【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第7章 帝国の経済体制 Ⅲ~欲望を充足する機構
第1節 帝国の「財(製品)」と生産体制


 これまで、臣民の生存を保障するための配給制度と、配給品を生産する国営企業・公営企業のあり方について主に述べてきた。それは、ルドルフが目指した「臣民の生存を保障する」機構としての経済体制だ。

 しかし、これは旧帝国の経済体制の基礎ではあるが、一部分でしかない。貴族や平民の欲望を満たせる、配給品ではない製品は、どのように計画生産されていたのか、そして、医療などのサービス業は、誰がどのように営んでいたのか、本章では、配給対象ではない製品及びサービスの生産・提供体制について概説したい。

 

 まず、企業活動で生産される製品は、帝国財務省の分類によると、次のように区分されている。各分類の説明と生産体制は以下の通り。

 

 1.基礎財

 配給品に相当。食品や衣類など臣民の生存に必要不可欠とされる品目。ただし、配給品以上の品質を持つ物は奢侈品と見なされる。前述の通り、郡単位で必要数量を集計、計画生産されている。

 

 

 2.公共財

 主に、公共インフラを整備するために必要な原材料・資材・各種の産業機械など。重化学工業製品が多い。

 

 州単位で計画生産される事が原則。総督府で州内の需要を取りまとめて、必要量を計算して、州内の国営企業に発注する。

 なお、公共財も基礎財と同様、郡単位で自給率100%とする事が望ましいとされたが、基礎財ほどは厳しく定められておらず、州内の各郡同士で融通する、または他州から運搬する事も許可された。仮に欠品しても、すぐに臣民の生存が脅かされる可能性は低いから、との理由による。

 

 また、エネルギー供給の根幹システムたる核融合炉は、財務省指定の国営企業か、同省が定める基準を満たす公営企業でのみ生産が許可された。

 

 この他、前述の禁制品―恒星間航行用宇宙船・戦闘用艦艇・兵器―も、公共財と見なされたが、総督府での発注は許可されていなかった。これらの製品は、帝国政府が数量を一元管理するため、財務省が各省、各州の需要を取りまとめ、同省指定の国営企業でのみ生産させた。製造後は、財務省が一括購入して、各省と各州に必要数量を支給した。修理やメンテナンス等も、指定企業の技術者しか行えないとしたので、多くの貴族領には、指定企業の支社や営業所が設けられた。

 

 3.民需財

 必ずしも生存に必要とはしないが、生活水準の向上に資する製品。家電製品や地上車などの耐久消費材が代表例。また、酒や煙草等の嗜好品、書籍や文具等の文化製品、遊具等の娯楽製品、高価な家具や宝飾品等の奢侈品も含まれる。

 

 公共施設で使用される耐久消費財は一部、国営企業でも生産されているが、シェアは圧倒的に公営企業の方が大きい。また、嗜好品・文化製品・娯楽製品・奢侈品は、全て公営企業で生産されている。帝室や政府の需要が生じた場合は、皇族が経営する公営企業などで委託生産される。

 原則として受注生産なので、公共施設で使用される物は、総督府で必要数量を集計され、財務省が指定する公営企業に一括発注される。平民が購入を希望する場合は、町役場を通じて購入依頼書を提出する必要があるが、公共の需要が優先なので、納期が年単位になる事もあった。

 

 基礎財(配給品)の必要数量と品目が郡単位で集計されているのと同様、公共財も各州で数量と品目を集計、州内の需要は、前述の禁制品や特定の希少金属などを除き、同州内で生産する体制が取られていた。

 ここから、旧帝国の経済体制は極めて分権的だと言える。これは貴族領も同様で、製品の「地産地消」に拘泥したルドルフの意向と見られているが、同時に領主貴族の独立性を養う結果ともなり、ひいては、自由惑星同盟が建国される遠因となった、との仮説もある。この点は再建帝オトフリート2世の巻で詳述したい。

 

 一方、基礎財と公共財との最大の相違点は、前者は欠品発生を法律上の罪とも見なし、消費されずに廃棄処分となる製品が生じても構わない、常に潤沢な在庫を持つ事が推奨されたが、後者は原則として計画策定後に生産開始、金属鉱石などの原材料を除けば、基本的に在庫を持たないようになっていた。この事もまた、臣民の生存を経済活動の第一義と見なしたルドルフ以下の国家派、また統制派の思想の現れ、と思われる。

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