そげきーの島でー
生まれたおーれはー
100ぱーつ100ちゅー
ルルララルーー♪
⋯⋯なぜか歌い始めたウソップさん⋯⋯もといそげキング。白い目で見ている俺達に気付いているのかいないのか、そのままずっと歌い続けている。ウソップさんとしては姿をくらませたいが、そげキングとしては目立ちたいのだろうか……。これもある種のプライドなのかな。
「何やってんだ、あいつ」
「これは⋯⋯話を合わせるのが優しさですかね⋯⋯?」
サンジさんと俺は、正直なんでわざわざあんな格好を⋯⋯というのが感想である。しかし、なぜかフランキーだけはそんなそげキングに寛大だった。
「まァ、気持ちをくんでやれよ」
未だに歌い続けているそげキングだが、いい加減ふざけている場合ではない。「おい、こっち来い!!」というフランキーの言葉に、素直に従ったそげキングを確認してから、全員改めて状況確認のために円になって座り込んだ。
「よし!!じゃあロビンちゃん奪回作戦を決行する!!!」
「君達、初対面の私に何か質問などないのかね?そげきの島ってどこにあるの?とか」
「まず、お前らがいたのは第6車両」
そげキングの言葉を遮るように状況整理を始めたサンジさん。俺はサンジさんの言葉の後に続く。
「全部で車両は7つで、うち1つはサンジさんが制圧してくれたんですよね?」
「そうだ、つまり残る車両はあと5つ!!そのどれかにロビンちゃんはいる」
俺たちが真剣に話を進める中、先ほど自分で口にした質問に自ら「それはね、君の心の中さ!!」と答えているそげキングは引き続き無視をすることにして、サンジさんはフランキーへと顔を向けた。
「時にお前…………強ェのか?」
「スーパー強ェぞバカヤロウ。今週のおれは特に強ェ!!!」
力強くそういったフランキー。週によって強さ違うんだ……という感想をなんとか飲み込んで、自己申告ではあるがちゃんと戦力になりそうだと一安心である。最初にフランキーを解放しようっていったの俺だし。やっぱり多少責任を感じていたのだ。
フランキーの返答で同じく多少は期待できそうだと感じたサンジさんは、すぐに言葉を続けた。
「最終的にはロビンちゃんを救出できれば勝ちだが、敵は多い」
「俺たちがいた荷物車両以外は、基本敵がいると思った方がいいですよね」
「そうだな。下手に先走って狭い列車の中で囲まれちまうと厄介だ。ムダな戦いは省いて順序良く主力を潰していく方が得策だろう。そこで一つ作戦がある。よく聞け」
サンジさんのいう“作戦”は、題して『雑魚はまとめて消しちゃおう作戦』。ちなみに俺が勝手に心の中で命名しただけである。
その作戦内容とは、一番後ろの車両にわざと現れ、後ろ2車両にできるだけ兵士を集めてから、その車両を切り離しちゃおうという戦闘もしなくていい、しかも敵を減らせるという一石二鳥なものだった。
俺たちはすぐにその作戦へと動き出した。『雑魚はまとめて消しちゃおう作戦』は見事にハマり、かなり敵の数が減らせたような気がする。
「2車両分。これでざっと50人は
「さすがですよサンジさん!!!」
俺がすごいすごいと称賛すると、まんざらでもなさそうににやりと笑っているサンジさん。そんな中、先ほどまで楽しそうに切り離された兵士達を煽っていたそげキングが、今度は冷静に言葉を口にした。
「しかしサンジ君、同じ線路上を麦わらのルフィ達が通ってくるんじゃないかね」
「まあ……何とかするだろ」
無駄にそげキングのキャラ設定ちゃんと作り上げてきたなぁなどとどうでもいいことに感心していると、車両の中がだんだん騒がしくなってきたことに気づく。どうやら車両が切り離されたことで俺達に怒りが向いてるらしい。そりゃそうだ。
さあやるか!と気合を入れて、第5車両の中へと入っていったサンジさんに続くように歩みを進めた。
「て!!てめェらただで済むと思うな!!!」
「まだザコがいたか」
申し訳ないが、サンジさんの言う通りザコっぽいセリフだと思うと同時に、ポケットに入れていた杖を取り出した。
「“
「そげキーング“
「≪ペトリフィカス・トタルス≫!!!」
次々と技を繰り出す俺達に続くように、フランキーも一歩前に踏み出す。
「“ストロング
そういって右手でパンチを繰り出したフランキーだったが、何とその腕が伸びたのだ。ルフィさんのようにゴムみたいに伸びたわけではなく、腕がまるでロボットのロケットパンチのように飛び出した。その伸びた腕は鎖でつながれており、攻撃が終わった後はジャラジャラと音を立てながらもとの腕へと戻っていく。
え、何あれ。あれも悪魔の身の能力の一つなのか……?俺と同じく今の光景に驚いているサンジさんとそげキング。だからだろう、兵士の撃ってきた銃弾を避けるのに少しだけ遅れてしまったのは。それを守るように前に出たフランキーは、もろに銃弾をくらってしまう。
「うわ!!くらった!!!」
そげキングの言う通り、確かに銃弾は確実にフランキーをとらえていた。しかし、なぜかその銃弾はフランキーの体を跳ね返り、床にコロコロと転がったのだ。……今銃弾が体に当たった時、カンカン!って金属音みたいのが聞こえたけど……え、なに、フランキーって鉄か何かなの……?
