前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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完成! レオパルドン!

 

「っと、やっぱり下水道か。」

 

 

地上で頑張ってくれている先代たちにヴィランたちの相手を任せ、単身マンホールの中へ。

 

やはりマーベル世界というべきか、この世界のニューヨークの地下世界も非常に複雑になっててまさに迷宮と言ってもおかしくない、つまり悪党が隠れるには最適の場所になってるってことだ。それに汚水とかの匂いが非常にきつくて、病気とかの可能性を無にできる特殊なスーツがあったとしても飛び込むにはかなりの勇気が必要な場所だ。つまり発覚の可能性はとっても低いってわけ。

 

まぁ飛び込むんですけど。

 

 

「この匂い、っていうか感覚。この期間でどれだけ手早く進めてるんだよって感じ。」

 

 

下水道の匂いではなく、感じるのは奴らの雰囲気。天井に張り付きながら進んでいくと、案の定彼女の視界に引っかかるものが。

 

自身の世界で嫌というほど戦い続けた鉄十字団、その関係者が残したと思われる痕跡である。

 

この世界のピーター・パーカーが並行世界の存在を連れてきてしまう事件からそこまで時間は経過していない、しかしこの痕跡が彼女の思う通りのものであれば、鉄十字団はその短い期間でこの地下に前哨基地を建設し、何らかの悪事を進めていたことになる。

 

 

「わ、下水道には似合わないお部屋発見。」

 

 

クモの能力で天井を這いまわりながら発見したのは、使われなくなった過去の下水道に建設された鉄十字団のラボだ。莫大な電気エネルギーを操る力を持つ彼女だからこそ解るのだが、彼女の行く手を阻む壁の向こうには非常に大きなエネルギーが揺れ動いている。下水道なんかに必要がない装置がそこにあるということだろう。

 

 

「しかも防備は完璧って、わけか。わざわざ耐電性の素材なんか使っちゃって。」

 

 

復活したモンスター教授の研究所や基地をいくつも破壊してきた彼女、だが相手もただ壊されるだけでは終わってくれない。超人の力をもってしても破壊できない材質に、電気を操る彼女に内部回路を破壊されないように耐電コーティングさえされている。内部に忍び込むために必要な扉は完全に閉ざされていた。

 

スパイダーマンである彼女であれば排気口などを通って侵入することも可能であるが、やっぱりそっちも対策済み。触れただけで溶けちゃいそうなレーザーが何重にも照射されてて入れそうにない。

 

 

「普通ならこんなの短時間じゃ作れないだろうけど……、元の世界から持ってきたのかね。」

 

 

モンスター教授はマシーンベムたちを試験管に入るようなサイズまで縮小させる技術を保有している、それこそマーベルの世界においてのピム粒子と同じような技術を。モンスター教授がピム粒子と似たようなものを使用しているのかはわからないが、生物を小さくすることができるのなら無機物を縮小することは簡単にできるだろう。

 

元の世界で建設したラボを持ってきて、この地下水道に建設してしまえば作業は終了だ。

 

 

「ま、でも~。今の私には無意味なんだよね、ナノマシンちゃ~ん。」

 

 

自身と同じ存在によって開かれたパーティ会場で手に入れた景品を起動する。自身のスーツの胸元にあるクモのボタンを押せば、自身のスーツの上からナノスーツが装着される。もちろん、“ピム粒子”付き。

 

 

「量子レベルまで小さくなれば扉なんてないのと一緒だもんね。」

 

 

手の平の腹に生成されたボタンを押せば、瞬時に彼女の体は縮小し量子の世界へ。そしてもう一度ボタンを押せば壁を通り抜けて大きさも元に戻るって寸法だ。量子の配列を合わせて壁を通り抜けるって技術もこの世界の私に勧められたけどさ、やっぱりそれよりはピム粒子使って見たいじゃん?

 

 

「というわけでおじゃましま~す。」

 

 

体を縮小化させ、合金製の扉を通り抜け、体を元の大きさに戻す。

 

言葉にすれば簡単な工程だが、実際にやってみればなんと面白いことか。できれば量子の世界をもっと堪能したいところだけれど、長居しても良いことはない。元の大きさに戻った後はすぐに敵基地内の捜索にかかる。

 

 

 

「……あぁ、なるほど。こりゃ面倒なことになりそうな予感。」

 

 

 

彼女の目の前に現れたのは、巨大なディスプレイ。

 

世界全体を表す地図と、今いるニューヨーク全域を表す地図。

 

