超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
再会だったり出会いだったりがあって、イリゼの国を…神生オデッセフィアの姿を知った一日目。偶々早めに目が覚めた事からちょっと保育に付き合った後、公園で遊んだり、バーベキューしたり、今振り返っても色々意味不明なテニスをしたりした二日目。体感としてはその倍以上に感じる二日間を終え…ウチ等は三日目の朝を迎えた。
まぁ、なんというか…二日共、愉快で楽しかった。久し振りに友達と会うのも、遊びに全力を注ぎ込むのも、守護女神になったイリゼの道や、目指す先を感じるのも。イヴもちょこちょこ困惑しながらも、楽しんでいるようで一安心。なんかしら問題が起こるんじゃ…とも思ったものの、今いる面子の事を考えれば、多少の問題なら速攻で何とかなる事間違いなし。いやはやほんと、ちょっとした悪の組織位だったら日帰りで解決とか出来るんじゃないッスかね。
とにかく、ウチにとって二日間は、楽しい時間になった。なら…そりゃ、期待するッスよね。三日目である今日、する事にも。
「今日もありがとね、皆。手伝ってくれたおかげで、凄く助かったよ」
「いーのいーの、わたしとしても楽しかったからねー」
「けどやっぱり、小さい子は体力が凄いですね…。…な、何ですか…確かにわたしも皆さんよりは小さいですけど、あの子達と同じじゃありませんからね…?」
朝食を食べながら交わす話題は、今日も軽く手伝った保育の事。今回は昨日いなかった面々も何人か参加し、子供達にも喜んでもらえた。いやぁ…やっぱり、行った途端に「あっ、きのうのおねーちゃん!」って言って駆け寄って来られたら、可愛がってあげる他ないッスよねぇ。
「けどさぜーちゃんせーちゃん、こんな半端…っていうか、ちょっとだけの手伝いで良かったの?そりゃ、本格的な手伝いは素人の私達には出来ないけど、少し遊んであげたり、ミルク飲ませてあげたりする位じゃ、そこまでの手伝いにはならないよね?」
「大丈夫よ。うちの保育は、特別な経験…言ってみれば、乳幼児期から女神と関われる、って事を利点の一つにしてるんだもの。だからネプテューヌやディールちゃん達は勿論の事、茜達だって『女神の友達』なんだから、あの子達と関わってくれるだけで十分意味はあるの」
「女神様と関われる、上手くいけば名前を覚えてもらえる…確かに子の未来を思う親からすれば、魅力的な保育環境ですね」
「そういう事。それに…皆、喜んでたもん。皆が楽しそうにしてくれたんだから、私は凄く感謝してるよ」
ワイトの言葉に頷いて、イリゼはにこりと笑みを浮かべる。こういう事を自然に言える辺りは、イリゼの人の良さが表れてるッスよねぇ。いや、ほんと……
「昨日あれだけイキってたのと同じ女神とは思えないッスねぇ……」
「最終的にはわんわん泣いて精神年齢も退行してたのと同じおねーさんとは思えないわよねぇ……」
「うっ…だから、ごめんってば…後エストちゃん、その事は言わないで…それ言われると……」
『言われると…?』
「思い出してまた震えてくる……」
「あ…う、うん。流石にあのイリゼおねーさんは見てて居た堪れな過ぎるから、もう言うのは止めておくわ……」
あの後、四人で連行して強制ホラー映画鑑賞会を行った結果、イリゼは見る影もない程情けない状態になっていた。それこそ、さっきの保育園の子にホラー映画見せるのと同じような有り様だった。確かにあれは、色々切なくなるレベルだったッスね…。
「ふふ、まあ誰にも苦手なもの、不得手なものは存在するさ。それでイリゼ君、今日はどうするのかな?」
「あ…うん。今日はちょっと、生活圏外に…これまでよりもっと遠い場所まで出てみようと思ってるんだだけど、どうかな?」
「……!って事は……」
「モンスターを見られるかもしれない、って事だよな…!」
遠出をする。そう聞いて真っ先に反応したのは、ポシェモン…もとい、ポケモントレーナーの愛月とグレイブ。二人…特にグレイブの期待の表情を見ながら、そういえば確かにそういう事も言っていたな、とウチは一日目の事を思い出す。
「モンスター…っていうと、るーちゃんとか、愛月君、グレイブ君の連れてるポケモンもモンスターなんだよね?」
「まあ、ポケットモンスター、縮めてポケモンだしな」
「…カイトさん、何やら少し詳しそうな口振りですね」
「あ、あー…昨日今日と、グレイブと少し朝練っぽい事してたからな。だからその影響…かもしれない、うん」
「ねぇねぇビッキィ、『少し詳しそう』ってちょっと変な感じあるよね。少し詳しいって…いや詳しいのか詳しくないのかどっちなんだーい!的な感じでさ〜」
「え、凄くどうでもいい…何となく詳しそうとか、そういう意味で言っただけだと思いますよ…?」
ソーセージを刺したフォークをひらひらさせながら言うネプテューヌ。それを言葉通り、凄くどうでも良さそうな顔で返すビッキィ。まぁ、確かにどうでも良いッスね。
「まあネプテューヌの発言はともかく、貴方達の連れていたポケモンと違って、ゲイムギョウ界のモンスターはあまり魅力的じゃないと思うわよ。危険な種類や見た目が良くない種類だって沢山いるもの。…後、人面魚とかも」
