマートフォンを見せびらかした結果、思いのほか早く人類が皆スマートフォンを持つ時代が到来した。
その結果、誰でもネットを使うようになったが、魔法を悪用したネット犯罪も増えた。そこに商機を見いだしたちう様は、セキュリティソフトをリリースして現在業界ナンバーワンのシェアを誇っている。
「悪魔召喚プログラムを潰したのは爽快でしたね」
私がそう言うと、ちう様は笑って返してくる。
「メガテンみたいな世界には、私がいる以上させねえよ」
頼もしいね!
さて、最後に部長の私だが、その前に『ねこねこテクノロジー』に所属する元3年A組のメンバーを紹介しよう。
「朝倉さんは動画配信部門、『ねこねこ動画』の代表になりました。その助手をしていた鳴滝姉妹は、魔法世界の王子様達と結婚して寿退社して、今ではそれぞれ一児の母ですね」
私がスマホで鳴滝姉妹の子供の写真を見せる。
それぞれ、ケモミミと角が生えた昔の姉妹そっくりな女の子だ。
「かわええなぁ」
「もしかして、3年A組で二人が結婚一番乗りでしょうか?」
木乃香さんと刹那さんが、写真を見ながらそんなことを言ってくる。
確かに、他に結婚したって話は聞かないね。この前会った柿崎さんは、長年連れ添った彼氏といい加減結婚したいとか言っていたけど。
「超さんは火星開発事業を無事に終えて、並行世界の地球に戻りました。元気に未開の地球を開発していると、定期的にメールが届きますね」
「いや、並行世界の未来の地球からメールが届くって、リンネちゃんのスマホ本当にどうなってんの?」
明日菜さんが呆れたように言うが、多分これは私のスマホの機能じゃなくて、超さんが何かやっているんだと思うよ……。
「葉加瀬さんは麻帆良大の大学院に進みましたが、ゆくゆくは『ねこねこテクノロジー』から独立して、麻帆良のフォトン研究所の研究員になるそうです。最近は、フォトンを魔力に変換する研究をしていると言っていましたね」
私は別に、自分のところで技術を独占するつもりはない。なので、独立して技術を拡散してくれる人は大歓迎である。
面白い新規事業とか出てきたら楽しいのだが、まだその段階にはないかな?
「亜子さんは、いずれ発足する『ねこねこテクノロジー』の医療部門に従事してもらう予定です。今は、麻帆良大の医学部で医学生をしていますね。来年度からは五年生です。麻帆良の魔法病院で臨床実習ですね」
「はー、亜子、本当にお医者さんになるのね。出世頭じゃん」
一番の出世頭のハルナさんが、感心したように言う。
医学部は六年制なのでまだ医者にはなっていないが、彼女が医学部を卒業した後は、オラクル船団のフォトン医療技術を地球に伝える役割を負ってもらう。研修医を経験するかは、応相談だね。
そして、最後に私の今後について話す。
「『ねこねこテクノロジー』を通じて、新技術を人々に伝えていく仕事に従事します。もちろん、お金も儲けますけどね」
そう、事業を通じて別宇宙の技術を人類に伝えることが、『ねこねこテクノロジー』の社是だ。
来たる寒冷化と温暖化、そして、『UQ HOLDER!』の最終話で示唆されていた二〇〇年後のイエローストーン破局噴火に対応できるだけの力を人類に付けさせることが目的だ。
そのうち人類は、ネギくんの宇宙開発事業で地球を飛び出すだろう。それでも、地球は人類の故郷であり、守っていかねばならない星だ。
私は未来を知る不死者の一人として、できることはするつもりだ。
「出世頭で言うと、リンネちゃんが飛びっきりよね」
「天下のジャンプ作家のハルナさんには言われたくないですが」
「世間への影響力は段違いじゃん! 偉人じゃん!」
お金を稼いだ人が偉いとはならないが、世界を変える偉業をなしたと言えば確かに私は偉人と言えるかもね。
「あはは、百年後にはリンネちゃんの伝記が発売されていたりして」
明日菜さんが笑って言うが、ちょっとそれ、本気でありそうだぞ。
「ちなみに、魔法世界ではネギ君の伝記というか、産まれから父親を取り戻すまでの物語が売られてるで。ミリオンセラーや」
木乃香さんがそう言うと、皆の視線がネギくんに集まる。なるほど、この世界における『魔法先生ネギま!』的な本が発売したのか。
すると、ネギくんは恥ずかしそうに頬を掻きながら言った。
「軽い気持ちで許可を出したら、思ったよりも売れてしまいまして……」
はー、私は自分の伝記が発売されてもなんとも思わないが、下手に名前が売れてから大きな失敗をすると、大バッシングを受けそうでちょっと気が気じゃないぞ。
今後何百年、何千年と生きるのに、何も失敗せずに生きるとか不可能だろうし。
「しかし、こうなると『白き翼』だけでなく、3年A組全体の同窓会もいずれやりたいでござるな」
本をネタにネギくんを皆でいじっていると、ふと、そんな言葉を楓さんが漏らした。
「えー、魔法世界のお妃様とかいるのに、できるアルか?」
古さんが、そんなことを言うが、ネギくんが乗り気になる。
「いいですね! 距離の問題はリンネさんの『ドコデモゲート』がありますし、事前に予定を合わせれば、いけますよ!」
「百年後かつ並行世界在住の超さんとか、どうするです?」
夕映さんが突っ込みを入れるが、そこは私がメールするから問題ない。
「では、今年の夏にでも開くといたしましょうか。私の方から各方面に連絡は入れておきます」
あやかさんがそう言って、同窓会の開催が決定した。
3年A組か。生まれ変わって初めからやり直した学生生活だが、やはり一番印象に残ったのはあの中学生活だった。
クラスメートはいずれも濃い面々で、彼女達と過ごす日々はまさしく私の青春だった……とかいうのは、ちょっと歳を取り過ぎたかな?
私達は、かつての日々に思いを馳せ、これからの未来を祝福し合った。
かつては少女だった者達が大人になり、新たな道を進み始めた。道半ばで挫折する人もいるだろう。だが、私と道が交わる限り、私は仲間として手を差し伸べるつもりだ。
だから、私が挫折したときは、どうか手を差し伸べてほしい。
「いや、リンネの挫折って相当でかそうだから、関わり合いになりたくねえ」
モノローグ調に語った私の台詞にちう様がそんな突っ込みを入れて、周囲が笑いに包まれる。
だが、笑いが収まった瞬間に、ネギくんが言う。
「困ったときは、僕に相談してください。僕は皆さんの先生なんですから」
おっ、言ったな。でも、私も負けていないぞ。
「私だって、ネギま部の元部長ですからね。皆さん、頼りにしていいですよ」
「頼りにするけど、『白き翼』をネギま部って言うの、いい加減止めよ? リンネちゃん」
明日菜さんのそんな言葉に、再び場は笑いに包まれた。
こうして一つの物語は終わりを告げた。しかし、人生はまだまだ終わらない。
私達は新たな物語に胸を躍らせながら、祝福された未来へと進んでいく。
<完>
※『プレイしていたゲームの能力で転生するやつ』は以上で完結です。
あとがきは2022年5月6日の活動報告に掲載しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。