ノルース星戦記   作:YUKANE

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コミカライズ版が遂にグラ・バルカス編に突入して嬉しい限りです。カイザルやミネレケスら軍神らとグラ・カバルの登場も楽しみですね。万が一6巻までの内容を書き終えたらどうするのだろうか?

しかし、僅か3700字の話を書くのに前話から4ヶ月近く立っていると言う······更新は気長に待っててください。


釣り合わない進化

アースエキスプレスの船内には数々の施設が存在する。レストランや大浴場と言った生活に密接したものから、病院や図書館・修理工場・運動施設・はたまた学校までもが船内には設けられている。

 

2800mにもなる船の中には8万人もの人類を載せる事が出来るが、その船を操る人員は艦橋と動力源の要員を含めても三桁にも満たない。

船内の設備を操るのは用途に合わせて製作されたロボット達。役目に特化した機器的な見た目のロボットから、愛らしく装飾されたロボット、挙句の果てには人間と同じ骨格で組まれたもののまで多種多様なロボットが船内設備を動かしていた。

 

船を支配していると言っても過言でないロボットの数に日本含むノルースの面々は驚きと疑心にかられたが、人間顔負けの活躍を見ると驚きは感嘆へ変わっていった。

 

「茹で方からソース和えに混ぜ合わせまで!! 自動で一からパスタが作られている!!」

 

マイラス・ルクレール少佐は全自動でパスタ料理を調理するロボットに目を輝かせる。彼自身手軽に作れるパスタを好んでおり、日本国から輸入されたパスタソースを使うだけでなく、電子レンジで茹でれると言うパスタの料理器を欲しがる程であった。だからこそ、全自動パスタ調理ロボットが彼の興味に刺さったのだろう。

ただ、ビーフストロガノフをお盆に載せた朝田とロコモコをお盆に載せた篠原は、気まずそうな目線で彼を遠くから見ていた。

 

「朝田さん。マイラスさんが見ているアレって······」

「日本にもあるよなぁ。この前新聞で見た覚えがある。」

「言わないで起きましょうか。」

 

両者はマイラスが地球連邦の最新技術として見ているロボに似た物が日本にあると知りつつも、子供のように見続ける彼の好奇心を削ぐのは不味いと判断して言わない事にした。

両者の気遣いを知る由もないマイラスはロボだけで調理されたジェノベーゼを受け取る。ソレを見届けた朝田と篠原は4人がけテーブルの片側に並んで座り、マイラスはその反対側に腰掛けた。

 

「美味い!! 本場のパーパルディアでも通用するレベルだ!!」

「カイオス主席も以前来日した際にナポリタンを絶賛していたと聞いてます。ここ最近になって進出したイタリアンチェーン店も盛況だとか。」

「なるほど。パーパルディアのお店が日本に出店しても、面白いかもしれません。ところであの青い麺は地球由来ですか?」

「いえ。あんな料理は見たことが無いです····」

 

マイラスは人の手が加わってない料理を味わい、素人なりに美味しいと褒める。朝田はパーパルディア戦後に来日したカイオスから聞いた話と、ネット新聞の記事で見かけたニュースの情報をマイラスへ伝える。

食べながらそれを聞いていたマイラスだったが、ふと横のテーブルに乗っていた青い料理を見た途端、引きつった顔になる。

 

横のテーブルでパンドーラ大魔法公国の面々が食べる青い中華麺と、アガルタ法国の面々が飲んでいるは青いミルクらしき飲み物は、地球由来ではなく別惑星原産の食材を使った未知なる料理である。地球人の感性からすれば食欲を失わせる青色の食べ物が普及し、平然と食べている様子は世界の広さと感覚の違いを思い知らせる。

朝田らも食欲の沸かない見た目に引きつるも、広い宇宙が故の多様性だとして処理した。

 

「しかし、地球連邦の歩みは壮絶と言うか·········日本国(我々)がどれだけ甘えた環境だったかを知らしめられましたね。」

「人類の半分を失い、各地の大地と海は放射線で汚染され、数少ない生存領域も無政府状態。フィクションであって欲しい程、凄惨な歴史だった。」

「えぇ·········ムーが転移した後のアトランティスもあんな運命を辿ったのでしょうか·······」

 

篠原をきっかけにして、話は日本転移後の地球の歴史に移る。血で血を拭い、止める者を失った争いを目にして朝田らは日本国の幸運を認識し、マイラスはアトランティスが辿ったであろう運命に同情する。

 

「でも、そこから地球連邦として立て直したのは、人類史に残る大逆転だな。」

「日本を遥かに越える国家になったんですから。我が国もあの様に成長したいものです。」

「それはムーも同感です。ただ────何か引っかかるんですよ。」

 

朝田と篠原は無法地帯から見違える程の復興を遂げた地球に尊敬の眼差しを向ける。クワ・トイネら周辺国が日本国へ向けていた心境がまざまざと理解出来た。

ただ、マイラスだけは素直に喜ばずに気難しい表情をしていた。

 

「引っかかると····教えて貰ってもいいですか?」

「えぇ。地球は日本国の転移をきっかけにして文明が崩壊したと言っても良いです。無論人類は生き残っているので、再び文明が芽生えるのは理解出来ます。ただ、いくらなんでも僅か200年で更地から宇宙へ飛び出せる文明になるなんてあり得ますか?」

