博麗霊夢に転生したが、あと余命1年らしい   作:鳩羽しろ

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とうとうこの後1年しか生きられない子──霊夢を蝕む病についての物語が歩き出していきます。


茨木華扇の焦燥 『変貌する〝いつも通り〟』

────

 

────────

 

いつもの風景だ。

特に何も言うべきところがない、どこもかしこもいつも通りの普通の風景。

 

私はこの風景が相変わらず好きだ。

理由なんて何にもないが、強いて言えば霊夢、博麗霊夢という一人の人間がいることが大きいのかもしれない。

霊夢は相変わらずしっかりと生きていることだし。

 

 

……どうやら、霊夢がこちらに気づいたようだ。

お猪口を持ちながらこちらに手を振っている。

その顔には笑顔にあふれており、その姿はまごうことなき()()()()()だ。

 

 

もちろん私は霊夢のもとへ足を運ぶ。

 

ゆっくりと意識が遠くなり、だんだんと音が聞こえなくなる。

 

霊夢との距離もそれに伴って短くなっていく。

 

視界もぼやけていき、なぜか鉄臭い匂いも感じる。

 

……死んじゃ…いや……

 

耳が遠くなっていて何を言っているかは聞こえないが、なにかの声が後ろから聞こえてきた。

 

 

なんだろう?

 

 

霊夢から視線を外し、後ろを向くと……

 

───え?

 

これもまた()()()()()の風景が映し出される。

 

霊夢がぐったりと横たわっていて、その横に私、茨木華扇がいる。

 

霊夢の体には何一つ傷はないが、血が滝のように流れ、床に丸くて赤い敷物をゆっくりと敷いていく。

そして、目の前にいる私はその霊夢の体を抱いて、顔を俯かせている。

 

────なにが、起こっているの?

 

よく分からないという言葉で私の頭は埋め尽くされている。

でも、それと同時に何故か、本当に何故かはわからないが、どこか既視感を感じる。

 

なぜだろう、いつも通りの風景であるような気がする。

 

これが普段のいつも通りの風景なのか……?

 

─────いや……違う!!

 

手は震え、頭もまともに働かないが、これだけは分かる。

 

これはいつも通りの風景なんかじゃない。

 

ここは何かが違う。

 

私はここにいてはいけない。

 

手のしびれを置きざりにするが如く、腕を大きく振り上げ、一気に振り下ろす。

 

その手には刃物が握られていて、刃先は背中を突き抜けていた。

 

 

 

 

 

────────

 

────

 

 

 

気が付いた時には私は()()()()()の風景を目に映し出していた。

上半身だけ体を起こし、下半身は布団の中に入っており、ほぼ無意識で飛び起きたことがわかる。

 

息は上がり、手は痺れ、なぜかお腹のあたりがじんじんと痛んでおり、目は恐怖で埋め尽くされている。

 

………あぁ、まただ……

 

何が起こったのか理解をした私は、上半身の力を抜き、再びうつぶせの体勢に戻る。

痺れた手をお腹の位置にもっていき、傷もついていないが痛むお腹をさする。

 

「………これで、何度目なのかしら?」

 

霊夢の余命の話を聞いてから、この悪夢は()()()()()と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茨木華扇の焦燥────

 

昨日の博麗神社でのお泊りは非常に充実した時間であった。

霊夢と魔理沙、そして私で行い、久しぶりの三人で楽しく過ごさせてもらった。

 

私はもちろんのこと、霊夢と魔理沙の二人ともずっと笑顔で、楽しそうであった。

 

私はその姿を見て、本当に安心した。

霊夢はもちろん、魔理沙も楽しんでいたことが嬉しい。

 

霊夢の余命について知った彼女は、ひどく落ち込んでいたと聞いていたので、楽しそうな様子を見れただけでも気がかりなことが一つ減った。

 

今日、お泊りが終わって帰ってきたのだが、行く前と行った後で私の精神もだいぶ回復してきたのかもしれない。

最近、精神がかなり滅入っていたところもある。

 

ここらへんで心の回復ができてよかった。

 

「………今日は、ちゃんと眠れるかな?」

 

私はそう呟き、布団の中で目をつぶった。

 

 

 

────

 

────────

 

 

 

────────

 

────

 

 

 

「………これで、何回目なのかしら?」

 

傷もついていないが痛むお腹をさすりながら、そう呟く。

 

