ポジティブ焦凍くん 作:フレイザードさん
「何が起きても私が責任を取る。遠慮なくその力を奮ってくれ」
ヴィラン連合のアジトと思われる場所へオールマイトたちと一緒に向かった焦凍くん。まだ焦凍くんは学生の身で個性を使用するための免許も持っていないのですが、そこは平和の象徴オールマイトの許可のもと個性を使用しても良いという事になりました。
そうは言っても無差別に攻撃していいわけではないので、基本的にはオールマイトと共に立ち回り爆豪くんを探しています。未だ片腕の状態のオールマイトですので、義手を付けてパワーアップするまでの間くらいは焦凍くんが右腕代わりをしようという考えからでした。
そこで焦凍くんは悪の象徴とも呼べる存在と相対します。
かつてオールマイトが倒したはずのヴィラン……頭を砕き死んだと思われていた男がその姿を現したでのす。数々の悲劇の演出者である悪の象徴、オールフォーワンの姿を見た焦凍くんは「これがヴィランか……」と禍々しいとさえ言えるそのヴィランに戦慄していました。
今まで見てきた個性犯罪者としてのヴィランではなく、まさに『悪』と呼ぶに相応しい雰囲気を感じ取った焦凍くん。オールマイトからこのヴィランとの因縁を少しばかり教えられ、まさに人知れず巨悪と戦うオールマイトは平和の象徴だったんだなと尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
古来より囚われのお姫様を救い出したり、悪の組織と戦ったりするのは子供たちの憧れです。当然焦凍くんも人々を助けるという思いは持っていましたが、おとぎ話のような事が現実に起こるとは思ってもいませんでした。
「今の私がオールフォーワンに勝てるとは限らない。轟少年、同じ事を繰り返すようだが君の力を貸してほしい」
生きている懸念はあったものの、まさかオールフォーワンがこの場に出てくるとはオールマイトも思っていませんでした。オールマイトが焦凍くんに協力を頼んだのは、確実に爆豪くんを助けるためなのです。そこにどんな罠があろうと既に完成されている戦闘力の高さを持つ焦凍くんならば、他の生徒たちと違い無謀な真似はしないだろうという思いからでした。
そんな中で現れた宿敵の存在…もちろん今度こそ倒すという覚悟はあります。しかしたとえ両腕が健在だったとしても、ワンフォーオールを譲渡した今の自分で倒せるのかという懸念がオールマイトの中でありました。その懸念を払拭してくれたのが隣にいる焦凍くんの存在なのです。
もちろん頼り切るつもりはオールマイトにはまったくありません。しかし対オールマイト用という過剰すぎる威力の必殺技を持つ焦凍くんの存在は、目の前にいる巨悪の相手にするのにはとても心強いものでした。
「オールマイト、まさか片腕を失っているとはね。君がそこまでになるなんて、一体誰にやられたんだい?」
「新しい時代に賭けてきただけさ。そして古い時代は…今日をもって幕を閉じるんだ」
まさに宿敵同士という間柄で言葉を重ねていく2人の象徴。焦凍くんも空気のように2人の様子を見守っています。オールフォーワンも焦凍くんの事は知っていましたが、オールマイトが目の前にいる現状ではそこまで警戒する相手と見ていないようです。
そして遂に平和の象徴と悪の象徴がぶつかり合い、熾烈な戦いが始まりました。オールフォーワンは超常黎明期から個性をストックしてきた存在なので、多彩な個性を駆使してオールマイトを追い詰めていきます。しかしオールマイトも負けじと命の炎とワンフォーオールの残り火を燃やしながら悪の象徴を打ち倒すべく戦っていました。
互いに全盛期の力は出せないまでも互角の勝負を繰り広げていたのですが、やはり片腕を失っているオールマイトのほうが不利であり、段々と勝敗の天秤はオールフォーワンへと傾いていました。長い時間を思わせるほどに濃密な戦闘の末、オールマイトは膝を付き息を荒くしています。右腕を失って日が経っていない以上、身体のバランスから戦い方から全部が馴染んでいないので均衡しているだけでもすごい事なのです。
戦闘の趨勢を見守っていた焦凍くん。本来の焦凍くんならば「今からこの不利な状況を覆して巨悪を討ち倒してくれる」と勝手なハードルを立てて期待しているだけなのですが、オールマイトから「君の力を貸してほしい」という言葉をかけられて共に巨悪と戦うという事に驚くほど気持ちが高揚していました。そしてそんな焦凍くんはオールマイトを庇うように悪の象徴の前へと立ち塞がります。
