【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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1-2:劣悪遺伝子排除法とは?~同法案(全文)

 帝国法第156号(帝国暦9年12月1日施行)

 

 劣悪遺伝子排除法

 

(目的)

第一条 本法は、全人類社会を正当に統治する唯一の政体である銀河帝国(以下、帝国)の定める、人類社会に不可避的に生じる格差を前提とした社会秩序に背き、また共和主義・自由主義等に由来する反帝国思想を鼓吹、もしくは同思想に基づく破壊行為等を行い、徒に人類社会の混乱と無秩序をもたらす逆賊を撲滅するとともに、彼ら逆賊が施す人為的な手段により、劣悪遺伝子を保有する、及び保有するに至る可能性がある異常者の排除を目的とする。

 

(対象)

第二条 本法の適用範囲は、本法施行日(帝国暦9年12月1日)に生存する全人類、及びその子孫とする。

 

(定義)

第三条 本法で逆賊とは、次の各号に該当する個人及び集団をいう。

 一 帝国の支配を受け入れず、不当な政治団体を構成し、同団体を支配する者及びその支配下にある者

 二 帝国からの分離独立を企図し、政治的・軍事的・思想的活動等を行った者

 三 帝国が定める社会秩序に背き、帝国統治機関及び帝国臣民を対象とした、破壊活動等を行った者

 四 共和主義等に由来する反帝国思想を鼓吹した者、及び反帝国思想に賛意を表明した者

 五 帝国が定める臣民の義務に背き、自己の欲望充足、またはその他の理由によって、臣民に相応しくない行為を成した者

 六 帝国が認める正当な理由なく、化学的または医学的手段により、自己の欲望充足のため、自己及び他者が有する生得の遺伝子配列を改変した者

 

2 本法で劣悪遺伝子とは、帝国の定める社会秩序に背く逆賊が、化学的もしくは医学的手段によって、自己の欲望充足のために改変した遺伝子配列の事をいう。

 

3 本法で異常者とは、劣悪遺伝子を保有する者及び保有するに至る可能性がある者をいう。

 

(執行機関)

第四条 本法の執行機関は、内務省内に設置する社会秩序維持局とする。なお、同局の責任者は、本人及び三親等内の親族・姻族が過去に逮捕歴を有しない、また反帝国思想の所有者として指弾された経験を有していない事を内務尚書が確認し、帝国皇帝の勅許を得た者でなければ、就任する事が出来ない。

 

2 本法の執行上、社会秩序維持局の責任者が特に必要と認める場合は、内務尚書の了解の下、帝国の各行政機関及び帝国軍に対して、業務執行上の支援を要請する事が出来る。要請を受けた各機関及び軍の責任者は、帝国皇帝より付与されたその権限内にて、要請された内容を誠実に実行する責務を有する。なお、支援活動の細部については、同局担当者と、支援要請された機関の担当者とで、必要な調整を行うものとする。

 

(監視及び逮捕)

第五条 社会秩序維持局は、第三条第一項の各号及び第三項に定める人物及び集団が存在していないか、不断に監視するとともに、該当する人物及び集団を発見したる時は、速やかに逮捕しなければならない。ただし、該当する人物及び集団が本法施行日以前から存在し、かつ帝国皇帝によって公敵に指定されている場合は、この限りではない。

 

(尋問)

第六条 社会秩序維持局は、前条の規定により、逮捕した個人及び集団に対し、同局が把握できていない逆賊・異常者が存在しないか、必要な情報を収集するため、第七条に定める撲滅及び排除に関する措置を執行する前に、尋問を行う責務を有する。また、尋問は効率的かつ短時間で完了できるよう、同局は最適な手段を選定し、実行しなければならない。なお、同局が最適と認めた尋問の過程で、対象者が予期せずに死亡した場合は、公務執行上のやむを得ざる過失として、担当者の法的責任は免除する。

 

(撲滅及び排除)

第七条 第五条の規定により、社会秩序維持局が逮捕した個人及び集団は、その状態を鑑み、次の各号に掲げる方法のうち、適切な方法で社会から撲滅、排除されなければならない。適切な方法の選定及び執行は、同局担当者が判断、決定するものとする。なお、執行の結果は、速やかに内務尚書に報告されなければならず、内務尚書が特に必要と認めた場合は、帝国皇帝に上奏されなければならない。

 一 致死 薬物もしくは電気ショック等により、過度の苦痛を伴わないものとする。ただし、逮捕時に対象者が抵抗した結果、本人が死亡した場合は、執行済と見なす。

 二 断種 異常者の劣悪遺伝子が後世に伝播する事を防止するため、男性は射精、女性は妊娠が不可能になるよう、化学的もしくは医学的に必要な処置を取る。

 三 隔離 対象者が老衰または病気、事故等、何らかの要因によって死去するまで、流刑地として設定された惑星に存在する建物等に移送する。移送先の選定は社会秩序維持局の判断によるものとする。なお、移設後に、同局の許可なく惑星外に出た対象者は、即時の致死対象となる。

 四 矯正 対象者が現在、劣悪遺伝子を保有してはいないが、将来に保有する可能性があると認められる場合は、帝国の定める社会秩序を受け入れ、劣悪遺伝子の保有を拒絶できる、良質なる帝国臣民に回帰できるよう、社会秩序維持局は、対象者の人格矯正を図るため、医学上、必要な措置を執行する責務を有する。必要な措置の選定は、同局が業務委託する医療従事者の判断と意見に基づいて、同局担当者が決定する。なお、同局担当者が決定した措置は、同局が業務委託した医療従事者に代行させる事ができる。所定の効果が得られなかった場合、または対象者が予期せず死亡した場合は、公務執行上のやむを得ざる過失として、同局担当者もしくは代行した医療従事者の法的責任は免除する。

 

(臣民の義務)

第八条 帝国臣民は、逆賊もしくは異常者の疑いがある個人及び集団を発見した場合は、速やかに社会秩序維持局に通報する義務を負う。発見したにも関わらず、同局への通報を怠った者は、第三条第一項第五号に定める臣民の義務違反として、社会秩序維持局の逮捕対象となる。

 

(関係法令)

第九条 本法の規定は、刑法ほか社会秩序の維持と不法行為の根絶に関する帝国の諸法令に対して、上位にあるものとする。

 

(改正)

第十条 本法の改正には、尚書会議に改正案を提案、承認された上で、帝国皇帝の裁可を要するものとする。

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