超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
信次元…神生オデッセフィアへの来訪は、その守護女神であるオリジンハート、イリゼからの招待によるもの。彼女の友達や仲間として、誘われた事によるもの。…ここにいる、皆はそう。けれど、私は違う。こちらに来て、初めて会う間柄なんだから、それは当然の事。
ここに来たのは、知る為。違う部分も多いとはいえ、私と…私達と同じように、新たな国を興した彼女や神生オデッセフィアから、糧になるものを得られるんじゃないかと思ったから。友達や仲間の集まりに、打算で参加する事には少し気が引けたけど…誘ってくれたアイが「イリゼはそういうの気にしないッスから大丈夫ッスよー」…と言っていたし、折角の機会を逃すのも惜しかったから、行く事を決めた。……アイは適当な事言う時があるから、一抹の不安はあったけど。
そうして訪れてから今日で三日。一日目は何人もの相手と出会ったり、街を回ったりと、情報量が多かったし、得られるものも多かった。二日目は…なんというか、全体的に疲れた。面白い事もあったけど…本当に疲れた。そして三日目になり、三日目も出掛ける事になって…少しずつ、私は感じ始めた。というより、連日の賑やかな雰囲気で、思い始めた。色々得るのも良いけど…少しは気楽に、前向きに楽しむのも良いかも、と。
「よ、っと。愛月、大丈夫?登れる?」
「もう、これ位大丈夫だよ。確かに僕達の世界は、何故かちょっとした段差も登れなかったりする時あるけど…」
「そ、そうなんだ…ネプテューヌは……良かった。調子乗って走った挙句、バテてるとかになってなくて…」
「うっ…や、やだなぁ…そんな事ある訳ないって〜…」
お昼を取った丘を後にした後、また私達は森林へと入った。けど歩いてて心地良かったお昼前の森林と違って、今いるのは起伏が多い森の中。未開の地の温泉に向かっている、という意味ではそれっぽい道中だけど…これがまだまだ続くとなると、少し大変になってくるわね…。
(そういえば、あの二人は大丈夫かしら)
ふと気になって、私は振り向く。ここには女神を初め人を遥かに凌駕する存在が普通にいるし、人であっても人間の域を超えているであろう人が少なくない。…高所から落ちても何故か平気なネプテューヌみたいに、実力の一端って呼んで良いのか怪しい能力も、ここ数日の間に何度か見たけど…とにかくここにいるのは、この位の道は難なく歩けるであろう人ばかり。私もまぁ、そういう人達には当然敵わないけど、多少の高低差なら慣れたもの。荒れ果てた環境や瓦礫だらけの街よりは、まだまだ歩き易いレベル。
でも、全員じゃない。普通の人も、ここにはいて…例えば気遣われていた愛月がそう。そして、私より後ろにいる二人…イリスとウィードも、多分そちら側。
「イリスちゃん、ここ木の根っこあるから気を付けてね」
「うん、気を付ける」
「ここはこっちから降りた方が楽そうね。急いで降りたりはしないように」
「分かった、ゆっくり降りる」
「ウィード君、君は目的地の温泉に行った事あるのかな?」
「一度あります。俺が頼まれたのも、それが理由の一つ…ですかね、多分」
左右からディールとエストに助言されているイリスと、ズェピアと会話をしつつ普通に歩いているウィード。大丈夫か気になって見てみたけど、どうやらどちらも杞憂だった様子。…と、いうか…ウィードの方は、慣れてる感じがあるわね…。
「ゆりちゃんゆりちゃん、後ろ向きながら歩くと危ないよ?」
「イヴォンヌさん、何か気になる事があったんですか?」
「あるにはあったけど、大した事じゃないわ」
茜とルナに呼び掛けられて、私は前へと向き直る。専らイヴと呼ばれる事が多い(私自身それで良い、って言ってるんだから突然だけど)私を、それ以外で呼んでくる二人が揃って声を掛けてきたのは…まぁ、偶然でしょうね。
「そっか。ふふっ、温泉楽しみだね」
「だね。大きいお風呂なら経験はあっても、温泉なんて全然行った事ないし、ほんと楽しみだなぁ…」
「二人共、期待してくれていいからね?効能…は、まだちゃんと調べてないから分からないけど、気持ち良かったって話はばっちり聞いてるから」
「温泉といえば、体力を回復出来るのも定番だよねっ。あ、そっか、だからイリゼは回復出来る前提でこういう道を……」
「そ、そういう訳じゃないし、多分ゲーム的な感じで回復出来る訳でもないから…。…今の、狙ったボケなのかな…それとも天然ボケなのかな……」
途中から参加したイリゼも交えた、三人の会話。ぼそりと呟いたイリゼの言葉に茜は苦笑をし、聞こえなかったらしいルナはきょとんと小首を傾げる。
この三人は、前からアイと面識があった人達。私にとってはどちらにせよ初対面だから、あまり関係ない事柄ではあるけど…やっぱりこういう何気ない部分で、距離感の近さは感じる。再会した相手と、出会って数日の相手の間にある、些細だけど確かな差を。
「皆、もう少し…ではないけど、もう道のりの半分以上は過ぎてるわ。だから頑張って」
「残り半分以下とはいえ、まだもう暫くはあるという事か…。…我ながら、体力の衰えを感じるな…」
「衰え…って、疲れてきたって事です?俺には全然そう見えませんが……」