「人面魚?…それって……」
「うん、知ってるよ。僕は少しだけど前にも見たからね。でも、そういうモンスターばっかりでもないでしょ?」
「それに、ポケモンだって危険なやつはいるしな。昨日話したミミッキュの他にも、暗闇から命を狙いにくるやつとか、近寄ってきた相手をミイラにしたり身体の中に閉じ込めるって言われてるやつとか、愛情表現で抱き着いてくるけど力が強過ぎて背骨折られるやつとか……」
「お、おおぅ…結構普通にホラーなものから色々悲し過ぎるものまで色々いるんスね……」
「あ、後子供をあの世に連れてこうとするけど、逆に子供に振り回されちゃうって話のポケモンもいるよね」
『えぇ……』
ぼそっと付け加えたイヴの言葉にセイツが反応し、そこから話はそれぞれの世界に存在するモンスターの事に。しかしそう言われるとちょっと気になってくるッスね。…と、思ってこの後に少し訊いてみたら、何でもいばらポケモンなる種類もいるんだとか。実際に一度見てみたいものッス。
「…まぁ、良いんじゃないか?ただの子供ならともかく、モンスターとの付き合い方なら、俺達よりも二人の方が分かってる部分も多いだろうさ」
「いざとなれば、それこそポケモンがいるもんね。って訳で、道中モンスター探しをしても良いよ。けど…今日のメインイベントは、単に生活圏外に出る事じゃなくて、その目的地にあるんだよね」
「目的地?っていうと、おねーさんモンスターの討伐でも計画してるの?」
「いやいやモンスターは関係なくてだね…えー、今日は温泉に行こうと思っています!」
温泉。そう言ったイリゼに、ウチも皆も目を瞬かせる。この反応をイリゼは想定済みだったようで、だよねと言って言葉を続ける。
「少し前に、未開地域の開拓中に温泉を見つけてね。結構景色も良いし、温度も丁度良かったから、ちょっとした冒険みたいになるんじゃないかと思ったんだ」
「温泉かぁ…うんうん、さんせー!未開地域って事は、俗に言う秘湯になるんだよね!だったら楽しみ……はっ!?」
「どうかしたの?ねぷちゃん」
「ちょっ…ま、まさかとは思うけど、混浴じゃないよね…!?」
『……!?』
「え…い、いや違うよ!?違う違う混浴じゃない!その地域には複数温泉になってる所があるから、男女別々の場所で、って事を考えてて…ほんと、そういう事じゃないからね!?」
えらい慌てながら言ったイリゼの否定で、ウチ等は安堵。しかしまた、随分と慌ててたッスねイリゼ…考えてみればどう入るのか、男女別々に入れる温泉なのかって事はどこかしらで出てくる話な筈ッスし、想定しておけばいいものを…。
「こ、こほん。そういう事だから、皆が良いなら行ってみようと思うんだけど…どうかな?」
「うん、私は構わないよ。旅行の様で楽しそうじゃないか」
「わたしもそれで良いですよ。折角イリゼさんが計画してくれたなら、拒否するのも悪いですし」
咳払いした後イリゼが意見を求めれば、まずズェピアが、次にディールが賛成を示す。ウチ含め、その後も賛成が続いて…結果は全会一致で行く事に決定。なら早速、とイリゼは出発時間を相談して決め、それまでに準備をしてねと言う。
「あ…っとそうだ、今回はもう一人来るんだ。その人にも時間を伝えとくから、来たらまた紹介するね」
「もう一人…それってもしや、第八話にて新たなコラボキャラ登場!?しかも新しいコラボ先とか!?」
「メッタメタにメタい事言ってるところ悪いんだけど、違うから…普通に信次元の住人だから……」
「…ちょっと訊きたいんスけど、皆の次元のネプテューヌもあんな感じなんッスか?」
「あ、はい。あんな感じです」
「あんな感じだな」
「あんな感じ…あんな感じ?あんな感じとは、どんな感じ?」
「えーっとね、なんて説明したら良いかな…」
もし初めて会う人が今の発言を聞いたら、正気を疑うんじゃないッスかねぇ…と思うようなネプテューヌの発言。ウチからすれば慣れたものとはいえ、これがどの次元においても普通なのかふと気になり…訊いてみたら、ご覧の通り。イリスには伝わってなかったッスけど…まぁ、ルナが自分から説明してくれてるっぽいから、任せる事にするッス。
「じゃ、準備しに行きましょディーちゃん。まあ、準備って言っても大した用意はないと思うけど…」
「あ、エストちゃんにディールちゃん。それにネプテューヌとピーシェ、アイもちょっといいかしら?」
「はい?どうかしましたか?」
(…全員女神、ッスね…表情からして、何か起きた訳じゃなさそうッスけど……)
朝食も終え、一度割り当てられた部屋に…と思ったところで、セイツに呼び止められたウチ等。何事?とピーシェの反応に続いてウチ等が見れば、セイツは軽く肩を竦める。
「別に大層な事じゃ……あるわね」
「え、あるんですか…?」
「ちゃんと考えたら、ね。…こほん。ちょっと、シェアエナジーについて気になったのよ」
「あぁ、そういう事ッスか」
シェアエナジー。そう言われて、ウチはすぐに合点がいった。
確かにそれは、女神にとっては重要な事。生きる上でも、シェアという存在そのものに対するという意味でも。
「そういう事であれば、問題ありません。見ての通り、元気ですので」
「わたしも大丈夫よ。まあ勿論、こっちじゃ得られるシェアエナジーの量なんてずっと減ってるけどねー」