「ほう…僕たちの戦いに割って入ろうだなんて、随分と命知らずな子供もいたものだね」
「お前らには伝えてあるはずだ。お前たちのその道の先には…オレがいるってな」
「君がそこで膝を付いているオールマイトに代わって僕を倒すとでも言うのかい?」
「今のオレはオールマイトの右腕(代わり)だ。そしていずれNo.1ヒーローとなる」
「なるほど…君が
戦う前に言葉を交わす焦凍くんとオールフォーワンですが、話は噛み合っているのに真意は伝わっていません。焦凍くんとしては『オールマイトと一緒にお前を倒してやるぜ』という宣言としているつもりです。しかしオールフォーワンにとっては『右腕だ』という言葉とこの場にオールマイトと一緒にいるという事実から、次代の平和の象徴を担う子供なのだと認識していました。
これはオールフォーワンの人違いなのですが、本当のワンフォーオール継承者が現在絶望の淵にいるのできっと見ても気付かないでしょう。
目の前の巨悪から発するプレッシャーは大きいものですが、そこは今までNo.1ヒーローとNo.2ヒーローとばかり戦っていた焦凍くんです。並のヒーローならば竦んでしまい為す術もなく蹂躙されるであろう悪の象徴を前にしても揺るぐ事はありません。そしてまさに今、目の前で行われた戦闘を見ており全力で持てる全てを使用して倒すと決意していました。
次代とはいえまだ子供だと侮っていたオールフォーワン。自分が育てている次代の事も考えればその認識は決して間違ってはいなかったのですが、焦凍くんの人差し指が向けられピカッと光ったかと思ったら胸を貫かれていたという事実に考えを改めるしかありませんでした。
「ぐっ…一体何をしたんだい?光を操るか何かかな?」
2度3度と向けられた人差し指が光る度に何かに身体を貫かれ奇しくもオールマイトと同じように膝を付いているオールフォーワン。ここにきて相手の実力を見誤っていた事を認めるしかありません。まだまだ未知の個性はたくさんあるな…という知識欲と、このままでは負けてしまうな…と冷静な頭で考えるオールフォーワンは搦め手を使用することにしました。
膝を付き片手も地面に付けていたオールフォーワンは『触手』の個性をメインに複数の個性を発動させ、地中から気付かれずに離れていたオールマイトを捕まえ人質としたのです。これにはオールマイトも焦凍くんもビックリです。
「ククッ、形勢逆転かな?君の個性は興味深い…ぜひ僕にその個性をくれないか?」
「轟少年っ!私の事はいい!このままオールフォーワンを倒すんだ!!」
焦凍くんに向かって「手だけでなく指も上に向けてこっちへ来い」と具体的に指示するオールフォーワンと「自分の事は気にせず戦え」と言うオールマイト。人知れず巨悪と戦っているだけでなく囚われのお姫様役まで熟してくれるとは流石平和の象徴です。そして焦凍くんの頭の中ではかつて職場体験の時に遭遇し、女の子を人質を取っていたヴィランを思い起こさせました。
あの時は結局大して役に立てなかったので、次こそはという思いは焦凍くんの中にあったのです。言われた通りに手を上に向けてゆっくりと歩いてオールフォーワンに近づいていく焦凍くん。このままでは自分が原因となりオールフォーワンが焦凍くんの力を奪ってしまう…と必死に声をかけるオールマイトですが、焦凍くんはその声には耳を貸さず手を伸ばせば触れられるほどの距離の位置まで近づいてしまいます。
「それでいいんだよ。君だってオールマイトをこのまま失いたく」
次代といってもまだ子供…と起死回生の一手がうまくいって内心ほくそ笑むオールフォーワン。まさに手を伸ばし焦凍くんの個性を奪おうとしたその時、焦凍くんの目が光りオールフォーワンは地面に向かって倒れていました。
「……え?」
そのままオールフォーワンと一緒に地面に倒れたオールマイトですが、なぜ突然オールフォーワンが倒れたのか理解できていません。オールフォーワンを見てみると頭に2本の穴が空いているのですが、焦凍くんは手も指も上に向けていたのでメドローア(指)ではないはずなのです。
「轟少年、君は一体何をしたんだい?」
「メドローアですよ」
