戦いというのはほとんどの場合、記録にしか残らない。
これは大戦中に起きた一つの戦いを描いた物語。
シェアワールド企画「クロスナ・ウォーワールド」についてはこちらのwikiを参照
https://w.atwiki.jp/crosnaworld/
果たしてタグはどうしたらいいのだろうか悩みます。
惑星クロスナ。
科学と魔法の文明が興る星。
かつてこの星は前紀文明と呼ばれる古代超技術文明の二大勢力が栄えていたが、自律兵器の暴走を遠因に互いに最終戦争を引き起こして滅亡。
それから数千年後、瓦礫の山から新たな文明が築き上げられる。
惑星の裏半球は自律兵器らによって掌握された一方で、
表半球は新たな人類の領域として、
科学技術を主体とする科学文明圏、
魔法技術を主体とする魔法文明圏にその多くが二分される。
そして、
東にある魔法文明圏の長である神聖アルヴィス帝国。
西にある科学文明圏の長であるヘルザンフィア中央連邦。
この2つの大国によって
約50年の長きに渡って戦いが投じられた。
これはその大戦の間に行われた数ある戦いの記録にしか残らない一つの戦いである。
表半球は北極に接するアルテノ大陸、西にあるべラーシャ大陸、東にあるディンゼリア大陸、そして赤道から南にある複数の小大陸や島々によって構成されている。
この内、べラーシャ大陸とディンゼリア大陸は回廊と呼ばれる大陸と比べれば細い地形によって繋がっており、この地域は大戦の主戦場の一つとなった。
回廊とアルテノ大陸の間にある海は環礁となっており、かつてアルテノ大陸、べラーシャ大陸、デインゼリア大陸を巻き込んで一つの大陸となっていたのを前紀文明が最終戦争の折に戦略兵器によって真っ二つに引き裂いて海を作り出したとも言われている。
回廊の北岸に面するトゥセント海の西側を航行する戦隊が一つ。
戦艦4隻、巡洋艦6隻、駆逐艦6隻を数えるヘルザンフィア中央連邦海軍東部艦隊所属第11戦隊は遠洋の哨戒任務行動に従事していた。
ヘルザン級戦艦「リレンザフスク」を旗艦として、レ二ア級戦艦1隻、サン・パズク級戦艦2隻、アスゼル級大型巡洋艦1隻、スヴァチェスク級重巡洋艦2隻、
アル・ロノフ級重巡洋艦1隻、リ・パローナ級軽巡洋艦2隻、チェバティ級駆逐艦6隻で構成される艦隊であり、特に作戦行動などではなく、差異はあれど大戦中の対空中艦ドクトリンに基づく戦隊における通常の艦隊構成である。
「駆逐艦クリフキーの隊列が乱れています!」
リレンザフスクの艦橋で観測員が1隻の駆逐艦を見て、艦橋内部にも届く大声を上げる。
「……大半が新人クルーで艦長すら新人の艦であったな、仕方ないか……」
エスタノン・マシルス海軍少将は報告を聞き、ため息混じりに独り言をぼやく。
だが、艦隊前方の更に先、その上空に神聖アルヴィス帝国空中魔導艦隊がいた。
リベラス級空中魔導戦艦3隻、ノルヴェーヌ級装甲魔導艦1隻、クレメーヌ級空中魔導重巡航艦5隻、カン=ティール級装甲魔導巡航艦2隻、ブロヴィニー級空中魔導砲艦5隻、アルレー級装甲魔導砲艦3隻という陣容を揃える神聖アルヴィス帝国第5上級艦隊第4艦隊群であった。
神聖アルヴィス帝国はこの空中艦隊をもってディンゼリア大陸の小国から大陸一帯を征服した大国に伸し上がったとも言われている。
彼らの艦艇は風属性浮遊系魔法『
水上艦とは一線を画す形状で、艦首は側面から見ればひし形の上部のような特徴を持ち、全体的に四角く角張った特徴を持つ。
