超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
色んな次元や世界の人が集まった状態で、ケイドロ…ってなると、思い出す。あの時、あの場所でも、色んな人達と鬼ごっこ…らしき事をした。あれも中々凄かったし、何なら最後は戦闘してたし、色々な意味で無茶苦茶だった。そして多分、今回も無茶苦茶な事が一つや二つは起きると思う。少なくとも、面子は前より凄い訳だし。
箇条書きで表現したら、あの時と今とは共通点が多いと思う。でも一つ、大きく違う事もある。それはエスちゃんがいなかった事…も、違うといえば違うけど、そうじゃなくて……あの時は、楽しめなかった。楽しめる状況でも、楽しむ余裕もなかったんだから、楽しむ発想自体がなかった。だけど……今は、今回は違う。
「えっほ、えっほ」
「イリスちゃん、大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫。まだ疲れてない」
ケイドロが始まってから数分後。エスちゃん、イリスちゃんと一緒に逃げているわたしは今、小走りで公園の中を移動中。えっほ、えっほと声を上げながら走るイリスちゃんに大丈夫かと訊けば、イリスちゃんは無表情のまま返答をして…イリスちゃんを挟んで向かい側のエスちゃんが、わたしを見ながら肩を竦める。
「ディーちゃんってば、過保護じゃない?ここまで全力疾走で来た訳じゃないのよ?」
「いやでも、わたし達は女神な訳だし、わたし達基準で考えるのは良くないでしょ?」
「じゃ、イリスちゃんが疲れてるように見えた?」
「それに関しては、会った時からずっと無表情だから何とも……」
「あー…うん、それはそうだったわね…」
エスちゃんと二人、小さく苦笑い。イリゼさん曰く、イリスちゃんはいつもそうらしいから、別に「怒ってるんじゃ…?」って気にする必要はないみたいだけど…やっぱりまだ、昨日の今日じゃ慣れない。ブランさんも平常時は表情豊かな方じゃないけど、それはあくまで平常時だし…。
「というか、まだ移動する?まだ時間あるし、動き続けるよりは隠れた方が良くない?」
「えー?隠れて時間が経つのをじっと待つなんて、面白くないじゃない」
「そうかな…わたしは追い掛け回されるよりは良いと思うけど……」
「いやケイドロってそういうゲーム……ま、いいけどね。イリスちゃんはどう?イリスちゃんは隠れたい?」
「イリス?…イリスは、ディールとエストと一緒にいるだけで、楽しい」
そこは好き嫌いだものねー、という表情を浮かべた後、エスちゃんはイリスちゃんに訊く。するとイリスちゃんは、エスちゃんとわたしの顔を順番に見て…やっぱり無表情のまま、言った。わたし達となら、一緒にいるだけで楽しい、と。
そのあまりにもあっけらかんとした返答に、わたし達は思わず足を止めてしまう。どうしたの?と振り向くイリスちゃんの前で、わたし達は目を瞬かせ…今度は二人で、肩を竦め合う。
「なんかちょっと、むず痒いわね」
「だね。イリスちゃん、わたし達はイリスちゃんの知ってるラムちゃんやロムちゃんとは少し違うけど…それでも、楽しい?」
「楽しい。少し違うのが、不思議…だけど、それはそれで面白い。興味深い」
「きょ、興味深い…?」
「あれ、わたし達って知的好奇心の対象にされてる…?」
むず痒くもあるけど、イリスちゃんにそう言われると、なんだか心が温かくなる……と思っていたのも束の間、最後の一言でわたし達はぽかんとなる。興味深いって…創作とかじゃ人に対して言う場面が偶にあるけど、まさか実際に言われる日が来るなんて……。
「ま、まあとにかく、移動し続けるにしても方針は決めない?じゃないと多分、その内捕まるよ?」
「んまぁ、そうよね。色々凄そうな人たちが集まってる訳だし、作戦なんかも考えて……」
追い掛け回されるのは嫌だけど、簡単に捕まるのも嫌。だからわたしは方針を決めようと振って、エスちゃんもそれに頷いて、角を曲がりつつ具体的な話を始めようとした……その時だった。
「やっほー、三人共」
『うわぁああぁぁぁぁっ!?』
まるで最初からそこにいたかのように、全部分かっていたかのように、曲がった瞬間対面した人影。余裕そのものの表情をした、茜さんの姿。そのあまりにも唐突な登場に、対面に、わたし達は仰天し……次の瞬間、エスちゃんは煙玉を地面へと叩き付ける。
「ちょっ、え、エスちゃん!?それは有りなの!?だ、駄目じゃない!?」
「ぅ、煙たい……」
「し、仕方ないでしょ!?びっくりして、思わずやっちゃったんだから…!けど、取り敢えずはこれで凌げる…って、はぁ!?」
躊躇いゼロで煙玉を叩き付けたエスちゃんに、何よりわたしがぎょっとする。面子が面子だから、普通じゃない展開もあって当然だとは思ってたけど…出会い頭に煙玉なんて、相手が相手ならびっくりして転んだり、怪我をしたりするレベルの事。
でも、やってしまったものは仕方ない。茜さんには後で謝るとして、取り敢えずはイリスちゃんの手を引きながらエスちゃんと一緒に逃走……始めた直後、エスちゃんは再び驚く。茜さんが、煙玉を意に介さず突破し追い掛けてきた事に。
