前世の記憶を思い出したホビーアニメ主人公が、両想いだった幼馴染ヒロインを優勝させるために全力を尽くす話・・・の短編

※注:短編なのでプロローグ的なサムシングになっております

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大体タイトル通りの実験短編です・・・って、こういうジャンルの他小説ってあるんですかね汗


ホビーアニメの世界に転生したけど、ボクは幼馴染ヒロインを空気にしない

 

 

 

 

 「アクト・ビーイング・ドライブ」というゲームがあった。

 内容的には、アクション系のソシャゲだ。雑に言うと、ガチャを引いて出したカードでアクションを拡張していくゲーム。

 

 ……説明がすごいざっくりしてる、というか特徴があまり感じられない説明になっちゃったきがする。でも仕方ない、作品の方向性が「悪い意味で」何でもありすぎるのだ。

 アイドルあり、モンスターあり、ヒーローあり、魔法少女あり、コラボキャラあり、芸能人あり、Vチューバ―あり動画配信者あり歌い手あり……、端的に言うと迷走していた。

 

 ソーシャルゲーム過渡期に生まれたこの作品、察しの通りかはわからないけどサービス開始からあっという間に廃れた。記憶に残るレベルで何かやらかしていたらまだマシだったかもしれないレベルで、文字通り記憶に残らないタイプのソーシャルゲームだった。…………なんというか、アレ、近所の定食屋にいったらなんでもメニューがありすぎるせいで、その定食屋の特徴がいまいち何なのか思い出せない的なやつ。定食しか印象に残らない感じ。アレと同じで、これもカードとソシャゲとアクションくらいしか思い出せない感じだった。

 

 もっともゲームの出来に反して、宣伝用のテレビアニメは出来が良かった。平日夕方午後五時半放映という、なんとも追いやられた感のある時間帯のアニメだったにも拘らず、アニメ自体の出来は良く、評判も良かったのだ…………、大きなお友達に。

 これも察してるかもしれないけど、登場する女の子たちは可愛く、またちょいエロ入れて視聴者を釣ろうとしていたのが上手いこと年上のファン(婉曲表現)にヒットしたらしい。心が湧き、本が薄くなったのだった。

 

 僕自身はそういうちょいアレな目的も少しはあったけど(オイ)、純粋に夕方放映のホビーアニメというのが久々に感じられて、懐かしい気持ちになりながら見てた。月刊少年雑誌とかにも特集が組まれたり漫画連載もされたりして、大学生ながら妙なデジャブみたいなものを覚えつつ、漫画単行本を買ったりしてあげていた(※なお全一巻)。

 

 そして何というか、気が付いたらこの作品のアニメ世界に転生していた。

 しかも主人公、主人公だ。

 

 原作ゲーム世界観だとソーシャルじゃなくてVRなんだかARなんだかって設定らしいこの世界、純粋にプレイを楽しんでみたいと思ったりした。でも自分が主人公だと気づいた瞬間に、そんなわくわくは雲散霧消。

 もしかしなくても世界の危機に立ち向かう――――身の危険と隣り合わせの運命に翻弄される。その事実にさらされ、怯えるより他はなかった。

 あまりのプレッシャーというか衝撃に、僕は早々打ちのめされた。だってゲームと違い、その世界の命運をかける戦いでは命を落とす可能性もあるのだ。劇中ではしっかり血を流してたし、時々部位欠損とかもしてたから、あんなもの「痛ェ!」で済ませられるわけがない。アニメとかだとその一言で済ませてたけど、別に僕に痛覚耐性とか、そういうのがあるわけじゃない。

 

 痛いものは痛い。

 泣くときは泣く。

 そしてたぶん、死ぬときは死ぬ。

 

 中学校の夏休み間近になった時点でそんな前世の事実と今の記憶とを思い出した結果、怯えに怯えて僕は引きこもりになった。定期試験明け早々に一週間、何をこのタイミングでと両親も弟も頭をかしげていた無理なものは無理! だってそれこそあと半年もなしに、命の奪い合いをしなくちゃいけなくなるのだ、何が悲しくてこんな状況に追い込まれてるんだ僕は。

