【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 帝国の行政組織~国務省・軍務省・財務省

 本節では、帝国の行政組織について概説したい。建国後、ルドルフは連邦の省庁を再編成し、帝国の行政組織は九省体制で発足した。各省の組織は以下の通り。

 なお、本来は局の下に各課が存在するが、煩瑣になるため、局名までの記載とした。この他、各省共通で、尚書直属の官房部局が存在するが、下記記載からは省略した。

 

 1.国務省

 

 銀河連邦の国務省を母体とする。皇帝直轄領の管理を主管する。直轄領総督と直轄領内の官吏の人事権も有する(総督職は勅任官のため、皇帝の裁可が必要)。また、各種施策を実施する上で、政府機関と貴族家との折衝が必要になった場合は調整役を務める。この他、帝国自治領の監視と交渉、各種統計の作成、そのための調査業務も所管した。

 

 連邦の国務省も、連邦政府と各星系政府との調整・折衝を担当しており、その性格は、星系政府が領主貴族に変わった事以外、大きな変化は無かった。国務省で調整できなかった案件は、枢密院に移管されて、同院で討議された。その際、国務尚書は政府代表として出席した。

 

 同省の性格上、調整型の政治家が国務尚書に就任する例が多かった。帝国末期のリヒテンラーデ侯クラウスが典型例。国務省官僚も、他省からの出向者が多く、国務省プロパーの官僚は、専門の政策分野を持たない調整型に育成された。

 また、数は少ないが、帝国領内の自治領を監視して、必要な交渉を行う事も同省の業務であり、帝国暦374年に設立されたフェザーン駐在帝国高等弁務官府も国務省の監督下にあった。

 

 特筆すべきは、連邦の福祉保健省の権能が、国務省管轄とされた事。医療・福祉・健康保険・年金など、連邦時代は有権者の関心が極めて高い政策分野だったが、担当する省を局に格下げし、福祉を重視しない姿勢を明らかにした。ルドルフは連邦首相時代から、「福祉より労働」「給付より賃金」を掲げ、手厚い福祉給付よりも、強制的な就労による自立を推進していたので、その姿勢を制度的にも明らかにした形と言える。

 

 【各局】

 

 第一調整局:各直轄領の実情を調査し、各総督の意見を聴取して、必要な施策を起案する。また、総督同士の意見交換、政策提言の場である総督会議の招集も担当する。

 

 第二調整局:帝国政府と領主貴族との政策調整を行う。調整の結果、新法が必要であれば起案し、他省への申し入れが必要であれば、文書を作成し、他省との協議を行う。

 

 統計調査局:人口調査など、政策立案の基礎となる各種の統計調査を実施する。

 

 自治局:帝国自治領の政治状況を監視し、反帝国活動などが行われていないか、管理監督する。必要に応じて、自治領との折衝も行う。

 

 医療局:公立病院や医学研究所の管理を担当。医師の育成も所管しており、軍務省軍医局、科学省科学技術局とは人事交流を行っている。

 

 福祉保健局:各種福祉制度や年金制度を担当。なお、貴族の年金は宮内省典礼職(美麗帝アウグスト1世の時、典礼省として独立)が、官僚の年金は各省官房部局が、軍人の年金は軍務省厚生局が担当している。

 

 2.軍務省

 

 銀河連邦の国防省を母体とする。軍政を主管。軍人人事、各種兵器・軍需物資の調達、兵士の徴募と訓練、諜報活動の実施、軍事関連技術の開発などを所管する。

 連邦時代、軍事に明るくない政治家が文民統制の名の下、国防大臣に就任した結果、軍事上の最善手が打てず、紛争の激化や治安悪化を招いた事への反省から、軍務尚書は制服軍人(退役・予備役含む)でなければ就任できないとした。実戦部隊との関係は第6節「帝国の軍隊組織」を参照。

 

 【各局】

 

 人事局:帝国軍人の人事を担当。収容所の管理など、捕虜に関する業務も所管する。

 

 厚生局:主に予備役・退役軍人の恩給(年金)を担当。現役軍人の福利厚生も所管する。

 

 調達局:各種兵器や軍需物資の調達を担当。

 

 整備局:軍事施設の建設と管理を担当。

 

 航路局:軍用航路の開発と維持、航路図の作成と管理を担当。軍用航路は、民間航路と重複するので、国土省航路局と必要に応じて調整した。

 