「というか、どれだけ疲れててもその様子を見せない、疲れたって言わないタイプっぽいッスよねぇ」
「俺は百年に一人の逸材じゃないんだ、疲れるし疲れた時はそう言うさ。むしろそういう評価は、彼辺りにするべきだろうよ」
『あー…確かに(ッス)…』
また視線を移してみれば、そこでは四人が会話中。その内の一人、影が見やったのはズェピアであり、それにアイ、セイツ、カイトが同意。一方、ズェピアの方は「何かな?」と軽く肩を竦めていて…うん、確かに疲れたって言いそうにないわね、彼…。
と、こんな風に私は、どちらかというと周りを眺めている事が多い。皆に接し辛い、話せないって訳じゃないけど、私自身は結局的に会話を持ちかけるタイプじゃない事と、アイ以外とはまだ浅い関係って事もあって、自然とそういう状態にやっていた。なっていたけど…そこで私は、呼び掛けられる。
「…え、っと…イヴ、だったよな?」
「…どうかしたの?」
暫くしたところで声を掛けていたのは、さっき見た時ズェピアと話していたウィード。ならズェピアは?…と思えば、さっきの四人の方にいて、何やらズェピアはズェピアでアイに呼ばれた様子。
「いや、どうって訳じゃないが……やっぱりちょっと、さっき会ったばかりの相手ばっかりだと、な…」
「あぁ……」
それを聞いて、それもそうだと気付く。彼も私に近い…どころか、今日の朝会ったばかりなんだから、私以上に殆どの人とは関係が浅い。なら、自分から話しかけるハードルが高いのは当然の事。自分が場違いに思える、雰囲気の壁を感じる…そんな風に考えてしまって、ね。
「…うん?なのに、私には声を掛けたのね」
「イヴはこの中じゃ、一番俺に近いかと思ってな…あ、不快だったら謝る、すまん」
「別に不快じゃないわ、実際立場的には近いと思うし。…にしても、社交的な人ってのは凄いものね」
「はは、同感だ」
知り合いが多くても少なくても、初対面の相手は話しかける時の緊張は変わらない筈。でもここには、自然と交流を始められている人もちらほらといて…その事に肩を竦めあった後、私は彼へ疑問をぶつける。
「貴方、サバイバルには慣れているの?」
「サバイバル?…まぁ、多少はサバイバル…みたいな経験をしてるが…なんでだ?」
「動きよ。貴方の動きは、洗練されてる訳じゃないけど、悪い足場での負荷を減らす歩き方だったり、体重移動だったりになっていた。洗練されてはいない…って事は、技術じゃなくて経験によるものでしょ?違う?」
なんでだという問いに私が答えれば、ウィードは目を瞬かせ…頷く。それから驚きの視線を向けてくる。そこまで分かるのか、っていう視線を。
「分かるわ。…私も、同じだから」
「そう、なのか。…もしかして、その腕も……」
「そういう事よ。…あ、先に言っておくけど、気遣いは不要よ。確かにこれは義手だけど、私の身体の一部だもの」
自分自身は気にしていない、それで良いと思っている事に対して気を遣われるのは、不快…ではないけど、こっちも困る。そう思って私が返せば、彼はまた頷き…自分の胴に触れる。
「…空腹?」
「い、いや、お腹空いたなぁ…のジェスチャーじゃなくてだな…。…やっぱ普通は、そうなるもんな…それが普通だもんな……」
「…ウィード?」
少し遠い目をした彼の声音から感じるのは、複雑な感情。普通、という言葉を繰り返した部分が、私は引っかかって…けれど私が呼べば、彼はすぐに別の話を口にした。
「…あ、でもあれだぞ?サバイバルみたいな経験って言っても、割と街の中にいたりもしたぞ?…街って言っても、廃墟だけどな」
「へぇ…驚いたわ、そこも同じだなんて」
「マジか…後はあれだな、サバイバルなのにプリン食べられた事あったな。冷凍プリンとかじゃなくて、出来立てのやつを」
「…それも同じだわ。まさか、こうも似たような経験をしてる人がいるなんて……」
「…そういや確か、自分以外人のいない次元にいたって言ってたよな…?…もしやそれって、人はいなくても女神とさ、友好的なモンスターとかはいたり……?」
「…した、わね……」
「…………」
「…………」
彼と二人、黙り込む。サバイバル経験があるだとか、廃墟で生活してたとかは、普通の事ではないけど、まぁお互い経験しててもおかしくはない。でも、こうも重なれば…ピンポイントでプリンや、人はいないけど女神と友好的なモンスターはいるなんて部分まで合致したとなれば、これはもう、偶々『似たような』経験をしただけとは思えない。そう…ひょっとしたらこれは、似てるんじゃなくて……
「…ふぅ。皆、到着したよー!」
そこで聞こえた、イリゼの全体へ向けた声。いつの間にか、目的地へと行き着いていたみたいで…正面に早速、湯気を立てる温泉があった。
「お、ここが秘湯の…って……」
「え…イリゼさん、まさかここに入るつもりで…?」
数秒湧き立ち、その後困惑へと変わった皆の雰囲気。それは、目の前にある温泉が原因。そこにあるのは、確かに天然の温泉の様だけど…状態が良くなかった。有り体に言えば、かなり汚かった。
「いやいや違うよ?ほら、もっと奥を見てみて」
「奥…イリゼ、よく見えない……」
「イリス、奥っていうのは多分湯の底じゃ……あぁ、そういう事か」
