【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 ルドルフの政治~ペデルギウス星系

 首相就任後のルドルフは、クロプシュトックら地元財界人の期待に応え、中央に本拠を置く大企業の横暴と、連邦政府の無為無策ぶりを弾劾。「私は政府首相として、このペデルギウス星系に住む市民の安寧と幸福を第一に考える」と発言。多星系企業のペデルギウス支社を強制捜査して、脱税や労働基準違反など違法行為の証拠を押収すると、支社長以下幹部社員の逮捕、追徴課税の名目で企業資産の没収を断行した。

 

 宇宙海賊やマフィアなどの犯罪者集団に対しては更に厳酷で、抵抗した構成員の即時銃殺、資産の没収はもとより、「犯罪者を罰するのに善良な市民が納めた税金を使用する事は、常識としてあり得ない」と、逮捕された構成員は原則、未開拓惑星で開拓作業に従事させ、食料や日用品は全て自給自足させるという労働刑に処した。

 

 また、公職にある者は、自らを厳しく律しなければならないと、議会議員や政府職員の汚職や怠慢を摘発するために、市民からの申告制度を設けた。申告内容は全てメディアを通じて公開。申告された議員や職員の実名や所在地も報道された。そして、その申告が仮に間違っていたとしても、市民からそのような目で見られた事自体が公職にある者として許されないと、申告した市民の責任は問わないとした。

 

 その一方で、これまで行政の怠慢や大企業の横暴で苦しめられてきた善良な市民を救わねばならないと称し、脱法企業や犯罪者集団から没収した資産は、星系市民への補償金として分配したほか、年収額が一定以下の全市民を対象に、毎月、一定額を支給する基礎的所得保障制度を創設。この他、戦傷を受けた退役軍人や、労働災害にあった労働者は、社会のために献身した英雄として顕彰、特別弔慰金制度を設けた。

 

 これら急進的な諸政策には、各所から強い批判が出された。特に、資産没収の憂き目にあった多星系企業は、財産権の不当な侵害、連邦法違反だと、連邦裁判所への申し立てを行ったが、ルドルフは「不当行為で得た財産を保護する法など無い。もしそのような法律があるというならば、それは法律が間違っているのだ。少なくとも、我が星系には、犯罪者を擁護するような法は存在しない」と発言。連邦裁判所の判決内容によっては、連邦からの脱退も辞さない、軍隊を用いても、我が星系と星系市民を保護すると述べた。

 

 このルドルフの強権的発言は、いわゆる良識人の眉を顰めさせたが、ペデルギウス星系市民の支持は、熱狂から崇拝の域に達しようとしていた。

 そして、ルドルフこそ市民を守れる真の政治家だと、その強権路線に追随する者たちが現れてきた。彼らは主として、連邦の現状を深く憂い、改革の必要性を叫ぶ若い政治家や各政府職員、連邦軍人、財界人などであったが、彼らにとって、強く、揺るぎないルドルフは、自分達が待ち望んでいた理想のリーダーだった。

 

 宇宙暦296年、ルドルフは政治に専念すると称し、ペデルギウス星系政府・治安維持部隊司令官を辞任、同時に軍籍を退いた。この時、星系議会全議員の推薦を受け、ルドルフは星系政府軍少将に進級している(同政府軍は少将が最高位)。

 

 また同年、ルドルフは「ペデルギウスから銀河連邦改革の狼煙を上げる!」として、自らに賛同する連邦議会議員や、各星系議会の議員たちと語らい、地域政党「国家革新同盟」を立ち上げて、党首に就任している。連邦議会の定数(上院300名・下院500名)に対して、上下院あわせてわずか10議席を占めるだけの革新同盟は、設立当初、所詮は人気頼みの泡沫政党に過ぎないと、古参の議員やメディア達から憫笑を以て語られる存在でしかなかったが、わずか数年後、革新同盟は上下院の約8割を占める巨大政党と化した。

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