櫛田がオレの部屋を去ってから1時間が経った頃にまたインターホンが鳴った。そしてその相手を確認するとオレは玄関までいき、鍵を開ける。
「ち、ちょっと早く来すぎちゃったかな」
そこにはBクラスの一之瀬帆波がいた。
「いや時間通りだ。入ってくれ」
一之瀬がなぜオレに対して特別な感情を抱いているのかは正直分からない。そうなるようにオレが仕向けたのなら別に驚くことでもないが、そうでもない。一之瀬はオレが何もしなくてもオレに対して特別な感情がある。
そしてリビングまで通してオレは櫛田の時と同じように飲み物を出して、しばらく雑談をする。
「一之瀬、最近はどうだ?」
「楽しいよ。クラスの皆とも仲良くなれてるし」
「そうか。それはよかった」
一之瀬の趣味や最近の流行りなどを聞いていると30分くらい経過したので、そろそろ本題に入ることにした。
「一之瀬はオレのこと好きなのか?」
「…うん。好きだと思う」
「そうか。一之瀬はBクラスの中心的な存在だ。オレと付き合うことになれば色々と面倒なことになると思うが、それでもお前はいいのか?」
その問いに対して一之瀬は少し遅れて首を縦に振った。
「一之瀬の気持ちは嬉しい。だが、オレは一之瀬に対して恋愛的な感情は抱いていない」
「…わかってる。綾小路くんが私のことを好きじゃないのは」
「でも、それがこれからもそうとは限らない」
一之瀬という人間は善悪でいえば…『善』だ。明るい性格も相まって人を疑うというのが少し欠落している。いざという時の仲間を犠牲にして動くことに躊躇いを覚えるような人間だ。
そういう人間に対して急にクラスを裏切るような行動を取らせるのは難しい。そうであれば少しずつオレへの感情を高めつつ、利用していくのが一番良いだろう。
櫛田と違って一之瀬はまだ全てを捨てられるほどの覚悟はない。正直櫛田が異常なだけだ。あそこまでオレに対して重い感情を抱いているのは…どう考えても少し狂っている。
「これからオレが一之瀬を好きになる可能性はある」
どんな確率もゼロではない。ほぼない確率でもそこにはある。
「だから一之瀬さえよければ友達から始めてみないか」
「…うん。改めてよろしくね、綾小路くん」
「ああ、こちらこそよろしく」
これからオレは一之瀬と少しずつ中を深めつつ、信頼と信用、恋愛感情を上げていき、少しずつ依存させていくようにしていけばいい。そうして彼女のことを櫛田とまでは言わないまでもそれに近いぐらいの依存をさせることができれば、裏切ることもないだろう。
綾小路清隆に櫛田桔梗への恋心に近いものは生まれるのか?
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生まれる
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生まれない