俺達が混乱するくらいだ。攻撃をしかけてきた本人はより混乱しているようで、何度撃っても体を貫くことがない銃弾に冷汗を流している。その混乱を見逃さなかったフランキーは、車両に設置してあるソファーを片手で軽々と持ち上げると、その兵士にお返しと言わんばかりに投げつけた。兵士はそのまま下敷きとなってしまっている。
「おいお前一体何なんだ!!!」
慌ててそう聞いたサンジさんとは反対に、フランキーは当然と言わんばかりに返してきた。
「あ?ああ、おれは“
「サイボーグ!!?」
「体内に鋼鉄や兵器が仕込んである。撃たれりゃ多少痛ェし血が出ることもあるが、まァ効きゃしねェ」
「兵器まで!?すごい!」
体に兵器仕込むってすごい考え!でも嫌いじゃない。あとで見せてもらおうと少しうきうきしていると、視界の端にそげキングが映り込んでくる。何をするのかと黙って見ていると、どこからか取り出した針を、フランキーの背中にぶすりと刺し始めた。
「いだーーーーーッ!!!!何してんだてめェ!!!」
先ほどとは違い大げさに痛がったフランキー。あれ?鋼鉄でできた体じゃなかったのか?しかしどうやら鋼鉄なのは前だけで、後ろは普通に人間の身体らしい。なんでそんな面白
しばらくフランキーの体に興味津々だった俺達だが、遊んでいる場合ではないことに気づく。気が付くと第5車両には敵がいなくなっていたようだ。
「次は第4車両」
そういって扉を開いたサンジさんに続いて、俺達も車両の中へと足を進めた。
◆
「後部2車両が切り離された!?あなた達一体何をやってるの!?」
ニコ・ロビンを乗せた海列車の第2車両では、眼鏡をかけた長髪の女性、カリファの声が響いた。今しがたフィン達によって行われた“作戦”が成功したことで、兵士がCP9の面々に報告にやってきていたのだ。
焦りを含みながら報告をしてきた兵士は、そのままの勢いで言葉をつづけた。
「申し訳ありません!!強力な戦力『Tボーン大佐』まで切り離されてしまった次第で!」
「では、今の列車内の状況は?」
言い訳は良いと言うようにぴしゃりと言い放ったカリファに、兵士は冷汗を流しながら答えた。
「はい、ただいま列車は全5車両で、兵士は全員やられ、残っているのは第4車両のワンゼ氏!第3車両のネロ氏!後はこの第2車両の皆さんのみで……」
「敵もバカじゃなさそうだな……」
肩にハトを乗せた男、ルッチは眉間にしわを寄せて呟くように口を開いた。
「だが、事実上こっちに不都合があるとすればフランキーが自由の身である事だけだ。我々の任務は『フランキー』と『ニコ・ロビン』をエニエス・ロビーへ届けることのみ。それ以外はこちらサイドの誰がどうくたばろうと、任務に支障はない」
腕を組んだまま、この状況に全く動じていないルッチ。それにつられるように先ほどよりは落ち着きを取り戻しているカリファは、兵士に敵の姿がどんなだったかと尋ねた。
「まず、捕まっていた例の二人……いや、三人。一人は妙な仮面をつけていましたが、ライさんが拘束していた黒い服の男の姿も確認できました。それと、見た事のない金髪のスーツ男……計4人で……」
「そいつは例の“手品師男”と長鼻の男と同様、“麦わら”の仲間じゃろうな」
自分自身の長い鼻の事は棚に上げそういったカク。そういえば……と車両の中を見回し始めた。
「ライの奴はどこに行ったんじゃ?“手品師”を捕まえた後、姿が見えんようだが」
「報告があるとかで先に長官の元へ向かったわ」
「“手品師”が逃げ出したことは報告しなくて良いのか?」
カクのその言葉は、すぐにルッチに切り捨てられた。
「奴が勝手にやったことだ。そこまでしてやる義理はない」
それもそうかと納得したカクは、今別車両で暴れている“麦わら”の仲間たちの動向を考えることにしたようだ。
「目的は当然ニコ・ロビンの奪回、フランキーはその手伝いというところか」
「ルッチ、おれがニコ・ロビンを見張っていようか」
角のような髪型の大男であるブルーノはそう提案するが、それもルッチにすぐ「必要ない」と返された。
「フランキーをもう一度捕らえる事だけ考えろ。ニコ・ロビンを取り返す事など、あいつらには絶対にできない」