旗艦であるリベラス級空中魔導戦艦「バティスト」に座乗するレナルデ・ラエジール少将は眼下の光景を眺めていた。
第4艦隊群の任務は敵陸軍及び敵海軍の漸減にあった。
神聖アルヴィス帝国において国威発揚やその他要因によって行われる大規模作戦であるが、年毎に行うには物資消費量等の理由で行うことはできない。その間に戦線維持や本土防衛を担う艦隊以外は半分の意味で放置状態に置かれるために、通商破壊も含めて作られた任務の一つであった。
「見つけ次第か……場当たり的だが、確かに漸減は必要な任務だな。気を引き締めていこう」
その時、雷属性探知系魔法『アクネキシス』の観測装置を担当していた乗組員が声を上げる。
「物体反応を補足!大型戦艦1隻含め16隻の艦隊を確認!未確認艦隊です」
「敵だな。全艦に魔法通信、『敵が現れた、交戦用意』と」
ラエジールはそう確信をもって告げる。
実際、その確信は事実となった。
そして、第4艦隊群が見つけたと共に、第11戦隊も同じように相対する敵をレーダーで補足した。
戦闘準備が発令されると、各艦の艦内は共に慌ただしくなり、各砲塔では射手が主砲の仰角を上げる操作を行う。
「こんなところで遭遇するとはな。空軍の援護も近くはない。まさに艦隊同士の殴り合いということか」
「はっ、しかし本艦の53㎝砲で敵を吹き飛ばして見せましょう」
「……ふっ、そうだな」
マシルスは部下との会話を半ば聞き流しつつ答えるが、内心では苦々しい思いを抱えていた。
それを表すように、机の上に指をつつき始める。
(そうは言うが、典型的に空からの攻撃が有利ではあるのは明白だ、無論昔よりは射撃制度も向上し命中させることが可能なのだが……)
「敵艦隊、急速接近!」
「何ーー」
突然だった。
レーダー手の報告に誰かが答えた直後、外に轟音が響き渡る。
有効射程外のはずであり、当てる気すらなかったのだろうか、外縁の駆逐艦から少し離れたところに氷の柱が出来上がっており、その氷はやがて少しずつ溶けていった。
「敵艦隊外縁に着弾」
「わかった。各塔、座標修正せよ」
「バティスト」の艦橋にて観測士の報告から射撃指揮官が指示を繰り出す。
「発射魔法は?」
「同じ水属性第3式で構わん」
「了解!」
射撃指揮官の質問に、ラエジールは淡々と答える。
「水属性第3式、自動詠唱開始!」
やがて、上部甲板にある水晶玉のような形をしている魔法投射塔から玉内に充填されている魔力を発射方向に展開された魔法陣を通じて魔素に変換され、その魔素はすぐに青白く変化し水属性第3式、水属性魔法『
「……全艦、放てぇ!」
その掛け声とともに、リベラス級「バティスト」含めた3隻からは水属性第3式、他の後続艦からは火属性第1式、炎属性魔法『
『フォールグラッセモォンテ』によって狙われたのは戦艦ではなく、その周りにいる巡洋艦及び駆逐艦であった。
巨大な氷塊を見て即座に迎撃することが叶わないとみるや回避行動に移った駆逐艦の艦長は優秀だろう。しかし、新人クルーが多い「クリフキー」はその行動が遅れ、氷塊が直撃することはなかったものの、海面へ落着した氷塊は衝撃波は生むとともに空気を瞬間冷却させるほどの冷気を発し、冷気に巻き込まれたその艦の機関は凍結し動かなくなってしまう。
『ニスプレージェン』の火球は海中に没するものもあれば、巡洋艦の舷側に着弾したり、サン・パズク級戦艦「アストランシア」の副砲塔の一部を損壊させる被害をもたらした。
『ほ、本艦機関停止!』
無線での「クリフキー」の悲痛な報告を聞いたマシルスは思わず顔をしかめる。