片方には各国の主要な都市に赤い丸が描かれており、もう片方の地図にはこの都市の地下を駆け巡る下水道や地下鉄のラインが描かれ、その各所に同じような赤い丸が記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「おい赤いの! お前は弱そうだから隠れとけ! 俺様が全部相手してやる!」

 

「ヴェノム! 相手はあのサイみたいな奴って言われてただろ!」

 

「うるさい! たくさん倒した方が報酬も上がる! そしたらチョコがもっと増える! 俺たちは最強だ!」

 

 

“スパイダーな私”に後を任されたのはいいものの、喧嘩を始めてしまう最強コンビ。必要以上のリスクは負わなくていいと説得するエディに、リターンを多く得るために動こうとするヴェノム。まぁ早い話いつもの二人だ。

 

それを横目で観察する俺ちゃんも俺ちゃんで忙しい。右手の天使な俺ちゃんが『一緒に戦って敵を倒すのよ!』って言ってくるし、左手の悪魔な俺ちゃんが『全員嬲り殺して独り占めだ!』とも言ってくる。ちょっと下にいる真ん中の俺ちゃんのむ【以下内容が卑猥だったため規制されました。】なわけじゃん? これはどんな賢者だって決められない問題だぜ。

 

 

「ライノ! こいつら片付けてさっさと白いの追うぞ!」

 

「うるさい! オレに命令するな!」

 

 

まぁそんなふざけていて勝てる相手ではない。

 

ライノの突進がデッドプールに突き刺さり、肉片が飛び散る。そして真っ赤な汚いのをひき殺してライノが向かうのは最強の二人(現在喧嘩中)。気づいたころにはもう避けられない距離まで近づかれていた。

 

 

「ヴェノム!」

 

「ッ!」

 

 

本来なら互角の力量差が、奇襲によって崩れる。その角を胸で受けてしまったヴェノムは空へと持ち上げられ。後ろへと吹き飛ばされる。……そして、そこで待ち受けるのは。

 

 

「いらっしゃ~い、だな。ヴェノム。」

 

 

瞬間、爆発する衝撃波。ライノと連携が取れないことを把握していたショッカーは予めライノが放り投げそうな場所へと移動。そして自慢の衝撃波発生装置を起動しておいたのである。

 

そして、このショッカーは。目の前のヴェノムとの面識はないものの、自身の世界のヴェノムの弱点は知っていた。すなわち、火と音。そして、音とは、振動。そしてショッカーの操る衝撃波発生装置は、複数の振動を攻撃として転化させるもの。つまり自由自在に衝撃波を発生させることができるショッカーにとって、ヴェノムの弱点を突くことは非常に簡単ということだ。

 

 

 

「GYARYEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!」

 

 

 

およそ人間が出すとは思えないような絶叫と共に、ヴェノムが耳を塞いでその音から逃げようとする。それと同時にヴェノムの内部にいたエディの体が外へ、ヴェノム自身が自身の体を守る為にエディの体内に戻っていったのである。

 

 

「お、おいヴェノム! ちょっと!」

 

「チッ、やっぱ中身は男か。まぁさっさと殺すに限……、ッ!」

 

 

女のスパイダーマンもいるなら女のヴェノムもいるのかと少し期待していたらしいショッカーだったが、残念ながら予想は外れ中身はさえないおじさん。かといって動きを止めてしまうわけではなく、自身の安全を維持するためにすぐに相手の処理へと動き始めた。その両手にエネルギーが集中し始める。

 

が、それを中断させる銃弾の雨。ライノに肉団子にされたあとすぐに復活したデッドプールが放ったものだ。ショッカーの着る鎧のせいで対したダメージにはならなかったが、その行動を止めさせるのには十分だった。

 

 

「ほい、追加のロケラン~!」

 

「ヴェノム!」

 

 

赤タイツが拾ったロケランの引き金を引いたのと同時に、エディの声に反応して弾かれたように動き出すヴェノム。着弾する寸前に衝撃波によるシールドをショッカーが展開したためダメージにはならなかったが、確かに彼らが逃げ延びる時間は作れた。デップー、お手柄ですね。

 

 

「ありがとう、あ~。」

 

「いいってことよ、俺ちゃんの名前はデッドプール。そっちはヴェノムでおk?」

 

「あぁ、大丈夫だ。ほらヴェノム、お礼しろよ。」

 

「……お前やるな。」

 

 

若干拗ね気味のヴェノム。まぁそれも仕方ない。カーネイジという自分よりも強い子供の撃滅に成功し、自分よりも強い奴がいなくなり最強になったお祝いに(実際は違う)バカンスしにきたら違う世界だ。しかも出会った奴の大半が自分よりも圧倒的に強かったり、明らかに自身に特効を持っていたりすれば拗ねちゃうのも仕方ない。

