【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」 作:旧王朝史編纂所教授
本論からはやや外れるが、大多数の読者には馴染みが薄いと思われる連邦の議会制度について、読者の理解を助けるため、解説しておきたい。
銀河連邦は約300に及ぶ星系政府や特別自治区が連合した連邦型国家である。その成立上、各星系政府の独立性は極めて高く、連邦議会の制度も、その事情を反映している。
連邦議会は上院・下院の二院制であり、各院の定数は時代によって多少の変動はあるが、凡そ上院は300、下院は500程度で推移している。これは各院の成立事情に由来している。
上院は、銀河連邦に加盟する各政府の代表者会議に端を発しており、人口・面積に関わらず、各政府に1議席ずつ割り当てられている。選出方法は政府ごとに異なるが、政府代表者(首相など)が連邦議会上院議員になる例が多い(ルドルフも、ペデルギウス星系政府首相に就任すると、自動的にペデルギウス星系選出の連邦議会上院議員になっている)。
対して、下院は宇宙航路の維持管理など、複数の星系に跨る政策課題について、広く連邦市民の民意を聴取する場として設立。各星系に最低1議席が割り当てられるが、残りの議席は人口比によって案分される(ちなみにペデルギウス星系は、ルドルフの首相就任時、計3議席が割り当てられていた)。
下院議員の任期は4年、被選挙権を有する20歳以上の連邦市民であれば立候補できる。下院の主な役割は、連邦政府が提出した議案の審議と採決。そのために、政府の各省庁に対応した常任委員会を設置、委員会で可決された議案は、年4回開催される定例会で採決される。また、下院議員は議案の提案権を有し、議員提案の議案も政府提出の議案と同様、各委員会に付託され、可決された後、定例会で採決される。
また、下院は各星系の利害を超えて、広く連邦市民の民意を反映する機関とされている事から、連邦の行政を統括する政府首相は、必ず下院議員から選出されなければならない、と規定されている。制度上、全下院議員が首相候補になるが、実際の運用では、4年に一度実施される首相選挙時、立候補の意思を表明した下院議員の中から、連邦市民の直接選挙(国民投票)で選出する形が取られている。
首相に当選した議員は、各省庁の大臣と内閣官房長官を選任し、自身の内閣を組閣する。また、首相の権利として、若干名の無任所大臣を任命する事が出来るが、内閣を構成する大臣の過半数は、民意を尊重するため、下院議員でなければならない、と規定されている。なお、上院議員は大臣にはなれない。
対して上院は、下院で可決された議案を再審議し、採決を下す事が主な役割。これは、連邦政府が各星系政府の意向や考えと乖離しすぎる政策を強行しないための措置。よって、上院は連邦政府と下院の暴走を抑止する、チェック機関だと定義される。ただし、星系政府のエゴを抑制するため、上院で否決された議案でも、60日以内に下院で再可決されれば、その採決が優先されると規定されている。なお、上院議員は下院議員とは異なり、議案提案権を持たない。
上院の特徴として、国家元首を選出する権能を有する事が挙げられる。元首の任期は2年、全上院議員の互選で選出され、上院議長を兼務する。形式的なものではあるが、上下院で可決された議案は、元首が署名する事で正式に法律として公布される。
また、元首の権能として、各星系政府に対する調査権、懲罰権がある。これは、各星系政府が連邦法に違反する行為をしている疑いがある場合、立ち入り調査する事ができる権限であり、調査結果は上院に報告される。元首は違法行為があった星系政府に対して、上院の承認を得た上で、連邦軍の出兵を含めた懲罰を課す事が出来る。
この他、上下院と司法機関、また連邦軍との関係もあるが、本書の主旨とは関係が薄いので割愛する。興味のある読者は、その分野の専門書を参照して頂きたい。ルドルフが銀河連邦で台頭し、終身執政官という独裁者になった事との関連でいうならば、連邦政府首相は下院議員でなければ就任できない事、連邦の元首は上院議員の互選によって選ばれ、各星系政府への懲罰権を有している事、この2点に留意して頂きたいと思う。