バンドリ杯に用意した短編になります。暇つぶしにどうぞ。
冷凍クジラ一旦復活です。

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お久しぶりです。冷凍クジラ一時帰還しました。これからバンドリを書くかは分かりませんが読んで頂けると嬉しいです。


第1話

「先輩ってどうしてこういいう事に巻き込まれるんですか?」

 

「知らん、そもそも俺だって今の状況はごめんだ」

 

 弦巻廷の整えられた芝が並び、手入れされた木々が連なる庭園。そこに2人は座っている。庭園から少し離れた所に白い鉄製の柵がいて、外界とここを遮断するかのように出られない仕組みだ。もちろんそれは小動物が逃げないためであって人間も閉じ込められる訳ではない。

 巻き込まれたは後輩、奥沢美咲の問いに無骨にそう答える。

 季節はもう春に差し掛かりゆっくりと温かくなってきていた。空が済んでいることもありその日を浴びた木々は芝は青々と輝いて綺麗に映え、日光の温かさと少しだけ吹くさわやかな風が優しく空間を満たす。外で過ごすには快適な状態だった。

 そんな中、2人はゆっくりと目の前の光景を眺めながら大きい樹木の下で目の前の光景を眺める。木漏れ日から差す光が葉が風で揺れると同時にゆらゆらと動く中、目の前の光景に晶はそれなりに満足している。

 

「あたし的には楽しんでいるようにしか見えないんですけど……」

 

「そんなことはないぞ?」

 

 そんな風に満足しているのだから美咲にこのようなことを言われてしまう。もちろんここにいるのはただのんびりとくつろいでいるわけではない。

 彼らの目の前には気持ちよさそうにしている犬や猫が寝転んでいる。なぜこのような状態になったのか、彼は知らない美咲に手伝って欲しいと言われてここにやってきたのだ。基本的にここの住人弦巻こころと関わることは少ない、間接的に話すことはあってもそれはあくまで友達やなかなか合わない友人程度、美咲とがこころと出会わなかったら話すこともなかったであろう人間だった。

 そんな人の家の庭で少し上を向いてため息交じりで彼はこう口にする。

 

「にしたって弦巻のお嬢は何を考えているんだ?」

 

「それが分かればあたしたちも苦労しませんよ」

 

 そんな状態なのだ。詳しい事情は知らない。それでも後輩に頼まれてやってきた、それだけ。

 それでも流石にここまで関わっているのだから話を聞いていいだろう。そう思って彼は美咲に尋ねる。

 美咲はその言葉に少しばかり分かっているでしょ? と言わんばかりに口にした言葉はこれだった。美咲自身もこころの事を分かって入るつもりだ。それでも人間、相手の思っていることをすべて理解できることは出来ない。

 

「まぁ、そうだろうな。でも、少しぐらいは分かるんじゃないか?」

 

「やってる事はとてもいいことですしね」

 

 それでも今回の理由は美咲にも理解できていた。やっている規模は小規模だが今までしてきたことに比べればまだ理解できるし面倒なことに巻き込まれた、など美咲も思っていない。それでも彼を呼んだ理由は人手が足りないからだった。

 もちろん弦巻家の雇われているものもかなりの人数が存在するがそれはあくまで屋敷の管理や食事、こころのガードなどに割かれその合間に追加でやらなければならない、という事になれば当然無理が出てくる。

 そういった理由で彼は今ここにいるのだった。もちろんただではない。拘束時間分のバイト代は貰うつもりだ。それも先ほど食べた昼食で十分と思うような仕事なのでゆっくりできて美味しい昼食が食べれるとなればそのバイト代もなくていいと彼は思う。

 

「それでお嬢の愚痴を聞かされている俺は貧乏くじだな」

 

「それはすみません」

 

「まぁ、後輩の悩みを聞くのも先輩の仕事だからな」

 

 そんな弦巻こころの行動に振り回されているのが美咲だ。何時も突拍子のない事をやりがちな彼女のストッパーと言った所だろうか。最近ではそこまで考え無しで動くことは少なくなってきたがそれでもたまに大事を起す。今回もその一つだ。

 そんな話を毎回聞いているのが彼だった。美咲のストレスの吐き口、ともいえる。それでも最終的に納得して美咲はこころの行動を実現できるように裏方で動いているのだから凄いと彼は思う。

 

「ホントお節介好きですよね」

 

「ほっとけ。それに無視したら寝覚めが悪いだろ」

 

「そりゃそうですけど」

 

 美咲はそう言って横に座っている彼の肩に頭を乗せ、市腰楽な体制をとる。

 そんな彼らに木陰に吹く風がゆっくりと彼らを撫で、その風に乗って柔らで綺麗な美咲の髪を靡かせる。それによりいい匂いが彼に伝わってくる。

 彼女は彼の回答にいつもそうですよね? と言った風に返す。彼もこれは反論出来ない。毎回こうやって誰かの助けをしていた。

 

「美咲が入っているのはバンドじゃなかったのか?」

 

「もともとは入ったつもりはないんですけど……」

 

 最初は強制的だった。それでも今は違う。

 

「そういうのはいいから。気に入ってるから今もいるんだろ」

 

「まぁ、そうですね。嫌じゃないです」

 

 愚痴を話すことも少なくなった。相変わらず忙しいと聞き大変だとは彼は思う。それでも前より楽になったのか、はたまた楽しくなったのか。やりがいを見つけたのか少し楽しそうに話すようになった。それはいい事だと彼は思う。 