「そもそも世間一般じゃ知られてないんだから、当然ね。でも良かったわ。皆その辺りは何とかなるって聞いてたとはいえ、折角来てもらったのにシェアエナジー不足で帰らざるを得なくなる、なんてなったら残念だもの」
この通り、とピーシェは肩を揺らして、エストも気楽な調子で言う。ウチやネプテューヌ、ディールも頷けば、セイツは良かったと笑みを浮かべる。
「帰らざるを得なくなる、か…」
「うん?どったのディールちゃん」
「あ、いえ…これまで別次元とかそういう場所だと、帰りたくても帰れない状況の方が多かったので……」
「あー。ほんと、帰ろうと思えば帰れるっていうのは安心感あるッスよね。シェアの方も、今いる面子で最低限は確保出来てるッスし、多分これまでで一番気楽な次元移動だと思うッス」
「ふふっ、シェアに関してはこれから積極的に外に出て、もっと色んな人から得ても構わないわよ?勿論、わたしやイリゼ以上の魅力を国の皆に感じさせられるなら、だけどね」
「イリゼさんだけじゃなく、貴女もそういうタイプですか…」
「というか、わたしやエスちゃんは勿論、ネプテューヌさんやピーシェさんも何かとややこしい事になるのでは…?」
言われてみればその通り、事情を知らない殆どの人は、別次元の同一人物…なんて事を分からない筈。つまり、まともにシェアを得られそうなのは、ウチだけって事ッスか。…まぁ、別にそんな事する気ないッスけどね。そもそも知ってもらう機会自体、ほぼないだろうし。
「え、でもアイ、確かイリゼおねーさんに五連敗してコンサートに付き合う事になったんじゃ……」
「あれ本気だったんスか!?」
「ふふふ…アイ、楽器は弾けるかな…?歌の経験はどの位かな…?」
「しかもイリゼいたんッスか!?」
ふふふ、と笑いながら現れるイリゼ。ぎょっとするウチの前で不敵に笑うイリゼの顔は、明らかに本気。更にその背後、廊下では茜が「はは…困ったね、これは…」と言っているような苦笑いをしていて…うん、これはアレっすね。物語である事を活かすのが一番ッス。よいしょ、っと。
*
「いやアスタリスクの私的利用は許さないよ!?」
『キャンセル!?アスタリスクキャンセル!?』
ちっ、これで次の地の文担当に回してしまおうと思ったッスのに…やっぱりこういう事は、ホームグラウンドのイリゼの方が上手みたいッスね…。
「お、シノちゃんそれはここが信次元だからって事と、誰が書いてるかって事とで二重に言ってるのかな?」
「流石はネプテューヌ。メタが絡む事は見逃さないんッスねぇ」
「いや…というか、どうやってアスタリスクなんて出したんですか……」
「私、二人に会った時も驚きましたが…これはそれを遥かに超えているというか、最早色々な意味で別次元過ぎる……」
「これは真似しようと思って出来る事じゃないわよねー。でも、イリゼおねーさんと関わってたらいつの間にか地の文読めるようになってたし、結局は経験とノリなんじゃない?」
(あ、これは……)
強引に場面展開させる事には失敗したものの、結果的に逸れてくれた話の流れ。けどこんな事考えてると、また引き戻されそうッスから、今度こそウチのターンは終了ッス。なんだか良く分からない締めになっちゃったッスけど…未開の地の温泉なんてそうそう入れるものじゃないッスし、面倒な事は考えずに楽しみたいものッスね。……あ、この後のアスタリスクは普通に場面転換として出てくるやつッスから、身構えなくても大丈夫ッスよー。
*
やぁ、皆の衆。ご機嫌は如何かな?愉快なやり取りをしていた女神諸君からバトンタッチを受けて、ここからは俺が地の文を務めさせてもらうよ。
「よいしょっと。ここからは歩きなんだよね?」
「うん、そうだよ。温泉直行でも駄目じゃないけど、それじゃ少し味気ないでしょ?」
車両から降りたところで、振り向いたルナ君がイリゼさんに問う。イリゼさんはそれに頷き、それじゃあ行こうかと先頭を進む。やはりというべきか、モンスターを見たいと言っていたグレイブ君や愛月君が真っ先に続き、いつも快活なネプテューヌ君が更に続く。
「同じゲイムギョウ界って言っても全く同じな訳じゃないし、見た事ないモンスターもいるのかしら…」
「それはいるかもしれないけど…いたからって、嬉々として狩りに行くとか止めてよね…?」
「いや、わたしそこまで戦うのが好きって訳じゃないからね…?…まぁ、強そうだったら興味は湧くけど」
「モンスターかぁ…なんか思い返すと、私達って全然モンスターと戦ってないよねぇ」
「言われてみるとそうだな…うん、思い返せば思い返す程、人とばかり争っていた気がする……」
今いるのは、森林浴にはもってこいの場所。とはいえ特別凄いものや珍しいものがある訳でもなく、各々雑談をしながら森を進む。うん、やっぱり家族の会話というのはいいものだね。前者は微妙に、後者は明らかに物騒な気配があるけど、まあそれはそれ。今和やかに話しているんだから、問題はないというものさ。第一俺も、普段は色々と考えている訳だし。
……うん?あぁそうか、確かに補足は必要だね。一人称が『俺』なのは、誤字ではないよ。本音と建前…ではないけど、君達だって状況によって一人称を使い分けたりするだろう?