納得の声を上げるカイト。どういう事かと私も目を凝らせば…奥にも温泉があった。更に奥にも温泉らしきものがあって…私も理解する。どうやらここは、一ヶ所二ヶ所じゃなく、もっと多くの場所から温泉が湧き出ているらしい。
「ほうほう…こうなると、単なる温泉というより、温泉自体が一種の美景になっていそうだね。空から見てみたいものだ」
「けど、ここみたいに入るのは気が引けるのも多そうねー。…ディーちゃん、浄化の魔法は使えたっけ?」
「え…浄化して入るのは、何か台無しじゃない…?」
「女神が温泉を浄化…そういえばディールって、女神化すると髪が水色に……」
「だ、誰を連想してるんですか誰を…!」
憤慨するディールに対し、言ったアイは「いやぁ、失敬失敬」と謝罪しつつも、その口元に笑みを浮かべる。そうして不服そうにするディールをワイトが宥めて…話を、進める。
「…では、ここで男女に分かれるのですか?」
「そういう事よ。って訳でウィード、男性諸君の事は任せるわね?」
「おう。って言っても、二人みたいにちゃんともてなせるかは不安だけどな…」
「もてなすも何も、ここは森の奥なんだ。仮にしようとしても出来る事は限られるだろうし、そう気にする事もないさ」
水質を確かめるように温泉を覗いていた影からの言葉を受けて、それもそうか…とウィードは首肯。じゃあまた後で、と私達は男女に分かれ…あ、しまった。さっきの件、結局訊けず終いだわ…。…まぁ、いいか。一刻を争う事でもないし、話す機会はまだあるだろうし。
「さ、じゃあもう少し歩くよ。一応近くにも入れそうな温泉はあるけど…折角入るんだもん、もっと広くて綺麗な所の方が良いでしょ?」
「もっちろん!ここまでの道のりで良い感じに疲れたし、一番良い所までレッツゴー!」
後数分位かな、と言うイリゼに続いて、最後の道のりを進む。この辺りは温泉の影響で滑り易かったりぬかるんでたりする所もあるし、気を付けないと。
「イヴ、少しは喋れたッスか?」
「…その口振りだと、彼と私が話せるようにズェピアを呼んだわね?」
歩き始めてすぐに、女神仲間と話していたアイが歩みを緩め、私の隣にまで来る。私が何気なく言ってきたアイに返せば、アイは曖昧な笑みで肩を竦めた。
「意図は何?何か思うところでもあったの?」
「別に深い意図はないッスよ。ただ、二人で話せばお互い取っ掛かりになるんじゃないかと思っただけッス」
深い意図はないとしながらも、アイは言った。まずは立場的に近しい彼に話す事が、私にとってもウィードにとっても、この中で交流していくには丁度良い一歩目になるんじゃないかと思ったんだ、と。…全く…普段は適当な言動が目立つのに、ふとした時にアイは視野の広さというか、思慮深さを感じさせるのよね。一体どっちが素なのか…それとも二つの姿がある女神だし、どっちも素って事かしら。
「シノちゃんゆりちゃん、なーに話してるの?」
「やー、イヴがウィードと仲良くなれたって話をしてたところッス」
「な、仲良くって…まぁ、別に間違ってはいないけど」
「そっかそっかー。あ、そうだゆりちゃん。温泉入ったら、ゆりちゃんの話を色々聞かせてもらってもいいかな?」
「あ、それは私も気になるわ。というか、もっと皆の事を知りたいわ。一緒に食事したり遊んだりしたとはいえ、まだ皆の事は数日分しか知らないんだもの」
「…数日見てきて思いましたが、本当にセイツさんはオープンというか、色々積極的な方ですね」
「でも、今の発言はちょっとイリゼとも似てる…かも」
『あ、そう?』
((見事にハモった……))
ピーシェとルナの発言と、別の位置で別の方向を見ていたイリゼとセイツの、寸分違わぬ言葉のハモり。それに私達は目を瞬かせ…確かに姉妹だ、と共に肩を竦め合った。
「ふっふっふー、それじゃあ温泉で訊いちゃうよー!あーんな事からこーんな事まで、イヴのおはようからおやすみまでをね!」
「具体的な事が全く分からない宣言ね…。…でも、いいわ。隠す事もないし、私に答えられる事なら何でも話すとしようかしらね」
「…あの、いいんですか…?」
「……?どういう事?」
「いや…この面々でそんな事言ったら、どれだけ質問責めにされるか……」
「あっ……」
困惑気味の顔をしたディールに言われ、しまった…と気付いたけど、時既に遅し。周囲からは、獲物を狙う豹の様な…きゅぴーん、という擬音が聞こえてきそうな視線が私へと刺さり……ディールの懸念通り、それはもう根掘り葉掘り訊かれるのだった。何ならある程度知っている筈のアイも、皆に乗って訊いてきたのだった。…えぇ、まあ、その中で少しは皆との距離は、私が感じていた雰囲気の距離感は、縮んだような気がするわ。…でも、まさか……質問で疲労困憊になるなんて、思いもしなかったわ…。
*
ふふーん!明るさと前向きさとボケの申し子、今回は異世界からやってきた紫の煌めき、ネプテューヌことねぷねぷねぷ子さんが…あ、違った逆だった。まぁいっか。とにかく自分が、満を持して地の文担当だよ!皆、待たせたな!…なんちゃってー!
……って、第九話!?第九話の中盤担当!?そ、そんな…ここまで引っ張ったって事は、大一番で地の文を任されるんだろうって思ってたのにー!十話ならキリも良かったのに、その直前の中盤って…酷いよ!あんまりだ!あんまりドゥ!