(動かなくなった駆逐艦など、的同然だ。だが、救助活動などこんな状況ではできん。なれば……)
「本艦は、敵先頭の戦艦クラスを狙う。各艦は各自の判断で目標を選定し発砲せよ」
「主砲諸元修正!まぐれ当たりでも構わん!敵艦のどてっ腹に1発お見舞いしてやれ!我々がむざむざ敗れることはない!」
マシルスが新たな命令を発し、艦長の声に多くの士官が呼応し士気が上がったように見えた。
「炎属性第1式に切り替えろ、戦果としては小さいがあの小型艦を確実に仕留める」
ラエジールがそう言うと、射撃指揮官の命令によって「バティスト」の第1魔法塔、第2魔法塔の水属性詠唱筒が取り外され、その代わりに炎属性詠唱筒が取り付けられる。
バティスト除くリベラス級「ローエンラウト」、「ラ・メーヌ」以下の艦艇は同様の攻撃を継続。
「バティスト」は少し遅れ、炎属性魔法『二スプレージェン』を充填し、すぐに発射可能となろうとしていた時。
轟音が響き渡る。
「リレンザフスク」の53㎝3連装主砲3基9門の一斉射が「バティスト」に対して行われた。
命中するかはさて置いたとしても、その威圧感は凄まじく、操舵手は直ちに回避行動に移ったため、魔法の着弾座標がずれ発射できなくなってしまう。
さらにまぐれではあるが、53㎝砲弾の1発が「バティスト」艦首部分に命中、土属性防御系魔法『
「ちっ、やはり脅威を排除するのが優先か。照準変更、目標敵大型戦艦。第1、第2魔法塔は座標修正次第発射、他は炎属性第1式に切り替えろ」
「了解です」
約20秒後、「バティスト」は「リレンザフスク」に対して、第1魔法塔から第5魔法塔の『ニスプレージェン』の順次発射を開始した。
巡航艦クラスならまだしも、戦艦クラスともなればその威力は絶大であり、さすがに初撃で命中を見込めなかったものの、海中に撃ち込まれた火球は余りの熱量に火球に触れた部分の海水を蒸発させる。
その着弾と同時に、「リレンザフスク」が全門斉射を行った。
しかし、まぐれ当たりが何回もあるはずがなく、通り過ぎた砲弾は艦から離れた空中で爆発する。
続く第2射、第3射と両艦ともに命中は出ず、第4射で「バティスト」は早くも命中を得る。
「リレンザフスク」の右舷中央部に命中した2発の『ニスプレージェン』は大きな爆発を起こし、両用砲や機関砲塔を吹き飛ばす。
「おぉぉ!!」
「バティスト」の艦内は敵艦より早く命中させたことに歓声が上がり、士気が上がる。
「慢心はするな、まだはじまったばかりだ」
その声にラエジールは未だ険しい表情のまま、歓声を諫める。
リレンザフスク艦橋
「被害報告!」
「右舷両用砲と機関砲塔の一部が損壊、詳細はまだ……」
「いや、いい。艦内に乗員を退避させろ。現状、敵翼竜が出てきてない以上、敵艦にダメージを与えられない両用砲にいても無駄だ」
「はっ……」
報告を聞き終え、マシルスは前方を見る。
艦橋から見えた光景は、第一、第二主砲が装填を終え、ちょうど仰角を上げていたところだった。
第4射まで命中を得ることができず、先ほど斉射した第5射では至近で爆発したに過ぎず、有効打を与えることはできていない。
「全砲塔発射準備完了!」
「撃てぇ!」
射撃指揮所から無線で各砲塔に指示が行き、轟音とともに斉射される。
発射された9発の砲弾は弧を描く用に飛び、「バティスト」の横っ腹に突き刺さる。
爆音が轟き、『バスティミュール』によって防がれるが、その防壁は大きく凹んでいた。
「両方とも命中を得た。これからはどちらが先に倒れるかの勝負だな」