 

 

「よし、いいかヴェノム。依頼通り俺たちの相手はサイ野郎だ。ビリビリ野郎はこの兄ちゃんに任せて、俺たちは俺たちの仕事をする。終わったらチョコだぞ?」

 

「……りょーかい相棒。おいそこの赤いの。俺は優しいからお前にあいつを任せてやる。」

 

「はいはい、構いませんぜ。『ベビーシッターも大変だね、みんなもそう思うでしょ。』」

 

 

戦闘が、再開される。先ほどの突撃から方向転換し、もう一度ヴェノムに向かって真っすぐ突撃を敢行するライノに、それを真っ向から受け止めようと大きく手を広げて向かっていくヴェノム。対して先に厄介なヴェノムを倒してしまおうと動き出すショッカーに、それを邪魔しようとして銃火器を乱射するデッドプール。

 

ここに、ヴィラン対ヴィランの戦いが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、高度は我々の目線から60mへ。

 

 

「認めん! 認めんぞスパイダーマン! 鉄十字団は不滅なのだ!」

 

「そろそろ目的を吐いてもらおうかモンスター教授!」

 

 

そこには、可愛そうなくらいボコボコにされ地面に膝を付くモンスター教授と、ほぼ無傷といっていいレオパルドン。そしてまさに死屍累々というべきマシーンベムの残骸が転がっていた。

 

一応鉄十字団の皆様の名誉のために弁明すると、彼らは彼らなりに無茶苦茶頑張ったのだ。

 

再生マシーンベムたちは生みの親であるモンスター教授を守る為にその身を差し出したし、モンスター教授もレオパルドンに攻撃を仕掛けながら元の世界から持ってきた負のエネルギーやこの世界で回収したエネルギーを破壊されたマシーンベムにそそぐことで再生したりと、とても頑張って戦ったのである。

 

一度スパイダーマンに組織ごと破壊された経験から学び、マシーンベムたちの基礎能力は格段にアップ。モンスター教授自体の能力ももちろん向上しており、彼らが想定していたレオパルドンを容易に破壊できるレベルまでその力量を引き上げていたのである。

 

だが、

 

だが、

 

だが、

 

 

現実は非情である。

 

 

殴り掛かれば弾き返され、アームロケット。いわゆるロケットパンチで爆散。エネルギー光線を放射しても全く持って効かず、アークターンという頭部の角がブーメランとなって飛来し首チョンパ。数で押し切ろうとすれば、レオパルドンストリングスでクモ糸が射出。ひとまとめにされた後に多重ソードビッカーで爆散。

 

何をどう頑張っても勝てないのである。

 

だってレオパルドンだもん、シカタナイネ。

 

ちなみにニューヨーク市街に対する被害は少々道路が陥没した程度である。もう強すぎて巨大ロボが戦っているはずなのに被害が少なすぎる。もうなんか見ている人たちが鉄十字団に同情してしまうぐらいには可哀そう。

 

っと、そこに。通信が飛んでくる。

 

 

『先代! 聞こえてますか!』

 

「こちらスパイダーマン、感度良好だ。」

 

『今下水道で鉄十字団の秘密基地見つけたんですけど、こいつらまた地球を核の炎で焼き尽くそうとしてます! そこにいるモンスター教授のクローンが死んだ瞬間起動するみたいです!』

 

「何ッ!」

 

 

でも、やっぱりやってることは鉄十字団。

 

人間が生み出す負のエネルギーを活用することができる鉄十字団はどうやら、この星を死の星にすることで大量のエネルギーを蓄積。それを使って元の世界から本物のモンスター教授を呼び出して彼自身を強化。憎っくきスパイダーマンをレオパルドンごと破壊してしまおうという魂胆だったようだ。

 

その計画をうまいこと隠すために、クローンのモンスター教授が色々頑張ったり、他の世界からやって来たヴィランをお金で釣ったりしていたみたいですね。この世界のピーター・パーカーのところにライノやショッカーが現れたのも、鉄十字団の仕業のようです。

 

まぁこれは……、いけませんね。

 

 

『あ、でも今“超越者な私”がテコ入れで全部解除しちゃいました。』

 

『さすがにやり過ぎ。ということで……。』

 

 

 

『『やっちゃってください! スパイダーマン!』』

 

 

 

 

「よくやってくれた! ……この世界のスパイダーマンのみならず! すべての人を殺そうとしたその悪行! 絶対に許せん! 覚悟しろ鉄十字団!」

 

 