「…あ、でも今年最後の投稿って意味じゃ、九話も九話で悪くないかも?まあ、やっぱりそれならこの話の最後に地の文やりたかったけどさー」
「えぇ…?ネプテューヌさんは何を言ってるんです…?」
「地の文の流れのまま発言しちゃうっていう、イリゼの悪癖の真似かなー」
「ぶふぅ!?な、何でそんな事するの!?っていうか、知ってたっけ!?」
ピィー子の言葉にさらっと自分が切り返せば、びっくりした様子でイリゼが突っ込み。ふっ、狙い通り…。
「イリゼはほんといつも元気ッスねぇ…」
「だねぇ…」
「ですねぇ…」
目的の温泉に着いて、皆で湯に浸かり始めてから…んーと、どれ位かな。とにかくまあまあ時間が経った。イリゼはハイテンションで突っ込んでたけど、他の皆は温泉の気持ち良さでのんびりしていて、特にシノちゃん、茜、ビッキィなんかは仲良く並んでのーんびり状態。でも、皆がゆっくりのんびりって訳じゃなくて……
「うぅ……」
「イヴ、辛そう。大丈夫?」
「質問責め…っていうか、質問の波状攻撃だったもんね…あそこは凄く浅いですし、あっちで横になりますか?」
「いや、いいわ…あそこで仰向けになると身体の上半分だけ外に出て、なんか恥ずかしい外見になりそうだし……」
ついさっきまで自分達の約半数に次々と、休み無しで質問され続けたイヴは温泉の縁にもたれかかる形でぐったりとしていた。いやぁ…最初はシンプルな興味とふざけ半分で訊いてただけだったけど、ちょっと大人っぽいイヴが段々気圧されて縮こまる姿を見たらなんか変なテンションになって、皆で更に質問しまくっちゃったんだよねぇ。
「しっかしセイツおねーさんって、服脱ぐと更にイリゼおねーさんと似るわね。スタイルなんて、殆ど同じに見えるし」
「ディールちゃんと瓜二つな貴女がそれを言うのね…。…わたし…っていうかわたし達に関しては、オリゼに創り出された存在な訳だし、姉妹って事で似た外見にしたか、逆に何も拘らず似た感じにしただけか…なのかもしれないわ」
「…あの、セイツさん…それって……」
「あぁ、気にしなくていいわ。わたしはオリゼにどんな目的で、どんな思いで創り出されたんだとしても、わたしはオリゼもイリゼもイストワールも、皆大好きだし大切な家族だって思ってるもの」
ちょっとドライに…生み出された、じゃなくて創り出された、と言ったセイツにルナが気遣うような顔をした…けど、セイツはけろっとした様子で言葉を返した。何ならちょっと良い感じの事を言った後、「あ、でもその気遣いの気持ちは貰っておくわ!むしろもっと見せてほしいわ!」…と、 今のところ毎日見てるセイツムーブをかましていた。……まぁ、その反応はともかく、気持ちは分かるかな。今の自分がある経緯がどんな形であっても、家族とか友達とか、今ある繋がりが好きだって思いは変わらないもん。
「にしても、良いところだねぇここ。ほんと秘湯っていうか、動物達も入りに来てそうっていうか…」
「でも実際、動物が入ってたら一緒に浸かるのは気が引けるような…。…後やっぱり、わたし達以外いないって分かっていても、こんな外で裸になるのはちょっと……」
「そう?確かに誰かいたら…って思う気持ちは分かるけど、これはこれで開放感があると思うわ」
森を抜けた先の開けた空間にある、正に自然の真っ只中な温泉。特別絶景とか心に残る景色がある訳じゃないけど、なんだか自然から癒しの力を貰えてそうっていうか…なんだっけ?プラスドライバー?ブレストファイヤーだっけ?…あ、そうだマイナスイオンだよマイナスイオン!いやぁ、うっかり工具とか必殺技を連想しちゃったよ。
まあそれはともかく、ディールちゃんは裸になる事に抵抗があった様子で、逆にセイツはそこまで気にしてなかった様子。性格的にはどっちも「らしい」訳だけど、ここで余裕綽々な雰囲気を出すなんて、さぞやセイツさんはご立派なものを……あ、うん…持ってたね…圧倒的質量!…って訳じゃないけど、普通に今いる中じゃ大きい方だったね…。
(むむむ…まあでも良いもんね!ちょっと見回せば、私の仲間は結構いるし!)
湯船に浮かぶセイツの胸から目を逸らした自分は、心の中で叫ぶ。気にする事はないよ自分!なんたって多数派はこっちなんだから!上から下までキュートでぷにぷにしてそうなディールちゃんにエストちゃんにイリスちゃん、スレンダーでちょっとセクシーなシノちゃんに茜、そして可愛さを限界まで凝縮したが故のちょっと慎ましボディの自分で、半分はこっちサイドなんだから!
「なーんかネプテューヌちゃんからちょっと不服な視線で見られてる気がする…」
「うーん、そうかな?皆綺麗だから、それで見られてるだけじゃないの?綺麗だし、髪はさらさらだし、肌もすべすべだし……」
「……ちょ、ちょーっとウチはあっちの方にでも…」
『……?』
妙に熱を持ってルナが語る中、何やらシノちゃんはルナから離れるように移動。なんかちょっと冷や汗?…をかいてるし、何かあったのかな…。
「…あ、ルナルナ。ちょっといーい?」
「ほぇ?」
「…うん、やっぱりルナは中間…かなぁ」
「え、え?何が…?」
念の為ー、って感じでルナの胸も確認する自分。ルナは大きいって訳じゃないけど、それが逆に可愛いっていうか、ナイスサイズ!って感じ。
そしてルナが中間だからこそ、自分達は多数派。しっかり膨らんでてちょっぴりアダルティなイリゼとセイツ、大きいだけじゃなくて柔らかそうだって見た目から伝わるピィー子にイヴ、身体が引き締まってる分実際以上に大きく見えるビッキィと、そこそこおっきぃ面子もいるけど、一人の差でこっちが多数派な事は揺るがないんだから!っていうか大きいって言っても、リアスちゃんとか朱乃ちゃんとか、自分の世界の知り合いに比べたらまだまだだしね!……って、何考えてるんだろう自分…ちょっと悲しくなってきた…。
「…………」
「(…あれ?私も見られてる?)イリスちゃん、どうかしたの?何か見つけた?」
「ネプテューヌは、胸が小さい」
「ぐふぅ!?い、イリス…ちゃん…?」
「ディールやエスト、茜も小さい」
「ぐっ……い、いきなりイリスちゃんに馬鹿にされた…?」
「あははー…こうも真顔で言われると、流石にダメージあるね…」
「でも、イリゼとか、ビッキィは大きい。これは、何故?この個体差には、どんな意味が?」
突然ぶつけられた貧乳呼ばわりは、自分の心にクリティカルヒット。そのまま辻斬りみたいに次々とダメージを生み出したイリスちゃんは、そのまま悪びれる様子もなく…っていうか、ダメージを与えた事にすら気付いていない様子で、何とも答え辛い事を訊いてきた。…ど、どんな意味がって…そんなの分からないよぉ!貧乳な事に意味があるんだとしたら、それは自分だって訊きたいよ!?