「ふふふ、甘いよえすちゃん。煙玉だけで私を止めようなんて、今日の朝の卵焼き位甘いよ!」
「うっそ、こっちの位置が見えてた訳…!?」
「あ、そっか…エスちゃん、茜さんにそういう系の妨害は一切通じないって思った方がいいかも…!」
「そういう事。
迷いのないその動きで、わたしは茜さんの能力を思い出す。過程も理屈も無視して、目の前の事が『分かる』のが茜さんなんだから、煙幕なんて少し邪魔…って位でしかなくてもおかしくない。
すぐ後ろに感じる茜さんの気配。茜さんは身体能力も高いし、普通に走るだけじゃ振り切るのは難しいだろうし…よく考えたら、隠れるのも通用しないのかもしれない。それに……
「おおぉおぉおぉおぉぉ……」
「あーっと、すーちゃんだいじょーぶ?…うーん……」
「ぉぉおぉ…お?茜、少し遅くなった…これは、チャンス……」
ついそこそこ本気で走っちゃったせいで、わたしが手を引くイリスちゃんはがくんがくんしてしまっている。手を振り解くか、速度を落とさないと、イリスちゃんはその内転んでしまいそうで…でもイリスちゃんは、わたしの手をぎゅっと握っている。
それは茜さんも分かっていたのか、ふっと感じる気配が緩む。その少し後でイリスちゃんは振り向き、茜さんとの距離が開き始めた事に気付いてチャンスだと言い……次の瞬間、エスちゃんの雰囲気が変わる。
「ね、ディーちゃん。さっきの煙玉はまぁ、反射的にやっちゃったものだけど…ズル過ぎない程度なら、魔法使ったりするのもアリよね?」
「それは…うん。オンオフ出来ないらしいとはいえ、茜さんも素の力だけで追ってきてる訳じゃないし…」
「じゃ、イリスちゃんの事は任せたわ!」
「え、ちょっ!?」
冷静な声音で訊いてくるエスちゃんに、うん?…と思いながらも頷く。でも冷静な感じだったのはその時だけで…イリスちゃんは任せたと言った直後、エスちゃんはイリスちゃんの背中を押す。
飛び込んでくる形になったイリスちゃんを、慌てて抱き抱えたわたし。唐突な行動に、思わずわたしは文句を言おうとして……けど、その時にはもうエスちゃんはいなかった。ほんの一瞬の間に、エスちゃんは反転し、茜さんの方に向かっていた。身体強化魔法で、身体を大人の状態に変化させて。
「……!凄いね、こんな魔法もあるんだ…!」
「まぁね。ちょーっと付き合ってもらうわよ、茜おねー…さんッ!」
突っ込んでいくエスちゃんに対し、当然茜さんは手を伸ばす。その手が触れそうになった寸前で、エスちゃんはターンと身体の捻りを組み合わせる事ですれ違う軌道のままタッチを避けて…躱した上で、また茜さんの前へ出る。茜さんの、注意を引く。
「え、エスちゃん……」
「ほらほら行ったディーちゃん。…わたしは大丈夫だから、行って」
背中を向けたまま、わたしへと投げ掛けられる言葉。それからちらりと肩越しにわたしを見たエスちゃんは、にっ、と笑って……一人でまた、茜さんへ向かっていく。
「…エスト、逃げない…?泥棒の、抵抗…?」
「はは…まあ、そんなところかな。イリスちゃん、ちょっとごめんね」
「……!ディールも大きくなった…おぉ、こっちも大きい…これはブランに報告──」
「し、しないでね…!?」
こんな事されたら、わたしも応えるしかない。そう思ってわたしも同じ魔法を使い、イリスちゃんをお姫様抱っこ。
胸を見て軽く恐ろしい事を言ったイリスちゃんに止めてねと言ってから、再び駆け出す。
(エスちゃん……)
気配とも違う、エスちゃんだからこそ感じる繋がりのようなもので遠ざかっていくのを感じながら、わたしは心の中で呟く。
ああ、まただ。いつもそうだ。そうやっていつも、エスちゃんは格好付けようとする。本当に大変な事は、一人でやろうとする。わたしに話もしないで、相談もしないで。
今もまた、エスちゃんは行った。その瞳に本気を、その表情にわたしを安心させる為の笑みを浮かべて。そんなエスちゃんに向けて…ここからじゃもう聞こえないって分かっている、届かない筈だって思っているからこその思いを、言葉を……わたしは、言った。
「…ケイドロでそんな格好付けられても、反応に困るだけなんだけどなぁ……」
*
えー君はもうケイドロなんてやる歳じゃない、って言ってたし、実際私も自分からやろうとは思わないけど…いざやってみれば、楽しいんじゃないかなー、って思った。だって私、心はまだまだ女の子のつもりだからね!……というのは半分位冗談だけど、大人だからもうやらない、大人だしどうせ楽しめない…ってやる前から決めてたら、そんなの詰まんないしね。
で、やってみた結果どうだったかといえば…まー、面白い。皆凄いし、「え、そんな事する!?」って事もちょくちょく起こるから、想像以上にドキドキする。それに…やっぱり、いいよね。偶には気兼ねなく、思いっ切りはしゃいだりするのって。
「皆ー、ルナちゃんを捕まえてきたよー」
「うぅ、特に見せ場もなく捕まった…」
捕まえたルナちゃんを連行して、最初の場所…牢屋のある地点に戻ってきた私。あ、見せ場もなくって言ったルナちゃんだけど、結構凄かったよ?坂を駆け下りる時なんて、転びかけた状態から絶妙なバランスで踏み留まって、信じられない位の加速に繋げてたし。つまり、メタ視点でって訳だね!