「アトランティス文明の力を借りたって事じゃないでしょうか?」

「確かにそう仰ってましたが、アトランティスには宇宙に飛び出せる技術は無かったはず。地球文明の再建には使えても、宇宙に関する技術は地球連邦由来と言って良いでしょう。」

 

マイラスの仮説に朝田と篠原は聴き入る。アトランティスを知るムーの人間であり、日本国に対する理解が深く、周辺国の変化も目の当たりにした彼だからこその考えは熟考の余地があるものであった。

 

「更に言ってしまえば、宇宙に飛び出した後もおかしいと感じたんです。ユグドやオルデランとの接触に、火星に不時着した宇宙船の解析があったとはいえ、宇宙船があんな怪物的進化を遂げられるんでしょうか?」

「意外とイケるんじゃないでしょうか? 出来たばかりの携帯電話が肩掛けだったのに、僅か30年でスマートフォンに変わっているのですから。」

「どうだろうな。転移前に宇宙へ行く手段がスペースシャトルからロケットへ退化している。携帯電話と比較するのはお門違いだろうが、宇宙は比べ物にならない程に技術の進歩が難しいんじゃないか?」

「朝田さんの意見に同感です。恐らく見てもらったほうが早いでしょう───えぇーと?あぁ、こうだ。」

 

篠原は宇宙船の急激な進歩を携帯電話を例えに現実的だと捉えるも、朝田はスペースシャトルの退役からそれが非現実的だと否定する。

朝田と同じ意見のマイラスがテーブル端のタッチパネルを弄ると、テーブル上にインディペンデンス級とドレットノート級の立体ホログラムが写し出される。

朝田らはいつの間に熟知したのかと驚きつつも、平静を装いながらホログラムを動かすマイラスを見ていた。

 

「一目で分かる通り、僅か数十年にして地球防衛軍の艦艇は姿も大きさも変貌しました。携帯電話も形状と中身が変貌した点では同じと言えますが、文明崩壊前の地球にも根幹となる技術すら無かった点が違います。

2170年代はワープすら出来なかった船しか持たない地球が、僅か40年には星を壊せる兵器を積んだ大艦隊を揃えている。ここまでの急成長が果たして現実的なのか腑に落ちません。」

 

空中に浮き上がった半透明の2隻を回しながら納得出来ない点を説明する。艦の様相だけでなく、動かす原動力や積まれた兵装類も一新された2隻が僅か数十年の差しか無い事実は考えるほどに、掴みようの無い疑念を何処となく抱かせる。

 

「私は現実的だと思いますがね。ほら、クワ・トイネやクイラとかは日本国(我が国)のODAによって見違える程に近代化しました。事例こそ少なけれどあり得なくは無いでしょうか。」

「どうでしょうか·······例えると文明圏外国が日本国と同等に進化したんです。確かに日本国の助けでロデニウス諸国は急成長したとは言え、日本国と同等の存在になったと言われる事はあるでしょうか?」

「確かに··········我が国の支援でロデニウス諸国は急成長したが、日本に並んだだと言われた話は聞いてない。」

「例え国家が目に見えるレベルで成長したとしても、それを支援した国に並ぶ事は出来ません。それこそ革新的な技術があったとしても、モノにしなければ優位性は築けない。地球連邦はいわば波動エンジンと言う新たな力をあっという間にモノにし、最適解な形へ持っていたわけです。」

 

マイラスの力説を聞き続けた朝田と篠原は、地球連邦の宇宙艦艇の進化が急速的すぎるとの意見に納得した。自らの身の回りにある携帯だけでなく、転移前の情勢、はたまた自国が関わった国々を例えに出されたが故に、彼の説は強い信憑性を得る事になった。

 

「しかし、仮にその説が正しいとなると、地球はどこで技術を急速進歩させたのでしょうか?」

「そこは一切検討が付きません。歴史書を見ても一切判明しなかったので、隠すべき裏があるかもしれません。」

「地球連邦の裏········全く現実味はありませんが、時間が早く進む環境があるとか?」

「まさかとは言い切れませんが、あったら驚嘆ものです。」

 

地球連邦の急速的な技術進歩の要因に話が移った彼らから出た仮説は、あり得なくは無いけれども現実味が限りなく少ないものだった。都市伝説系の雑誌に載っていても可笑しく無さそうな説に苦笑いしつつ、話は先へ進んでいく。

 

だが、何気なく流したその仮説が事実だと彼らは知る由もない。




・パーパルディア料理
筆者は日本国召喚の国々を地球の国家とリンクさせ、より国としてのリアリティや詳細を詰めていく方針を取っています。それに基づいてパーパルディアは大陸に名を響かせる覇権国家や入浴文化と言った古代ローマと結びつく要素が多い事から、ベースとなる国家にイタリアを選択しました。
その影響でパーパルディア料理はイタリア系に類似していると言う独自設定を設けました。本編の設定では無いので、誤解しないで下さい。
別作を書くかは不明ですが、筆者の日本国召喚系作品はこのスタンスでやっていきます。

・青い中華麺とミルク
こちらはどちらともスターウォーズ由来の食品です。青いミルクこと“ブルーミルク”はエピソード4やローグ・ワンに登場するので印象深いかもしれませんが、青い中華麺はDisney+限定配信のドラマで映像初登場なので馴染みが無いかも·····
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