【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 帝国の行政組織~内務省・国土省・司法省

 4.内務省

 

 銀河連邦の警察省が前身。警察機構を統括して、国内の治安維持を主管する。

 

 旧帝国の警察機構は、治安警察と公安警察に大別される。前者は同省警察局を頂点とし、星系首都(州都)―惑星首都(郡都)―惑星内の自治体(町)で系列化、それぞれ警察本署―警察分署―派出所が置かれる。これは貴族領も同様で、臣民が暮らす惑星・衛星・人工天体には必ず警察組織が配置された。

 

 後者は同省公安局を頂点とし、組織の系列は警察局と同様、警察局の施設に併設される形で、思想警察の拠点も設けられたが、その職務上、詳細は秘匿された。

 逮捕した容疑者は、原則として司法省に移管して、裁判所で審理される事になっているが、前述した通り、旧帝国の警察は捜査現場に広範な権限が認められたため、裁判なしの処罰が極めて多かった。

 

 また公安警察は、共和主義者など反帝国思想の持主や反帝国勢力の構成員など、帝国支配を拒否する者たちを逮捕、処罰する事を職務としており、帝国暦9年、劣悪遺伝子排除法の成立に伴って設立された、ルドルフの暴政の象徴とも言われる社会秩序維持局は、この公安局を拡大、再編して誕生した。

 当時、敵対国家に支援された共和主義者らのテロ、ゲリラ活動が頻発しており、社会秩序維持局は彼らテロリスト達に対抗するため、予備役・退役軍人を大量に雇用して発足した経緯から、内務省内の一部局でありながら、帝国軍と同様の階級制度を採用していた。これは、テロ対策の現場等で、帝国地上軍と共同作戦を取る事も多かったので、指揮・命令系統を明確にするため、という事情もあった。

 

 【各局】

 

 警察局:治安警察を担当。系列の警察組織を管理、運営して、国内治安の維持を図る。なお帝国暦430年代、宣撫帝オトフリート3世の御代、猜疑心の虜となった同帝の指示で、皇宮警察の拡充が図られた。その際、警察局自体の組織再編も実施されて、警察局は警察総局に格上げされた。

 

 公安局:公安警察を担当。共和主義者など反帝国主義者や反帝国勢力の構成員など、帝国支配を拒絶する者の逮捕、処罰を所管する。帝国暦9年、社会秩序維持局に拡大、再編された。

 

 教育局:警察官の採用と育成を担当。各種警察学校を所管する。

 

 刑務局:刑務所の維持・管理と囚人らの監視、死刑を始め各種刑罰の執行を担当。旧帝国の刑務所は、惑星単位で設定されており、事実上の流刑地となっていた。

 

 装備局:警察官が使用する各種装備の調達を担当。また、犯罪捜査技術の開発なども所管する。科学省科学技術局と連携する事が多い。

 

 風紀局:賭博や性産業など、治安上、好ましくない産業や習慣の取り締まりを担当。また、臣民の義務などに関する啓発活動等も所管する。反帝国勢力による思想戦に対抗する教宣活動等も行う。

 

 事故処理局:火災や交通事故など、犯罪ではない事件・事故の処理を担当。消防組織を監督下に置く。

 

 5.国土省

 

 銀河連邦の国土省と交通省が前身。国内の公共施設・各種インフラの建設と、維持管理を主管する。しかし、貴族領内の公共施設とインフラについては、その領主に管理責任があったため、同省が担当するのは、原則として帝国直轄領内の施設とインフラのみ。そのため、連邦時代は巨大な利権を抱える強力な官庁だったが、帝国建国後、その権力は相対的に低下。二線級の官庁と見なされるようになった。

 

 【各局】

 

 航路局:民間用航路の開発と維持、宇宙港の建設と運用、航路図の作成と管理を担当。民間航路と軍用航路は重複するので、軍務省航路局と必要に応じて調整した。

 

 土地開発局:人口居住惑星の土地開発を担当。荒野の開拓や干拓等を行い、利用可能な土地を造成する。

 

 施設局:主に平民用の公共施設の建設と管理を担当。平民用施設としては、臣民の義務とされた強健な身体作りのため、各種スポーツ施設やトレーニングセンター等が建設されたほか、資格取得や学力向上を目的とした学習室や図書館、地域コミュニティのための集会場などが建設された。

 