「う、うーん…えーっとほら、同じ果物とか野菜でも、ちょっぴり味が違ったり、大きさとかは全然違ったりする事があるでしょ?だからそれと同じで、皆ちょっとずつ違うのが人…って事…なのかな。…わたしは人じゃなくて女神だけど」
「あ、なんかそれっぽい…イリスさん。意味はともかく、大きさに価値は関係ないですからね。胸一つで人を判断するなんて浅はかにも程がありますし、第一大きくても邪魔になるばかりですし」
「ピーシェ様、流石にそれを小さい子に語っても仕方がないかと……」
「ねー。っていうか、大きいと邪魔〜なんて、背が高いと上にある荷物を取らされて大変だ〜っていうのと同じ、贅沢な悩みってやつじゃないかしらー?」
苦心して捻り出したディールちゃんの答えに、一応イリスちゃんは納得した様子。でも、続いたピィー子の言葉にエストちゃんがちょっとだけ不満そうにして……ごめんねピィー子。今のやり取りに関しては、自分もエストちゃんに同意かなー。
「…つまり、胸は重り?…はっ、ブランもミナも賢いから、胸が大きくならないように……」
「イリスちゃん、それ絶対本人に言っちゃ駄目よ?言ったら大変な事になるからね…?」
「はは…まあ、重りではないよイリスちゃん。勿論、大きければその分重くはなるけど…邪魔だと思った事は一度もないね」
ブラン…というのが、女神の一人っていうのは聞いている。そのブランに言っちゃ駄目って事は、多分その子もこっち側なんだろうなぁ…と思っていたら、何故か女神の姿になるイリゼ。姿が変わって、背丈も少し伸びて…浮く。アレが、それはもうしっかりがっつり、浮く。
「おおぉ……これは、凄い…女神の姿のイリゼは昨日も見た、けど…その時より、大きく見える…」
「今はプロセッサユニットを纏ってないからな。ふふ、こちらの姿で湯に浸かるのも一興というもの…」
そう言ってイリゼは背中を温泉の縁に預け、寛ぐように両腕の肘も縁に引っ掛けて、ざばんと水面を揺らしながら温泉の中で脚を組む。うーん…これは犯罪的。あったかいから肌もほんのり紅潮してるし、そんな状態で脚組んで、湯の中とはいえ色々隠さない格好してるし……イリゼってこういうキャラだっけ…?え、何…?妖艶なお姉さん枠にチェンジしたの…?
「み、見せ付けるねぜーちゃん…えー君の前ではやらないでね?体調悪くなっちゃうから」
「いや幾ら何でも、異性の前でこの格好は……え、体調悪く…?体調悪くって…貴方の旦那さんはどうなってるのよ…」
「むむむ…それはともかく、なんか明らかに自慢してるよねイリゼ…シノちゃん、ここは女神として許す訳には……」
「イリゼ、無駄に女神化するのは止めてくれないッスかねぇ?折角の温泉が台無しになるッスから」
「…あっれぇ……?」
ふざけ半分悔しさ半分で、シノちゃんに話を振ってみ…ようとしたわたし。けど、わたしが言い切るより早く、ドライな声をしたシノちゃんはイリゼに視線をぶつけていて……なんか嫌な予感がする…。
「あぁ、申し訳ない。ついノリで女神化をしてしまったが、確かにこれは短慮で気遣いに欠ける行為だったね」
「おーおー、それわざと言ってるッスねイリゼ。いいッスよ?言葉で言い負かす方が簡単ッスけど…勝ちの見えてる方法で負かすのは流石に可愛そうだからな」
組んだ脚を解いて、多分イリゼは人の姿に戻ろうとした…けど、その時の言葉でシノちゃんがぷっつん。対抗するようにシノちゃんも女神の姿になって…おぉ、なんか格好良い…赤い髪に鋭い目付きで、言葉通りに勝気って感じ!後スタイルも良い!自分と同じように全体的に成長してるけど、それだけじゃなくてすらっともしてるしこれがエロ格好良いってやつ?…って、違う違う!一触即発、一触即発だよ!?
「…………」
「…………」
「あ、あわわ…どうしようピーシェ…!なんかすっごい大変な事になっちゃった……けど、それはそれとして、なんかこう…くるものがあるよ、私…!お湯の滴る良い女神っていうか、腕を組むイリゼと片手を腰に当てたアイが至近距離で向き合う事で、芸術的な何かになってるような気がしてくるよ…!」
「うん、落ち着いてルナ。確かに大変な事になってるけど、ルナも違う意味で大変な感じになってるからね?」
「…お湯をどうこうする場合、ちょっとアイが近過ぎる……」
「エスちゃん…?今、氷か水の魔法使おうとしてなかった…?」
いつバトルが始まってもおかしくないような雰囲気の中、変な会話もちらほら聞こえてくる。こういう時は、巻き込まれないようひっそり端っこに行くのが賢明なのかもしれないけど…そんなの自分じゃ、主人公じゃないよね!愉快に軽やかにピリついた雰囲気はぶっ壊すのが、この自分なんだから!えーっと、今出来る事は……そうだ!
「くっ…なんて事なの、わたしは姉として仲裁をしなきゃいけない立場なのに…二人の感情の奔流を、もっと見ていたくて仕方ないわ…!わたしは、わたしはどうしたら……」
「セーイツっ!今更だけど、今はお風呂パート!ならサービスシーンの一つでもなきゃ駄目だよねっ!」
ある事を思い付いた自分は、ちゃぽちゃぽと変な事言ってるセイツの後ろへ。そして両手を広げて、飛び出して…セイツの胸を、後ろから鷲掴む!それはもうがしっと、ぎゅーっと!