「人とばかり、か……」
「イヴは逆に、前はほぼずっとモンスターとしか戦ってなかったんスよね?」
「まぁね、そもそも私以外人のいない次元にいた訳だし」
「それもそれで大変そうだな…まぁ俺も、似たような次元に一時期いたんだが……」
影君の言葉にワイト君が呟き、それを耳にしたアイ君がイヴ君に問う。訊かれたイヴ君は答え…その答えに、彼が……同行者として紹介を受けた、ウィード君が共感を示す。
今回彼が同行する事になったのは、入浴の際イリゼさんもセイツ君も俺達男性の方には来られない為。ま、当然だね。同行されたらむしろこっちが困る。きゃー、女神さんのえっちー、としか反応出来ないよ。というか逆ならともかく、女性が男湯を覗きに来るシーンなんて需要ないだろう。…多分。
(しかし、何というか…特異だな、彼も……)
初対面という事でまだ探り探りという印象はあるものの、何気なく…至って普通に会話をしている彼。実際彼の人となりは、ここまで見ていた限りでは、特に突飛なところなどない…少なくとも、日常的な会話においては普通と判断出来るだろう。
だが、生命…否、存在としての本質、根底の部分はかなり特異だと言っても過言ではない。ここにいる面々は、大半が多かれ少なかれ特殊であるが、彼の場合は普通と違うのではなく、普通とはそもそも別の領域にいる…そう言っても過言ではない。生命ではなく現象、いるのではなく起きている、もし俺の見立て通りなら、彼はそういう存在であり……うーん、なんという偶然。タタリな俺には、センチメンタルな運命を感じずにはいられないね。
「…あ、グレイブ、愛月。あそこ」
「うん?…お!あれは……!」
と、そこで聞こえたのは、何かを見つけたらしいビッキィ君の声と、興奮混じりなグレイブ君の声。そしてビッキィ君の指差す先にいるのは、某RPGの代名詞的モンスターに犬の耳と鼻、それに尻尾を付けたような存在…ライヌ君の種族であるスライヌの下から触手を生やしたような、これまた某RPGに出てきそうなモンスター。…いや、ほんと似てるな…そして色々どうなってるんだあのモンスターは。教授が見たらなんて言うだろう…。
「わぁ、ライヌちゃんと同じ…スライヌ族?…なのかな?なんか、ドククラゲとプルリルを混ぜたみたいな見た目だね」
「ぱっと見クラゲなのに、普通に地上にいるのか…なぁイリゼ、あれはなんてモンスターなんだ?」
「グレイブ、イリスは知っているので教えてあげる。あれは、ヒールスライヌ。少し苦いけど、それが後から来る甘さを引き立たせている」
『へっ…?』
「あ、あはは…イリスちゃん、惜しいけど違うよ。あのモンスターは、ヒールじゃなくてヒーリングスライヌ。まぁ、亜種である事は間違いないけどね」
「違う…?…確かに、色が違う…イリスが知っているのは、ライヌちゃんと同じ水色。でも、あれはピンクに近い……」
さらっと出てきた味の情報に皆がぽかんとする中、乾いた笑い声を漏らしたイリゼさんは話を逸らすように間違いを指摘。…やはりイリス君は、そういう存在という事か。まぁ、折角和やかな雰囲気なんだ。わざわざ波風を立てるような事は言わないよ。
「向こうはこっちに気付いていない、か…。…ところで二人共、ゲイムギョウ界のモンスターに興味があるみたいだけど…私の次元に来た時も、塔でモンスター見てるよね?」
「うん、見たね。でもほら、あの時はロボットとか、パーカー着たぬいぐるみみたいなのとか、変なのが多かったから……」
「スライヌも犬部分が取って付けた感凄いし、よく考えたら結構変なやつじゃないか?…あ、でもポケモンもそうか…どう見てもネジと磁石なパーツがあるやつとか、明らかに複数なのに一匹扱いなやつとか……」
「あ、言われてみれば確かに…。…あれ?カイトさん、そういうポケモンの事もグレイブから…?」
(うん、分かる、分かるぞカイト君。知ってると、つい言いたくなってしまうものだよね)
朝と似たような光景に、うんうんと俺は首肯。一方グレイブ君はただ見るだけでは満足しないようで、身を屈めつつもゆっくりモンスターに近付いていた。そしてイリス君もその後に続いていた。
「いぶ君、私達もいるとはいえ、いちおーは気を付けてね?」
「分かってるって。さーて、まずはエサにするか…いや、ドロを投げるか…?」
「なんでサファリなのグレイブ…」
「いいじゃねーか。普通にポケモン出したらこっちが強過ぎて、よく知る前に倒しちゃうかもしれないんだからよ。…お、丁度良いところに水溜まりが……」
そう言って、躊躇いなく水溜まりへ手を突っ込むグレイブ君。次に彼が手を上げた時、その手にあったのは泥の塊。
「……?泥を投げると、どうなる?」
「ポケモンなら、投げると捕まえ易くなるな。逃げ易くもなるけど」
「泥を投げると、捕まえ易くなる…?」
「なんでだろうなー、でも俺はダメージが入るからだと思ってる」
「ダメージ?何言ってんのグレイブ、泥を投げたってダメージは……」
入らない。愛月君はそう言おうとした。間違いない、何せダメージは入らないんだから。カイト君も頷く筈だ。
だが当のグレイブ君は言葉を返す気配もなく、中々さまになっているフォームで振り被ると、腕を振り抜き……
「ヌラァッ!?」
……ダメージが、入っていた。ヒーリングスライヌ、結構よろめいていた。…グレイブ君、マジか…。