「はっ」
マシルスはそう言い切り、艦橋から「バティスト」をにらみつける。
次弾装填がされ、第7射目が放たれる。
既に「バティスト」からは7射、8射目と放たれていたが、甲板上の物体が吹き飛ばされたり、小規模の火災が起きていた程度で致命的な損害ではなかった。
飛翔した砲弾の内4発が命中コースに乗り、防御力が低減していた『バスティミュール』に直撃して2発のみがそれを食い破り、艦尾と艦中央部に命中し、迎撃用魔法塔などを薙ぎ払う。
バティスト艦橋
ラエジールは被害報告を半ば聞き流しながら、眉をひそめ「リレンザフスク」を見つめる。
「いかがしますか?修復は一応可能ですが……」
「この程度の損害で使うのはまだ早い、魔力がもったいないだろう」
「はっ……」
部下の提言を吐き捨てると、一歩踏み出し命令を下す。
「第1、第2魔法塔は土属性第2式に切り替えろ、第3から第5は同式を継続、照準は敵艦前部に集中、あの主砲を黙らせろ」
「はっ、土属性第2式の充填急げ!」
ラエジールの命令を射撃指揮官が各塔へ伝達する。
その約20秒後程度で土属性第2式、土属性魔法『
1射目は座標修正の為に全て外したものの、2射目から『ロッシェオービェル』の大きな質量と爆風が前部甲板に集中するようになり、『ニスプレージェン』によって副砲群は薙ぎ払われ、火災が発生するなど無残な姿となりつつあった。
そして、第5射目で『ロッシェオービェル』の着弾とともに、「リレンザフスク」の艦内に鈍い音が響き渡る。
リレンザフスク
「損害報告......!第2砲塔第3砲身が……折れています……。また、この余波により第2砲身にも歪みが生じています……発射可能なのは第1砲身のみ!」
艦橋から音の正体を確かめた参謀が報告をもたらす。
「なんだと……」
その報告にどの損害にもほぼ整然としていたマシルスの表情も驚かざるにはいられなかった。
さらに悲痛な報告がもたらされる。
「アストランシアより報告!本艦機関損傷!速力低下により戦列を離れるとのこと!」
互いの旗艦同士が砲撃戦を展開していた間、それぞれの艦隊構成艦も交戦を行っていた。
レニア級戦艦「トレンテ」はリベラス級空中魔導戦艦「ローエンラウト」との交戦を行っており、46㎝砲をもって敵を叩こうとするも、そううまくは行かなかった。
「ローエンラウト」が放った『フォールグラッセモォンテ』によって、3番砲塔丸ごと氷漬けにされてしまい、砲火力の3分の1を失っている。
さらに水属性第2式、水属性魔法『
「忌々しい……!氷によって我々を弄ぶなど……!」
「しかし、我々も敵に相当な打撃を加えています。そろそろお遊びにも限界がきているでしょう」
実際にその通りであり、「ローエンラウト」も無視できない損害を負っていた。
後方上部甲板と下部甲板にある第3魔法塔と第5魔法塔が破壊されてしまい、発射できるのが前部の魔法塔のみという状態となっていた。
だが、その状態を「ローエンラウト」自体が把握していないわけがなかった。何射目かも分からない水属性魔法の発射の後に充填状態に入るが、充填されたのは水属性ではなく炎属性魔法であり、残る3基の魔法塔から『ニスプレージェン』が発射され、氷漬けにされた第3砲塔に着弾する。
極度に冷えた物体は鉄であっても脆くなる性質であり、それが衝撃を受けると共に極度に熱せられればどうなるかは明らかであり、第3砲塔の弾薬庫が炎によって誘爆し、文字通り第3砲塔は空中に吹っ飛んでいった。