お、おおぉ!見た目から予想は出来てたけど、良い感じに大きい!柔らかい!ハリも感じる!なんかすっごい悔しいけど、これで雰囲気は変わ──
「ぴぁっ!?ぁ、え…ひゃあぁあぁぁああああっっ!?」
「え……っ?」
……あ、あれ…あるぇぇ…?…いや、その…凄く予想と違う反応が出てきたよ…?
「あ、あのー…セイツ、さん……?」
「ね、ねぷっ…ねぷてゅー、ぬ……?」
「は、はい…ネプテューヌでございます、宜しくお願いします…」
もしや、誰か違う人と間違えたか。ディールちゃん辺りにやっちゃったかも思ったわたしだけど…うん、それはない。この感覚は流石に違う。でも、聞こえた反応も明らかにセイツらしいものじゃなくて、訳が分からず呼んでみたら…やっぱりセイツだった。セイツなのに、この反応だった。え、えぇ…?セイツってむしろ、こういうのは積極的にやるっていうか、少なくともこんな反応するキャラじゃなかったよね…?
『…何してん(の・だ)、ネプテューヌ……』
「あ、え、えーっと……迂闊な事…?」
気付けばイリゼとセイツは、揃ってわたしを半眼で見ていた。結果的に一触即発の雰囲気は霧散したけど…な、なんか思ってたのと違うぅぅ……!
「突飛な事した結果微妙な雰囲気になるって…偶に変な空回りするのも、私の知ってるネプテューヌと変わらないのね」
「は、はは…これに関しては何も言い返せないや……け、けどまぁ、目的は果たせてるし結果オーラ……」
「ふ、ふぇっ…は、離し…離して、よぉぉ……っ!」
「あぁっ!?ご、ごめんね!いやほんとごめ…おわぁ!?」
二人に加えてイヴまで半眼。しかもそこで、怯える小動物みたいになっちゃったセイツに涙目で見つめられて、慌てて自分はセイツから離れ…ようとしたけど、ここは人の手なんて全く入ってない温泉。足場も普通に滑り易くて…自分はその瞬間思いっ切りスリップ。ひっくり返った自分は頭を打って、でもまあ浮力のおかげでそんなに痛くはなかったんだけど……
「痛た、ここ凄い滑り易い…ね…って……」
「っとと…せーちゃん、だいじょーぶ?」
「ふぇっ…!?ぅあ、あっ…ぁっ…ふぇ、ふぇぇぇぇ…っ!」
「あー、ネプテューヌちゃんがセイツ泣かしたー」
「ネプテューヌさん、離すと見せかけて脚で突き飛ばすなんて……」
「えぇぇっ!?ち、違うよ!?今のは偶然だからね!?」
ざばっ、と自分が顔を上げた時、そこにあったのはセイツをハグしてる茜と、その腕の中であわあわした末に、泣き出してしまったセイツの姿。エストちゃんのわざとらしい糾弾と、ビッキィの結構ほんとに引いてそうな呟きを受けた自分は弁明するも、既に「あーあ…」って感じの雰囲気が出来上がっていて…ごめんなさいを、するしかなかった。じ、自分はただ、ピリついた状況を何とかしたいだけだったのに、それだけだったのにぃいぃぃぃぃぃぃ…!
…後、まさか二日連続で、この国の女神がマジ泣きする姿を見る事になるとは思わなかったよ……。
*
温泉に入る、って事でイリゼ達と分かれ、ウィードの案内で入る予定の場所まで歩く事…まあ、五分か十分かそれ位。綺麗で良い感じの広さがある温泉に着いた俺達は、早速その湯の中に浸かった。
「ふー…温泉というと、フエンタウンを思い出すよなぁ…」
「だねぇ…フエンせんべい、美味しかったなぁ……」
ちょっと熱い、けどこれぞ温泉って感じの湯の中で、俺と愛月は取り敢えずまったり。フエンせんべい…あれ、町の名前が入ってるのにフエンタウンじゃ買えないんだよなぁ…。
「極楽極楽……」
「お、温泉で極楽極楽って実際に言う人って、本当にいるんだな…」
「言われてみるとそうだなぁ…」
「はは、影君も流石に温泉の中では気が緩むようだね。…普段よりは、だけど」
聞こえてくるのは、こっちに負けず劣らずのんびりした会話。確かにあの影って人、なんか常にどっかで油断してない感じあるんだよなぁ…愛月とは大違いだ。
「あ…そういえばズェピアさん。吸血鬼は流れる水が苦手だっていうけど、温泉の場合は大丈夫なの?後、流れるプールとかも駄目?」
「うん、問題ないよ。吸血鬼の流水云々は、説明するとややこしい部分が多いから止めておくとして、少なくとも私が温泉に入っても動けなくなったり苦しくなったりする事はないね」
「なんだ愛月、吸血鬼狩りでも考えてるのか?」
「ち、違うよ!?単に吸血鬼なんていう、あり得そうにない存在だからちょっと気になっただけだって!」
「俺からすれば、女神も巨大人型ロボットもポケモンも吸血鬼も、全部びっくりな存在だけどな」
「いつの間にか凄まじい火力の炎を扱えるようになっていたらしいカイト君も、特殊能力なんてない身からすれば大概驚きの存在だと思うけどね…」
「これがジェネレーションギャップ…じゃない、えーとこの場合は…ディメンジョンギャップ、ってやつか……」
なんだか皆凄いなぁ、と言うような声を漏らしたのはウィード。…こうして見ると、ウィードってなんか普通だな…カイトは鍛えてるって感じの身体してるし、影とワイトはそれに加えて傷痕だらけだし、ズェピア…なんか見た目からして色々凄いし、逆にウィードの普通な見た目が目立つっていうか…。
「…ウィードも何か、特殊能力があったりしないのか?信次元の人間なんだろ?」
「信次元の人間だからって、誰でも特殊な力がある訳じゃないさ。多分、何の力もない人の方が多いし……俺も、前はそうだった」
『…前は?』
