【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3章 劣悪遺伝子排除法
第1節 劣悪遺伝子排除法とは?


 皇帝ルドルフの代表的な悪政と評される「劣悪遺伝子排除法」。しかし、意外な事に、同法が如何なる立法意図に基づき制定されたのか、旧帝国、また同盟の学界でも明らかになっておらず、それどころか条文の詳細も不明という状態だった。これは、両国とも、同法を学問研究の対象にするのは、ある意味でタブー視されていた事に起因する。

 

 旧帝国では、劣悪遺伝子排除法はルドルフ大帝の祖法、皇帝にしか読む事を許されない神聖な法律とされた。執行機関の社会秩序維持局では、これまでの逮捕実績を慣習法として運用。慣習法に記載が無い場合でも、現場担当者の判断で処理される場合が殆どという、極めて恣意的な運用が為されていた。

 

 同盟でも、同法の内容が不明のまま、ただ盲従した旧帝国と同様、詳細不明のまま、ただ史上最悪の法律だと、イデオロギー的に批判していたに過ぎない。劣悪遺伝子排除法は旧帝国では完全非公開だったため、同盟で得られる同法の知識は、旧帝国からの亡命者やフェザーンから得られた断片的な情報、障害者が差別、弾圧の対象になっている、社会秩序維持局が恣意的な逮捕や処罰を繰り返しているなど、同法によって生じた事象だけだった。

 

 これらの情報を取り上げ、旧帝国の非人道性を糾弾し、自国の道義的正しさを称揚するという、反帝国のプロパガンダとして同法の存在を利用していただけだった、と言える。同盟の建国初期、ある法律家が同法を評して「およそ人が持ち得る中で、最悪の愚劣さの産物。理性ある人間にとって、否定するしかない代物。学知の対象にするなど、理性への冒瀆に他ならない」との言葉が伝わっている。出典は不明だが、同盟学界では、これが常識ある研究者の態度とされた。

 

 このため、劣悪遺伝子排除法の実態は、約500年に及ぶ長い旧帝国史の中に埋没していった。しかし、新帝国成立後、新史料が公開された結果、帝国暦9年、ルドルフが帝国議会に同法案を上程した時の演説原稿、そして同法案の原文が発見された。以下、引用文としては冗長に過ぎるが、史料をして語らせたく思うので、読者諸氏のご寛恕を乞いたい。

 

 なお、現時点で発見、分析された新史料によると、同法は成立後、歴代諸帝の政治目的、また個人的嗜好によって、しばしば恣意的な改変が加えられてきた事が明らかになってきた。恐らく、同法の変遷を調査、研究するだけでも、優に専門書1冊が執筆できるだろう。本書でも現時点での研究成果に基づき、各帝の項目で適宜、解説していきたい。

 

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