「これでよし、っと。ふぅ、疲れたぁ〜...」
今日は珍しく仕事が多く事務所に遅くまで残ってしまった。
気づけば外はすっかり陽が落ちていて真っ暗だ。
「お疲れ、プロデューサーさん」
後ろを振り返ると担当アイドルの1人である木村龍がいた
「お茶、淹れてきたよ」
「あぁ、わざわざすまない」
「いいって、プロデューサーさん忙しそうにしてたし。これくらい別に何ともないぜ」
「そう言ってくれるとありがたい……ありがとう」
「どういたしまして!」
彼はいつも優しくて気配りができる良い子だ。
そんな彼に私は好意を寄せているのだが……
「あっ、もうこんな時間なのか!?早く帰らないと!」
「プロデューサーさんどうしたの?何か用事があるのか?」
「いや別に用事という程でもないが、最近犬を飼い始めてね。ここまで帰りが遅いとお腹を空かせてないか心配でね」
「へぇー、そうなんだ。じゃあ早く帰ってあげないとね。でも夜道は危ないから送っていくよ」
「えっ、いや大丈夫だよ!この辺りの道は慣れてるし」
「ダメだって!プロデューサーさん、ちょっと抜けてるところあるから心配だよ」
「そ、そうか...?まあ、それならお言葉に甘えさせて貰おうかな」
「うん!任せておいてよ!」
こうして私は彼と一緒に帰る事になったのだ。………………
「さっきも言ったけど、暗いから足元には気をつけてな」
「ああ、わかっているよ」
こうしてて彼と2人きりで帰るのは初めてだな。
何を話そうか考えていると
「まさか、プロデューサーさんが犬を飼い始めるなんてな。」
と彼の方から話題を出してくれた
「まあ、少し意外かな。一人暮らしには慣れたつもりなんだが、最近家に一人で居るとどうも寂しく感じてしまってね」
「そうだったんだ...」
「以前と比べると事務所が賑やかになってきたのも相まってね」
彼といるとどうしても本音が漏れてしまうことがある、彼にそのような力があるのか。
はたまた、自分が彼に行為を抱いているから自分のことをもっと知って欲しいという欲求からか、そんなことを考えていると...
「じゃあさ、プロデューサーさん」
「ん?なんだ」
「俺がたまにプロデューサーさんの家に行くっていうのはどうかな?俺も実家でジョンっていう犬を飼っているし、犬のことも色々教えられるし。」
「なにより、そうした方がプロデューサーさんが少しでも寂しさを感じなくなるんじゃないかって、思ってさ」
これは願ってもいない提案だ。私が今一番欲しかったものかもしれない。
「それは嬉しい提案だが、君はそれでいいのか?」
「もちろんさ!それに俺としてもプロデューサーの家に行ってみたいと思っていたんだよ。だからそのついでみたいなもんさ」
「そうか、それなら遠慮なくお願いするよ」
「そうと決まれば、早速今日からプロデューサーさんの家にお邪魔するぞ!」
「え!?今日から!?」
思わず驚いてしまう、元から行動力のある彼だったがいきなり今日からとは想像すらしていなかった
「そ、それなら...龍くんの実家の方に連絡を入れないと。きっとご飯とか用意し始めてるだろうし」
「あぁ、それなら心配ないぜ!」
「それは一体...どういう事でしょうか」
「もう既に連絡はしてあるからさ!」
いつの間に...どういう事だ。
私は酷く混乱する、だって起きてから龍くんが携帯を触っている所を見ていないからだ....。
「ま、まさか、始めからそのつもりで...」
「あはは。前々からプロデューサーさんの様子がおかしかったからさ、ちょっと心配でさ」
「そういうことか、そんな姿を見せていたとは...申し訳ない」
「いいってことよ!それより早く帰ろうぜ!もう暗くなってきちまったからさ」
確かにそうだ。彼が来てくれなければ今頃真っ暗な夜道を1人で歩いていただろう。
「そうだな。帰早くりましょうか」
「うん!早くプロデューサーさんの犬も見てみたいし!」
「うちの犬はちょっと手強いぞ、まだまだ人見知りだからな。俺以外に懐いてるところを見たことがない」
「任せてくださいよ!こう見えて犬の扱いには慣れてるんです!」
「それは頼もしいな」
そんなことを話しながら帰る道はいつもより短く感じた。