いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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No.132 昆虫の王

 

「あれェ?カザリ?それと、ウヴァ……あ、オーズもいる!」

 

「やあガメル。君も復活したんだね」

 

「ンー?あ、俺…確か王様に取り込まれて……カザリ、メズール…。メズールはどこ?」

 

周囲に立ち尽くすカザリ、ウヴァ、オーズが視界に入り、状況を整理しようとガメルは頭に手を置いて考え事をするが、もう1人のグリード・メズールの名を呼びながら辺りをキョロキョロと探していた。

そこに、ウヴァはハッとしてガメルに呼び掛ける。

 

「おいガメル!メズールなら映司に頼めば復活するぞ!」

 

「あ、ウヴァ。ん〜?エイジ?エイジって誰だ〜?」

 

「あァ!?オーズだオーズ!」

 

「あ、オーズか〜!……でも、ウヴァ。何でオーズの隣に立ってるんだ〜?オーズは敵だろ?」

 

「訳あって味方だ!今の敵はカザリだ!」

 

記憶を無くしている火野は、初めてガメルを目の当たりにするが、その言動を聴いている限り、頭が良さそうには思えないと感じ取る。

ウヴァは説得して、ガメルを味方に付けようと試みるが、カザリは「フッ」と鼻で笑い、口を開いた。

 

「ねえガメル。ウヴァはあのオーズと一緒にいるんだよ?どう考えてもおかしいでしょ。それに、メズールなら()()だよ」

 

「ン〜?…あー!メズールのメダル!」

 

「!」

 

カザリが手に持っているのはメズールのコアメダルの1枚、シャチのメダルだった。それを見たガメルの表情はそっちに向いてしまい、ウヴァはしまったと言わんばかりに動揺する。

 

「ウヴァは裏切ったんだ。だからオーズと一緒にいる。僕と組めば、メズールも直ぐに復活させる事が出来るよ?どうする、ガメル?」

 

「わかった!俺、カザリと一緒に行く!」

 

「なっ!?おいガメル!」

 

「ガメル、ウヴァとオーズは僕たちの邪魔をしてるんだ。当然、メズールのコアメダルも奪おうとしている」

 

「なら!俺が倒す!!メズールは渡さない!!俺が守る!!」

 

「何故そうなる!?お前が復活したのも映司のおかげなんだぞ!」

 

「うるさい!ウヴァ、いつも裏切る!俺、許さない!」

 

ブンブンと両腕を振り回し、ガメルの敵意はウヴァとオーズに向けられる。単純な物言いに、ウヴァは「この馬鹿が!」と怒号し、オーズに声を掛けた。

 

「むぅ…!すまん映司、それと気を付けろ!ガメルはパワー型だ。動きは鈍いが一撃を貰えばかなり堪えるぞ」

 

「いや、大丈夫…!説得ありがとう、ウヴァ。こうなった以上、今はこの場を何とか切り抜けないと…!」

 

優先だった戦況が、ガメルの復活によって大きく覆される。オーズは、突進して来るガメルに臨戦態勢を構えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

「騒がしいな…。ちゃんと役に立ってるのか、あいつらは…」

 

時は遡り、突入直後。オーバーホールはヒーローと警察がこの本拠地に攻めて来てると聞き、監禁していた壊理を連れ出して地下通路の別の出口へと向かっていた。

本部長の入中が暴れ回っている音が微かに聞こえ、そうボヤくオーバーホールに、壊理を抱えていたクロノスタシスが「言いたかないですが…」と口を開く。

 

「八斎會は終わりですね」

 

「組長と俺さえいれば八斎會は死なない。ほとんどの子分は組長派で俺の考えについて来やしない。俺こそが誰よりも組長の意志を尊重しているのにな。

…この完成品と…〝血清〟さえあれば、極道(おれたち)を再び返り咲かせる事ができる。今回の件も好事家にとっちゃいい話のネタになる。『ヒーローが恐れる薬』、奴等の好む響きだ。喜んで出資してくれるさ」

 

歩きながら区切ると、通路の両脇に立っている3()()を見つめる。3人から通り過ぎたオーバーホールは振り向きもせず、その3人に向かって口を開いた。

 

「というわけで、少しは働け出向組…!」

 

「はーーい」

 

「……うん」

 

「任せとけ、オーバーホール」

 

計画が狂っているせいか、その場にいる(ヴィラン)連合に腹癒せを向けるオーバーホール。連合のトガ、脇真音優無、トゥワイスの3人は言い返しもせず、素直に了承したのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

時は戻り現在!ナイトアイ一行!