「あー…まぁ、別に隠す程の事じゃないんだが、今の俺はなんていうか……不死身の可能性有り、的な…?」
不死身の可能性有り。そう聞いてに俺が首を傾げれば、ウィードは続けて教えてくれた。前に一度、どう考えても死ぬような事態になった事があって、けど気を失っている間に、怪我したところが元通りになっていた(らしい)って事を。その後も何度か怪我をしたけど、どれもあっという間に元通りになって、傷痕一つ残らなかったんだと。
「回復…いや、再生能力って事か?なんか、ライトノベルの主人公みたいな力だな」
「羨ましい力だ。今の説明を聞く範囲だと、な」
「うん、旅をしてるとちょっとした怪我はよくするし、僕も羨ましいかも…あれ?でもそれなら、なんで『可能性有り』なの?」
「そりゃ単に、俺もはっきりしたところまでは分からないからだ。回数制限はあるのか、回復条件や回復出来る限界はどうなのかってところを、俺も知れたら知りたいが……」
「あぁ…それを調べる為にわざと負傷して、結果回復が機能せず死んでしまった…ってなったら洒落にならない、だから調べられない、という事かな?」
「そういう事です。…まぁ、こういう理由で今の俺の状態、存在があるのかも…って推測もあるにはあるんですけど…すみません、それについてはちょっと恥ずかしいので、秘密にさせて下さい……」
「ははは、ワイト君も私達も、そう言われても尚追及しようとしたりはしないさ。けど君の話を聞く限りだと、君の再生…いや、復元能力は、少し吸血鬼のそれと似ているかもね」
俺は気になるけどなー、と思ったが、まあそれはそれとして頷く。俺だって、それ位の分別はある。
「さて、それより折角ののんびりした時間なんだ。今の話も興味深くはあったが、もっと気楽で明るい話でもしようじゃないか」
「確かにそれもそうですね。では…グレイブ君、愛月君、君達は旅をしていると聞いたけど、その話を少し聞かせてもらってもいいかな?」
「ああ、いいぜ。けど、これまで色んな地方に行ってきたからなぁ…どっから話したもんか……」
「どこからでも構わないよ。…けど、色んな地方に、か…私からすればそれは危険なようにも思えるけど、危ない事はなかったのかい?」
「ううん、危ない事もあったけど…ポケモンも一緒だからね。…後、グレイブはむしろ危険に自分から突っ込んで行ったり、下手すると危険を色々生み出す方だったりするし……」
「失礼な事言うなっての。危険を生み出してると思ったなら、それは愛月が柔なだけなんだからな」
全く、俺はいつも色々考えた上で行動しているというのに…と思いながら愛月に言い返し、それから俺は頼まれた通り、旅の話をする事にした。これまでの事全部じゃ多過ぎるから、まずはどの地方をどの順で回ったか話し、その後は特に印象深い経験を愛月と共に伝えていった。
「で、そこでも俺は勝って、チャンピオンになった訳だ。やっぱポケモンリーグはどの地方でもヒリヒリした戦いになるし、だから挑戦は止められないんだよなぁ」
「僕も毎回、『そんな戦い方する!?』ってなるから、ある意味ヒリヒリだけどね…。…あ、そうそう。僕達とイリゼが出会ったのは、その少し後だったんだ」
「そうだったんだね。しかし、旅の行く先々でマフィアやら過激派集団やらと戦って倒しているとは……」
「なんか、俺が思ってたよりずっと波乱万丈な旅だな…しかもグレイブ、何冠制覇してるんだよって位チャンピオンになってるし……」
「小動物や虫と変わらない程度のものから、天変地異や概念への干渉、側は神と呼ばれる存在までいるとは、ポケモンの多様さも凄いものだな…」
「…なんか、知らない地方とかポケモンの名前とかもあったな…実際には、出てる作品以上に色々あるって事か…?それとも、俺がゲイムギョウ界に来た後も、シリーズの新作が……」
「他の地方で育てたポケモンをそのまま連れてくる…アニメ主人公は相棒を除いて頑なにしてこなかった事を、割と普通にやってるとは……」
ある程度話したところで一回俺達が区切ると、五人からそれぞれの感想が聞こえてくる。なんかカイトとズェピアは声が小さかったし、何言ってるんだかよく分からなかったが…取り敢えずこれ位にするか。まだしてない話もあるけど、それは追加で訊かれたらまた話すって事で。
「今度は皆の話も聞かせてくれないか?皆だって、なんか凄い戦いとか、旅とかをしてるだろ?」
「聞いておいて悪いが、俺は話せないな。俺の経験は、暗過ぎてこの場に全く合わない」
「すまないね、グレイブ君。私も影君と同様、明るいような経験はあまりしてきてなくてね…まぁ、戦いの合間の事なら少しは話せなくもないけど…」
「私は…話してもいいが、非常に長くなる。暗い話を除いても、かなり長い。聞いていると、恐らく誰かしらは湯あたりしてしまうよ?」
「となると、俺かウィードか。どうするよ、ウィード」
「あ、さっき別の話した俺もなのか…」
「そういやそうだったな。じゃ、俺の話でいいか?」
「うん、聞かせてカイトさん。グレイブもそうだけど、僕もやっぱりゲイムギョウ界はまだまだ知らない事が多いし、聞いてみたいな」
愛月の返しに俺も頷けば、カイトは「やっぱゲイムギョウ界に来たところからかな」…と言って語り出す。カイトがゲイムギョウ界に来て、その次元のネプテューヌ達と出会って、特命隊ってところに入って、色んな戦いや経験をしてきた話を、順番に俺達に話してくれる。