焦凍くんが説明するには、かつてエンデヴァーの事務所で職場体験をしていた時に所員さんたちが話していた内容を参考にしたらしいのです。エンデヴァーの見た目も犯罪抑制に一役買っているという中で『目で殺す』という表現があったのを焦凍くんは聞いていました。
そこから編み出されたのがメドローア(目)、つまり『目ドローア』だったのです。
比喩表現がまさか現実になるとは、エンデヴァー事務所の所員さんも予想していなかったのでしょう。誰も目から怪光線が飛んでくるとは思わないですし、悪の象徴オールフォーワンですら考えつかないような事です。それを聞いたオールマイトは「エンデヴァーの事務所はエンデヴァーだけじゃなく所員までなのか……」と少々呆れております。しかし目ドローアで倒したということは、ある意味ではエンデヴァーがオールフォーワンを倒したと言っても過言ではないかもしれません。
こうして悪の象徴は倒されたのでした。
オールマイトとしても因縁のある宿敵を倒せて、しかも生き残れているので言うことはありません。命を擲つ覚悟までしていたのですから当然の事でしょう。あとは拐われた爆豪くんを助け出し、ヴィラン連合を捕まえればいいと考えればまだまだ気は抜けませんが、肩の荷が少し軽くなった気分でした。
結果的にですが、今まで何度も模擬戦の相手をし、対自分用という過剰な消滅ビームを何度も向けられていたのも今の状況を思えば必要な事だったんだな…などと思います。対平和の象徴の必殺技は立派な対悪の象徴の必殺技になってくれたのですから。
「轟少年、本当にありがとう」
今この時だけは、素直にお礼を伝えておこう。まだ全てが終わったわけじゃないのだから…ワンフォーオール継承者である緑谷くんに、先代たち含め自分の代でオールフォーワンとの因縁を終わらせる事ができたオールマイトはそんな事を考えているようで少々燃え尽き症候群に罹っているようでした。現状まだまだ問題は残っており、ワンフォーオールの継承者である緑谷くんが現在進行系で精神を病んでいることなどあるのですが、そこはプルス・ウルトラの精神も一緒に継承されているものと信じる事にしたオールマイト。
ヴィラン連合もまだ残っている現状、まだまだ平和とは言えないかもしれません。
それでもきっと、次代を担うヒーローの卵たちはプルス・ウルトラの精神で乗り越えていくでしょう。
緑谷くんも爆豪くんも、みんながオールマイトに憧れ、オールマイトの背中を見てきたのです。
焦凍くんもまたオールマイトとの関わり方自体は歪なものでしたが、その姿にまさしくヒーローを見たのでした。
これからも彼は次代の卵たちを見守っていってくれることでしょう
ありがとうオールマイト
まだ何も知らない焦凍くんは、きっと義手を勧めたり模擬戦闘を頼んだりしてくることでしょう
がんばれオールマイト
あなたへ寄せられる期待は絶大なものなのです…それでもきっと応えてくれると信じています
もしオールマイトが引退するとなれば、No.1の座は繰り上げでエンデヴァーになります
きっとオールマイトは笑顔でエンデヴァーに後を任せるでしょう
今までオールマイトとエンデヴァーで分散されていたメドローアがエンデヴァーに集中する事になるでしょう
しかし、きっとエンデヴァーも本望のはずです
子が親を超えNo.1になるというのは、それはそれは素晴らしい事なのですから……
もしかしたらエンデヴァーは必死で常識や倫理を教えるかもしれません
その中でエンデヴァーも、自身を省みて常識人へと生まれ変わるかもしれません
まだまだ高校1年生でヒーローの卵な焦凍くん
きっとこれから起こる様々な経験を経て立派なヒーローになってくれる事でしょう
がんばれ焦凍くん、ヒーローへの道はまだ始まったたばかりなのですから…
FIN
焦凍くんの必殺技
メドローア…とある大魔道士が使用する極大消滅呪文そのまま
メドローア(指)…とある宇宙の帝王がナメック星で使ったものをイメージ
メドローア(掌)…片手で普通にメドローア撃っても類似になるので照射にしたもの
メドローア(目)…とあるナメック星人が序盤に使用していた怪光線をイメージ
メドオーラ…竜闘気をイメージ
炎は大魔王様のカイザーフェニックスを出そうか悩んだ結果見送り
氷は氷雪系最強の斬魄刀能力のような感じにしようかとしたが結果見送り
次は『一体いつから個性を遣っていないと錯覚していた?』が始まります