 

「また来てるぞ!!いい加減にしてくれ!」

 

ファットガムと切島、火野と分断されてしまったナイトアイ達は壁中から入中が壁を押し寄せて圧死させようとする。先へ先へと全力で走るが、止まる事無く壁は迫って来ていた。

 

「天井が!!壁が!!地面が!!迫って来る!!圧殺されるぞ!!」

 

「粗挽きハンバーグにされちまう!!」

 

「チッ!面倒な〝個性〟だなァ!!」

 

いくら先へと逃げても、地下通路全体を動かしていては逃げ道など無いに等しい。一行はパニックに陥る中、ナイトアイは「ロックロック!!」と叫び、ロックロックは不服そうに声を荒げた。

 

「リーダーぶるない!この窮地、元はと言えばあんたの失態だ!!〝本締(デッドボルト)〟!」

 

壁に手を当て、『施錠』するみたく手を半回転させる。すると、ナイトアイ達が居る()()だけの壁がガチッ!と固定されたかのように動きが止まった。

 

 

錠前ヒーロー『ロックロック』

 

個性『施錠』

 

触れたモノを(生物除く)その場に固定する!! 

しかし、あまりに強大な力や広大な面積に対してはその限りではない! 

 

 

 

「こっちへ!この辺はもう動かねえ!狭さは言うなよ、強度MAXの本締(デッドボルト)だとそう何ヶ所も締めれねェ!これが俺の限界範囲!締めてねぇところから、ホラ!また!来るぞ!」

 

一旦区切るロックロックだが、彼の言う通り施錠されてない場所から壁が押し寄せて来る。だが、それをカバーする様に緑谷が飛び出し、迫る壁に向かって渾身の回し蹴りを繰り出し、壁は破壊された。

 

「まるで愚鈍の土竜だな」

 

迫る圧壁を1箇所に集中させた上で掘り進める。そう思った刑事部長が呟いていると、壁を蹴り壊し続けていた緑谷は「ハァッ、ハァッ…!」と息を切らし始める。

 

「ファットチームがいればもっとスムーズに行けたのになァ!イレイザー!」

 

「わかってる!」

 

「このままじゃジリ貧だぞ!追い詰められる一方だ!」

 

皮肉に吠えるロックロックに頷きながらも相澤は〝個性〟を駆使して壁や天井を目視する。本体が見えればこの歪む壁も治まる事が出来るのだろうが、入中も抹消を嫌って出てこようとしない。

 

「おい!お前の〝個性〟で何か打開策ねェのか!?」

 

「人間が指図するな!俺は力技は得意じゃない、オーズがいない以上()()()()()()で俺を頼るな!」

 

怒号するアンクにキレ気味で「んだそりゃ…!」とロックロックは言う。鳥の属性を持つアンクは『物を破壊する』等は自身の力に該当しない。オーズがいたからこそ、その力で万能な能力を有している。だが流石にこの状況はマズいと思ったのか、アンクは舌打ちをしながら身体に力を入れようと身構える。

 

「埒が明かないッ…でも!!リューキュウたちが、ヒーローたちが、警察の方々が!切島君、ファットガム!火野君にウヴァ君が!!紡いだ道を、止めてたまるかァ!!」

 

諦めていない緑谷も息を切らしながら声を荒げる。

だが、その時だった。

突如、押し寄せていた壁や天井が一気に広がる様に遠ざかり、狭い空間が急に広々とした空間へと一面は変わる。

 

