【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」 作:旧王朝史編纂所教授
【はじめに】
ルドルフ1世(大帝・雷帝)
生没年:宇宙歴268年~帝国暦42年 在位:帝国暦1年~42年(42歳で即位・83歳で崩御)
銀河連邦の「終身執政官」ルドルフ・ゴールデンバウムが「神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝」に即位し、宇宙暦を廃止して、帝国暦元年を定めた時、ゴールデンバウム朝銀河帝国の歴史は始まった。
銀河帝国の成立を以て、銀河連邦は完全に滅亡、全人類社会は帝国の完全なる支配下に置かれたという言説が一般的だが、実態は大きく異なる。末期の銀河連邦政府は、加盟諸国を統制する能力を喪失した、レームダック(死に体)状態であった。
ルドルフ台頭時、固有の武力と高い経済力を有する星系政府は、名目上、連邦体制に留まってはいたが、実際は連邦法で禁じられている軍備拡張と独自外交に走り、政府間紛争は頻発。また中央の統制下を離れた連邦軍が各地で軍閥化し、独立路線を取る星系政府と離合集散を繰り返した。さらに、民間軍事会社という形で武力を手に入れた企業群が国家の統制下を離れて、非合法なダーティビジネスで富を集積。それら企業群を後ろ盾とした宇宙海賊やマフィアが横行するなど、当時の人類社会は、シリウス戦役後の戦国時代へ回帰しようとしていた。
連邦軍人として世に出たルドルフは、降伏と裁判を望む宇宙海賊に対して、即時の撃沈を以て応じるなど、武断的な措置で非合法集団を断罪してみせた。また、彼らから没収した富を「正当なる所有者に返還する」と称し、人民に対して分配する事も行った。
それは確かに、ルドルフが権力を獲得するための手段、人気取り政策でしかなかったのかもしれないが、社会の混乱と貧富の格差に絶望していた一般有権者、特に低所得者層は、自分達の生活を守ってくれる真の政治家だと熱狂的に支持した。
だが一方で、連邦体制の既得権益層は、ルドルフを自身の地位と立場を脅かす存在だと白眼視しており、特に戦争や犯罪で莫大な利益を得ていた企業群と、それらと結託した軍閥、犯罪者集団からは、明確に敵視されていた。
ルドルフが連邦首相となり、終身執政官を経て、銀河帝国皇帝に即位しても、上記の如き状況が劇的に変化した訳ではない。当時の銀河帝国は、人類社会のワン・オブ・ゼムでしかなく、内外に敵を抱えていた。約40年に亘る皇帝ルドルフの治世は、それらの敵対勢力を打倒するために費やされたと言っても過言ではない。
本書では、銀河帝国が内外の敵を打倒し、如何にして人類社会唯一の政体として、自己を確立できたのか、そして、ルドルフという権力者は、銀河帝国を如何なる国家としてデザインしたのか、それらの問いに答える事を目的としたい。