全力が、放たれる。

 

 

「コズミックパワー、フルチャージ!」

 

 

レオパルドンの全身を駆け巡っていたコズミックパワーが、一振りの剣に集約される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コズミック・ソードビッカー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

時間は少し巻き戻り、視点はピーター・パーカーたちへ。

 

 

「マックスは本当に、優しい人だった。……あぁなったのはウナギの水槽に落ちたからだ。」

 

「なるほどね。」

 

 

アメイジングな彼がそう言いながら過去を振り返る、ここまでの移動中に彼がアークリアクターを奪って逃走したことや、彼の性格などを聞き、最初はそんな人ではなかったと言葉を重ねる。

 

何かのきっかけで、堕ちるところまで堕ちてしまう。どの世界も、似たようなものだ。

 

 

「んん、また痛みだ。」

 

「大丈夫か?」

 

「腰痛だよ、これって。スイングしてるせいだと思う。」

 

 

と、話の途中で彼が腰痛を訴える。スイングしているせい、とも言っているがそれ以上に過去力を失った時にビルの屋上から落下した時の古傷が悪さしているのもあるだろう。だが“スパイダーマン”である彼は恥ずかしいのでそんなことは言わない。その古傷を悪化させた原因の方を言ってお茶を濁すのだ。

 

 

「わかる、僕も背中が痛むよ。」

 

「ほんと?」

 

「あぁ、……ボキッとやってやろうか?」

 

 

後ろから抱え込み、体を伸ばすことで腰の調子を整えようかと、アメイジングな彼が提案する。

 

 

「あぁ、いいね。」

 

「やる?」

 

「ありがたいよ。」

 

 

両手で先達の体を抱え、伸ばしてやる。何回か上へと飛ぶことで衝撃を与えればゴキ、と子気味いい音。

 

 

「ッ、いいね!」

 

「おしまい。」

 

「おぉ、効いた。だいぶ楽だ。すごい。」

 

 

思っていたよりも効いたらしく、声色を上げて嬉しそうにする彼。見た目からして、彼が戦い始めてから結構な年月が経っているのだろう。つまり腰痛はかなり大きな悩みだったに違いない。再発するかもしれないが、少しでもその悩みが消え去ったことは彼にとって大きいな出来事だったのだろう。

 

 

「……あぁ、最高だな。兄弟が欲しかった。ねぇ、君は体の中でクモの糸を作れるわけ?」

 

 

誰かと何かすること、しかもスパイダーマンの姿で。アメイジングな彼も、スパイダーマンな彼も、ヒーローと呼べるような人間は自分だけ。秘密を共有出来てその悩みも一緒となればもう兄弟のようなもの。彼の心の中には感じたことのない安心感があった。まぁそのせいで聞いていいのか悪いのかわからない糸についての質問がぽろっと出てしまったのだけれども。

 

 

「その話はあまりしたくないな。」

 

「いや誤解しないで。」

 

「僕を弄ってるんだろう?」

 

「いや弄ってるんじゃないよ、ただ、僕らはできないからどうなっってるんだろう、って興味があるんだよ。それだけ。」

 

 

自分だけ仲間外れだから弄られているのだろうと思う彼に、残りのウェブシューター組が誤解を晴らそうとする。今いる自由の女神像の上で周囲を警戒していたこの世界のピーターも会話に加わり、その胸にある単純な疑問を投げかける。

 

 

「ほんとすごいよ、プライバシーなら詮索しないけど。」

 

「いやそんな、どうやって出すか説明したいけどできないんだ。例えば……、息をするのと同じだ、意識してないだろ?」

 

「なるほど。」

 

 

クモに噛まれて、気が付いたらクモの力を手に入れていて、糸も出せるようになっていた。彼自身科学の徒ではあるが未だにその原理は不明、そもスパイダーマンとしての仕事が忙しすぎてあんまり自身の力の解明とかに時間はかけられていない。あ、そういえば最初は糸の出し方、こう手の形? どれが一番まっすぐ飛ぶかってのは色々試したりしたっけ、と彼は続ける。

 

 

「ちなみに糸が出るところって手だけ? 他のところからも出たりするの。」

 

「手首だけさ。」

 

「ウェブ切れはなし? 僕はしょっちゅう切らしてる。ラボで作らなきゃいけないから、めんどくさいんだ。キミと比べると。」

 

 

しかもウェブの原料って結構値段するんだ、だからそこを考えなくていいのはちょっとうらやましい。と続ける彼。この世界のピーターのようにスタークインダストリーやハイツレギスタの様な支援をしてくれる企業というのは彼にはない。というかそういったバックアップをしてくれる組織や企業があるのはどの並行世界でも彼にとってはかなり珍しいこと。