「開いた!?」

 

「今度はどういうつもりだ!?」

 

予測出来ない入中の行動に一行は戸惑いを見せる。そう思っていたのも束の間、再び壁や天井が緑谷達に迫って来た。

 

「うわっ!?」

 

「何!?」

 

「デク!!」

 

壁が押し寄せて来ると思いきや、天井から壁が落下し、ドォン!!と地面に突き刺さる様な轟音が鳴り響く。土埃が舞い、アンクは状況を確認しようと背中から翼を広げ、一回羽ばたかせる。風で土埃が晴れた瞬間、目の前には天井から降って来た壁があった。

 

「何だ、今度は完全に分断されたのか…!?」

 

「おい!!皆!!無事か!?」

 

壁の向こうからロックロックの大声が聞こえる。「死んではなさそうだな」とアンクは呟いていると、「来るぞ、次の一手が!!」とナイトアイの声がした。

 

「次は何が来るってーー…」

 

「多分、僕かな」

 

「!!?」

 

ハッとしたアンクは半回転して背後へ振り返る。その目先には赤い槍が突き出されているのが見え、咄嗟にアンクは飛び退く様に急いで横へと避けた。

その槍は壁に直撃し、刃先だけが壁を貫通する。

そして、それを所持する脇真音槍無こと、仮面ライダーポセイドンがアンクをジッと見つめていたのだ。

 

「何だ、お前もヤクザって肩書きに成り下がったのか?」

 

「協力関係だから…姉さんの命令だし…仕方なくだよ…」

 

その槍・ディーペストハープーンを抜き取りながらポセイドンは応え、少し怠そうに地面に刺したディーペストハープーンに寄りかかりながら口を開いた。

 

「言っとくけど……命乞いはしないほうが良い。時間の無駄だから……」

 

「ハッ、誰がするか!」

 

アンクは吠え、グリード化した右腕を突き出し火炎を放射させる。直様ディーペストハープーンを持ち替えたポセイドンは、横に飛び退いてソレを交わし、アンクに向かって駆け出した。

 

「フッ!!」

 

「!」

 

横一線に振りがさすが、アンクはそれを避ける。追撃にとディーペストハープーンを振り回し、攻撃を仕掛けるが、アンクは起用に全ての槍術を交わし、一旦距離を取るため後方へと跳躍した。

余裕を見せるポセイドンはディーペストハープーンをくるくると回して地面に突き立て、口を開いた。

 

「オーズがいないなら、お前の勝ち目は無いと思う……大人しくコアメダルを渡してくれるなら…命までは取らない」

 

「フッ、舐められたモンだなァ…俺がそんなに弱そうに見えるか?」

 

「うん……だって、お前はあのウヴァと……もう1人のグリードと同じ存在……僕の前では……そう、無力……」

 

「ほう、カザリに会ったのか?」

 

「出来る事なら…そいつも()()()()()…。姉さんの邪魔になる……」

 

グッと拳に力を入れるポセイドン。すると、アンクは俯くと静かに笑い始めた。

 

「ククク…ハハハ…!」

 

「?何か可笑しい事言った……?」

 

「お前、今俺をウヴァやカザリ(アイツら)と同じように弱い。そう言ったな?」

 

「……?当然。僕の仮面ライダー(チカラ)の前じゃ、太刀打ち出来る筈が無い……」

 

「…なら1つ聞いといてやる。お前今、自分のコアメダル何枚持っている?」

 

「……3枚」

 

「3枚だと?…ハッ!コイツはとんだ大マヌケが居たもんだ!」

 

「なんだと……?」

 

アンクの挑発にポセイドンは顔を歪ませ、声のトーンが低くなる。が、アンクは不敵な笑みを絶やす事無く言った。

 

「場数を踏んでないお子ちゃまに教えといてやる!ウヴァやカザリ(アイツら)は自分のコアメダルをせいぜい3、4枚しか持っていない。だが()()違う」

 

