【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 帝国の行政組織~学芸省・科学省・宮内省

 7.学芸省

 

 銀河連邦の教育省を母体とする。教育行政を主管して、国内の教育機関を監督する。また、国立大学や各種研究機関等で行われる学術研究の内容を精査し、その内容に応じて、予算配分を決定。また、研究内容に反帝国思想などが含まれていないか、常に監視している。

 

 この他、国内に残る歴史的遺物や文書等の保護、管理も担当するが、これも反帝国思想に繋がるような内容かどうか、監視する事が本来の目的。連邦時代とは異なり、思想統制的な業務が増えている。

 その内容上、内務省と共同して業務を遂行する事が多いが、学者気質の官僚や研究所の職員は、それらの業務は学芸省本来の任務では無いと毛嫌いしていた。新帝国成立後、思想統制的な業務がほぼ消滅したのは、誠に喜ばしい事である。

 

 【各局】

 

 第一教育局:初等・中等教育を担当。教科内容の決定や教科書の策定を司り、私立の教育機関の監督も行う。

 

 第二教育局:大学など高等教育を担当。教授内容の決定、教育機関の監督も行う。

 

 第一学術局:大学や各種研究機関で行う学術研究のうち、文系学問を担当。研究内容が帝国に望ましいか否かを判定して、その結果に応じて予算を配分する。また、研究内容が望ましくないと判断した場合は、大学や研究機関に是正措置を勧告する。

 

 第二学術局:大学や各種研究機関で行う学術研究のうち、理系学問を担当。業務内容は第一学術局と同様。また、その業務内容上、科学省科学技術局と積極的に人事交流を図っている。

 

 文化局:国内に残る歴史的遺物や文書等の保護、管理を担当。実際は、反帝国思想の鼓吹に繋がりかねないものが無いか、内容を精査の上、必要があれば封印、または廃棄処分とする。

 

 8.科学省

 

 銀河連邦の科学技術庁と拓殖省を母体とする。各種科学技術の開発を主管する。また、FTL(超光速)通信網を始めとする、帝国領内の通信・郵便網の管理を行う。通信内容に、反帝国思想に関するものが無いか、傍受・検閲もしている。

 また、各種資源・エネルギー源の探査、資源・エネルギー採取用プラントの建設・維持も行っている。

 

 この他、居住可能惑星の探査と開発も所管業務の一つだが、帝国人口は減少傾向にあり、既知の居住可能惑星も入植者が不足、高い経費を負担して開発するメリットが無いと、未開拓のままで放置される事が常態化していたため、500年近い旧帝国史上でも、居住可能な未開拓惑星を発見、開発した事例は、ほぼ皆無だった。

 

 【各局】

 

 科学技術局:各種科学技術の開発と改良を担当。国務省医療局・軍務省科学技術局・内務省装備局・学芸省第二学術局など、科学技術関係の業務を担当する各局とは人事交流を行い、科学者・技術者の人材供給源でもあった。

 

 通信管理局:主にFTL通信網の管理を担当。なお、帝国暦373年、フェザーン自治領が成立後、旧帝国のFTL通信網は、フェザーンの通信網を介し、同盟のFTL通信網と間接的に接続された。両国とも、その事は認識していたが、情報流出の危険性を犯してでも、相手国の情報を傍受できる利点を考えて黙認していた。このため、旧帝国末期、開祖ラインハルト陛下が同盟のFTL通信網を使い、宣戦布告する事が可能だった。

 また、FTL通信以外の連絡手段、音声書簡や紙媒体の書簡を集荷、配達する事も同局の所管。FTL通信に比べれば、圧倒的にシェアは小さかったが、直筆の書簡を好んだルドルフの影響もあり、帝国末期まで手紙文化は残っていた。ただし、同局所管の郵便網を使うのは平民層、または平民に近い下級貴族に限られ、富裕な貴族は機密保持の観点からも、自家で雇用した郵便船を使うのが一般的だった。

 

