【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」 作:旧王朝史編纂所教授
対して、現地の総督府が敵国の支配下にある、総督府が敵国の後援を受けて独立を志向している、帝国政府が派遣した総督らが敵対勢力に囚われ、捕虜となっているなど、総督府が帝国政府の統制を離れている場合は、まず総督府の攻略が戦略目標とされたために、社会秩序維持局ではなく、帝国軍が主体となった。
この場合、当該星系を所管する軍管区の地方艦隊を出動させて、星系内の航路を封鎖し、かつ州都が置かれた惑星の衛星軌道上に艦隊を展開、降伏勧告を行った。
この時、軍務省・統帥本部が策定した防衛戦略に則り、星系内に防衛線を構築。敵国または敵対組織の航宙戦力(艦隊)が来襲した場合は、敵戦力の漸減を図り、かつ撃滅を目指す、とされた。
敵対する総督府との交渉は、派遣された帝国軍の司令官が行ったが、条件闘争を行う必要はない、住民の安否など顧慮する必要も無い、とのルドルフの意向で、無条件降伏に対し、イエスかノーの二択を迫るだけだった。無条件降伏を受け入れた場合でも、抵抗せずに降伏したのか、抵抗の末に降伏したのか、この差は大きかった。
前者であれば、総督以下、総督府の職員とその家族の生命と財産は、原則として保障された。また、総督が連邦の星系政府首相から横滑りしたなど、現地の有力者である場合は、帝国皇帝への忠誠を改めて誓約させ、貴族の身分を与えて、総督の地位も安堵した。これは、現地勢力を敵国へ追いやる事を防ぎ、平定戦役を円滑に進める事が狙いだったと言われる。
ただし、統治能力が欠如していると判断された場合は、家族ともども帝都へ連行、一代限りの子爵または男爵位を与え、生命だけは全うさせた。なお、本人や子弟が希望すれば、政府官僚や帝国軍人として優先採用した。
また、総督が政府派遣の貴族官僚だった場合は、皇帝の信任に背いた無能者として免職、家族ともども貴族の身分を剥奪された上、刑事罰の対象になる事もあった。ただし、総督府内で敵対組織の切り崩しや情報収集等を行い、帝国軍が攻略作戦を遂行する上で、一定の功績があったと認められた場合は、罪一等を減じて、貴族身分の保持を許された。
対して、後者の場合、抵抗した上での降伏であれば、その運命は凄惨なものとなった。総督本人と家族、親類縁者に至るまで死刑、族滅とされた。総督が現地有力者出身であれば、その勢力を壊滅させるために、総督府の上級・中級職員も死刑または流刑。政府派遣の貴族官僚であれば、総督府職員のほか、家士や従臣も処刑対象となり、その家は絶家された。
上記のように、総督府自体が敵対勢力だった場合は、攻略後の統治組織自体が存在しないため、帝国軍による軍政が一時的に行われた。基本的には遠征軍司令官が統治責任者となって、各省から派遣された官僚達を組織、治安回復と公共インフラの復旧などを行ったが、当該星系が敵国との最前線に位置するなどの事情で、司令官が戦争指揮に専念しなければならない場合は、軍務省から派遣された軍政家がその任に当たった。このため、当時の前線部隊には、一定数の軍官僚が同行する事が多かった。そして、治安が回復したと判断されたならば、新設の総督府に統治を移管、治安維持は社会秩序維持局が担当し、帝国軍は帝都または軍管区司令部に帰還した。