【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第4節 帝国の財政制度

 最後に、旧帝国の財政制度について一言しておきたい。一般的に、税と財政は国家の根幹を成すものだが、旧帝国において、その比重は必ずしも大きくなかった。

 

 その要因として、貴族領は基本的に独立採算制だったので、連邦と比較すると、中央政府の予算規模が半分程度になった事、政府の収入は、禁制品など国営企業で生産した製品の売却益と、全平民から徴収する安全保障税が大半を占め、貴族資産は非課税だったため、複雑で多様な税制度が必要なくなり、税務行政が簡素化された事、利子・利息が法的に禁止されたので、複雑な金融商品が消失し、政府会計が現金主義に移行した事、これらの点が指摘できる。

 

 さらに、安全保障税は全平民一律の基礎課税分と、所得に応じて加算される累進課税分の二階建てだったが、この基礎課税分が課税額の70~80%程度を占め、各年度で税収に大きな変動が生じなかった事も、予算編成作業の簡便さを齎した。この状況は事実上の外国たるフェザーン自治領が誕生し、財務省が国債発行という資金の調達方法に手を染めるまで、基本的には変化していない。

 

 ちなみに、帝国政府の予算編成作業は、各省から提出された概算要求を踏まえ、財務省理財局が前年度の予算執行状況を加味した上で、予算編成方針と予算原案を策定。それを受けて、同省主計局は、各省担当官との復活折衝等を経て、政府予算案を策定、同省の局長会議で検討、承認された後、皇帝臨席の尚書会議(御前会議)に提案される。同会議で議決された後、皇帝の裁可を得て、正式に政府予算として確定される、との流れだった。

 

 予算編成の流れは、最終決定を行うのが皇帝か、議会かとの差はあれども、連邦政府のそれと大きな違いは無かった。しかし、予算内容、特に歳出には大きな変化が見られる。連邦時代、歳出の大半を占めていた人件費・扶助費(福祉費)・公債費、いわゆる義務的経費が大きく減額された反面、軍事費、そして治安維持関連の支出が莫大となり、次いで貴族関連の支出(貴族年金等)が多額を占めている。

 

 義務的経費の減額は、政府や軍で現業職を務める者が公務員ではなくなり、農奴や奴隷に代替された事、公的な医療・福祉制度が縮小、廃止された事、そして利子・利息が法的に禁止された事により、国債の発行が出来なくなった事による。

 軍事費の増加は、前述した通り、帝国政府にとって、ある意味では仮想敵とも言える領主貴族に備える必要があった事が原因であり、貴族関連の支出は、帝国の支配者層として、人工的に作られた貴族制度を維持するために、莫大な経費が必要となっていた事が窺える。

 

 以上が旧帝国財政の概要だが、連邦や同盟のそれと比較すれば、その内容は簡単明瞭に過ぎると言っても過言ではない。しかし、それもまた、敢えて予算の項目を大きく(粗く)する事で、各部局、ひいては各担当者の裁量権を大きくし、連邦末期の如き硬直化した縦割り行政を打破して、より能動的な「人治」を目指す、ルドルフの姿勢の表れだと言えるだろう。

 

 さて、旧帝国の経済体制、特に建国期のそれについて概説してきたが、その通奏低音となっているのは、再々述べてきたように、ルドルフが理想とした「発展しない」経済だった。

 しかし、自由経済体制であれば常識以前の課題である経済発展を求めないその姿勢は、自由主義と民主主義を国是として、帝国の支配を肯んじない独立勢力、シリウス・攻守連合・経済共同体らが容認できるものではなく、帝国政府もまた、自身の国是を貫徹するために、彼らの存在を放置する事は許されなかった。さらには、帝国領内にさえも、自由経済を是として、連邦時代を懐かしむ共和主義勢力が跳梁跋扈し、水面下では彼らに同調する総督や知事も存在した。

 

 彼ら反帝国勢力、及び領内の共和主義勢力を討滅するための手段であり、決意表明でもあったのが劣悪遺伝子排除法だった、とするのが筆者の見解だが、次章では、これまで述べてきた行政・軍事・経済の各制度、そして旧帝国特有の身分制度を用いて、銀河帝国は反帝国勢力や共和主義勢力を如何にその支配体制へ組み込んでいったのか、ルドルフの治世後期、帝国暦9年から始まる、筆者が名付けた「平定戦役」について解説したい。

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