 

だからそのスタークさんにあったらちゃんとお礼言っとくんだよ、とこの世界のピーターに彼はいう。

 

 

「おぅ、それは大変だね。……あ、でも僕も切らしたことがある、急に『あ、糸が出ない』って。」

 

「えぇ、どんな時?」

 

「存在意義を見失った時。」

 

「あぁ、それわかり過ぎるくらい解る。」

 

 

空を仰ぎ、彼の言葉に同意するピーター。ヒーローと呼べるものがスパイダーマンしかいない彼らの世界において、自身の悩みをそのまま伝え、相談に乗ってもらえる相手は非常に少ない。そしてそんな身近な人ほど目の前から去って行ってしまう。自分は何のためにここにいるのか、なんで力を持っているのか、この力に見合った責任は果たせているのか。色々なことを、考えてしまう。

 

そんな沈んだ話題が出そうになったのを察知したこの世界のピーターは、話題を変えるために新たなお題を投下する。

 

 

「ねぇ、今までの敵の中で一番やばかったのって誰?」

 

「相当いた口ぶりだな。」

 

 

少し、言い方が悪かったのか。彼の年齢に見合った強気な発言と取られてしまったのだろうか。年長者である二人のピーターが向かい合って笑みをこぼす。自分もそんな時期があったけ、と。

 

 

「いい質問だな。」

 

「あ~、思い出すのは、エイリアンだ。黒くて、ねばねばした奴だった。」

 

「え! 僕もだ! 僕もエイリアンと戦った! 地球と宇宙で! 紫の鎧着て空飛ぶ椅子に座ってた!」

 

「えぇ、僕も戦いたい!」

 

「そりゃ驚きだよ、宇宙でエイリアンと戦ったなんてね。」

 

 

“スパイダーマン”はヴェノムを。この世界の彼はサノスの代わり用意された侵略者のことを話す。どちらも宇宙からの来訪者だ。かなり厄介な敵だったことは確かだが、乗り越えた後はどこでも受けを狙える最上級の話のタネだ。案の定アメイジングな彼の食いつきがすごい。

 

 

「はぁ、……僕はしょぼいよ。印象に残ってるのはロシア人だ、サイのスーツ着てた。」

 

 

彼が言うヴィランとは、ライノ。この世界にやって来ている彼とは違い、巨大なパワードスーツを身に纏ったサイ人間というよりもサイマシンの搭乗者、という感じだ。まぁ確かにエイリアン、というインパクトと比べれば少し弱いかもしれない。だが、彼。いやその活躍を見ていた者たちからすればあのシーンほど素晴らしいものはない、と言い切ってしまう者もいるくらいすごいのだ。

 

 

「いや僕はしょぼいってのは取り消しなよ、君はしょぼくない。」

 

「あぁそれはありがとう、自分をしょぼいって」

 

「独り言みたいなもんだろうけど自分をあんまり卑下しない方がいい。だって君はアメイジングだ、言葉通りに受け取ってよ?」

 

「あぁ、そうだね。」

 

「君は本当に素晴らしいよ、君はアメイジングだ。自分で言ってみて?」

 

「いや言ってもらったからもう十分。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな楽しい談笑の時間を遮る様に、彼らのセンスが反応する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ集中して、感じる?」

 

「あぁ。」

 

 

 

 

雷鳴が、鳴り響く。

 

 

 

 

「よう、ピーター。新しい俺はどうだ。なぁ、それをよこせ、壊してやる。」

 

 

 

 

 

 

 

 








〇コズミック・ソードビッカー

本作オリジナル必殺技。そもそもソードビッカー自体、宇宙を構成し通常の物理法則すら無視出来る純粋な「パワー」そのものであるコズミックパワーをチャージすることで相手が爆散する兵器。本作の東映版スパイダーマンはコミック版スパイダーバースをすべて経験しているため、それ相応にレオパルドンも強化されていると考えた。

結果、レオパルドン自体にコズミックパワーを循環させることで単純な能力の向上、また多重ソードビッカーなどの使用が可能であると定義づけるに至った。その全身に駆け巡るコズミックパワーを一振りのソードビッカーに収束させて放つ必殺技、それがコズミック・ソードビッカーである。相手は死ぬし、多分付近のマルチバースにいるモンスター教授も死んだ。こっちに来ようとしたモンスター教授も死んだ。

言い換えるならば、使用すれば悪は完全に滅び数多くの世界に平和と安寧を持たらす概念兵器、である。




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