「やっぱり凄い人が多いと、ただのケイドロでもハードになるね…」
「だねぇ。でもその分楽しいでしょ?あ、はいこれ囚人帽子だよ。折角だから被ってね」
「あ、うん……いやなんであるの!?え、しましま帽子!?こんなベタな囚人アイテムって現代でも使われてるの!?」
「えるなむさんが雰囲気作りに、って事で作ってくれたんだー。凄いよねぇ、あの人」
「あ、あー…確かにズェピアさんならやりそう……」
あははと苦笑いしつつ、ルナちゃんはちゃんと被ってくれる。因みにえるなむさんは、えー君やワイトさんと一緒に、ちょっと離れた所でバーベキューの準備中だよ。ん〜、休日のお父さんみたいな事してるえー君も良いなぁ…。後々、えるなむさんの呼び方を考えてる時、「ズェピア…ずーちゃんさん…?」って言ったら、「ずーちゃんは止めてくれ」とまあまあマジなトーンで言われたんだー。なんでだろう?
「あ…そっか、ルナも捕まっちゃったんだ…」
「ピーシェにアイ?あれ、二人も捕まってたんだ…二人は中々捕まらなそうなのに……」
「いやぁ、警察側にもそう思われたみたいで、ピーシェと一緒に逃げてたら、最終的に全員で追われたんッスよねぇ」
「わー、容赦ない…」
えぇー…という視線で見てくるルナちゃんに、私はあははと頬を掻く。いやまぁ、大人気ないとは思ったよ?でも相手も子供ではないし…というか、女神だったしね。
と、笑いつつルナちゃんを収容したところで聞こえた足音。それはぜーちゃん…というか、警察チーム四人のもの。
「お待たせ、茜。仕込みは完了したよ」
「ありがとー、皆。体力の方は大丈夫?」
「問題ないわ、まだまだ余裕よ」
振り返って私が声をかければ、皆も返してくれる。表情からして…うん、仕込みは上々みたいだね。
「けど、こんな事で大丈夫なの?正直、狙い通りにいくビジョンが見えないわ」
「ふっ、えー君の予測を舐めちゃいけないよゆりちゃん。えー君の予測は、当たると話題の占い師の言葉位当たるからね!」
「な、何とも言い難い精度だね…まあ、冗談だとは思うけど」
ふふんと胸を張る私に、三人は怪訝な顔…だったけど、ぜーちゃんだけは分かってる様子。流石はぜーちゃん、えー君への理解度が違うね!…他の皆は昨日初めて会ったんだから、当然の事だけど。
「えと、それで茜さん。僕達はこの後どうすれば?」
「後は隠れて待ってるだけで大丈夫だよー、あい君」
「うぇ?呼んだッスかー?」
「呼んでないよー、あい違いだよー」
「そッスよねー、分かってたッスー」
シノちゃんとゆる〜いやり取りをした後、私達は配置に着く。そんな中で聞こえたのは、牢屋からの声。
「ねーねー、警察チームは何企んでると思う?」
「仕込みって言ってたし、色んな方向から戻ってきた事からして、結構広範囲で何かしてたんじゃない?」
「だよねぇ。ま、ムショ暮らしのわたし達には関係ない話かー!ねぇちゃんは何してパクられたんだい?」
「物凄く状況を楽しんでるね、ネプテューヌちゃん…。…わたしは、まぁ…威力業務妨害?」
「え、何それ必殺技?」
「いや、確かに『イリョクギョームボーガイ』って響きは技名っぽいけど……」
「でしょ?じゃあエストちゃん、イリョクギョームボーガイを駆使して脱獄だよ…!この鉄格子のての字もない、脱獄し放題な監獄から、わたし達は脱出する…エストちゃんのイリョクギョームボーガイと、わたしのオデッセフィア・フリーで…!」
「ちょっ…だ、誰かこっち来てくれない…!?このペースでボケられたら、わたし対処し切れないんだけど…!?」
愉快な話をしているえすちゃんとネプテューヌちゃんを含めた、五人が今捕まっているメンバー。だから残りは五人で…残り時間も、後少し。何を以って勝ち負けを決めるかにもよるけど、泥棒チーム対警察チーム、って考えるなら全員捕まりさえしなければ泥棒チームの勝ちだし、捕まるリスクを負ってまで捕まった仲間を助けに行くのは多分、賢明じゃない。…でも……
(…来たね……!)
