【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」 作:旧王朝史編纂所教授
第1節 平定戦役の実態①~総督府等が帝国支持の場合
帝国軍中央艦隊が攻守連合軍に勝利したトラーバッハ星域会戦に端を発する平定戦役では、対同盟戦争で常態化していた、華々しい艦隊決戦など数えるほどしか行われなかった。その実態は、シリウスや攻守連合の支援を受けた武装勢力やテロ組織と、社会秩序維持局の治安維持部隊との間で、小規模な戦闘が延々と繰り返されて、散発的に、シリウスや攻守連合の正規部隊と帝国軍との間に大規模戦闘が発生する、というものだった。
そのため、一連の戦闘行為は、ほぼマニュアル化されていた。社会秩序維持局に残る当時の業務手順書などを参考に、平定戦役の実態を描いていこうと思う。なお、以下の記述は皇帝直轄領での事例である。
内乱鎮圧、治安回復を本質とする平定戦役の遂行では、現地の行政機関(総督府または郡政庁)が帝国を支持しているかどうか、それが焦点だった。総督府等が帝国皇帝に忠誠を誓っていれば、これは領内の治安回復活動と見なされたが、逆に皇帝へ叛旗を翻して、シリウスや攻守連合等の敵国の支配下にある、または星系内の共和主義勢力と結び、自ら独立勢力たらんとしている場合は、敵性勢力への武力行使活動と見なされた。
社会秩序維持局の治安維持部隊を主力とし、現地総督府の警備部隊、内務省警察局の治安警察と協働して、共和主義を掲げるテロ集団など、帝国に敵対する組織・勢力の逮捕、掃討を行った。
敵対組織等が保有する武力が強大で、社会秩序維持局や総督府では対応不可と判断された場合は、総督から国務尚書に報告、帝国地上軍の派兵を要請した。国務省・内務省・軍務省で協議し、派兵が必要だと判断されれば、連名で皇帝に上奏、皇帝の裁可を経て、地上軍の派兵が行われた。
また平行して、敵対組織の摘発のため、劣悪遺伝子排除法違反の疑いがある個人、団体がいれば、すぐに総督府へ通報するよう、臣民からの積極的な情報提供を促した。その情報が仮に間違っていたとしても、情報提供者は罪に問わないとし、その情報が敵対組織の摘発に繋がった時は、忠良なる臣民だと報奨金が与えられたほか、本人が希望すれば、現地総督府の下級職員や帝国軍兵士に優先採用された。
ちなみに、総督府の職員を希望した場合は、総督府内に置かれた社会秩序維持局の分室に配属される事が多かった。
敵対組織等の構成員は、抵抗した場合は即時処刑、抵抗後の降伏は原則として認められなかった。抵抗せずに逮捕された場合は、武装解除の上、その家族も含めて、奴隷階級に落とされた。ただ、自らが所属していた組織を裏切り、帝国の治安回復に協力した構成員は、迷妄から覚めて正道に立ち返った者と認められて、一定期間、家族とともに農奴階級に落とされた後、帝国臣民(国民)としての地位を与えられた。
敵対勢力等が壊滅し、当該星系の治安が回復されたと、社会秩序維持局と現地総督府が判断した時点で、戦闘終結を宣言。その後、社会秩序維持局の治安維持部隊が一定期間、当該星系に駐屯して、治安の悪化が生じないか確認した。平行して、治安回復の過程で損傷した公共インフラ等の復旧など後処理を現地総督府が実施した。