 教育局:士官学校を始め、各種軍学校・専科学校の管理と運営を担当。

 

 調査局:敵国や敵性勢力などに対する各種諜報活動を担当。統帥本部情報局とは、その担当業務が重複する面があるので、必要に応じて調整した。

 

 軍医局:軍医の育成と軍事医療技術の開発を担当。国務省医療局・科学省科学技術局とは、人事交流を行っている。

 

 科学技術局:軍事科学技術の開発を担当。科学省科学技術局とは、積極的に人事交流を行っている。

 

 憲兵局:軍警察である憲兵隊を所管。なお、旧帝国の憲兵隊は、軍隊内の警察業務のみならず、軍内の思想統制や、帝国領内の治安警察的な役割も果たしており、内務省管轄下の社会秩序維持局や治安警察と対立関係に陥る事が多かった。

 

 政治局:軍内部で民主主義や共和主義を鼓吹、宣布する思想犯罪の摘発と軍内の思想統制を担当。憲兵隊の業務と重複する事も多く、帝国の統治が安定してくると、憲兵隊に主導権を奪われ、同局のポストは貴族子弟が経歴に箔付けするための閑職と化した。下級貴族や平民出身の将兵から極めて評判が悪かったため、ローエングラム独裁体制下で廃止された。

 

 ※軍医局・科学技術局・憲兵局は、局長は慣例的に「総監」と呼称された。なお、各局所属の軍人は、その職務の専門性から、一般の軍人とは昇進のラインが異なり、階級の前に局名を付ける事が慣習化していた(例:軍医少佐・憲兵大佐など)。

 

 3.財務省

 

 銀河連邦の財務省・経済産業省を母体とする。国家予算の編成、税務行政を主管。また、帝国が採用した統制経済の根幹を成す生産計画の立案と公定価格の決定、経済規模に応じた通貨量の発行と、文字通り帝国経済の中枢だった。

 

 経済政策に関する業務量は膨大だったが、ルドルフの「政高経低(政治を重んじ、経済を軽んじる)」主義により、経済担当の独立官庁は設けられず、財務省の一部局とされた。そのため、財務省の組織は肥大化し、ともすれば汚職や利権の温床となった。

 この事を憂慮した寛仁公フランツ・オットー(老廃帝ユリウス1世の長子、同帝の摂政を務め、事実上の皇帝だった)は帝国暦126年、司法省に商務局を新設。商取引関係の法律の立案と、財務省の監査業務を担当させた。

 

 また、寧辺帝コルネリアス2世は、帝国暦420年、フェザーン自治領との関税交渉を担当させるため、関税局を新設した。

 

 【各局】

 

 主計局:予算編成を担当。各省担当官との折衝を通じて、政府予算案を立案。

 

 主税局:徴税業務を担当。なお、爵位持ち貴族の所得と資産は、基本的に非課税。平民には帝国領内で生存を保障されるための経費として「安全保障税」が課せられている。この他、生存に必要ではない奢侈品や贅沢品を平民が購入する場合は、その種類に応じて「付加価値税」や「物品税」が課される。

 

 理財局:予算の執行状況の監査を担当。適切な予算配分案を提示し、主計局に勧告する。

 

 生産局:主に禁制品―恒星間航行用宇宙船・戦闘艦艇・兵器―の生産計画の立案と指示を担当する。

 

 輸送局:主に禁制品の輸送計画の立案と指示を担当。各生産拠点と消費地の状況を監督して、禁制品の適切な配分がなされるように調整する。

 

 配給局:平民への配給制度を担当。家族数と世代によって分類された標準的世帯モデルの策定と改訂、また配給制度が適切に運営されているかどうか、各総督府の監視も行う。

 

 物価局:各地の生産・消費動向を調査、分析し、公定価格の設定と調整を担当する。

 

 企業局:生産局が策定した生産計画に則り、各国営企業の生産数量を決定する。各企業が割り当て通りに生産できているか、監督業務を担当する。

 

 投資局:貴族家が経営する公営企業への投資を担当。事業内容を精査し、必要な事業資金を融資する。資金は帝国銀行(ライヒスバンク)の預貯金から支出する。

 

 造幣局:通貨の発行を担当。帝国内での生産量に応じ、市中に流通する通貨量を決定する。

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