二分と四秒後、木や遊具に身を隠しながらも現れたのはカイト君。まだ普通に見えているのはカイト君だけだけど…分かる。他の皆も、こっちに近付いている。仲間を助ける為に。私達が、狙った通りに。
「…よし、今だ……!」
「おっと、そうはさせないわよカイト!」
「やっぱいたか…そりゃ、牢屋に見張りを立てない訳がないよな…ッ!」
そこから先は身を隠せる物がほぼない。そんな所まで進んだカイト君は、一気に飛び出して…そこへせーちゃんが躍り出る。間一髪、不意を突かれたカイト君はせーちゃんを躱して、でも牢屋の前からは逃走。せーちゃんは隠れている私達に目配せしながら、逃げるカイト君を追っていく。
「誰もいない…?…エスト、助けに来た。……つまり、囚われのエストを助けるイリスは、王子様?」
「あ、い、イリスちゃん…!」
「王子様…?それはよく分からないけど…ここは通さないよ、イリスちゃん!」
「……っ、また…まさか、これって…」
十八秒したところで、今度はすーちゃんが現れる。そのすーちゃんには、あい君が対応をして…慌てて出てきたディールちゃんは、この状況に対して何かしら気付いた様子。だから冷静な対処を…一度退く事を封じる為に、私は飛び出たゆりちゃんへ合わせる形で、一緒にディールちゃんを捕まえにかかる。
「っとと、ディール…!」
「す、すみませんカイトさん…!それと…多分これ、してやられました…!わたしもよく分かりませんが…多分、誘導された結果です…!」
「だから次々出てくるのか…!けど、俺達で三人引き付けてる状態なら…!」
「状態なら……?」
せーちゃんが追いつつ上手い事誘導した事で、ディールちゃんとカイト君が合流。逃げる方向が同じなら、一気に捕まえられる可能性も出てくるし、こっちは三人だから一人が別の所に…例えばちょっと離れたところで、「わっせ、わっせ」と掛け声を上げながら逃げてるすーちゃんを追う、あい君の方に行く事だって出来る。ここまではばっちり、狙った通り。えー君の予測通り。
けど別に、凄い作戦をしてきた訳じゃない。ただちょっと、出来るだけ残りの五人が情報共有出来ないよう、ばらけるように追い掛けたり、程々のタイミングで取り逃がして「向こうも疲れてる筈」って思うように図っただけ。位置とかタイミングとか相手の割り振りとかは結構練られてたし、そこは流石えー君なんだけど…やった事としては、多分ケイドロの範疇でしょ?……え、訊くのはズルじゃないのかって?参加してないえー君が、なんとなーく喋ってくれただけだからせーふせーふ!
…なーんて思っている中で聞こえた、何とも気になるカイト君の言葉。ディールちゃんも訊いてるって事は、少なくとも情報共有の妨害は成功している筈。じゃあきっと、連携って事でもない訳で……
「……ふぇ?何この音…」
「こ、この音は…まさか……」
地鳴り…ってゆー程じゃないけど、何やら聞こえる響きのような音。走りながら私が見回していると、ゆりちゃんが動揺したような顔になって…せーちゃんも、はっとしたような表情に変わる。え、何?どゆ事どゆ事?
と、疑問を抱いていたのも束の間、すぐに私は理解する。響きの元を。二人の浮かべた表情の意味を。
「ぬぉおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」
「えっ、ちょっ…はっやぁ!?」
段々大きくなる音に続いて、見えたのは砂煙。でもそれだけじゃなくて…その中央にあったのはなんと、人の姿。猛烈な勢いで走ってくる…迫ってくる彼に、思わず私は声を上げる。
「あ、あれは……いぶ君!?」
「へ?呼んだかしら?…あれ、でも響きが少し違ったような…」
「あ…っとごめんね。いゔ、じゃなくていぶだよ。グレイブ君だから、いぶ君かなーってね」
「いやそんなやり取りしてる場合じゃないわよ!?」
「あぁそうだった!ありがとせーちゃん!で、えーっと…ぜーちゃん、お願い!」
二人を追ってる私達は方向的に厳しいし、あい君は一対一ですーちゃんを追っているから対応出来ない。だから私はぜーちゃんを呼んで…そうだと思ったと言うように、ドーム型の遊具に隠れていたぜーちゃんは真っ直ぐいぶ君へと向かう。
「退いた方がいいぜイリゼ!正直、勢いをつけ過ぎて避ける余裕とか全然ないからな!」