そう言ったルッチは、絶対的な自信を隠すことなく不敵な笑みを浮かべていた。
◆
次の車両に進んだ俺達の前に、最初に立ちはだかったのはワンゼというラーメン拳法男だった。なんか、麺を使って攻撃してくる変わり者である…。
ここは任せて先に行け、というサンジさんにおまかせして、俺達は上からロビンさんの車両を見つけることに。ただ、上にも動物のひげみたいなのが生えた男が待ち構えていた。今度はフランキーがおれに任せろということだったので、俺とそげキングは魔法で一時的に自分たちを透明にして、中から見つからないように各車両を外から覗き込みロビンさんをみつけることにした。
「いた!見つけましたよ、そげキング!!!」
第1車両に一人で座っていたロビンさんの姿を見つけ、すぐにそげキングに声をかける。俺の隣にやってきて同じように窓の中を覗き込んだ気配を感じて、すぐに自分たちの透明呪文を解いた。そして、俺はすぐに提案を持ち掛ける。
「じゃあ、そげキング……いや、ウソップさんお願いします」
「私の名前はそげキングだ。いや、待て。なんだね、お願いしますとは」
「ロビンさんの説得ですよ。ここは仲間であるあなたがやるべきです」
「仲間って……おれ……いや、私は仲間では……」
まだそんなことを、と多少呆れを持ちながら、少しだけ声のトーンを落としてウソップさんの肩をつかむ。
「さっきサンジさんが言ってたでしょ、ロビンさんはあなたが今どんな状況かなんて知らないんですよ。まだあなたのことを“仲間”だと思ってる。ずっと仲間として過ごしてきたあなただからこそ、彼女に話す必要があるんだ」
だって、俺は居候の身だ。俺が話をしたところで説得力なんて皆無だし、ロビンさんに響くわけがない。あと、俺にはその資格なんてない。
もう一度「お願いします」というと、仮面で表情こそわからないが、そげキングは小さくうなずいた。
納得してくれたそげキングに満面の笑みで返した俺は、もう一度そげキングに透明魔法をかけた。
結構格好良くロビンさんをよろしく!とウソップさんに頼んだ俺だったが、あの後すぐ格好がつかない状況に陥っていた。
まさか!フランキーと戦っているヤツがぶっ飛んでくるとは思わないじゃないか!!!なんとかギリギリで避けた俺は、見つからないように、そして邪魔にならないように自分にも透明魔法をかけて、汽車の横に張り付いている。ウソップさんがくれた壁に張り付ける“オクトパクツ”という道具のおかげである。両手両足に付けると、壁に貼り付けるのだ。
魔法界にあるいたずら用品専門店にも、壁に張り付ける道具があったけど、魔法がなくてもできるのかとかなり感心してしまった。ウソップさん、すげぇ⋯⋯。
ウソップさんがロビンさんの座っている場所に近い窓に張り付いているのを確認してから、すぐに透明魔法を解いた。ロビンさんに気づいてもらえるようにするためだ。
俺の考え通りにウソップさんの存在に気づいてくれたロビンさんは、驚きながら窓を開けてくれた。
「どういう事!?なぜあなた達がここに!?どうやって乗り込んだの!?」
俺とウソップさんを中に入れてくれたロビンさんだったが、歓迎はしていないらしい。かなり焦りを含みながら矢継ぎ早に質問を繰り出してきた。
ウソップさんがロビンさんの前に座ったことを確認してから、俺は少し離れたところに立ち、壁に身体を預けて2人の様子を眺めることにした。うん、口は出さない。俺はあくまで部外者だから。
「初めまして、私は狙撃の王様“そげキング”だ!!色々話すと長くなるが、君を助けにきた!!」
あ、その設定は続いてたんだ⋯⋯。そげキングで押し通そうとしている彼を見て、ここまでくると尊敬すら抱き始めている自分がいる。しかし、そんなそげキングの思惑などどうでもいいというように、ロビンさんは「長鼻くん⋯⋯!!」と普通にウソップさんとして扱うことにしたらしい。
まぁ確かに、ロビンさんがこの茶番に乗ってくれるとは思ってなかったよね⋯⋯。俺だけはそげキングの設定に乗ってあげなくては。そんなそげキングは、ロビンさんのその反応を気にすることなく口を開いた。