「…何が言いたい……」

 

「映司に1枚渡してある……お前の姉も1枚持ってたが、まァいい。…それでも俺の今持ってる自分のコアメダルは、『7枚』だ、ハッ!!」

 

アンクは声を荒げると同時に身体がセルメダルで覆い尽くされると同時に、全身が真紅の炎にも包まれる。ポセイドンはハッとしてディーペストハープーンを構えるが、炎に包まれたアンクは七色に輝いた両翼を勢いよく広げた。

 

「ハアッ!!!」

 

「!!?」

 

羽ばたかせると共に、アンクは途轍もない速度でポセイドンに突っ込み、直撃したと同時にポセイドンは吹き飛ばされ、壁に激突、貫通して吹き飛ばされた。

瓦礫が崩れ落ちる音がしている中、アンクの身体を包んでいた炎が弱まり、徐々にその姿が露わとなる。そこには、赤い鳥を基調とした怪物の姿があった。

それはアンクのグリード態(本来の姿)

 

「俺が()()()だったら、こんなもんじゃない……。まァ、そうじゃなかったとしても、所詮お前は別の転生者(あかのたにん)。経験の差は俺の方が一枚…いや、四枚上手だったって事だなァ」

 

拳を上下に振るい、アンクは吹き飛ばされて崩壊している壁を見つめる。その先には、大量に零れ落ちたセルメダルが周辺に散らばって倒れ込んでいる槍無が、「うぅ…」と呻き声を上げながら体を起き上がらせようとする。

 

「ぐ………くそっ…!!」

 

一撃で変身解除まで追い込まれた。その現実に槍無は腹を立てたのか拳を地面に強く叩き付ける。すると、その部屋は誰かの書籍部屋だったのか、本棚から1冊の本が槍無の隣に落ちた。

 

「……?」

 

槍無は顔を向けると、そこに落ちた本に目が止まる。その本の題名は『異能解放戦線』と記されていた。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

再び時は遡る。

 

 

(ヴィラン)連合の死柄木と脇真音優無が死穢八斎會に赴いた時の出来事。

 

「………何をしている…」

 

「将棋を指したことがないのか?」

 

「私はないけど、死柄木君ある?」

 

「ない。そしてやらん。片付けろ、ルールも知らん」

 

話の最中にオーバーホールは将棋をやろうと有無を聞かずに始めようとする。せっせと駒を並べているクロノスタシスとミミック。準備をしながら文句を垂れる死柄木に「オイ!!やれよ!!」とミミックは怒号していた。

 

「まァそう言うな。これを機会に嗜むといい。局面が見渡せるようになるぞ」

 

「へぇ、そうなの」

 

オーバーホールの言葉に納得した脇真音が言い、死柄木も「ふーん」と興味を示していた。準備が整ったのか、クロノスタシスとミミックは下がると、オーバーホールは局面を見ながら口を開いた。

 

「将棋の面白いところは、相手から奪った駒を使えるところにある。黒霧か渡我、分倍河原、そして脇真音姉弟を八斎會(ウチ)に入れる。好きに動かれちゃ、こっちも不安だ」

 

「へ、私?ヤクザに組みしろと?」

 

「あぁ、お前とお前の弟の〝個性〟は強力だ。戦力も申し分無いし、八斎會(ウチ)も大いに名が広まる」

 

「話進めんな…!便利な奴ばかり所望しやがって…動きを削ぐってか。ウチの要だそいつらは…!そんなにやれるか」

 

将棋を始めると思いきやいきなり連合の主力メンバーを寄越せと申し出が来て、当然死柄木は断ろうとする。それに便乗して優無は「だそうです」と頷いていると、オーバーホールは動じない様子で口を開いた。

 

「信頼を築こう。今はまだ遺恨を残している。こっちの計画の全貌を差し出したろう、次はそっちの番だ。君たちは仲間が、大事なんだろう?」

 

「全貌ねェ、……若頭さん、1つ質問良い?」

 

「何だ?」

 