「堂々と言う事じゃないよ!?…けど…なら安心すると良いよ、グレイブ君!私が受け止めて、そのまま収監してあげるからッ!」
迫ってくるいぶ君を迎え撃つように、ぜーちゃんも走る。砂煙を上げたりはしないけど、無駄のない…最適化されたような走りで、真正面から捕まえにかかる。
言った通りにぜーちゃんが止めるのか、それともいぶ君が突破するのか。どっちも速い二人だから、あっという間に距離は近付いて、ぜーちゃんは最後の加速を掛ける為に地面を蹴って、そして……
「な……っ!?」
いぶ君は、跳ぶ。走り幅跳びの様に踏み切って、高くぜーちゃんを飛び越える。
それを見て、咄嗟にぜーちゃんもジャンプ。慌ててのジャンプと思えない程、ぜーちゃんも高く跳んで…でも後一歩、伸ばした手は届かない。跳んで躱したいぶ君はどんっ!…と着地して、そのまま牢屋へ一直線。
「くっ…まだ、まだぁ!」
「イリゼ…!…二人共、ディールちゃんとカイトをお願い!わたしはあっちに行くわッ!」
勢い良く振り向いて、本気の声を発しながら戻るぜーちゃん。同じく反転するせーちゃん。でも…多分、間に合わない。
だけど、逃げられてもまたタッチ出来れば、牢屋に戻せる。もしかしたら、せーちゃんはそれも考えて戻ったのかもしれない。そして牢屋の直前まで到達したいぶ君は、手を伸ばして……
「……今だ、レオンッ!」
「ぴっ、ぴかちゅう!」
「んなぁ……ッ!?」
──タッチした。確かに、触った。…ぴょこんと砂に大部分が埋まっていたボールから出てきた、可愛い黄色の…ねずみ?…っぽいモンスターに。
伸ばされたいぶ君の右手と、モンスターの両手がハイタッチ。次の瞬間、そのままいぶ君は衝突しそうになって……ヘッドスライディング。頭からずさーっと、それはもうずっさーーッ、っと。
「おわわっ!グレイブ君だいじょーぶ!?」
「いってぇ…レオン、怪我ないかー…?」
「ぴかー?」
びっくりしたねぷちゃんに声を掛けられたいぶ君は、すっと右手を持ち上げて…そこに乗るモンスター…えっと、ピカチュウのレオン、だったかな?…に無事か訊く。訊かれたレオンはきょとーんとしていて…やるね、いぶ君。衝突寸前のところから、自分の安全よりレオンの事を優先して、腕に抱えながらヘッドスライディングしたなんて。
「無事みたいだな…じゃねぇ!おいこら愛月!何レオン仕込んでるんだ!これ反則だろ!」
「いやだって、僕一人じゃ皆に敵わないもん。少し位の魔法がありなら、ポケモンの力を少し借りるのもありでしょ?」
「だからってなぁ……あ、まさかこれアウトじゃないよな?サポートはともかく、レオンも警察としてタッチされたらアウトとかだったら、流石に怒るぞ?」
「いやいやグレイブ君、そこまでは流石に言わないよ。にしても凄かったね、さっきのジャンプ」
「まーな、おっとありがと……あ」
称賛の言葉と一緒に手を差し出すぜーちゃん。いぶ君は服に付いた砂を払いながら、その手を取って…固まる。まぁ、そうだよねぇ。ぜーちゃんが自然な流れで差し出したからつい取っちゃったみたいだけど…ぜーちゃん、普通に警察側だし。
「や…やっちまったぁぁぁぁ……!」
「…怖いわね、うっかり…って」
「だねぇ。さぁて、それじゃあこっちも捕まえちゃうよー!」
項垂れるいぶ君を、ぜーちゃんがせーちゃんと一緒に連行。それを見届け…たりとかはせず、私はゆりちゃんとディールちゃん、カイト君を追い詰めにかかる。そこに連行を終えたせーちゃんが戻ってきて、ぜーちゃんはすーちゃんの方に向かって……今は私達が、圧倒的に有利。
「ふぅ…はぁ…さ、流石に少し…キツくなってきた、かも……」
「くっ…二対三じゃジリ貧か……!」
このままいけば、三人共捕まえられる。こっちも疲れてきたけど、三人捕まえちゃえば、後は一人だけ。五対一なら、負ける筈がない。……あれ?なんか五対一はむしろ、負けフラグな気がしてきたよ?全く歯が立たなかった挙句、捕まる可能性が浮上してきたよ?
(っていけないいけない、前向きにいかないとね!だって遊びなんだから!)
「イリスちゃん、捕まえたー!」
「あぅ、捕まった…これはもう、ソウルかカウンターをブラストしないと出られない……」
「いや、私達は
向こうでは、回り込んだぜーちゃんに行く手を塞がれたすーちゃんが、あい君に捕まって五対三から五対二に。ふふふ、いける…いけるねこれは!