 そんな話をする中になりこうして彼が聞き役となってずいぶん経つ。その関係は今も続いていた。

 そんな彼でも疑問に思う事は多々ある。それが今回。

 

「で、そんなバンドグループが何で保護動物を育てる事になったんだ?」

 

「まぁ、色々ありまして……」

 

 それは今の状態だった。この弦巻家に設置された区画にいるのは野良や捨てられた動物たちだ。その管理を裏方として美咲が行っている。最初はそこまで規模は大きくなかったが段々と保護する動物が増えてゆき手が回らなくなったという事だ。

 もちろん限界があるのはこころも分かっている。ただそれでも守れる命守りたい、その考えで引き取りたいという人の想定ギリギリの数まで保護をしているのだ。もちろんそれは需要と供給であって管理する人員の事は考えていない。その辺りはこころらしい一面ともいえる。頼れる弦巻家の使用人は自分たちの仕事がある。なので美咲が管理をするという事になったらしい。

 

「それで何で俺が駆り出されるのか割らんのだが」

 

「先輩がいればどんな動物もひれ伏すかなと思いまして」

 

「んな訳ないに決まってるだろう……」

 

 それを任された美咲は少し迷っていた。助けたいのはやまやまだがどう考えてもキャパシティを越えている。そうなれば誰か人員を外から呼ぶしかない。それで選ばれたのが彼だ。

 昔からそうだった。彼の家で飼っている犬たちも彼には忠実だったし、小学校の時に近くの吠える犬も彼の前ではなぜか大人しかった。動物になつかれる体質なんだろう、そう美咲は思っていた。

 

「現にみんな大人しいですよ」

 

「そうなのか?」

 

 だがこれは違う、そう思うようになった。彼は強いのだ。肉体的にも、精神的にも、そして何より優しい。そんな彼をずっと見て来たから分かる。

 昔からそうだった。何時も前に立って助けてくれた。困った私たちを引っ張ってくれた。迷う私を後押ししてくれた。そんな優しい存在。

 何時ものメンバーとは違う温かさを持った人、美咲は彼をそうたとえる。

 ハロハピが太陽の日差しとすれば彼は今の木陰の様に温かく眠気を誘うほどやさしく包み込む最適な日差し。たまにまぶしく見えるこころたちから離れて彼女を安らぎへといざなう安息地、そう感じている。そして心地よさは別の感情としても湧き上がってくる。

 

「これは懐かれているのか?」

 

「先輩の近くは居心地が良いですから」

 

「そうか?」

 

「そうです」

 

 彼の疑問にそう答える美咲、嘘は言っていない。皆の安らぎの場所、それが彼なのだから。動物たちも寝てしまっても文句はない。それに彼女も眠くなってきたのか少しあくびしてしまう。そんな中一匹の猫が彼に寄りかかるように眠りに就いた。ここが一番安心できる、そう思ったのかもしれない。その姿は警戒した状態の眠りの様相ではない。

 

「まぁ、美咲が言うならそうなんだろうな、うん」

 

「ほら、皆気持ちよさそうに寝てますよ」

 

「逃げないのが逆に驚きだがな」

 

 逃げる必要がないから逃げない、そういう事だろうと美咲は思う。もちろん逃げようと思えば逃げれる。美咲一人でこれをしていた時は実際何匹か逃げていた。それを捕まえるのは本当に苦労したが、今回はそのような苦労がないとすっかり安心している。

 

「まぁ、良いじゃないですか」

 

 そう言ってから笑いする。そんな彼女はもたれかかっていた頭を彼の太ももに乗せる。そんな動作に彼は唖然としながら膝枕されている状況を理解するまで少しの時間を要した。

 

「え?」

 

「どうかしましたか?」

 

 それを理解した彼はその疑問の言葉を挙げると別にいいでしょ? と言った感じで下からその綺麗な瞳を彼に向ける。それを見てなんでもない、と言いながらため息一つ。

 

「ちょっと疲れてるんです。たまにはいいですよね?」

 

 そう何も言わせない様な雰囲気でそう笑顔で口にする。彼女が普段はこのような事をするタイプではないのは彼も知っている。何があったのだろうかと少し考える。そうして考えると思い当たる節があった。

 

「お前、休んでないだろ」

 

「バレました?」

 

 よくよく考えてみれば分かる話だ。美咲はバンド活動をしている。活動をしていると言っても彼女はミッシェルとして認知されているため美咲は裏方として頑張っているという事になる。ただそれはあくまで彼女たちの想像であって真実は違う。バンド活動をしながら彼女たちの曲を用意してライブ会場の手配、雑用、それ以外にも活動するにあたっての仕事は多い。それに今回の仕事が加われば疲れるのは当然の話だ。

 

「まぁ今回だけだぞ?」

 

「そう言って許してくれる所、好きですよ」

 

「言っとけ」

 

 そんな簡素な言葉を連ねてから美咲はゆっくりと閉じる。後頭部から伝わる温かさに身を委ねながら力を抜く。守ってもらっている。そう感じる事が出来る距離。とても心地よかった。

 

「あったかいなぁ」

 

「黙って寝てろ」

 

「はぁい……」

 

 小声で言った言葉もバレてしまったようでそんな文句に笑顔で答えると彼女は静かに眠りに就いた。

 ゆっくりと吹く風は優しく何処までも続いて行く。安らかな眠りと共に温かい空間に2人だけの空間があった。

 




企画なので短編にしました。
今回はこれで終わり。まだしばらく忙しいので機会があればまた書かせていただきます。それでは。

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