「おぉ、クリティカルヒット…じゃないよ!?え、なんで!?なんで泥でダメージ入ってんの!?」
「ふっ…これは泥ではない、マッドショットだ」
「大魔王みたいに言っても意味分かんないままだから!…た、確かに泥の塊ではあるけどさぁ!」
無茶苦茶な事を言うグレイブ君に対して、愛月君は唖然とした顔をしながらも突っ込んでいく。ちょくちょく無茶苦茶な面を見せるグレイブ君だけど、愛月君の方は比較的まともだからそこは少し安心する。…しかしほんと、どうなってるんだグレイブ君は…それが魔法や異能、或いは人外故の身体能力によるものならどれだけ異常でも理解は出来るが、彼は普通の人間で、特殊な能力もない筈なんだ。…ない筈、なんだけどなぁ……。
「全く、五月蝿いなぁ…確かに愛月は無理でも、割と出来る人はいるだろ?」
「いやいないよ…!?魔法で泥飛ばすとかなら出来るかもだけど、水溜まりから出した泥投げ付けてそれは無理だよ…!?」
「ルナも無理なのか…なら、女神なら……」
『女神でも流石にあれはちょっと……』
いやいやいや、と揃って手を横に振る女神一同。そりゃ無理でしょうよ、俺だって能力一切無しでマッドショットなんて無理よ。…と、思っていたが、蹴ればいけるかもしれない、両手で上手く圧縮すれば可能性はある等、後から色々聞こえてきた。
「別に特別な事はないんだけどなぁ…強く握りゃ固まるし、何度かぐーぱー繰り返せばそれなりの大きさになるし、そうしたら後は投げるだけだってのに……」
「ぐーぱーして、投げる…分かった。イリスやってみる」
『えっ?』
そんなもんかねぇ、とグレイブ君が釈然としないような顔をし、更に流れる「えぇ…?」という雰囲気。…が、そんな中、おもむろにイリス君は水溜まりに手を入れたかと思うと、グレイブ君の真似をし…投げる。
「イリス の マッドショット」
放物線を描いて飛ぶ、一掴みの泥。それはきっちりモンスターのいる方向へと飛んでいき…しかし届くよりも遥か前に、四散しべちゃりと地面に落ちた。
「あー、握りが甘かったな。これじゃマッドショットじゃなくて泥かけってとこか」
「う…残念、まだまだイリスは精進が足りない…」
「精進とか、そういう問題ではないと思うけど…ところで、モンスター近付いてきてるわよ?」
頬を掻きつつ呟いたイヴ君は、それからどうするの?…という視線を皆へ向ける。とはいえそこに焦りはなく、声の方も「どの対応を選ぶ?」という旨の響きが強い。
「倒す…のは心苦しくなる程、圧倒的戦力過ぎますね…一応確認しておきたいのですが、あのモンスターはどの程度の強さで?」
「まぁ、わたしやイリゼからすれば、油断してても余裕な位かしら」
「ではやはり戦力過剰にも程がありますね…適当に威嚇をして追い払います?」
「それで良いのでは?それで尚も近付いてくるなら、一蹴するだけ……ビッキィ?」
段々と近くなるモンスターに対し、ワイト君は追い払う事を提案。それにピーシェ君が賛同をし…たものの、続く言葉が途中で止まる。何かと思って俺がピーシェ君…ではなく呼ばれたビッキィ君の方を見れば、彼女も水溜まりに手を入れており……
「こんなもの、かな。…ふんッ!」
「ヌララァッ!?」
……おおぅ、出来ちゃってるよ…これはグレイブ君の無茶苦茶が伝せ…いや違うな。ビッキィ君もまあまあ無茶苦茶なタイプだった…。けど、泥を片手でそれなりの硬さを持つ泥弾に出来る人間が、こんな近場に二人って…なんかこう、自分が普段してる計算とか発明とかが色々馬鹿馬鹿しくなりそうだよね、うん…。
「いやなんで出来るのビッキィ……」
「やれる気がしたんです。やれそうな気がする時は〜、って銀河美少年も言ってましたし」
「流石はビッキィ、けどもう少し強めに握った方が良かったんじゃないか?」
「と、思うでしょ?でも、あれより強く握っても、もう威力的には殆ど変わらない。なら無駄に力を入れて体力を消耗する必要はない…ってね」
「凄いもんだな、二人共…水溜まりを活用して、即席の遠距離攻撃…固めて塊に出来れば石代わりになるし、イリスみたいに途中で崩れても、上手くいけば目眩しになる…ってところか……」
ふふふ、と自身あり気にビッキィ君が胸を張れば、グレイブ君も「それもそうか…」と納得したように一つ頷く。いや、何か知的なやり取りしてるみたいな雰囲気になってるけど、泥を握力で固めて投げるなんて、やってる事自体は思いっ切り脳き……げふんげふん、いやまあそれはいいとしよう。後カイト君、君も君で凄いな…ここは突っ込むべきところであって、学びに繋がるところではないよ普通……。
「はは…この次々と驚く事が出てくる感じ、記憶喪失状態で目覚めた直後を思い出す……っていやモンスター!二発当てられて普通に敵意剥き出しなんですけど!?流石にそろそろ対応しない…と……」
「おぉ、よしよし。ここが痛かった?なら、撫でてあげる。よしよし、よしよし……」
さて、そんなやり取りをしている間にも近付いてたヒーリングスライヌ。その事をウィード君が指摘し、おっとそうだったという雰囲気になる…が、そこでイリス君が前に出ると、慣れた様子でモンスターを愛撫。すると数秒前まで唸りを上げていたヒーリングスライヌは、途端に表情を緩ませ、大人しく撫でられる無害なモンスターに変身してまった。その早変わりに、これまた一同目をぱちくりである。