 都市局:ごみ収集やし尿処理など、都市生活で必要な制度やインフラの整備を担当。

 

 道路局:惑星内の道路網の建設と維持を担当。自動運転地上車の航法も所管した。

 

 鉄道局:惑星内の鉄道網の建設と維持を担当。自動運転列車の航法も所管した。

 

 港湾局:惑星内の港湾設備の建設と維持を担当。自動運転船舶の航法も所管した。

 

 航空局:惑星内航空網の維持と管理、空港の建設と維持を担当。自動運転飛行機の航法も所管した。

 

 資源局:水や電気など、生活に必要な資源・エネルギーの供給体制の管理・運営を担当。また、浄水場や下水処理場、発電所など供給施設の建設と運営も所管した。

 

 6.司法省

 

 銀河連邦の法務省と各級裁判所・検察庁を母体として、各種法律の管理を主管する。各省から起案された法律案が既存の法律・慣習法(皇帝の詔書)に抵触、相違しないかを審査する。

 また、下級貴族・平民が対象の下級裁判所を運営して、内務省から送致されてきた容疑者の審理を行う(爵位持ち貴族は、枢密院設置の上級裁判所で審理される)。

 

 ただし、刑務所の管理運営と刑罰の執行は、内務省の管轄とされた。これは前述した通り、旧帝国では捜査機関に広範な権限が認められたため、裁判なしの処罰が極めて多かった事による。「疑わしきは罰する」。これが旧帝国の司法上の大原則だった。

 そのため、司法省に送致される者は、上級裁判所での審理が決まった貴族の共犯とされた下級貴族や平民、損害賠償等を伴う民事事件の容疑者が大多数だった。

 

 また、同省の権能として、官僚や軍人など公職者への監察権と弾劾権がある。これは即位前のルドルフが公務員の非行を取り締まるために、市民による申告制度を設けたが、同制度が法務省所管とされた事に由来する。ただし、皇族や爵位持ち貴族が対象となった場合は、政治的配慮で弾劾されない事が多く、高位高官に対しては、形骸化している面もあった。

 

 余談ながら、新帝国の初代司法尚書・ブルックドルフが統帥本部総長ロイエンタール元帥に叛意あり、と弾劾したのは、それが司法省の権能であったため。しかし、ブルックドルフ尚書の判断については、旧帝国、それもルドルフ大帝由来の権能で、新帝国の高官を弾劾するのは問題ではないかと、同省内にも批判の声は出ていた。最終的に、内国安全保障局長ラングがロイエンタール元帥弾劾の権利を手中に収めたのは、司法省内からの批判に対し、ブルックドルフ尚書が抗しきれなかった、という面もある。

 

 なお、財務省の項で既述しているが、帝国暦126年、寛仁公フランツ・オットーが同省に商務局を新設。商業関係、特に商取引を円滑に行う為の法律の立案と、財務省の監査業務を担当させた。

 

 【各局】

 

 第一法制局:刑法を担当。

 

 第二法制局:民法を担当

 

 第三法制局:慣習法(歴代諸帝の詔書)を担当。

 

 監察局:官僚や軍人など公職者の勤務態度等を監察。勤務成績が不良である、汚職などの非行を行っている、反帝国活動を画策しているなど、公職者の責務を果たしていないと判断した場合、当該人物の姓名・官職・所在などを公表。所属する官庁に是正処置を勧告する。

 制度の精神としては、罰する事ではなく、あくまで矯正を目的としている。しかし、高位高官に対しては、公表基準に該当しても公表しない、逆に政敵を陥れるため、些細な事でも針小棒大に公表するなど、政治闘争に悪用された面は否定できない。

 なお、軍務省政治局とは、その職務が重複する面もあるが、政治局は思想的な面を重要視したのに対して、監察局は実際の行動や態度を重視する傾向にあった。

 

 商務局:帝国暦126年、寛仁公フランツ・オットーが設置。商業関係、特に商取引円滑に行うための法律の立案と、財務省の監査業務を担当。監察局と合同で監査を行う事も多かった。

 同局設置以降、司法省と財務省は組織的に対立する傾向が強くなった。旧帝国末期、亡国帝フリードリヒ4世の御代、財務尚書カストロプ公オイゲンの職権乱用と過度の蓄財に対し、司法尚書ルーゲ伯爵が「見事な奇術」と皮肉ったのは、両省が対立関係にあったからでもある。

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