その後方で交戦しているのはサン・パズク級戦艦「ミダエフスキー」、「アストランシア」と、リベラス級空中魔導戦艦「ラ・メーヌ」、ノルヴェーヌ級装甲魔導艦「リレンヌ」のグループであった。
サン・パズク級自体、リベラス級の主砲威力と同等もしくはそれ以下と推測されており、飛行できない為に単艦同士の戦闘は劣勢であり、2隻単位で交戦を行っていた。
対して「ラ・メーヌ」にとって、気掛かりなのは僚艦である「リレンヌ」の存在であり、ノルヴェーヌ級装甲魔導艦はリベラス級の前世代艦であった。
だが、リベラス級と並んで実戦運用できる改修は行われており、「ミダエフスキー」、「アストランシア」から少なくない損害を受けたものの致命的な損害は受けず、「ラ・メーヌ」が水属性第4式、水属性魔法『
戦艦同士の殴り合いが神聖アルヴィス帝国側の優勢に見える一方で、巡洋艦戦隊と巡航艦群の交戦は神聖アルヴィス帝国巡航艦部隊が痛い目にあっていた。
その原因として、アスゼル級大型巡洋艦「フェーベスク」が予想以上の奮闘を見せていたことであり、既にアルレー級装甲魔導砲艦2隻が狩られており、そしてまたブロヴィニー級空中魔導砲艦が30㎝砲によって撃破され、カン=ティール級装甲魔導巡航艦が砲撃を受け片舷中央部から大きな黒煙を吹いていた。
『本艦、機関に損傷を受け、フェーティルプリューム機構の出力維持できません、浮遊翼減衰します!』
1隻のカン=ティール級がその通信とともに高度を下げる。
このような奮闘により、スヴァチェスク級重巡洋艦、
アル・ロノフ級重巡洋艦、リ・パローナ級軽巡洋艦はおろか、チェバティ級駆逐艦さえも奮戦に加わる。
対して神聖アルヴィス帝国側はクレメーヌ級空中魔導重巡航艦を中心に『ニスプレージェン』や『フォールグラッセモォンテ』の攻撃を加え、駆逐艦2隻を沈め、リ・パローナ級1隻の戦闘能力を奪い、アル・ロノフ級「ナルエフ」を中破炎上させるなどの被害をもたらしていた。
だが、「フェーベスク」の猛撃を止めることができずにおり、高度を下げたカン=ティール級1隻へとスヴァチェスク級とともに砲撃を行い、フェーティルプリューム機構が損壊したカン=ティール級は海上へと墜落する。
このような事態の為、巡航艦部隊を束ねるクレメーヌ級空中魔導重巡航艦「エルブリック」は旗艦へと援護を要請した。
バティスト艦橋
「いかがしますか?」
「こちらは負けてはいないものの、余裕が無いのだが……」
「しかし、ラ・メーヌとリレンヌが敵戦艦1隻を落伍させました、1隻回してはいかがでしょうか?」
「落伍しただけだ、戦闘能力は残っている。しかも、その敵戦艦1隻が落伍したとなると、後続の敵艦部隊と合流するだけだ、エルブリックにとっては厄介事は一つ増えるだけであろう」
「では……?」
「召喚式魔法の発動準備、属性は火に固定」
「了解です」
艦橋の奥で部下がある魔法具の操作を行いレバーを引くと、後部上甲板に大きな魔法陣が描かれる。
機関から魔力が流れ、魔法陣に元に向かうにつれてその輝きは増し、やがてラエジール自身が自分の席に設置されたレバーを引くと、その輝きは光となり巨大な塊を形成する。
その光が晴れた時、そこには大きな翼をもった竜が現れた。
「火属性召喚獣『メヴァラ』か……巡航艦部隊の救援へ迎え」
「バティスト」から放たれる使役魔法によって『メヴァラ』は使役者であるラエジールの命令に従い後方へと赴く……その前にお土産とばかりに8つの炎の塊を生成し、『ニスプレージェン』8発を「リレンザフスク」に向けて斉射した。