「…ライヌの時もそうだったが…まさか、敵意を向けられた状態からでも手懐けられるのか…?」
「手懐ける…?…その言葉は分からない、けどイリスはモンスターと仲良くなれる。…あ、そうだ。誰か、お菓子ある?」
「うん?ビスケットならあるけど…欲しい?」
「ありがとう、イリゼ。…これ、あげる。だから、あっちへお行き」
影君に答えたイリス君は、イリゼさんからビスケットを受け取ると…いや、お菓子持ち歩いてるんだね、イリゼ君…こほん。…受け取ると、それをヒーリングスライヌへ渡す。それからもう一撫でし、言葉が伝わったのか去っていくモンスターを見送って…ばいばい、と手を振っていた。
「おー…凄いねイリスちゃん。もしや魔物使いの才能有り?」
「うーん、すーちゃんは魔物使いっていうか、むしろ……まぁでも、凄い事には変わりないもんね。偉いよー、イリスちゃん」
「イリス、凄い?偉い?…うん、イリスは凄く、偉い。凄そうで、偉そうな、イリス」
「意味が変わってきてる…けど、怒ってるモンスターに不用意に近付いちゃ駄目だよ?イリスちゃんは仲良くなれるみたいだけど、危ない事なのは変わりないんだから」
「う…ごめんなさい、気を付ける…」
モンスターが去った事で…というより、イリス君の活躍でさっきまでの和やかな雰囲気が戻ってくる。注意したディール君もそう怒ってはいないらしく、そうしてね?…と柔らかな表情で肩を竦める。
そうしてグレイブ君達の手を水の魔法や魔術で洗い流した後、俺達は移動を再開。この後も何度かモンスターを発見し、その度に足を止めてはいたものの、これといって問題もなく進行は続く。
聞くところによると、温泉まではまだそこそこ距離があるらしい。だがイリゼさんの口振りからして、その道中も今の様に楽しむつもりと言ったところ。確かにこの面々なら多くの驚きや発見があるだろうし、道中飽きるという事もないだろう。…まあ、ちょくちょく突っ込みたい言動が出てきて、変な疲れとかは感じそうな気がするけどね!
*
車両から降りて、歩きながら喋ったり、時々モンスターを観察したりしながら進んで、結構時間が経って…大きな木の生えた、小高い丘みたいな場所の近くまで来たところで、イリゼさんは足を止めた。
「んー…うん、やっぱりここが良さそうだね。皆、そろそろお昼休憩にしよっか」
「あぁ、そういえばもうそんな頃合いですね。あちらでするので?」
ちらりと丘を見やったワイトさんの問いに、イリゼさんは首肯。…あれ、でも食事って……。
「昼食は、用意してあるんです…?…え、まさかこんなところまで来てくれる出前とかないですよね?それとも、某メガフロート都市の宅配業者さんみたいな存在が神生オデッセフィアにも…?」
「いやないからないから、あったら輸送はそこの一強になるから…。そうじゃなくて……ふふふ、私がお弁当を作ってきましたー!」
『おぉー…!』
木の前に着いたところで、イリゼさんは振り向き…幾つものお弁当箱が入ったバケットを見せる。左右それぞれの手で持たれたそれに、自然と「おぉー」という声が上がる。って事は、お昼もイリゼさんの手作りか…イリゼさんの料理、プロ級の味って訳じゃないけど、丹精込めて作ってくれたんだっていうのが伝わってくるんだよね…ふふっ。
「…って、わっ…全員分が別々に分けられてる…イリゼ、用意するの大変じゃなかった…?朝ご飯も作ってたし、子供の相手もしてたんだから、作ったのはそれより更に前だよね…?」
「まぁね。でもほら、こうやって皆が遊びに来てくれる、揃う機会なんてそうそうないんだから、精一杯のおもてなしをしたいな…って思ったんだ」
「イリゼ…うぅ、イリゼは女神様だよ…ありがたや、ありがたや〜…」
「あはは、ぜーちゃんは元から女神だけどね〜。でもありがたや〜」
「神様仏様イリゼ様〜、的な?ありがたや有田焼き〜」
「ちょっ、も、もう…妙なからかい方をしないでよね!後、なんで有田焼き!?」
拝むように、イリゼの方を向いて手を擦るルナ、ネプテューヌ、それに茜さん。からかうな、といいつつイリゼさんは若干照れている様子で…でも有田焼きにはしっかり突っ込んでいた。流石イリゼさん。
「…うん?有田焼き…そういえば、ゲイムギョウ界の住民が有田焼きを分かるのって……」
「止めるんだカイト君。それは掘り返して得られるものより、掘り返した事で起こる面倒事の方がずっと多くなる思考だよ」
「あ、はい……」
「イリス、イリゼのお弁当楽しみ。食べてもいい?」
「その前に、レジャーシートを敷かないとね?イリスちゃん、手伝ってくれるかしら?」
「セイツ様、私も手伝います」
「あ、なら僕もやるよー」
ばさり、と木の近くで開かれていく複数のレジャーシート。十八人もいるだけあって、レジャーも一枚や二枚では足りず…なんだか花見みたいな光景に。いや、花見も何も、この木には花びら一つないんだけども。
「ありがと、皆。じゃあ…イリスちゃんはこれ。ディールちゃんはこれで、エストちゃんはこれ…じゃなかった、こっちだね」
『……?』
シートの設置が終わったところで、イリゼさんは弁当箱を出していく。
その中で気になったのは、イリゼさんが一人一人に分けている事。まさか、弁当箱にも凝っている…とか…?