 資源開発局:各種資源・エネルギーの開発、資源採取用プラントの建造と管理を担当。国土省資源局が居住可能惑星内の資源開発と管理を主としたのに対し、同局は人間が居住できない惑星・小惑星に存在する資源・エネルギーの開発を主としていた。

 

 惑星開拓局:居住可能な未開拓惑星の発見、開発を担当。しかし、前述の通り、新規に未開拓惑星を発見、開発するメリットが失われていたため、同局は事実上の左遷先、または定年間近の官僚が退職前の箔付けとして、一時的に在職する職場と化していた。

 

 9.宮内省

 

 銀河連邦の国務省儀典局を母体とするが、事実上の新設官庁。皇帝及び皇族の生活一般に必要な業務を主管するほか、各種式典や帝室主催行事に関する業務も担当。帝室予算や、帝室所有の資産等も同省が管理。皇帝のスケジュール管理を司る秘書官達は、政務に関する知識が必要とされるため、国務省ほか各省庁から出向している。

 

 建国当初は、各貴族家に関する業務、例えば貴族家の創設や絶家、家格や爵位に伴う恩典の支給などに関する事務処理も担当していたが、時代が下り、貴族家の数が増えてくると、宮内省では処理しきれないという事で、帝国暦170年、美麗帝アウグスト1世の御代、宮内省典礼職が独立、典礼省が新設された。

 

 【各局】

 

 侍従職:皇帝の生活一般を担当。また、国璽を保管する部署でもある。

 

 秘書職:皇帝のスケジュール作成を担当。なお、喪心帝オトフリート1世の御代、俗に「準皇帝陛下」とも呼ばれたエックハルトは、財務省出身の官僚で、同職所属の政務秘書官だった。

 

 後宮職:後宮の管理を担当。なお、皇帝の性格により、後宮の規模は変動したので、同職の体制もそれに応じて変化した。

 

 皇嗣職:皇太子ほか、未婚で皇宮に暮らす皇族の生活一般を担当。なお、旧帝国の男性皇族は、結婚と同時に独立し、一家を構える慣習だった。

 

 典礼職:上述の通り、各貴族家に関する業務を担当。後世、貴族家の数が増加した事で、典礼省として独立。

 

 式部職:皇宮内の各種式典、帝室主催行事に関する業務を担当。

 

 主計部:帝室予算及び帝室の資産管理を担当。

 

 書陵部:皇帝の陵墓と帝室に伝わる文書の管理と保管を担当。

 

 用度部:皇宮施設の管理と皇宮内で使用する物品の購入と管理を担当。

 

 御料部:帝都星オーディン及び他の惑星にある御料地の維持管理を担当。

 

 警備部:皇宮内の警備を担当。同部職員は内務省警察局から出向した警察官が務める。なお、近衛兵団は皇宮全体の防衛を担当し、統帥本部の指揮下にある。

 

 以上、旧帝国の統治組織を概説したが、まず指摘できる事は、組織の統廃合が進められ、連邦時代よりも省庁の数が減っている点だ。

 貴族制が成立して、貴族領の行政事務は各領主家が雇用する官僚らが担当するようになったため、連邦時代よりも政府組織の事務量が減少したのは確かだが、同時に、組織を細分化せず、一部局に広範な権限を与え、担当官の裁量で決定できる範囲を大きくする、というルドルフの政治方針の表れでもある。

 

 ルドルフは連邦の政治家時代から、権力者が法律を濫用し、合法的に社会的弱者から富を吸い上げ、また弱者からの異議申し立ても、法律を盾に拒絶している事を強く批判、法を枉げてでも民意に添うべきと主張して、有権者の支持を得た経緯がある。

 それは所謂人気取りでもあったが、同時に、政治家ルドルフに一つの確信を与えたとも思われる。即ち、法治が救わない人民は、法を超えた人の意思、人治でしか救えないと。だからこそ、人治を実行できる人材を育成、彼らを遠い将来に亘って確保するための制度として、貴族制を創設したというのが筆者の見解である。この点は第4章「貴族制度と身分制秩序」で詳述したい。

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