「うぉぉぉ!?』
その斉射した衝撃は凄まじく「リレンザフスク」の甲板はしばらく揺れが続いた。
巡航艦部隊の救援に赴いた『メヴァラ』は蹂躙を開始したとは行かないものの、ヘルザンフィア巡洋艦戦隊に射撃方向を絞らせないなどの混乱をもたらし、クレメーヌ級空中魔導重巡航艦に反撃の機会を与えた。
リ・パローナ級1隻を撃沈寸前までの被害を与え、駆逐艦を追加で1隻沈めていく。
だが、『メヴァラ』へと命中させることができないと悟った「フェーベスク」の艦長はクレメーヌ級の1隻に対する砲撃命令を下す。
「薙ぎ払え!」
「フェーベスク」と共に他の重巡洋艦3隻がクレメーヌ級の1隻へと砲撃を集中させる。
「エルブリック」の僚艦は回避行動など取れるはずもなく、大きな被害を受けて高度を下げて墜落する。
その間、『メヴァラ』は落伍していた「アストランシア」を狙っていた。
同型艦である「ミダエフスキー」が護衛していたが、艦艇ではなく竜らしき物体が襲ってきたことに反応が遅くなり、『メヴァラ』は「アストランシア」に対して『ニスプレージェン』を連発し、偶然『ニスプレージェン』が後部主砲に集中したことで余りの熱量に主砲が融解、弾薬庫に誘爆して爆発を起こす。
さらに前部甲板、艦中央部にまで連続で撃ち込んだ上で、口からは多量の炎を吐き出して艦全体で火災を発生させた。
だが、『メヴァラ』は集中する余り、その横にいた脅威に気が付けなかった。
「仰角最大、今が撃ち落すチャンスだ!撃てぇぇい!」
42㎝3連装砲3基9門から撃ちだされた砲弾は咄嗟に気づいた『メヴァラ』によってそのほとんどが避けられる。
だが、1発だけがその片翼に命中し引き裂いた。
言葉にはできない悲鳴を上げつつ残ってる片翼で飛び、「バティスト」へと戻った『メヴァラ』は安らぎを得たかのように眠り、光の塊と変わり霧散する。
「撤退だな。全艦回頭用意!」
それを見てたラエジールは
「しかし、我々はまだ……」
「召喚獣など魔力がある限りいくらでも生成できる。だが、人は何物にも代えられない命だ。無駄にはできん」
「はっ……分かりました。全艦に撤退命令を伝達します」
抗議しようとした部下であったが、彼が聞く耳を持たないのを確信し、素直に命令に従った。
「戻ったら上に抗議しなくてはな……数合わせ、定数が足りないとはいえ旧式艦を充てるのは間違いだ、現にこの損害が証明している。ああ、そうだ。海上艦隊に伝達してくれ、撃破された艦艇の救助を要請したいと」
「ですが、目印がありません」
「そうだな、ラ・メーヌとエルブリックを救助活動支援目的でおいておこう」
神聖アルヴィス帝国第5上級艦隊第4艦隊群はヘルザンフィア中央連邦海軍第11戦隊と北進しつつ同航戦を行っていた進路を東へ回頭、後方を戦艦群で固めることによって絶対に手出しさせないぞという意思を示しつつ、撤退していく。
リレンザフスク
「敵艦隊、後退していきます」
「引いたか……あの2隻はおそらく救助活動だろうな」
マシルスは神聖アルヴィス帝国艦隊の様子を艦橋から見つつ、そう発言する。
「追撃しますか?」
「それはできん。我々の側にも沈んでしまった艦はいるのだ、救助活動を実施後、我々は帰港する」
マシルスは参謀の決まりきった質問を吐き捨て、救助活動を命ずる。
約2時間後に完了した後、ヘルザンフィア中央連邦海軍第11戦隊は西へと進路を向けた。
こうして記録にしか残らない数ある戦いの一つ、当人達からすれば壮絶な戦いであった会戦は終結した。