私は霊夢の余命について知ってから、このひどい悪夢に悩まされている。

どれだけ見たとしても、夢の中の私はその光景に慣れることもなく、ずっと拷問のような苦しみを味わう。

 

ふと視線を下に配らせると、震えている手が夢の中でできた傷口の近くを無意識に避けていることがわかる。

 

夢の最後は相変わらず、刃物で自害をしてしまう。

それが私が見る悪夢の流れだ。

これがいつも通りと化している。

 

「……昨日のお泊りの効果を期待していたのだけど……」

 

どうやら期待は裏切られたようだ。

相変わらずいつも通りの悪夢を私は見せられている。

 

どうやらこの悪夢の呪いは私を絶対に離さないらしい。

おかげで最近の私は精神的な疲れはもちろんのこと、身体的な疲れも出てきてしまう。

 

その身体的な疲れも、悪夢の呪いにつながってしまうという悪循環に陥ってしまう。

 

「……もう、どうしたらいいの?」

 

昨日のお泊りで少しは……いや、かなり心の傷が癒された。

一番の心配事である霊夢がしっかりと楽しそうにしてくれたから。

 

でも、それだけでは悪夢の呪いは消えない。

 

「……はぁ、諦めるしか「大変、そうだねぇ」──ッ!!!」

 

反射的に飛び起き、全神経を集中させて警戒態勢をとる。

まだ寝起きということもあって、髪は乱れ服もはだけてはいるが、少しでも異常があればすぐに攻撃を開始できるようする。

 

ここまでの警戒態勢をとるのには、もちろん理由がある。

私はこの声の正体について反射的に理解したからだ。

 

まるで私が見た悪夢に引き寄せられたかのように表れた人物。

そんな死にまつわる悪夢に引き寄せられたのは────

 

「───何の用ですか? こんな朝早くから訪問とは、死神とは本当に常識知らずですね」

 

「……朝っぱらから辛辣だねぇ、別にいいじゃないか。仙人様はそんなしょうもないことでカリカリ怒るのかい?」

 

私の前にいる死神は、相変わらず減らず口をたたき、私の怒りを増長させる。

 

本当に……なんでこんな時に……

 

目の前の死神──小野塚小町は、私の内なる気持ちなんて考えずに、言葉を続ける。

 

「その様子だと、だいぶ参っているみたいだ。……大丈夫なのかい?」

 

「……あなたに言われる筋合いなんてありませんよ。そういうあなたはなぜここに来たんですか?」

 

小町は相変わらず、へらへらとした顔をする。

 

だが途端、顔の表情が一気に変わった。

その表情は今まで小町と会った時のどんな表情でもなく、真剣そうと言えばそうだし、悲しそうといえばそうでもある。

 

…………?

 

こんな表情を小町がするとは思わなかった。

パッと見てどんな気持ちなのかわからない顔から、再び言葉が紡がれた。

 

「………そうか、どうやらそんなに大丈夫じゃないらしい。あんたがそんなことになっている原因、あたいにはわかる」

 

「……だから、何の用です?」

 

じれったく話を続ける小町に、私は嫌気がさす。

小町もそんな急かすよう訴える私の雰囲気に気が付いたのか、はぁとため息をつきその緩やかな勢いと共に言葉を流す。

 

「その原因………つまるところ、霊夢だ」

 

「……霊夢がどうかしたんですか?」

 

霊夢の話が話題に上がり、少しだけドキリとする。

死神から話されるあと余命がたった1年の子──霊夢。

 

何が話されるかは明白だ。

 

「………あなたは知りたがってるだろ。霊夢がなぜ1年しか生きられないのか?永琳でさえ治癒できない病の正体?………ただ、私もほとんど知らないけどね」

 

あと1年の命である霊夢。

治癒できない霊夢を蝕む病。

 

そしてもう一つ───

 

「────どうすれば、その病を治癒できるか?………その病はどうやら、あたいの頭じゃ理解できないくらい複雑らしい」

 

私が霊夢の事を知ってから、いつもの日々が急速に、そして確実に変化していく。

時間がどんどん経つにつれて、日常が崩れ、生活が歪み、そして──

 

()()()()()が変貌する。




いやぁ、ホントお久しぶりです。

ここまで忙しい日常がいつも通りになってくるとは思いませんでした。
これからもマジでゆっくりと書いていくんですけど、良かったら高評価と感想をよろしくお願いします!

あと、最近面白い作品が増えたので、書こうとするたび他の作品が読みたくなるこの治癒できない病はどうしたらいいんでしょうか?
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