 

 情けないと罵ってくれていい。そもそも主人公の器とかじゃないのだ。あんな、よくありがちな宣伝ホビーに夢中で熱血で他の事が見えずバトルバカみたいな、元気いっぱいタイプじゃない。

 どっちかというと超絶インドア人間で、参謀タイプとか言えれば聞こえはいいが、よくあるモブキャラみたいな属性なのだ僕自身。

 

 そしてそんな風に恐怖心から引きこもっていると、いわゆる幼馴染が心配して見舞いに来てくれた。でもその程度で僕の心が動くはずもない、いくら小さい頃からの大事な友達でも命の危険を省みれば、慰められようもないし事情だって話せない。当然なしのつぶて、暖簾に腕押し、やってくるだけ意味がない―――――。

 

 

 

 ――――と思っていたのだけれど。

 

 

 

「大丈夫? 元気してる? ひーくん」

「あ、う、うん……」

 

 少し長めの茶色系ボブカットに、ちょっと気の強そうなお目目。顔立ちは可愛いタイプで、子犬とかを思い起こす。身長は低い方だけど、ホビーアニメにありがちな年齢不相応トランジスタグラマーっぽい体型にすらっとした運動部らしい脚。

 そして何より、僕、というか主人公を心配そうに見つめるその表情――――。

 

 

 

 現実として現れた幼馴染ヒロインがあまりに可愛すぎて、僕は即堕ちしたのだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 俗に言う「エアヒロイン」という言葉をご存じだろうか。

 空気ヒロインとかメインヒロイン(笑)とか総じて名前の通り。メインヒロイン級だったりしたキャラクターがその場その場で大した扱われ方をしなかったり、あるいは作者や読者が忘れ去ったり、あるいは物語冒頭から登場していたのに気が付いたらサブのサブまで吹っ飛ばされていたような、そんな彼女たちのことだ。

 

 まぁこういうのは割とよくある。彼女とかの立ち位置が日常の象徴だったりすると特にそうだし、例えば恋愛主題のタイトルじゃない作品とかだとよく発生? しがちだ。

 例えばカードゲームとかなら、いかに主人公がゲームを上手く回せるかに描写が注力される。必然的にヒロインのイベントも、製作者側がよっぽど気を遣わない限り置いてきぼりになったりする。あるいはヒロインも主人公組の一人に据えてというパターンもあるが、総じて初期に見られた恋愛フラグ的なものは、さっぱり無かったことになっているか、あるいは忘れ去られているか。

 もっと特殊なのだと幼馴染ヒロインとして登場したのに、なんら恋愛フラグもなく、気が付いたら主人公チームの一人と付き合っていたりとか。もっと特殊なのだとライバルというか、そういうのと主人公との間を行ったり来たりして、最終的にライバルの嫁になって子供まで授かっていたり(ちなみに主人公は相棒的なモンスターみたいなのと一緒にいるだけ)。

 

 突飛なのだとメインヒロイン(ラスボス)とかあるけど、こういうのは例外として扱っていいだろう。……まぁヨヨは許さないけど(残念でもなく当然)。

 

 で、多分に漏れず僕の幼馴染「桜沢ひろみ」もそれに該当した。

 俗に言う「幼馴染は負けフラグ」というやつだ。

 

 アニメとかが大量に作られた歴史ある現代、幼馴染の異性で主人公に好意を寄せているヒロインでも、最終的に結ばれない確率が高すぎる傾向が出てきている。

 これだけならまだいいかもしれないけど、この世界はホビーアニメの世界。その扱いはなおのこと軽い。 

 