尋ねた優無にオーバーホールは顔を向ける。

 

「あんたの〝個性〟ってさ。確か、分解したモノを元通りに出来るんだったよね?」

 

「………ああ、だが一定の時間が過ぎてしまった場合は元の状態に戻せても…それが()()の場合、命までは戻らない」

 

「そっかそっか、なるほど……凄い〝個性〟だねぇ…質問は以上、ありがと」

 

優無は何度も頷いて話を終えるが、その顔は何か閃いた様子だったのか頬を少しだけニヤリと笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「八斎會と協力するだって…!?」

 

「ああ…!何度も言わせるな。あちらの計画は充分な旨みがある!トガとトゥワイス、そして槍無!今日からおまえらはヤクザだ!」

 

「僕も…?」

 

「つまんねぇ冗談だ。面白ェよ死柄木……!!本気なのか、優無ちゃん!?」

 

「んーまぁね。まー良いじゃん、ヤクザに職場体験って事でさ」

 

八斎會と交渉が済んだ死柄木と優無は、連合の隠れ家に戻り、メンバーに事情を説明する。だが、納得が行かないトゥワイスは死柄と優無に詰め寄るが、死柄木は背を向けて口を開いた。

 

「黒霧と優無も持っていかれそうだったが、粘ったよ。実際、黒霧はあいつで今大事な案件に取り掛かってるしな…」

 

「私は直接断った。こっちで()()()あるから」

 

「そういう事だ。移動については地下からのルートでーー…」

 

八斎會の行き先を教えようとする死柄木に、堪忍袋の尾が切れたのかトゥワイスは死柄木の肩を掴み、声を荒げた。

 

「何が旨みだよ!!冷徹ぶりゃリーダー気取りか!?2人共、感化されちまったかあのマスク野郎に!!あいつはマグ姉を殺したんだぞ!!あいつはMr.コンプレスの腕をふっとばしたんだぞ!あいつは……!俺が不用意に連れて来たんだぞ!!!?」

 

自分で招いた事件。その元凶である八斎會と協力しようとする(ヴィラン)連合のリーダー的存在の死柄木に怒号しながら、トゥワイスは自身のマスクを外した。その瞬間、優無はピクリと眉を動かす。トゥワイスは過去にトラウマがあるらしく、常にマスクを被っておかないと()()()と言っていた事を思い出していた。

 

「俺だって人間だぞ…!?死柄木…!!優無ちゃん…!!」

 

「トゥワイス…」

 

後悔、恐怖、パニック、焦り。トゥワイスの表情はソレを物語っていた。そこまでして反対したいトゥワイスに、優無は少しばかり同情した目を向けていると、視界に槍無が入って来る。

 

「どしたの?」

 

「僕も反対……何でマグ姉を殺した奴等なんかと一緒にいなければならないの…?いくら死柄木さんや姉さんの命令でも…それは出来ない」

 

「槍無の言う通りだぞ!!トガちゃんもよォ!!何とか言えよ!!」

 

やはり素顔のままでは危ないのか、トゥワイスはマスクを被りながら槍無の言葉に便乗し、先程から黙っているトガに声をかけた。

すると、トガは座っていた机から飛び降り、ナイフを取り出して口を開いた。

 

「弔君と優無ちゃん。2人にとって、私たちは何なのでしょう?私にとって連合は気持ちが良い。ステ様がキッカケでした。私もやりたいように、生きやすい世の中に、出来るものならしてみたいと思うのです。ねェ、弔君、優無ちゃん。何の為に辛くて嫌な事しなきゃいけないの?」

 

くるくると舞い踊るように死柄木へと近づき、その手に持つナイフを死柄木の首元へ突きつけた。彼女も彼女なりに嫌なのだろう。槍無も敵意を示すような瞳で優無へ向けている。優無は「みんな…」と宥めようとした瞬間、「…そうだな」と死柄木が顔に付けている手のマスクを外した。

 

「俺と、お前たちの為だ」

 

「「「!」」」

 

