【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第1巻「建国期~ルドルフ大帝」【おわりに】
【おわりに】


 ゴールデンバウム朝銀河帝国の建国者、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは、その業績と為人への評価は別として、後世に極めて大きな影響を与えた人物であり、その存在の巨大さは人類史上でも稀な存在だと言えるが、同時に、その存在の巨大さに比して、実像の解明がほぼ為されていないとの点でも、人類史上、稀な人物と言わざるを得ない。序文にて、監修者ゼーフェルト博士が指摘されたように、旧帝国では神聖不可侵の名の下、実証的研究は完全にタブー、同盟でもルドルフ=絶対悪とするイデオロギー史学が中心だったため、実証研究は歴史学界の非主流派にとどまり、見るべき業績は上げられていない。

 

 本書では、上記の研究状況を打破して、新時代に相応しい、イデオロギー先行ではない実証的な歴史研究の嚆矢たらんと、いわゆる「神君ルドルフ」ではなく、「暴君ルドルフ」でもない、「統治者ルドルフ」の実像を描き出す事を目指した。筆者の試みがどの程度まで奏功したかは、読者諸氏のご指摘とご叱正を待ちたいが、公開された新史料が語るルドルフ像は、強権的、独断的ではあれども、明確な政治哲学と統治方針を持った、極めて有能な統治者だった。

 

 今まで旧帝国、及び同盟で鼓吹されてきた神君または暴君像に馴れた者からすれば、受け入れがたい姿かもしれない。しかし、旧帝国末期から新帝国初頭を生きる我々は、歴史をイデオロギーでのみ解釈し、それを絶対視するする事の愚かしさをよく知っているはずではないだろうか。

 

 約150年もの長きに亘った、旧帝国と同盟が繰り返した泥沼の戦争、ルドルフを絶対善として崇め、批判はおろか研究さえも許さなかった旧帝国。逆にルドルフを絶対悪として憎悪し、全否定の対象としかしなかった同盟。両国はイデオロギー的対立関係に陥り、あり得たかもしれない妥協点を失って、長期化した戦争の惨禍は両国の社会に大きな爪痕を残した。その淵源は、ルドルフという歴史的存在を直視する事なく、ただ自国の国是を正当化するための材料としてきた事にあるのではないだろうか。

 

 イデオロギーの虚飾を取り去ったルドルフの実像を追求する事は、今なお残る帝国・同盟のイデオロギー対立を解消するための第一歩になり得ると信じている。現在、ともにローエングラム朝の統治下に置かれた帝国人と同盟人との融和は、新帝国にとって喫緊の課題の1つだが、本書が両国融和の一助になれれば、帝国臣民として、これに勝る喜びはない。

 

 さらに、数奇な運命で発見されたルドルフの「肉声」は、統治者ではない、私人ルドルフの真情に迫る歴史的発見と言えるだろう。この快挙に立ち会えた事は、歴史学徒として望外の喜びであった。公開された新史料は、まだまだ未整理のものが膨大に存在する。そこから、本書で提示したものとは異なる、新しいルドルフ像、また旧帝国の姿が見えてくる可能性は十分にある。筆者もさらなる研究の進展を期しつつ、擱筆する事としたい。

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