 彼女もアクトビング(※タイトルの略)を当然プレイしているのだけど、初期のころから実力は周囲より低く主人公たちの環境についていけない。学校を休んで敵組織とのバトルに巻き込まれた主人公に勉強を教えたりといったシーンはちょこちょこ散見されるものの、アニメの最終クール(※涙の打ち切り3クール目)に至ってはほぼOPのみにしか出番がない。名実ともに空気ヒロインと化してしまうのだ。存在はしているものの、ほとんど主人公の話題にすら出て来なくなる。

 ………‥これでもまだエアヒロインの中ではマシな方というから業界の闇が深いと思うのだけど、それはともかく。

 

 アニメで見てた当時、僕自身は全然彼女を気にも留めていなかった。というかこう、敵の女幹部(大学生くらいのお姉さんキャラ)の方が、年が近かったりサービスシーンがそこそこだったのもあって好きだったくらいだ。主人公とくっついてくれればいいなーくらいには思っていたけど、あくまでそれは視聴者目線の話。

 大前提として、おそらく大学生の僕にとってという目線での話だ。

 

 中学生の身体になった僕は、何の因果か彼女に一目惚れしてしまった。……いや、あの、ロリコンとか言わないでくださいマジで(真顔)。

 

 言い訳をするなら僕自身、それまで主人公が歩んできた思い出とか、そういうのは全部持っている。全然勉強してないでアクトビングとかキャンプしてるなコイツとか思いはするけど、その記憶の端々で彼自身、ひろみの姿を目で追っていた。

 たぶん好意……、にまで発展するような感情ではなかったんだろうけれども。それでも好きになる下地みたいなのはあったのだろう。もっとも本編じゃそんな暇すらない魔境に放り込まれていたので、育まれるものも育まれなかったんだろう。

 なんだろう、つまり僕の体感で言えば「憑依」じゃなく「転生」に近い形なのだ。あまりに人格が急変してしまったのだけれど、それでも以前の自分の行動に違和感は抱けない。大学生の僕の記憶を思い出して、精神的に成長してしまったという感じだろうか。……結果、アニメの主人公も意外とビビったり、描写されてないだけで泣いたりしていたのかもしれないと再発見はあるけど、それはともかく。

 転生した結果、それまで積もり積もっていたひろみへの幼い好意が、大学生くらいの僕の認識を踏まえて、明確な好意として昇華した……と言いたい。

 

「どうしたの? ひーくん」

「なんでもない、ひろみ」

 

 そんな言い訳めいたことを、目の前にいる幼馴染をチラ見しながら答える僕だった。

 

 一目惚れという一大イベントを起こした結果、見事に引きこもり生活を脱出した僕は、そのまま翌日一気に返却されたテスト結果と補修がわりに追加される宿題に頭を悩ませた。そして主人公同様、幼馴染のひろみに泣きついた。

 

「ひろみ~、課題が、課題が多いんだぁ~!」

「しょうがないなぁ、ひーくんは」

 

 どこぞの青い鶴〇師匠めいた表情を浮かべる四次元ポケットからなんでも出してくれそうなロボットめいたことを言ってくれる幼馴染ちゃんは、異様に頼もしかった。

 結果、こうして一緒に勉強をしている流れになっている。

 ひろみはひろみで「アクトビングよりお勉強なんて、ひーくん病気!?」と結構失礼なことを聞いてきたりしたけど、そのまま額をごっつんこして熱を測ってくれたりしてくれてもう何も言うことはありません(白旗)。恋の病には堕ちてるんだよなぁ……(悟り)。

 ……よく転生もので「大人だから子供の頃のテストなんて朝飯前だゼ!」みたいな演出があるけど、いや流石に中学くらいになってくるとそうも言ってられない。計算方式がわかっても解くのに時間がかかったり、逆に微妙に忘れてて変に覚え間違えてたり、そういうのの修正作業の方がある意味大変だ。

 

 子供の頭ならそういう作業も簡単に出来そうに思うのだけど、でも難しい……というより「アクトビングに関係しない事柄は興味がないから覚えが悪い」みたいな縛りを感じる。

 製作者側の設定か何かなんだろうか、ありがちすぎてちょっと疑ってしまう。

 