柄にも無く優しく、穏やかな表情。

だが、返ってそれが逆に悍ましくも見え、トガ、トゥワイス、槍無はゾクっと背筋が凍り付くように固まる。

 

「向こうは連合の機動力を削ぎ、且つ、有用なお前らを懐柔したいんだろう。外堀から取り込んで従えたいんだ」

 

「……フッ…そうそう、そうだね。死柄木君の言う通り。向こうはハナから対等になんて思ってないからね」

 

「あぁ…そう言うことだ。…トゥワイス、責任を取らせろと言ってたな。こういう捉え方もある。俺は、おまえたちを信じてる」

 

一括りした死柄木の言葉に、トガ、トゥワイス、槍無は少し落ち着いた表情を取り戻していた。

それでも、不安そうな顔をしていたのか、優無は口を動かす。

 

「ま、アレだよ。私たちは(ヴィラン)連合。自由、勝手気ままが取り柄な世間のお尋ね者。3人にはヤクザには行ってもらうけど、私達が出した命令は()()()()…ってことだから」

 

「勝手気まま…か…。確かに優無の言う通りだな」

 

「だな、それが俺たちのエンターテイメントだ」

 

「まァ、間違ってはないな…」

 

優無の言葉に、今まで無言で聞いていたスピナー、Mr.コンプレス、荼毘がそれに賛同する。

メンバー達の顔を見ながら、出向する3人は何処か浮かばない様子で、その命令に従うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

時は今に戻り、カザリ、ガメルと交戦中のオーズとウヴァ。

 

「ムンッ!!」

 

「だぁっ!!?」

 

 

ガメルの強烈な一撃を食らうオーズは吹き飛ばされ、「映司!」と叫ぶウヴァ。その隙にカザリはウヴァに向けて爪を振り上げた。

 

「余所見していいの、ウヴァ!」

 

「ぐっ!?」

 

身体を切り裂く鈍い音が響き、ウヴァの身体からセルメダルが零れ落ちる。追撃にとカザリは片方の腕の爪をウヴァに突きつけ、吹き飛ばされ唸り声を上げながらカザリを睨む。オーズもまた、息切れを起こしながらガメルを見遣り、口を開いた。

 

「ハァッ…ハァッ…!ヤドカリ(このメダル)でも…ッ、防御しきれないなんて…!」

 

カザリの攻撃ならダメージは然程食らわなかったヤドカリアーマーだが、パワー型のガメルの攻撃は重たく、ガードしても身体が悲鳴を上げていた。そんなオーズを見て、ウヴァは「クソ…!」と悪態を吐きながら自分のコアメダルを1枚取り出す。

 

「映司、これを使えっ。電撃なら奴らは近付けーーーー…」

 

「させないよ!」

 

クワガタのコアメダルなら、電撃で中距離攻撃を放てる。リスクはあるが近寄る事が出来ないだろうと判断したウヴァだが、勘付いたカザリが駆け出し、コアメダルを持つウヴァの右腕を爪で切り裂いた。

 

「がっ!?」

 

「ウヴァ!」

 

「君のメダル貰うね、フン!」

 

「うぐっ!?」

 

空中へ投げ出されたコアメダルをキャッチしたカザリはウヴァに追撃と言わんばかりに蹴りを腹部に入れる。ゴロゴロと転がるウヴァにオーズは叫んでいると、ガメルもまた、オーズに向かって突進して来た。

 

「オーズ!倒す!!」

 

「うわぁっ!!?」

 

頭部を突き出し突進攻撃をまともに食らうオーズ。頭を振り上げたガメルは蹌踉ているオーズに1発、2発と重い拳を振り翳し、火花を散らしながらオーズは吹き飛ばされる。

同時に、ダメージに耐えきれなかったのか、オーズドライバーから装填されてた3枚のコアメダルが弾き飛ばされ、強制的に変身が解除されてしまう。

 

「がっ!?あぁ…!!…あぐっ…!?」

 

「え、映司…!!」

 