「このままこっちも追い詰めるわよ、二人共!」
「そうね、でないといい加減体力も切れるし…同感、よ…!」
「向こうももうすぐ捕まえられそうだね」
「みたいだね。カイトさんとディールさんを捕まえられれば後は一人だし、これは僕達の勝利……」
「…………」
「…………」
『……あれ…?残りの一人、って……』
少しずつ距離を縮めていく中で聞こえた、ぜーちゃんとあい君の会話。やっぱり皆考える事は同じみたいで、その五対一にする為に、私達は二人を追い詰め…でもそこで、ぜーちゃん達の会話が止まった。止まって、二人で呟いて…それから上がる、大きい声。
「し、しまった…迂闊だった……!」
「さっきから全然見当たらないのは、遠くにいるって事…?それともまさか、実はもう近くに……」
途端に慌て始める二人。けど、私からすればその理由が全く分からない。ただ一つ分かるのは、二人の余裕そうだった雰囲気が完全になくなったって事で……私がそこまで思った、次の瞬間だった。
「──忍は忍ぶ事こそが本分。そして、この距離…捉えたッ!」
『……──ッ!?』
いきなり、突然に、ふわりと牢屋近くに現れた…着地をした、女の子の姿。周辺への注意を怠っていた訳じゃないのに、私が今の今まで接近に気付かなかった……きぃちゃんの姿。
そして、着地したきぃちゃんは小さく身を屈め……直後、その姿がブレる。静かに現れた一瞬前とは対照的な、爆ぜるような勢いで…というか実際、爆ぜたみたいに砂煙を上げながら、私達の全員が対応するよりも早く……牢屋の前に、到達する。
「お待たせしました、ピーシェ様」
「いえ、割とのんびり出来ましたのね。…さて、それじゃあ…私はこういうの苦手なので、ネプテューヌさん掛け声を」
「え、わたし?んじゃあ…皆の者、脱獄じゃー!」
『おー!』
軽快に、捕まっていた全員をタッチしたきぃちゃん。最後にきぃちゃんは、片膝を突きながら手を差し出して、その手にぴぃちゃんが応えて……ねぷちゃんの掛け声で、全員が一斉に逃走する。四方八方に分かれて、牢屋の外に散っていく。しかも私達が唖然としている間に、ディールちゃんとカイト君にも逃げられてしまう。
あんまりにも一瞬で終わった逆転劇。圧倒的有利からの、振り出しへの転落。私達はその場で茫然としてしまって……残ったのは、なんかちょっと焦げたような臭いだけだった。
*
『頂きまーす!』
公園に響く、男女混ざった賑やかな声。それに私は、小さく頷く。数度のケイドロを終え、昼食を始める皆へと向けて。
「あー、むっ…ん、美味し♪」
「バーベキューなんて、久し振りだなぁ…うん、やっぱり外で食べる食事ってのも悪くないよな」
「うんうん、場所もそうだけど、この絶妙な焼き具合、抜群の切り方と厚み、ソースのチョイス…どこを取っても文句なしのバーベキューだね!これはねぷ子さんのお墨付きあげちゃうよー!」
がぶり、と串に刺さった肉へかぶり付くエスト様に、一枚一枚焼かれた肉の一つを取って、ソースに付けて食べるカイト君。ネプテューヌ様からは謎のお墨付きを貰い…共にバーベキューを用意した、ズェピアさんや影君と顔を見合わせた私は、軽く肩を竦める。
「喜んで頂けたようで何よりです。食材は十分に用意してありますから、遠慮せずに食べて下さい」
「うん、ありがとねワイト君。…けど、ほんといい感じに焼けてる…ネプテューヌも言ったけど、食材ごとにちゃんとサイズとか厚みを変えてるのはズェピア君の指示かな?」
「味や食感は勿論だけど、肉はきちんと焼かなくては危険だからね。しかし切り口の綺麗さは、他でもない二人の技量があっての事だよ」
「はいえー君、あーん」
「……あぁ、うん…」
技量あっての事、と言ってくれるズェピアさんだが、自分としてはそんな技量があっただろうか…と思うところ。そして言われたもう一人、影君はといえば…楽しそうに野菜を差し出す茜君に対して、「こんな場でするのか…と、言っても聞かないんだろうなぁ…」と言いたげな表情をした後、観念したように差し出された玉ねぎを口にしていた。
「この肉は、程良い噛みごたえ。この肉は、脂身が溶けて口の中で旨味が広がる。こっちは肉汁が溢れ出してとてもジューシー…」
「わぉ、淡々と食レポしてるッスねイリス……」
「イリスちゃん、野菜も食べなきゃ駄目だよ?……あ…セイツさん、この椎茸どうぞ。えっと…姉同士、お近付きの印、という事で」
「え、いいの?ふふふっ、そういう事ならありがたく頂くわ♪」
少し視線をずらしてみれば、イリス君が…食レポ?…中。ここにいる面々の中で恐らく最年少であり、無垢さが見て取れる彼女は、何かと気にかけられている事が多く、それは何とも微笑ましい光景。…しかし何か、今のディール様にはそこはかとなく違和感があったような……。
「どう?皆美味しい?まだまだ沢山あるらしいから、皆も沢山食べるんだよ〜?」
「…えっ、今下の方から手っぽい何かを出して食べた…?この子の身体ってどうなって……」
「止めときなピーシェ。ドッペル…ミミッキュの中を見た学者が、恐怖でショック死したって話があるからな」