 まぁそれはそうとして、そこは問題ない。なんだかんだひろみは真面目なので、一緒に勉強をすれば最初の一週間くらいで全ての課題が終わりそうな勢いだ。

 問題はそこじゃない。

 

 問題は…………、しいて言えばこの中学生の身体かな。

 

「いい? ここは『It is ~』って表現することで、その後に続くものがどういうニュアンスなのかっていうのを――――」

 

 前のめりに、楽しそうにこちらに教えてくる幼馴染を直視できない。

 いや、顔もそれはもうきらっきらしてスッゴイ楽しそうなのもあるんだけど、夏場だからかキャミソール一枚とかいう、武装されてるおもち(隠喩)のサイズを考えれば頭テロ行為かっていうようなくらいの大攻勢だった。目をそらしたいものの、思わず吸い寄せられてしまう視線が恨めしい。をのれ中学生の性欲め!(責任転嫁)

 

「どうしたの? ひーくん」

「な、なんでもないってば……、て腕抱き付くなよ!?」

「ふふっ、変なひーくん」

 

 ふふじゃないんだよ襲っちゃったらどうなると思ってるんですかねぇこの女子中学生、しかもその含みのある微笑み確信犯かよマジ怖、でも好き(脊椎反射)。

 というかその、感触におどおどしてしまう僕から腕を離して照れてるんじゃありませんカワイイ(語彙力)。お色気作戦は確信犯でも自爆特攻じゃないか、そういうの心臓に悪いし抑え効かなくなるから止めるんだそんなことしちゃいけない、これそういうゾーニング指定入ってない作品だから(メタ)。

 

「全く、そういうの他の奴にやるなよ? 絶対だかんな!」

「大丈夫だよ、ひーくんだけだから……」

 

 それ本来の主人公なら意味がわからない発言だから安心しきっての本音なんでしょうけど生憎こちとらそれどころじゃねぇんですよオイオイオイオイオイ出てこい責任者ァ!(錯乱)

 一気に顔が熱くなる。と、そんなこっちの様子が相手にも伝播したのか、向こうも赤面である。アニメ表現なら湯気が出そうな様子だし、実際ひろみの頭から湯気が出てるからここはアニメの世界なのだろうという納得があって変な気分になる。

 

「つ、続きやるぞ」

「うん……」

 

 変な空気をリセットしながら、実際はまだ変な空気が続きながら、勉強を続ける僕とひろみ。……教わりながらふと思ったんですけど、もうこれ付き合っちゃっていいんじゃね? という。ほら、公式サイト公認でひろみの主人公への好意はバラされてる訳だし(酷い)、両想いとなってしまってなんだか両親も公認みたいな空気出してるしさぁ……。というかひろみもひろみで、思い出の中の主人公ってば全然意識してなかったけど明確にこっち堕とそうとして来てるし。

 既に堕ちてるんだよなぁ……(達観)。

 

「うーん……」

 

 だが、待てよと頭の中の理性的な部分が待ったをかける。仮にこのタイミングで付き合いだすと何が起こるか。アクトビングのアニメは、第一話からして異世界からの侵略者とか、アクトビングヤクザ(誤字にあらず)が出てきたりとか、魔法少女と主人公の運命的(ひろみにとっては悲劇的)な出会いがあったりとか、そういうカオスに叩き込まれる訳で。

 そんな中でひろみが最初から超重要キャラとして出てると、一体何が起こるか……。

 

 

 

問:ホビーアニメにおいてホビーの実力が伴っていないキャラクターはどうなるか。

解:命 の 保 証 は で き な い (無慈悲)。

 

 

 

「ジーザス!」

「わっ! ど、どうしたのひーくん」

「おっ、おおお、おぅまぃ、大丈夫ですおーけぃおーけぃ」

 

 ひろみが可愛かったからとか適当に言い訳して思考する時間を確保する。フリーズしたひろみが徐々に徐々に真っ赤になって手をパタパタふって顔を下に向けてしばらく思考停止している姿を視界の端に入れつつ(カワイイ)、僕も深呼吸しながら考えを深め……、ふかめ……、ふか……、あっミントっぽいシャンプーのにおい(思考停止)。

 

 ダメだぞ僕、明らかに中学生の性欲に振り回されてどうしようもなくなっている……!

