真剣に、なる。
しかし筋を外れた刃は、容易く折れ果てる。
狭間にある全てを、巻き込んで。
成長したい。
成長しよう。
成長しなければ。
成長出来ないなら、
心がささくれだっているのを、必死で覆い隠しながら。私は今日も、練習に励む。
今のままでは、いられないから。
インターハイ二回戦敗退、それが今年の私たちの成果。どれだけ涙を流そうと、どれだけ苦しもうと、残ったのは敗北という二文字だけ。敢闘賞も残念賞も無い、負けてしまえばそこで全てが終わる。
みんなと共に過ごした日々は、鍛えあった時間は、決して無意味じゃない。でもそれを誇るには、勝つしか無いんだ。
吉谷先輩たちはこの夏を終えて引退するんだろう、これからはもう頼れない。この先は私たちが主力にならなければならない。
気が付けば今年も、もうすぐ誕生日。去年は全中が有ってそれどころじゃなかったけど、今年も多分なにもしない。渚たちが祝ってくれれば、御の字だ。
――猪股家の皆には、伝えていないし。正直気恥ずかしいし、気まずい。
家族のように祝って欲しい、とは思うけれど。そんな事が許されるわけがない。
バスケの為に無理を言って居候させて貰っているのに、結果を出せない出来損ないの私。そんなのがどのツラ下げて、はしゃいだりできるんだ。
それにそういう事をすると、大喜くんが困るだろう。大喜くんは蝶野さんのモノなんだから。
二人が付き合っている、と感じ出したのはあの花火大会。大喜くんは友達と行くなんて言ってたけど、二人だけになりたかったんだ。だから私を誘うような事はしない、当然だ。
それならそうと、言ってくれても良いのに。なら私は応援する、それが最善だから。
そして敗北を報告したあの日、確かに聞いた。蝶野さんの「告白した」という言葉を。
可能性は確信に至り、私は全てを理解したのだ。これから私は、何をするべきか。
猪股家の良き居候として、そして大喜くんの良き先輩として。私は二人の支援に回らなければならない。
なにしろ大喜くんは、天然でおバカさんだ。蝶野さんだけ見ていれば良いのに、私にまで気を遣ってくれる。優しいと言うか、人たらしと言うか。……女ったらし、かな。本人は自覚無いみたいだけど。
動き続けなければ不安に追い付かれる、でも身体は無限になんか動かない。休むのは怖い、一瞬でも休めば自分が鈍っていく気がする。そしてオーバーワークで糸が切れたようにへたれこんで、自身の無能さに絶望する。その繰り返しだ。
なんとか周囲には隠せている、けれどもいつまで持つか。
研ぎ澄ませて研ぎ澄ませて、そしていつか折れてしまう。それが私の末路だ、そんなの分かっている。分かっていても、止まれない。才能もなにもない私は、自分を削るしか無いんだ。
皆に頼られる、理想の先輩。何でもできて手がかからない、良い子供。預かっても負担にならない、良い居候。それで居続けなければ、生きられない。
「あー……」
じゃあ私は、誰を頼れば良いんだろう。誰に甘えれば良いんだろう。誰に、本心を打ち明ければ良いんだろう。
ベッドの中で不意に涙が溢れ、視界が滲んでいく。私は一人で頑張るしかない、それを辛く思ってはいけない。
それなのに――。
気が付けば手の中にはスマホが握られ、指先が連絡先をタップしていく。
そこへアイコンを送り届けようとした、その刹那。
「……っ!!」
頭の奥に残っていた理性が、それを何とか阻んでくれた。
頼るな。
甘えるな。
近付くな。
私があの二人の為に出来ることは、それだけなんだから。
もうじき一つ歳を取る、そうすればきっと心も大人に近付く。我慢できるようになる。
大丈夫だ、私はいつだって立ち向かえている。今までもチームメイトの為、最前線に居続けてきたんだ。
頑張ろう。もっと、頑張ろう。
いつか崩れ落ちる、その瞬間まで。
止まることなく進むしかないんだ、他に歩む道はないから。