楽しい楽しい料理人修行生活   作:食戟のソーマはいいぞぉ

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疲れからか惰眠をむさぼっていました。


第11話

『ようこそ、我が遠月リゾートへ』

 

坊主頭の男の声をマイクが拾う。

その声は会場のものを静まらせるのには十分な威厳のあるものだった。

 

『今日集まってくれた卒業生たちは全員が自分の(みせ)を持つオーナー・シェフだ。合宿の6日間、君らのことを自分たちの店の従業員のように扱わせてもらう。……意味わかるか?俺達が満足出来ない仕事をするやつは━━』

 

 

 

━━退学(クビ)ってことだ

 

 

 

「……ヒエー」

 

たまらずこぼれた言葉。かなりの小声で出た言葉なのに卒業生の何人かに目を向けられてしまった。……お口チャックのジェスチャーをしておこう。

あ、目をそらされた。許された。

 

『講師の裁量で一発退場も有り得ることは見ての通り、君らの武運を祈っている!それでは━━移動開始!』

 

さて、合図が出たなら行きますか……っと、

 

「皆の者さらば」

「んじゃね!」

「ああ」

「あ!夜は丸井の部屋でトランプ大会な!」

「こんな時まで僕の部屋に集まらなくていいだろう!?」

 

そんな会話を極星寮のみんなとしながら指定された会場に向かった。

 

 

「━━集まったな。79期生卒業の四宮だ。この課題では俺の指定する料理を作ってもらう。ルセットは行き渡ったか」

 

講師のメガネさんの言葉を耳にしながら配られたプリントに目を向ける。

 

【9種の野菜のテリーヌ】

色とりどりの野菜が綺麗で豪華な見た目の料理……だが、名前の通り9種類の野菜を使用。それぞれに違う適切な下処理、火入れが必要になってくる。1つの素材の主張を激しくしたり、逆に弱くするのは‪✕‬‪‪。味をまとめあげなくちゃいけない、と。

 

ま、レシピがあるならヨユーではあるか。

ただまあ……なんて言うか、用意された材料がな……。

基本は程度がいい。が、数個だけ痛み始めのものがある。これは……、

 

「俺のルセットの内、比較的簡単なやつを用意したんだが……もっと難しい方が良かったかな?」

 

手にしたプリントをヒラヒラしながら俺たち学生を煽ってくるメガネさんを思わず凝視してしまった。

……えりなちゃん以上に嫌いなタイプだな、コイツ。

 

「……!」

 

あ、気づかれた。

……やめよやめよ。とりあえずフツーにつくっとけば合格はできる試験だ。変にトラブルは起こさない。

いつも通り……楽しく料理しよう。

 

「……。それとこの課題は個人でやってもらう。1人1品仕上げ、調理中の情報交換、助言は禁止だ。食材は厨房後方の山から任意で選び使用してくれ。最後にひとつアドバイスしてやろう━━」

 

 

 

━━周りのヤツら全員敵だと思って取り組むのが賢明だぜ

 

 

 

「………」

 

……なるほど。そーいうタイプか。何となく、何となーく掴めてきたぞ。

嫌いなタイプ……だけども根っからじゃないな。

メガネさん……いや、クソメガネと呼ぼう。クソメガネを何となく理解出来た気がする。……ただそれでも嫌いだなぁ。

 

「制限時間は3時間、それでは……始めろ」

 

さ、動きましょうか。

とりあえず、まずは、

 

「……これでいっか」

 

カリフラワーから確保。

取り損ねたら終わりだからね。

さて、次はっと…、

 

「あ」

 

次に行こうとした時ある人物を目にし立ち止まる。俺はもうひとつカリフラワーをクソメガネの死角になる場所で手にし、こちらに向かってくるその人物にクソメガネから見えない角度で押し付けた。

 

「……!?」

「……ふぁいと、りょーこちゃん」

 

小声で本人には聞こえるように。

……一緒のグループだったとは。もしかしたら学校での授業受ける時のグループを元に分けられてるのかな?

ま、わからんこと考えてもしょうがないか。

 

「……とりま、ぼちぼち作ってくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったー」

 

やっと完成した。

9種類の野菜を各々で適切な違う下処理と火入れをするってことで、言ってしまえば9品の料理を作ってたに等しい調理。

おかげでいつもの授業とは違う面倒くささがあった。

久しぶりに肩がこる料理だったぜぃ。ただまあ、普段とは違う料理で意外と楽しいものだったな。

 

さてと、早速持っていきますか。

完成した皿を手にし、クソメガネの元へ。

……俺が一番乗りか。

 

「……速いな」

「そうですかね。自分の中じゃだいぶ遅い方なんですけど」

 

そう言いながらクソメガネの前に置く。

 

「ふん、まあいい。問題は味だ……」

 

言葉を吐きつつフォークを手に1口口の中へ。

直後見開かれた目。

 

「……っ。……合格だ」

「あ、どうも」

 

よぅし、終わり終わり。

……てか、試験終わったら何すればいいんだろ。自由時間?それなら何してるかなー。……久しぶりにカバディの練習でも「ところで」……。

 

「オマエ、試験中何か余計なことしてなかったか?」

「……」

 

会場を出ようとしていたところに背中越しにかかった声。

顔だけ振り返り声を掛けてきた男、クソメガネに視線を送る。

 

「余計なこと……例えば?」

「……心当たりがあるんじゃないか?」

「俺は例えばと聞いたんですけど?答えになってないんじゃないです?」

「………」

 

メガネ越しに睨みをきかせてくる。

俺はそれを一瞥し前に向き直った。

 

「心当たりはないんでもう行きますねー。お疲れ様でしたー」

 

背中に視線を感じながら俺は会場を出た。

さて、何しようかなー。




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