「恐怖でショック死!?…あ、愛月くんはそんな子を連れ歩いてるの…?」
「…ど、どうしよう…そう聞くと、逆に気になる…なにこれ罠…!?誘い込んで殺すタイプの恐ろしい罠…!?」
「いや、ドッペルは別に誘い込んでないからなルナ…むしろ見られないよう、必死に隠すのがミミッキュだし」
ショック死という言葉にピーシェ様がぎょっとする中、私も内心で同じ反応。一方の愛月君はのんびりとした様子でそのポケモン…ドッペルを撫でており、頭…ではなく胴体の辺り?…を撫でられているドッペルは、何となくながら心地良さそうな雰囲気をしていた。
そんな愛月君、それにグレイブ君は、それぞれ連れてきたという手持ちのポケモンを出し、その子達にもバーベキューを食べさせている。今のドッペルやケイドロでも活躍したレオンの様に一見愛らしい個体から、どう見ても見た目は竜な個体、全身が鋼で覆われているような個体、果ては浮遊する剣と盾の様な個体など、その姿は多種多様。更に竜の様な個体は、「水・飛行であってドラゴンではない」のだとか。…どういう事なのだろうか。
(…いや、だがモンスターの姿が大概なのはこちらもか…動く土管にゲームの画面の様な個体、どう見ても人なのに人ではない、色々な意味で突っ込みどころが多いモンスターなんてものもいるのだから……)
「ワイト君、追加分は私が焼くから君もそろそろ食べるといい」
「あぁいえ、ズェピアさんこそ食べて下さい。今回のバーベキューで、一番動いていたのは貴方なんですから」
「いやいや、私にとって料理は趣味みたいなものだからね。好きな事をしただけなのだから、気にする事はないよ」
「…では、そうさせてもらうとしましょう。ありがとうございます」
「こちらこそ感謝するよ。いい歳した大人がいつまでも譲り合っていたら、格好が付かないからね」
と、軽く思案していた私はズェピアさんに呼び掛けられ、言葉を交わした後にお互い軽く苦笑い。因みにこの後、「おー、なんかほんとに大人の会話、って感じだよねぇ」「だね〜。僕もあんな大人になりたいなぁ…」…という、ネプテューヌ様と愛月君のやり取りが聞こえてきた。決して私は、憧れられるような大人ではないが…向けられた純粋な思いに水を差す程無粋な大人でもない。少なくとも、そんな大人ではありたくないと、思っている。
「にしても、ほんと一回目の最後はしてやられたわ。潜んでいたのもそうだけど、踏み切った地面が焦げてるってどういう事よ…」
「はは…前に向こうでテーブル拭いた時もそうだったけど、あの時より更に速くなってなかった…?」
「えぇ、鍛錬してますからっ!」
「貴女はピーシェを支える身だったわよね。その辺りの話も後で少し聞かせてくれるかしら?後、両手で串を持ったまま良い顔をしてもあんまり締まらないわよ?」
「わたしは忍って言ってた事が気になるかなー。それと、バーベキューの匂いが漂ってきてからは動きに制裁が欠けてた点も、ちょっと締まらないんじゃないかしらね」
「…うぅ……」
「あー、お二人共止めてあげて下さい。ビッキィ、クールを装ってますが見ての通り実際はそんなクールでもないので」
「ぐふっ……」
「うわぁ、味方からの容赦ない追撃…ピィー子ってば無自覚に容赦ないとこあるよね…」
更にまた視線を移せば、イリゼ様、エスト様、イヴさんビッキィさんが会話をしており、得意気だったビッキィさんは、ものの十数秒でずがーん、と項垂れてしまっていた。
なんというか、本当に賑やかだ。全員が誰かしらと面識があり、社交性の高い方々も多いとはいえ、十以上の次元や世界から…それぞれ違う環境や歴史を持つ場所から集まった者達が、こうもすぐ和気藹々と出来るのは……眩しさを、感じる。同じ次元に住む者ですら、争い奪い合う事も珍しくはないというのに。
これは、若さの為せる技だろうか。それとも実力の…個で障害を捩じ伏せられるだけの実力を持つが故の事だろうか。ただ少なくとも、そこにある種の強さがあるのは事実で……
「難しい顔してどうしたんッスか、ワイト」
「え?…あ、いえ、何でもありません。少し考え事をしていただけです」
「そッスか?なら折角のバーベキュー中なんッスから、もう少し柔らかい表情をしていた方がいいッスよ。でないと……」
「でないと…?」
「多分、セイツが感情を察して…察して?アレ、察してるんスかね…?…まぁとにかく、察したセイツが面倒な絡みをしてくるかもしれないッスよ?」
「は、はは…(そうですねとは言えない…)」
何か思い詰めているのか、と気にしてくれたのか、それとも単にからかいたかっただけなのか、にやりとするアイ様に私は乾いた笑いを漏らす。恐らく許して下さるとはいえ、軍人が他国のトップの一人を「面倒な絡みをする」と認めてしまったら、最悪国際問題です…。
…とはいえ確かに、もう少し柔らかい表情をしていた方がいいだろう。他の方にも気にされてしまうかもしれないし…実際、肉も野菜もかなり美味しい。なのにしかめっ面で食べては、勿体無いというものだ。