「私達だけではない。この列車内で今、サンジ君とフランキーというチンピラが暴れている。私達はそのスキをついてここへ来た。さらに、ルフィ君達ももう一つの海列車でこの線路を追いかけてきている。何やら大人数を引き連れてね」
「…………」
そげキングの言葉に、より表情を固くしたロビンさん。やはり、俺達のこの行動は、ロビンさんにとっては嬉しくはないようだ。
先ほど車両を探し回っているときに俺達が気づいたことといえば、この車両にロビンさんがいることともう一つ、この隣の車両にあのやばい暗殺集団がいるということだ。そげキングは、サンジさん達があの暗殺集団にぶつかる前に、ここを脱出しようとロビンさんに持ち掛けた。
早く逃げようと俺にもさっき渡してくれた”オクトパクツ”をロビンさんにも渡そうとしたそげキングだったが、それはすぐにさえぎられてしまった。
「待って……!!」
俯いていたロビンさんは少々震えているように見える。しかし、すぐに震えが止まったかと思った瞬間に、勢いよく顔をあげた。
「どうしてそんな事に……!!?私はあなた達にはっきりとお別れを言った筈よ!!?私は、もう二度と一味には戻らない!!!」
……なんと固い決意だろうか。自分を犠牲にしてでも仲間を守ろうとするその姿は、より俺の心を抉ってくる。あの時、あの海岸でもう少し気の利いたことをロビンさんに伝えられていたら、少しは何か変わったのだろうか。まぁ、そんなことを考えたところで、今となっては何の意味もないただのくだらない妄想になるわけだが⋯⋯。
しばらくそげキングとロビンさんの間で押し問答が繰り広げられていたが、いよいよ俺も参戦した方が良いかもしれない。そう思って壁から背中を話した時だった。
「何をゴチャゴチャと……」
そう言い放った声は、そげキングとしてではなかった。いつもの聞きなれたウソップさんのものだ。
「まだわからねェのか!?お前が心配する程あいつらヤワじゃねェんだ!!!」
急に口調が戻ったウソップさんに、ロビンさんは少し驚いているようだ。かくいう俺も驚いている。
「そんなくだらねェかけ引きに乗る前に!本当は一番に話してほしかったんだ!!!仲間の犠牲の上に生かされて、あいつらが喜ぶとでも思ってんのか!!?お前が一味を抜けた理由を知ったあいつらは、地獄の底でも追いかけてお前の敵をぶちのめすぞ!!!お前はまだルフィって男をわかってねェんだ!!!」
ウソップさんのその言葉は、さすが麦わらの一味とでも言うべきか。船長含めた一味のことをよくわかっているからこその叫びだと思う。しかし、やはりロビンさんはどこまでも頑なだった。
「わかっていないのはあなた達の方よ!!!私は助けて欲しいなんて思ってない!!!勝手なマネしないで!!!!」
「何ィ……!?」
まだまだ続きそうだった言い合いだったが、それは車両入り口のドアが荒くノックされたことで中断した。そうだよね!これだけ大きな声で言い合ってればバレますよね……!!!
慌てて自分だけに透明魔法をかけた俺は、息を殺して壁際に身を寄せる。ウソップさんはというと……どういうわけかロビンさんのローブの中に隠れ、これまたどういうわけか腕だけを出して変な動きをしていた……。いや、本当にどういうことなの……?
どちらかというとロビンさんがウソップさんを隠した、という方が正しいのかもしれないけど、うん、やっぱりどういうことなの⋯⋯?
俺からすればかなり怪しいその光景。多分、誰が見ても怪しいとは思う。それは様子を見に来た兵士と同様で、かなり怪しんでいるようだった。だが、これまたどういうわけか、怪しみながらもなぜか隣の車両に戻っていったのだ。逆に怪しすぎて大丈夫だったとか、そういうことだろうか⋯⋯?
危機を何とか脱したことには安心するが、どうしてもロビンさんを説得することができない……。そして、やはり俺の説得など薄っぺらいもので、援護射撃にもなりはしなかった。あまりにも頑なすぎるロビンさんに、俺とウソップさんは顔を見合わせる。これはどの敵を倒すよりも、もしかしたら難しいミッションかもしれない……。
いざとなったら惜しみなく魔法を使おう……。
そう決意した俺が、再びルフィさん達と合流するまで、あと少しーーーーーー。