 そのせいもあってか、僕の思考は思わず口からもれていた。

 

「仮に大事な相手を、連れて行くと危ない所があったとして、どうしたらいいか……」

「?」

「あっ、いやこっちの話で……」

 

 ごまかす僕に、しかしひろみはじっとこっちを見て、少し目をつむり思案する。人差し指立てて口元当てるのよくあるポーズなんだけどカワイイ(語彙力)。

 

「んー、なんとなくだけど、ひーくんは置いてっちゃいそうだよね」

「な、なんで?」

「昔さ? わたし虐められてた時、ひーくんがそのいじめてた子たち全員とケンカしたじゃん。あの時も、何も言わないでいつの間にかひーくんが色々やっちゃってたなーって」

「あー、そんなこともあったっけなぁ……」

 

 保育園児くらいの話で、そのあたりの経緯はアニメよりもむしろコミカライズの方が詳しく描かれていた。小さい頃の夢で、ひろみはアイドルになりたかったのだ。でもその夢を馬鹿にされて、おまけに体操服とかスカートとかをハサミで切られた。

 流石に常軌を逸してると、当時の僕は本気で怒った。ほかならぬひろみが酷い目に遭ったってのもあるし、やり口が陰湿すぎてこんなの許したら一生ひろみの人生に辛い思いを長引かせそうだと。

 

 そう、陰湿だったのだ。相手があまりにも。だから下手にひろみを混ぜて戦うと、ひろみが被害を被るんじゃないかって思って……、その後小学校三年生くらいまで、相手の主犯格とはケンカする仲が続いた。

 今? それは……、いや進学先の中学別だったし?(すっとぼけ)

 

 照れたように微笑むひろみは、でも少し寂しそうな眼をしていた。

 

「あの時のひーくん、すごくボロボロで、心配して……。恰好良かったけど、でも怖かった」

「怖かった?」

「ひーくん、死んじゃうんじゃないかなって」

「いや流石にそれは……、それは……」

「そこ黙っちゃいけないところだと思うけど、何かあったの?」

「いや、まぁ、大した話じゃないから、ウン、ダイジョウブダイジョブ、ホラボクモアイツモゴタイマンゾクダシ」

「ほ、本当に何かあったの? へ? 私知らないんだけど……」

 

 いや、世の中にはまぁ知らなくても良い事実もあるわけで、決して法的に問題があることをしたわけでもないはずだから別に……。

 でもそうか、確かにそう言われると、僕、というか主人公にはそういう傾向があるらしい。

 

 

 

 大事な相手を傷つけさせないために遠ざけておく…………。

 

 

 

 ふと本編中の、ひろみが出て来なくなる本編後半の主人公を思い出した。

 魔法少女を弟子に取り、アクトビングの実力をあれほどあげられる主人公が、何故ひろみを巻き込まないのかに思いをはせた。

 

「…………そういうことか、なんっていうか不器用だなぁ」

「ひーくん?」

「ん、なんでもない。まぁ……」

 

 好意を自覚してなくても、ひろみは大事な幼馴染で。

 だから無意識に遠ざけて戦いに向かった、ということなのだろう。

 

 でも――――――、果たしてそれは、ひろみにとって幸福だったのだろうか。

 

「……もしまた僕がひろみ置いて何かやったら、どう思―――」「嫌だよ」

 

 即答、食い気味に。

 ひろみの表情が、曇る。

 

「私、いろいろがんばってるよ? 勉強だって、運動だって、料理だってお洗濯だって。学校でも、委員長だし。アクトビングはまだまだだけど……」

「………‥そういえば、アイドルはもういいのか?」

「んん……、ひーくんが見てくれるなら、それでいいかなって」

 

 …………思ったよりこの娘、激重感情なんですけどォ?