「…うん、美味い…だがやはり、食べ進めていくと白米が欲しくなるというもの…。焼きおにぎりはあるとはいえ、単なる白飯と焼きおにぎりでは得られる味も、出来る事も違う……」
「え、わ、ワイトさん…?何かいきなり、孤独な貿易商みたいになってませんか…?」
「いや、もしかすると絶滅しそうな飯を求めるサラリーマンの方かもしれないわよ?」
「別にどちらでもありません、ルナ君、セイツ様…私はあくまで軍人ですから…」
「けどまぁ、なんていうか…ワイトさんは食事でも渋さがあるよな。ズェピアさんはどっちかっていうと華やかなタイプだし、影は……大変そうだなぁ、ほんと…」
「そう思うなら茜を引き取ってくれ…ここぞとばかりにくれてくる…」
「ここぞとばかりにあげるよ?だって普段は何だかんだで流されちゃうからね!」
その後も暫くの間、バーベキューを楽しみながらの雑談は続く。やはり若さというのは凄いもので、数度のケイドロを終えた時点では疲れ切っていた皆が、今ではほぼほぼ元気な様子。もし私も参加していたら…ここまでの回復は出来なかった事だろう。というか、前にあの空間でも奇妙な鬼ごっこをしたとはいえ、途中で大きな砂煙が上がるようなケイドロには、付いていける気がしない。
(……いや、それで良いのかもしれないな)
少しばかり枯れたような思考をしていた事に気付き…だがそれも良しと考え直す。
身体を動かすのが好きな者、のんびりとするのが好きな者、賑やかな空間が好きな者、静かな場所が好きな者…人にはそれぞれ好みがあり、そこに優劣はない。そして我々を招いた主催者、イリゼ様は、その内のどれかへ無理に合わせる事を求めたりはしないだろう。それが、イリゼ様という女神だ。
「……あっ!」
「おや、どうかしたかなネプテューヌ君」
「いやほら、バーベキューって言ったら、お肉とか野菜の他にもマシュマロ焼いたり、アイス食べたりするのも良いでしょ?しまった、そういうのも用意してねー、ってリクエストしておけば良かった……」
「あぁ、そういう事でしたらご心配なく。…その辺りは、彼がばっちり用意してくれましたから」
「別にネプテューヌの為じゃないんだけど、な」
『おぉー……!』
軽く肩を竦めながら、テーブルにボックスを二つ置く影君。その内一つは常温、もう一つは冷凍用の箱であり…開かれたそれの中にあるのは、チョコレートを始めとする多彩な菓子。やはりというべきか、甘そうな菓子類の数々に女性陣が色めき立ち…流れは一気にデザートへ。
「やっぱりまずはスモアだよね。これは私が焼くとして…はい、食べる人挙手!」
「流石イリゼさん、お菓子絡みになると即座に主導権を握りますね…あ、わたし一つ下さい」
「んーと、何があるかな…っておぉ!プリンあるじゃん!やったね、これはわたしが貰っ……」
「因みにネプテューヌの為に、ナスも用意しておいた」
「なんでッ!?」
「しかし、本当に色々用意してあるわね…茜、もしかして彼って甘党なの?だとしたら意外だわ」
「でしょー?えー君ってば普段からごちゃごちゃ考えてるから、糖分が不足しがちなんだと思うな〜」
「う…イリス、もうお腹一杯…これではお菓子を食べられない……」
「ふふっ、良い事を教えてあげるよイリスちゃん。女の子にとってお菓子とか、甘いものは…別腹なんだよ」
まだ肉や締めの焼きそばを食べたい、という青年&男子諸君の為にバーベキューコンロの内一つを残し、残りは全てお菓子や果物へと移行。イリゼ様を始め、料理へそれなりに造詣のある数名が焼きを行い、雰囲気はバーベキュー…というよりお菓子パーティーに。私はズェピアさんと交代で締めの焼きそばを炒めていく。
その最中、合間合間で私は皆を見つめる。楽しそうに、面白そうに、食べて話して笑う彼女達。そんな彼女達を見て…私は思った。何も、前のめりにそこへ参加する必要はない。こうしてズェピアさんや影君とバーベキューの用意をしたように、基本は一歩下がって眺めつつ、けれど時には参加をしたり、或いは少し振り回されてみたり…そんな時間を過ごすのも、悪くはないだろう、と。
……因みにこの後、ルナ君の返しを聞いたイリス君は「別腹…?女性には、そんなものが存在している…?…やはり、人体は不思議。もっと知る必要がある」…と、真面目(?)そうに言っていた。…大丈夫だろうか…この濃ゆい面々と交流を深める事で、彼女の知識に妙な偏りが生まれたりはしないだろうか…。
今回のパロディ解説
・〜〜
NARUTOシリーズに登場するキャラの一人、日向ヒアシの代名詞的な台詞のパロディ。ですが、少しONE PIECEのロブ・ルッチのゾオン系に関する台詞も意識しています。
・オデッセフィア・フリー
ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャンの主人公、空条徐倫の
・「〜〜ソウルかカウンターをブラスト〜〜」、
カードファイト!!ヴァンガードにおける、ゲーム上及び背景ストーリー上の用語の事。こちらもやはり、不要ですね。何せ地面に線を引いただけの牢屋ですし。