「朝食を作って、お弁当も用意して…凄く家庭的な女神よね」
「そッスねぇ。大したもんッス」
「わー、凄く他人事ねアイおねーさん…まぁ、わたしも侍女っぽい事ならともかく、家庭的云々は人の事言えないけど」
「それより早く食べようぜ?イリゼ、頂きまーす」
「うん、召し上がれ」
真っ先に食事の挨拶をしたグレイブに続いて、わたしも手を合わせる。蓋を開いて、箸を持つ。
開いてまず目を引いたのは、白米の上に敷かれた海苔。おかずの方はといえば、唐揚げに鳥ささみのサラダ、卵焼きに金平ごぼう、更にデザートのカットされた梨という、色鮮やかなラインナップ。しかも量も結構多くて…一言で言えば、凄く美味しそう。
(…あ、しかもこれ、ご飯の間にも海苔が挟まれてる…手が込んでるな……)
「ほう、これはこれは…流石イリゼ君、見た目も味もばっちりだね」
「えぇ、好かれ易い食べ物を選びつつも、おかずが一色にならないような工夫をしてる…こういうところは、ほんとマメですよね、イリゼさん」
「ふふっ、そうでしょ?細かいところまで気にするのがイリゼの良いところなんだから」
「楽しそうですね、セイツさん。また、色んな人の感情を感じられている…からですか?」
「それもあるけど、今は妹が褒められてて、妹の自慢も出来たんだもの。ならそれは、姉として嬉しいに決まってるじゃない」
「…ですよね。感情云々はよく分かりませんが…そういう事なら、わたしにも分かります」
イリゼさんの弁当は皆さんからも好評価。それを受けたセイツさんはご機嫌で、またイリゼさんは照れ顔に。そんなやり取りを眺めつつ、わたしは海苔の敷かれた白米を食べて、次は唐揚げと一緒に食べて…自然と表情が綻ぶ。綻んでいるのを、自分でも感じる。
「金平ごぼうも歯応えが良いなぁ…」
「…金平ごぼう?え、そんなのある?」
「へ?」
うんうん、と頷きながら咀嚼する中、不意に声をかけてきたのは愛月。予想外の言葉にわたしが振り向いて、愛月の弁当箱を見ると、確かに金平ごぼうはない。
「…ポテトサラダ?え、金平じゃなくてポテサラ?」
「うん?わたしもポテサラだよ?…って、あれ?愛月のは人参入ってるの?わたしのは入ってなかったけど…」
「じゃあ…もしかして、ナスの味噌炒めも入ってない感じか?俺のは入ってて、ネプテューヌは食べられるのか…?…って思ったんだが……」
すっ、とウィードさんが見せたナスの味噌炒めにぎょっとするネプテューヌ…だったけど、確かにそれもネプテューヌのところにはない。
夕食のおかずか何かを間違えて入れた?それとも食材が足りなくなって、慌てて別の料理を作った?…そんな風に、初めは思った。でも、違う。見比べてみると、皆少しずつ弁当の中身が違っていて、一見同じに見えるラインナップでも、それぞれの量が違っている。…これ、って……
「まさかイリゼさん、一人一人に分けてたのは……」
「あ、気付いた?実はお弁当、一人一人に合わせて作ったんだよね」
(な、なんて手の込んだ事を……)
全部が全部、まるっきり違うって訳じゃないけど…それでも弁当を、一人一人に合わせて変えるなんて、どう考えても大変な事。それをさも普通の様に…少し胸を張ってはいるけど、苦労したなんて気配は微塵も見せないイリゼさんに、思わずわたしは舌を巻く。
「…そうか、だから…か。……ありがとな、イリゼ」
「あ…うん。折角のお弁当だもん、全部食べてほしかったから」
「ぜーちゃん…うぅ、良い子良い子してあげるね…!」
「ちょっと!?そ、そんな感動した顔で撫でないでくれる!?…というか影君も!?う、うぅぅ……!」
何やら静かな雰囲気から始まった、ダブルなでなで。えぇ…?…と思ったわたしが何となく影さんの弁当を覗いてみると、そこにはコロッケみたいな揚げ物はあっても、肉や魚類がなかった。…菜食主義者…?それか、アレルギーとか…?
「あぁ、だから私やビッキィさんの弁当箱は少し大きめだったと…ご厚情痛み入ります、イリゼ様」
「ほんと凄いわね…けど、どうやって一人一人の好みに合わせたの?他の皆ならまだしも、私は好き嫌いを教えた覚えは……」
「…ひょっとして、初日の夕食はこの為だったのかな?」
「初日…あ、そっか…夕飯がバイキング形式だったのは、そこでの取り方で好き嫌いとか食べる量とかを見る為だったんだ……」
ふむ、と顎に指を当てて言ったズェピアさんと、ぽんと手を叩いたピーシェ様の言葉で、わたしも納得。…と、同時に、そんな事しなくても、普通に好き嫌いを訊いておけば良かったんじゃ…?とも思ったけど、流石にそれは言わなかった。わたしでも、この流れでそれを言うのは台無しだって分かる。
「熱意を感じるッスねぇ…けどそうなると、ヤマトは連れてこなくて正解だったかもッス」
「ヤマト…って確か、アイの家族なんだっけ?連れてこなくて正解っていうと、そのヤマトは偏食家なのか?」
「偏食家…まあ、ある意味そうッスね。現状好物はキャットフードッスし」
『キャットフード!?』
カイトさんからの問いに対する回答に、キャットフードという言葉に、わたし達は揃って仰天。これにはズェピアさん達、大人の男性トリオもびっくり仰天。へ、偏食なんてレベルじゃない…そもそも人の食べ物ですらない……!