 へ、何? ある時を境にアイドルどうこう言わなくなったの、主人公だけのアイドルでいれればそれでいい的な発想から来ちゃったの? なんでそんなに覚悟完了してるんですこの娘!?(鈍感)

 一瞬思考が飛んでしまった。そしてそんな僕の手を、ひろみが両手で包む。

 

「だから、もっと頼って? ひーくんの傍で、ひーくんと『人』の字みたいに支え合いたいから」

「…………照れる」

「わ、私だってちょっと照れちゃってるけど、でも、本心ですから」

 

 えへん、と胸を張るひろみ……って手を掴んだまま胸張るのやめなさいちょっとおっぱいにお手々ぶつかっちゃったじゃないフワフワしてやがるぜ落ち着け僕の思春期!(婉曲表現)

 こんな真面目な時くらい思考の脱線をするんじゃないと思いながら、でも、僕とひろみはお互い笑い合った。

 

 何も通じてないけど、何かがそれでも繋がった――――――ような気がした。

 

「そうだな……、それが、ひろみの幸せだって言うんなら、僕も本気にならないとな」

「? どうしたの?」

 

 僕はそっと、ひろみの肩を押して優しく倒す。

 出来るだけ紳士的に、そしてあふれ出る感情を抑えながら。

 座布団の上に背中を置く形で、きょとんとしたひろみの表情。

 

 顔の距離はもはや数センチもなく、間近で琥珀色した綺麗な目が見える。

 

 どっど、どっど、と。こんな時までアニメみたいな表現で、ひろみの鼓動音が伝わってくる。

 

「ひ、ひーくん……?」

 

 これは単に僕のエゴなんだろう。間違いなくこのせいで、ひろみに安息は訪れなくなってしまうかもしれない。

 

 それでも――――でも考えてみて欲しい。

 

 こんな健気で、優しくて、大事な子が、最終的に影も形もないくらい描写されず、しまいには劇中でポッと出てきたくらいの女の子相手に、これまでの人生の「好き」を全部盗られてしまうのだ。

 そんな涙は、流させたくない。

 いや、流させない。

 

 好意を自覚してなければ、それは言い訳として成り立つけれど。自覚してしまった以上、今の僕にその選択肢をとることは出来ない。

 

 だって――――。

 

 

 

「――――愛してる、ひろみ」

 

 

 

 それこそきっと記憶の底にある、保育園での初対面から。僕は、この主人公は、桜沢ひろみのことが大好きだったのだろうから。

 

 

 その一言で、わふ、と声を上げて人形みたいに固まったひろみ。脳がオーバーヒートしたようで、でも気絶まではしていないのか、その手が僕の背中に伸びる。

 

「ふつ、つかものですが、その、はい、えーと、まぁ……」

 

 言葉に詰まった政治家みたいなこと言い出すの可愛い(語彙)。

 そんなことを思いながら、僕もそれに応えて抱きしめ返した。

 

 さて。大変なのはこれからだ。

 ソシャゲ宣伝キャラクターほどの補正が見込まれないだろうひろみを、現在の僕の実力でどこまでアクトビング上達させられるか。

 

 ホビーアニメの世界に転生したけど、僕は幼馴染ヒロインを空気にしない、と。

 誓いはしたものの、前途は多難だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、そのですね、ひーくんの、その第三の足といいますかですね、すっごい熱くて硬いのがですね、」

「やめて、それ以上言ったら自制できないかもしれない」

「いいよ?」

「……はい?」

 

 

 

 いや当然、自制しましたけどね?

 ここは夕方五時半くらいから放送の、ホビーアニメの世界です(迫真)。

 

 

 

 

 




ネタ的に続けられるか不明なので短編予定です・・・!

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