「それから最後はネプテューヌ達四人が決めて、決着だったな。実力もそうだが、やっぱり女神って凄ぇよ。いるだけで、言葉や行動の一つ一つで、周りの雰囲気を変えちまうんだからさ」
「うん、私もそう思うよ。個としての強さには限界があるし、代替出来ない事なんてそうそうないけど、そのカリスマ性はそれぞれが唯一無二と言っても良いだろうね。…少なくとも、私の次元ではそうだ」
「ふふ、信頼を感じるね。…そういえば、私の知り合いには四人で世界を統治する魔王がいるんだ。この次元の守護女神は、イリゼ君しか知らないが…残りの四人と彼等のやり取りも見てみたいものだよ」
「魔王と女神…普通から対立確定の関係だな……」
「いいや、対立はしないだろうさ。魔王と言っても悪行を成している訳じゃないし…何より愉快な面々だからね。…その分割と疲れる事も多いけど……」
だよなぁ、と影の言葉に頷く俺だったが、そんな事はないらしい。…けど、女神に吸血鬼に、今度は魔王か……。
「…ズェピアさんの世界も、他のゲイムギョウ界も、行ってみたいなぁ……」
「気が合うな、愛月。俺もだ」
「お、流石は色んな所を旅してるコンビだな。…てか、ほんと二人共凄ぇわ。俺が二人位の頃なんて…ってか、今の俺でもちゃんと旅出来るかどうか怪しいもんだし…」
「だろ?けど、旅って割とその場のノリで何とかなるもんだぞ?…ってより、考える事考えたら、後はばっちりやる事決めて、怖がらずに進む事が大事だと思うな」
「うんうん。それに旅って言っても、基本は街から街への移動だし、困ったら最悪ポケモンに運んでもらって近くの街に戻る事も出来るからね。だから…サバイバル、っていうのかな。そういう旅とはまた違うんだ」
「…だとしても、大したものだ。夕もこれ位立派に……」
褒められるのは嬉しいが、旅に関してはそこまで凄い事じゃないとも思っている。だから俺も愛月も軽く否定した訳だけど、それでも影は凄いと言い…途中でふっと、表情を曇らせた。…理由は、分からない。誰も訊かなかったし、俺も訊こうとは思わなかったから。
「…ふむ。話は変わるが、実はこんな物を用意していてね」
『こんな物……?』
突然温泉から出たズェピアは、近くにある別の湯へ。何だろうと思って見ていると、ズェピアは戻ってきて…その手にあったのは、籠に入った幾つもの卵。つまりそれは…温泉卵。
「秘湯の温泉卵とは、また粋な事をしますねズェピアさん」
「だろう?イリゼ君達の分は別に用意してあるから、気にせず食べてくれ給え」
ワイトの言葉に首肯したズェピアは、どこからか塩を取り出す。今の格好じゃ、絶対どこにも仕舞えない筈だが…まぁそれは良いとして、俺も一つ貰って食べる。…うん、美味い。
「ん〜♪このトロトロ感が良いんだよねぇ」
「これ位トロトロだと、卵かけご飯にして食べたくもなるな」
『あー』
確かになぁ、と全員で同じ声を上げる。ここに白米はないからまあ無理だが、それはそれとして美味い。秘湯の温泉卵、って事で特別な感じがするし、ここまで歩いてきて少し疲れてるのも、より美味しく感じる理由…なのかもしれない。
「ご馳走様でした、と。…さて、もう少ししたら上がるとしようか。ここは少し熱めだし、湯当たりしてしまっては詰まらないからね」
「同感だ。風呂は疲労回復も出来るが、長風呂は逆に体力を消耗するからな」
「では、その後は向こうと合流かな。彼女達は、どんな会話をしていたんだろうね」
そうして温泉卵を食べ終えたところで、そろそろ出ようかという流れになる。向こうはこっちより人数も多いし、個性的なメンバーばっかりだから、きっと盛り上がっているんだろう。どんな話をしたかは、後で聞いてみたいもんだ。
(…偶には良いんだよなぁ、こういうのも)
肩まで浸かって、力を抜いて、ふぅ…と息を吐く。どっちかって言うと、俺はのんびりするより色んな事をしたいタイプだが…ほんと、偶にはこういうのもいい。けど、こんな事普段はしようとも思わない訳で…その機会をくれたイリゼには、感謝しねぇとな。…へへっ、んでこの感謝を返すとしたら…全力でリベンジに応えてやる事が一番だよな。
…と、そんな感じの事も考えながら、俺は最後にもう一度身体を温めて、秘湯でののんびりとした時間を終えるのだった。
「……あ…普通に終わるんだな…温泉だし、ちょーっと魔が差したりは…」
「うん、それは普通にアウトだよウィード君」
「止めておくんだな、碌な事にならないのは明白だ。後、向こうに妻がいる妻帯者の前でよく言えたな…」
「憲兵さん…じゃなかった、親衛隊長さんこいつです」
「止めようか、ウィード君。私も男として、その気持ちは理解するけど…止めようか、ウィード君」
「い、いや冗談ですよ、冗談ですって……」
「…これは何のやり取りなの?」
「さぁな。てか愛月の場合、分からないなら分からないままにしておいた方がいいんじゃないか?」
「え、えぇ……?」
今回のパロディ解説
・百年に一人の逸材
プロレスラー、棚橋弘至さんの事。仮面ライダーキバの登場人物の一人、紅音也の台詞のオマージュのパロディでもありますね。前にもパロネタにした…かもしれません。
・「女神が温泉を〜〜水色に……」
この素晴らしい世界に祝福を!のヒロインの一人、アクアの事。しかし駄女神といえば、ディールよりもよっぽど近そうな女神がいますね。
・ブレストファイヤー
マジンガーZに登場するロボット、マジンガーZの武器の一つの事。マイナスイオンなら良いですが、ブレストファイヤーを浴びたら一溜まりもありませんね。