【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 人民(捕虜)の処遇

 当該星系内の敵対勢力を壊滅させ、治安を回復したら、同星系を皇帝直轄領として確立、もしくは編入していく事になる訳だが、敵対勢力の支配下にあった人民とその家族らはどう処遇をするか、これが大きな問題だった。

 

 社会秩序維持局や帝国軍の一部には、皇恩を理解しない不逞の輩など、全て極刑とすべきだとの強硬論もあったが、個別事情も考慮せず、一律に処刑では不公平感が生じ、却って治安悪化の要因になる、との意見が司法省や内務省警察局を中心に多く、また統制経済の根幹の1つ、配給制度を維持するため、基礎財(配給品)の生産には大量の労働力が必要だとして、財務省は労働力確保の観点から、一律処刑に反対の論陣を張った。

 

 ルドルフ自身は、治安回復を最優先するとの姿勢は崩していなかったが、司法省や財務省の主張にも配慮し、彼ら降伏した人民と家族は、帝国皇帝に敬意を払い、その支配を受け入れる限りで、助命される事に決まった。

 

 とは言え、即時に帝国臣民としての身分を与えられた訳ではない。帝国皇帝に逆らう不逞の輩に与した罪は罪だと、原則3年間を目途に、全員、農奴階級に落とされた。尤も、降伏時の事情-例えば、抗戦を命じられたが、それに逆らい、積極的に降伏したなど-を考慮され、直接、国民になれた者もいた。

 また、農奴として積極的に労働に取り組み、帝国に従順である者は、忠良な臣民の素質ありとして、農奴の期間を短縮される例もあった。

 

 逆に、一度助命されながらも、敵国や共和主義勢力と通謀、反帝国活動に関わった者は、劣悪遺伝子排除法違反であり、皇恩に逆らう罪人だと、奴隷階級に落とされて、過酷な労働を死ぬまで強制された。

 

 このように、同じ降伏者でも、その待遇に差を設けたのは、西暦年代の植民地経営で用いられた原則「分断して統治せよ」の実践で、これを提唱したのは、初代内務尚書ファルストロングだったと伝えられている。

 

 彼ら農奴の就労場所は帝国政府が指定したが、特殊な技能の所有者など、国家にとって特に有用と認められた者は、それまでと同じ職場に勤務する者もいた。これは、医師や工業関係の技師などに多く認められたが、人材の有効活用との観点だけではなくて、彼ら社会的地位の高い職業に就く者は、知的水準が高く、自由主義や民主主義を信奉する者が比較的多いので、敢えて彼らを生かしておく事で、共和主義勢力との繋がりを炙り出そうとする社会秩序維持局の意図もあったと言われている。よって、彼らは就業後も同局の監視下に置かれていた。

 

 上記のように、特殊な技能を持つ者が働いていた場所、即ち敵対勢力の支配下にあった企業などは、同じ業種の国営企業に統合、または編入されるのが常だった。その経営者は帝国に従順であれば、現地支配人として、そのまま登用される事もあったが、帝国に従わない場合は追放、帝国に従順な社員が据えられた。生産施設などはそのまま接収されたが、規格が違いすぎる場合は、全て廃却された。

 

 これは公共インフラも同様で、都市さえもその例に倣った。旧帝国は「一惑星一都市」を原則としており、州都(もしくは郡都)に選ばれた都市以外の都市施設は、全住民を強制移住させた後、放置されて廃墟と化すか、国営企業の生産施設か軍事施設などに転用された。

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