【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第8章 帝国の経済体制 Ⅳ~通貨・税制・財政
第1節 帝国の通貨制度


 帝国の通貨である帝国マルクの発行を所管していたのは財務省造幣局。同局は、同省物価局が調査、分析した各星系(貴族領含む)の生産・消費動向を踏まえ、通貨の発行量を決定、市中に流通する通貨量をコントロールしていた。

 

 通貨の年間発行量は、同局の作成した原案を踏まえて、財務尚書及び各局長による合同会議で検討。決定した同省案は尚書会議に提出され、同会議で承認後、帝国皇帝の裁可を得て、正式に決定される。

 その後、造幣局で発行された帝国マルクは、国営銀行たる帝国銀行(ライヒスバンク)に預金され、同行から国営および公営企業へと融資されて、市中に流通している。

 

 旧帝国も銀河連邦と同様、政府が通貨発行量を定める管理通貨制度を採用しており、時の皇帝、権力者の意向により、発行量は若干の変動はあったものの、原則として市中の需要より通貨の流通量が常に少なくなるよう、発行量は低く抑えられていた事が分かっている。

 

 この結果、旧帝国の景気は常時デフレ傾向にあり、通貨の価値が高い反面、物価は安い状態が続いていたが、それもまた「発展しない」経済を実現するための方途だった。

 自由経済体制におけるデフレは、消費が低迷し、企業の業績も悪化する不況と捉えられていたが、統制経済を実施して、経済の目的は利益追求ではなく、国家と臣民が必要とする物資等を調達する事だと断じるルドルフにとり、物価安を招来するデフレはむしろ理想的な状態だった。いや、この事に気が付いたが故に、デフレ状態を維持するため、通貨発行量を低く抑え続けたというのが真相だろう。

 事実、権臣エックハルトなど、経済発展による利益追求を容認する人物が帝国の実権を握ると、通貨発行量は増加傾向に示している。

 

 また、通貨の価値が高い事は、旧帝国の経済主体たる貴族たちの経済力を強化するとの副産物をもたらした。前述の通り、平民が現金収入を得る手段は、低い水準に抑えられた給与所得しかなかったのに対して、爵位持ち貴族は政府から与えられる巨額の年金と俸給で恒常的な現金収入があり、また公営企業を経営する貴族は、帝国銀行からの融資という形ででも、巨額の現金を手に入れる手段があった。

 

 彼ら貴族たちは、豊富な資金を背景に、優秀な人材を従臣として採用、良質な労働力を領民に招いて、身分のみならず、労使関係によっても平民を支配する事が出来た。ただし、前述した通り、従臣や領民を不当に遇して、反抗や逃亡を招くと、支配能力なしと見なされ、枢密院の弾劾対象ともなったので、彼らの待遇は連邦時代の貧困層と比較すれば、押しなべて良好な水準にあった。

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