【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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1-2:カストル・ポルックス攻守連合

 続いて、軍閥化した旧連邦軍の集合体「カストル・ポルックス攻守連合」。辺境域に駐屯していた連邦軍の警備部隊は、連邦政府が統治能力を失うと、物資や給与の遅配、欠配が常態化。現地司令官は部下達を統制する必要もあり、連邦からの自立を図ろうとする周辺の星系政府と交渉、物資援助の見返りに、星系政府の「傭兵」と化す例が多発したが、逆に連邦軍が星系政府を占領し、軍閥化する事例もあった。

 

 彼ら軍閥が離合集散を繰り返した結果、カストル星系を根拠地とした軍団と、ポルックス星系を根拠地とする軍団による二強体制となった。

 本来、両軍団は不倶戴天の敵同士ではあったが、終身執政官ルドルフが殲滅を前提とした攻撃を断行し始めた事に危機感を覚え、攻守同盟を締結。他の軍閥や宇宙海賊、マフィアなどの武装勢力を攻撃、自身の傘下に収め、首都星テオリアから逃亡した反ルドルフ派軍人とその部隊も吸収し、急速に勢力を拡大させた。最前線で戦闘を繰り返した部隊を中核とし、当時の人類社会では最精鋭の軍団を擁する軍事国家となった。

 しかし、反ルドルフしか思想的な紐帯が無く、モラルに欠け、順法精神を持たない犯罪者集団も混ざっていたため、ともすれば分裂する危険性を孕んでいたが、連合の盟主、カストル軍政府総統スー・ディン・ファンと、ポルックス人民共和国主席ヴラジーミル・ロブコフ、この2人が持つ高いカリスマ性と軍事的才能、また呵責なき統制によって、集団としての秩序を維持できていた。

 

 カストル軍政府のスー総統は、降伏を望む帝国軍艦艇にウラン238弾を打ち込み、艦艇内の人員を生きたまま焼き殺して、「お前らの親玉がやった事だ。文句はルドルフに言うんだな」と、呵々大笑するような人物だったが、天才的な戦術指揮能力を持つ闘将でもあった。

 また、性格は横暴で気分屋だったが、部下達への気前は良く、傷ついた兵士を自ら救出するなどの人情味もあったので、部下達はこの主将を恐れつつも、好意的に受け入れていた。

 

 一方、ポルックス人民共和国のロブコフ主席は、地球時代、ロシア地方で書かれた文学書や哲学書を愛読するなど、高い教養と知性を有する人物だったが、敵への呵責無さはスー総統以上とも評された。

 一例を挙げると、ある敵勢力との戦闘後、女性や老人、子供など大量の非戦闘員を連れた部隊が降伏してきた時、我が軍にはこれだけの捕虜を養える食料が無い、自軍を飢えさせて戦闘能力を落とす事は出来ない、だが解放すればテロリストや宇宙海賊と化して、我が軍の障害となるだろうと、降伏部隊を非戦闘員ごと老朽艦に乗せて、近隣のブラックホールに突入させよと命令、数十万人もの人間を平然と鏖殺した。

 その呵責無さは、部下や人民へも等しく発揮されたが、生ける軍事コンピュータと渾名された緻密な戦略家ロブコフは、冷酷だが合理的な判断を下し続け、誰からも異論を挟ませなかった。部下達はこの主将を恐れて、命令には絶対服従していた。

 

 この闘将スーと知将ロブコフのコンビは、決して友好的な関係では無かったが、お互いの不足を補い合い、結果として攻守連合軍を勝利に導いてきた。

 

 同連合は戦い、勝利する事で国内の団結を維持するという、典型的な軍事国家であったため、ルドルフ支配下の星系政府を執拗に攻撃、人民と物資の略奪を恣にし、その武力は発足間もない帝国軍を遙かに上回るという、皇帝ルドルフにとっては、正面から戦いたくはないが、放置しておけば、帝国内部の統制が乱れるという、実に頭の痛い敵国だった。

 

 即位当初は、通商破壊戦を仕掛けて、相手の補給線を断つ、また後述する「汎オリオン腕経済共同体」を通じて、時限的な講和を結ぶなど、守勢一方だったが、帝国軍の再編が進むと、その国力の差が次第に明確になってきた。天王山となったのは、帝国暦31年、ヴァルター・フォン・リヒテンシュタイン大将を総司令官とする帝国軍遠征部隊の勝利。連合軍は盟主の一人、ロブコフ主席が戦死する大敗を喫した。

 

 以降、連合の勢力は振るわず、防戦に終始する事となる。強堅帝ジギスムント1世即位時に起きた、共和主義者の叛乱事件では、叛乱軍の中核部隊として、その持てる全戦力を投入するが、叛乱はあえなく失敗。連合軍もその戦力を喪失し、帝国暦45年、根拠地としていた惑星ペイジンとルーシアが陥落、攻守連合は消滅した。

 

 だが、最後のカストル軍政府総統、ディビット・スー(スー・ディン・ファン総統の息子)は、僅かな残存戦力を統率し、連合消滅後も長く、帝国辺境域でゲリラ活動を展開。その最期は明らかになっておらず、一説には、後世イゼルローン回廊と呼ばれる航路を発見して、アーレ・ハイネセンのグループより一世紀以上早く、後に同盟領となる星域に到達、独自のコロニー国家を築いたとも伝えられる。

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