【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」 作:旧王朝史編纂所教授
戦って勝利する事よりも、戦わずして勝利する事を重んじるルドルフの軍事思想を反映して、建国期に活躍、ルドルフに重用された軍人たちは、前線指揮官としての適性が高い戦術家より、戦略・政略に長けた参謀、軍政家たちが多い。
しかし、帝国が敵国と交戦状態にある以上、優れた司令官も一定数は必要だった。だからこそ、ルドルフは、優れた戦術家で、かつ戦略的識見も有し、教育者としての資質もあるリスナー大将を統帥本部総長に抜擢したとも言える。本節では、内乱鎮圧・治安維持との性格が強い平定戦役中でも、しばしば勃発した対外戦争の推移を踏まえ、平定戦役で活躍した軍人たち、帝国建国の宿将とも言える将帥達の人物像を描きたい。
まず、ルドルフ治世で起こった対外戦争の推移を分かりやすくするため、関連事項を抽出した年表を以下に掲げる(暦年は全て帝国暦)。
9年
帝国宇宙軍、トラーバッハ星域会戦で攻守連合軍に勝利。統帥本部総長リスナー大将が上級大将に昇進、「双頭鷲武勲章」と「ゴールデンバウムの盾」との異名を賜る。
劣悪遺伝子排除法を制定し、内務省公安局を社会秩序維持局に改組。
14年
内務尚書ファルストロング指揮の社会秩序維持局・治安維持部隊と、地上軍総監ケッテラー大将麾下の帝国地上軍、統帥本部総長リスナー上級大将麾下の帝国軍中央艦隊が合同作戦を実施する。ヴァナヘイム軍管区の共和主義勢力を壊滅させ、シリウスと攻守連合の連絡線を遮断する。
17年
皇孫ジギスムント誕生。
内務尚書ファルストロングが共和主義組織・自由戦士旅団の爆弾テロで死去。帝国地上軍、アルフヘイム星系に進軍。共和主義組織・自由戦士旅団を壊滅させる。帝国宇宙軍、援軍としてアルフヘイム星系に来襲したシリウス軍に勝利。この戦いで、リスナー上級大将麾下の若手提督が活躍。
19年
帝国宇宙軍・地上軍が合同作戦。レーシング星系を制圧し、攻守連合軍を退ける。
24年
皇孫ジギスムント、立太子式を挙行。立太子に伴う恩赦として、シリウス・攻守連合の元市民(農奴)の解放年限を短縮。
31年
帝国軍中央艦隊副司令官・リヒテンシュタイン大将率いる帝国遠征軍が攻守連合に大勝。ポルックス人民共和国のロブコフ主席が戦死。
32年
汎オリオン腕経済共同体との協約を破棄、帝国領内での経済活動を禁止する。共同体軍のエリオット中将が降伏、子爵位を与えられる。エリオット中将の先導で、ノイエ・シュタウフェン大将率いる帝国遠征軍がシリウス・共同体の連合軍に勝利。
34年
カストル軍政府のスー総統が病死。長男ディビットが後継者として擁立される。スー総統の三男スー・ウェイ・ダオが長男ディビットとの後継者争いに敗れて降伏。ノイマンに改姓させて、侯爵位を与えられる。
38年
この頃、平定戦役が停滞。皇太孫ジギスムントへの帝位継承準備に入った事が原因と言われる。
42年
ルドルフ崩御。
皇太孫ジギスムントが強堅帝ジギスムント1世として即位。
上記の年表から、帝国軍と敵国正規軍との大規模戦闘は、ルドルフが崩御した帝国暦42年まで、数える程しか発生していない事が分かる。
また、当時の帝国軍は宇宙軍と地上軍がほぼ同格で、内乱鎮圧との性格が強かった平定戦役では、宇宙艦隊=帝国軍が常識になっていた旧帝国末期からすると信じがたい事に、戦闘の内容によっては、帝国地上軍、あるいは社会秩序維持局の治安維持部隊が主戦力で、宇宙軍は支援に留まる例も多かった。
さらに、敵国の軍人が降伏してきた場合、爵位を与え、帝国の支配体制に組み込む事も行われたが、降伏した者全員が対象になったのではなく、敵国の支配者またはその縁者で、優遇する事が政治宣伝の意味を持つ場合か、敵国の重要拠点に関する機密情報を提供したなど、帝国に明確な利益をもたらした場合に限られた。能力や人格を認められて優遇、という事は皆無だった。これも「敵ながら感嘆に値する」的な軍事的ロマンチシズムとは、ルドルフが完全に無縁であった事の一証左かもしれない。
彼ら敵国正規軍との戦闘で前線指揮を担ったのは、統帥本部総長リスナー上級大将が育成した宇宙軍の諸提督、地上軍総監ケッテラー大将が統率する地上軍の各司令官、そして、彼らの戦闘活動を支えたのが、軍務尚書シュタウフェン上級大将が統括する参謀と軍政家達だった。以下、各軍の代表的な人物について概説したい。