その場に膝をつき、倒れ込む火野。弾き出された3枚のコアメダルが散らばり、バッタのコアメダルだけが火野の目の前へと落下する。意識が朦朧とする中、火野は何とかその1枚だけを掴み取るが、残りのタカとヤドカリのコアメダルはカザリが拾いあげてしまった。

 

「フフ、形勢逆転だね」

 

「オーズ、倒したー!やったー!」

 

「まだだよガメル。残りのコアメダルも全て貰わないと」

 

「んー?そうかー?わかった〜」

 

子供の様に喜ぶガメルにカザリは指示を出し、ズンズンと火野とウヴァに近付く。

2枚もコアメダルが奪られてしまった火野は変身することが出来なく、故にガメルの攻撃で碌に戦える状態ではなかった。そしてウヴァは自身のコアメダルが2枚しか残っていない。碌に力を発揮出来ないので、今カザリ達に立ち向かうのは自殺行為。この状況下で、ウヴァは思った。

 

〝火野を見捨ててこの場を逃げようと〟。

 

アンクに火野を任されている事を思い返すウヴァだが、自分の命を投げ打ってまで救ける善意はウヴァにはない。今まで自分の欲望を満たしてくれた存在だとしてもだ。

少しだけ申し訳ない気持ちになりながら、立ちあがろうとするウヴァに、カザリがそれを見ていた。

 

「先ずは君から倒すよ、ウヴァ」

 

「!?や、やめろ…!!」

 

殺意を向けられ、カザリは腕を突き出し、砂塵を纏った衝撃波が放たれる。力が入らない身体で避ける事さえも出来なかったウヴァは、自身が倒されると悟った。恐怖が頭を支配し、動けずにいた…その時。

 

「ウヴァ!!」

 

ウヴァよりもダメージを負っていた火野が、全身の力を絞り出し、駆け出してウヴァの身体を掴んで押し倒した。ギリギリで攻撃を交わし、衝撃波は壁に直撃して轟音と共に砂埃が舞う。

 

「ぬぅ…!?え、映司…!?」

 

「ハァッ…ハァッ…だ、大丈夫…ウヴァ……!?」

 

「な、何故俺を救ける…!?あの状況なら、俺を見捨てて逃げる事が出来た筈だ…!?」

 

自分もそうしようと思ったように、ウヴァは火野に問い掛ける。だが火野は、満身創痍になりながらも笑顔で応えた。

 

「当たり、前だろ…!お前は、アンクと()()…俺の仲間…だから…!」

 

「!!…だ、だが…どうするつもりだ!メダルも無い状態で…!?」

 

「大丈夫……まだ、残ってるから…!」

 

火野はそう言いながら立ち上がり、その目は紫色になる。紫のメダルを使うつもりなのだろう。それを見ていたカザリとガメルが口を開く。

 

「まだやるのかー?何度やっても同じ!」

 

「無理しなくていいよ。もう既にボロボロじゃん」

 

「早く、アンクや緑谷君達と合流しないと…!」

 

「映司…」

 

ボロボロになってまでも、他人の事を思う火野。それを見ていたウヴァは火野が力を解放しようとした瞬間、火野の肩を掴んでそれを止めた。

 

「ウヴァ…?」

 

「紫のメダルを使うつもりだろ?暴走されちゃ、俺が巻き添えを食らう」

 

「で、でも…!今はこの手しか…!」

 

「フン、()()()()あるだろ」

 

ウヴァの提案に、オーズは「え?」とキョトンとする。恐竜のコンボ以外はメダルを殆ど持っていかれてしまっていて、今火野の手持ちにあるのはトラのメダルとバッタのメダルのみ。頭部のコアメダルがなければ変身は出来ないし、亜種のフォームでは今のカザリとガメルを撃退するのは難しいだろう。

思い当たる節が無い火野はウヴァに尋ねた。

 

「あるって…もう残ってるメダルは……」

 

()を使え、映司。そうすれば、最強のオーズになれるだろ」

 