「ヤマトも色々あるんスよ。もしかしたら、ポケモンフーズ?…とかいうのも、ヤマトなら美味しいって言うかもッス」
「マジか…流石にそれは俺も真似出来ねぇ……」
「…イリゼおねーさん、もし来てたらどうしてた?」
「え……。…………。…きゃ、キャットフードって確か、成分的には食べても大丈夫だったよね…?」
「食べてみる気ッスか!?まさかそれで味の再現する気ッスか!?…流石にそこまではしなくて良いッスよ…気持ちだけで十分ッス……」
大丈夫な筈、仮に有害でも女神なら多少は問題ない筈…と呟くイリゼさんに、今度はアイさんが仰天。な、何かもう、ここまでくると熱意というか、意地とか執念の域な気がする…いつも冗談半分に言ってるけど、こうなるとほんとお母さんっぽくなってくる……。
「凄い、こんな新手のボケ殺しは初めて見たよ…むむむ、イリゼは典型的な突っ込みタイプだと思ってたけど、狙ってないところでは割とボケもこなせるタイプだったなんて……」
「いやネプテューヌ、今のはボケじゃないのよ…?私も初めて知った時はぎょっとしたけど……」
「でもほんと、凄いなぁイリゼは…あ、そうだ。ここでも皆を出していい?皆の分のご飯は僕達用意してあるしさ」
「あ…っとそうだね。ここでも伸び伸びさせてあげて」
ひょいっと投げられたボールから、昨日の様に出てくるポケモン達。十八人と十二匹、昨日もだったけどほんと今は大所帯で…賑やかも賑やか。
「こうなってくると、まるでピクニックだな」
「ピクニック…なんかポケモンを洗ったり、サンドイッチを作りたくなってきた……」
「急にどうしたのグレイブ君…でも確かに、影さんの言う通りピクニックみたいだね。私も前に、ネプギア達とピクニックしたなぁ…」
小高い丘で、レジャーシートを広げて、揃って弁当を食べる。それは本当にピクニックの様で…なんだかそう思うと、ほっこりする。ほっこり、してくる。
「…ピーシェ様」
「…どうしました、ビッキィ」
「シオリ先輩達も、一緒に来られたら良かったですね」
「そうもいきませんよ、ある程度は向こうにも人を残しておきたかったですし。…それに、今でもちょくちょくカオスな展開になるのに、ここにモナミまでいたら……」
「あー…それは……」
確かにそれは面倒になりそうだ、いやなる事間違いない。そう思って、わたしはピーシェ様と共に苦笑い。でも、ピーシェ様とのやり取りはそこで終わらず…苦笑いを解いたピーシェ様は、軽く笑う。
「…けどまぁ、帰ってから皆でピクニックをするのは良いかも、ね」
「えぇ。勿論お伴しますよ、ピーシェ様」
「ビッキィ……いや皆でって言ってるんだから、そりゃそうでしょ」
「あっ…あはははは……」
全くもってその通りの返しに、わたしはもっと苦笑い。それから誤魔化すように弁当をかき込んで……あ、でも勿体ない…!ここまでいい感じに、どの料理も少しずつ食べてきたのに、残りをかき混むのは凄く勿体無い……!…と思って、やっぱり普通に食べる事にしたわたしです。
「ふぅ、ご馳走様。イリゼのお弁当、とても美味しかった。…ので、また作ってほしい」
「お弁当の括りごとなんだ…ご馳走様でした。昨日もそうでしたが、やっぱりこうやって取る食事はひと味違いますね」
「昨日とは違う味も、な。…よし、一服したら腹ごなしも兼ねて少し動くか」
「わたしもそうしよーっと。あ、でも良い場所だし、お昼寝するのも良いかな?」
「あはは、どっちでも良いんじゃないかな?皆、今日のピクニックも最後まで楽しんでね?」
そうして昼食の時間は終わる…けど、和やかな空気は終わらない。イリゼさんの呼び掛けにも頷いて、一服の後遊んだり、遊んでいるのを眺めたり、レジャーシートの上でのんびりしたり…そんな時間を過ごしながら、言われた通りわたしも皆も、楽しく過ごすのだった。
…………。
………………。
……………………。
『……いや温泉はッ!?』
「あ……あはは、ごめん…忘れてました…」
……しっかりしてるようでしっかりしていない…いや、ほんとそうだなイリゼさん…。
今回のパロディ解説
・きゃー、女神さんのえっちー
ドラえもんに登場するキャラの一人、源静香の代名詞(?)的な台詞の一つのパロディ。これ位しか言う事ない…というか、これすら誰が言うんだ、って話ですね。
・タタリな俺には〜〜感じずにはいられないね。
機動戦士ガンダム00に登場するキャラの一人、グラハム・エーカーの名台詞の一つのパロディ。後に愛を超え、憎しみを超越し、宿命に…なったりはしません。
・「〜〜これは泥ではない、マッドショットだ」、大魔王
ダイの大冒険に登場するキャラの一人、大魔王バーン及び、彼の代名詞的な台詞のパロディ。グレイブなら、本当にマッドショットも出来るんじゃないかと思います。
・「〜〜銀河美少年〜〜」
STAR DRIVER 輝きのタクトにおける代名詞的な単語の事。更に言えば、この場においては主人公のツナシ・タクト(と彼の代名詞的な台詞の一つ)を指してもいます。
・某メガフロート都市の宅配業者さん
Engage Kissの舞台となる都市、ベイロンシティ及び作中に登場する宅配業者の事。あの業者の速さは、ワイリー・ヨコーテとロード・ランナーのアクメ社並みですね。
・「〜〜まるでピクニックだな」
GOD EATER2に登場するキャラの一人、ジュリウス・ヴィスコンティのある意味代名詞的な台詞の事。まるでというか、実際ピクニックしているようなものですね。