「!?」

 

ウヴァの言葉に火野は驚愕し、ハッとする。それと同時にウヴァは右腕を突き出し、「ほらよ!」と叫ぶ。右腕からは1枚、2枚と続けてコアメダルが放たれ、火野はキャッチするが、その瞬間。ウヴァの身体はセルメダルと化してその場に崩れ落ちたのだ。

 

「ウヴァ……!!」

 

『おい!さっさと変身しろ映司!』

 

「うわっ、えっ?喋れるの…!?」

 

『俺様を誰だと思ってやがる?コアメダル1枚になろうが、俺の意思は強いんだぞ!』

 

クワガタのコアメダルからウヴァの声が聞こえる事に驚く火野だが、同時に安堵した様子で「ふっ」と笑みが溢れる。

そして、カザリとガメルへと振り向き、ドライバーにバッタ、カマキリのコアメダルを1枚ずつ装填し、残ったクワガタのコアメダルを見つめる。

 

「わかった、お前がそう言うのなら、一緒に行くよ…ウヴァ!」

 

『フン!俺自らが渡したメダルだ。負けたらタダじゃおかないからな!』

 

ウヴァの言葉に、火野は「あぁ!」と強く頷き、クワガタのコアメダルをドライバーに装填する。オースレイターを傾け、右腰のオースキャナーを取り出してドライバーへと大きく振り翳し、ウヴァのメダルを読み込ませた。

 

 

「変身ッ!!」

 

 

 

「クゥワガタァ!」

 

「カマキリィ!」

 

「バッタァッ!!」

 

 

 

 

ガ〜タ!ガタガタ・キリッバ・ガタキリバ!

 

 

 

ウヴァの声が3枚の昆虫類の名前を叫ぶと、コンボソングが鳴り響いて木霊する。火野はエネルギー状の虫を模した輪をその身に纏うと同時に、辺りに緑色の電撃が落雷する。緑一色に覆われた姿、〝ガタキリバ〟コンボへと変わったオーズは「ハァッ!!」とファイティングポーズを構えたのだった。

 

「はぁ…!?ウヴァ自身がオーズのメダルに…!?」

 

「あー、ウヴァのメダルだぁ」

 

予想外の行動に動揺するカザリ。その隣で他人事のようにガメルがボヤいていると、オーズは両足で地面を強く踏み、全身に力を入れる。

 

「ハァアア……ハァッ!!!」

 

力強い声を上げたその瞬間だった。

 

ガタキリバの特性〝分身〟が発動し、通常なら50体までが分身出来る数なのだが、なんとオーズは5()0()()()()()()で分身し、オーズ達が居る部屋の半分以上がガタキリバによって埋め尽くされていたのだ。

 

「ハァ!」

「ハッ!」

「ハッ!」

「はぁっ!」

「ハァッ!」

 

「ちょ!?何この数!!!?」

 

「う、うわぁ〜、オーズが一杯だぁ…!」

 

天井まで埋め尽くさんとする驚愕の数に愕然と立ち尽くすカザリとガメル。その中央にいる1人のオーズの隣に、突然と人間態のウヴァが姿を現す。

 

『ハッ!どうだ!!この数!昆虫は群を成す!まさにその通りの数だろ!ハッハッハァ!!』

 

光を微かに纏っている身体で、ウヴァは高らかに笑いながらこの現実を歓喜していた。そして、ウヴァは右腕をスッと上げてカザリとガメルがいる方向へと指を指した。

 

『行け!オーズ!!』

 

 

「「「「「「「「「「「「ハァアアア!!!」」」」」」」」」」」」

 

 

 

昆虫王の大行進(ガタキリ・ウ・ヴァレード)〟!!!

 

 

 

 

 

数の暴力。まさにその言葉通りの戦術。

半分以上を埋め尽くすガタキリバのオーズは一斉にカザリとガメルに突撃し、一瞬にして、カザリとガメルはガタキリバの大群に呑み込まれたのだった。

 





No.133 虎、始動

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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