超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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 コラボに参加して下さっている方々にお知らせします。これまでも何度か戦闘回はありましたが、今後もそこそこある予定です。その為、作者の皆様には自分の作品のキャラの、コラボ参加時点(=今コラボに登場している段階)での戦闘能力や戦闘に絡む要素について、教えて下さると助かります。また、必要に応じてこちらからメッセージで質問する場合もあるかもしれません。その場合は、ご返答頂けると幸いです。


第二十話 恋と愛の話…?

 それの切っ掛けは、他愛のないやり取り、雑談の中で出てきた、ふとした発言の一つだった。

 

「…という事があって、茜は教師になったらしい。俺からすれば茜が教師?…とも思ったが…考えてみれば、茜は表情も感情も隠さないからな。子供からすれば、そういうところが親しみ易く信頼も出来るんだろう」

「そうだろうね、子供は案外大人をよく見ているものだから。…しかし、うん。やはり魅力的な女性だと思うよ、彼女は」

 

 会話の源流となったのは、茜が嘗て教師をしており、ズェピアもまた教師の経験があるという事を、影とズェピアのそれぞれが知った事。そこから発展する形で会話は続き、言動や性格が良かったのだろうと言う影に対し、ズェピアは魅力的な女性だと答えた。

 妻帯者の前で、そのパートナーを魅力的と言うなど相手と状況によっては一波乱起きそうな選択。しかしズェピアに他意がない…というより、どこまで本気で話しているのか普段から分からないのが彼だと影は認識していた為に、別段何も起こりはせず…代わりにグレイブが首を突っ込む。というより、その話を弄りに利用する。

 

「魅力的と言えば…なぁ?愛月」

「えっ、な、何さグレイブ……」

 

 にやりと笑うグレイブに対し、愛月は「何かからかわれてる気がする…」と思いつつも困惑顔。しかしそれは同時に、弄りが伝わってなかったという事でもあり、グレイブは「ちぇっ、イリゼの名前をはっきり出しときゃ良かったな」と内心で残念がった。

 

「あぁ、そういえば…聞いたよカイト君。セイツ様と出掛けたんだってね」

「あ、はい。デートを…デート?…を、してきました」

『何故に疑問形…って、あー……』

 

 更にそこへ、ワイトとカイトも加わる。問われたカイトの返答に、一同は首を傾げ…かけるが、すぐに相手がセイツである事から理解し、揃って苦笑い。

 そんな一同がいるのは、信次元を訪れた初日の夜に使った部屋。旅行の様なものという事もあってか、各々借りている部屋を使いつつも、寝る際はこのように集まっていたのである。

 

「デート、か…うん、青春だね」

「そうですね。青春、という言葉で片付けられる内容ではないのかもしれませんが…若いとは良いものです」

「…なんか、爺さんみたいな事言うんだな」

「実際君達からすれば、私は十分お爺さんだよ。まだ老け込む気まではないけどね」

「いやいや、まだ君もこれからだろう。実際衰えてはいないんだろうしね」

「いや、まぁ…吸血鬼にそれを言われたら、返す言葉もありませんが……」

 

 人の、常人の概念を超えた寿命を持つ存在にそんな事はないと言われてしまえば、異を唱えようもない。そんな思いでワイトは肩を竦め、それにズェピアは薄く笑う。

 

「青春…そう言われても、どういうのが青春なのか、俺自身はよく分からないんですよね……」

「そんなものだろうさ。主観にしろ第三者視点にしろ、青春だと思ったらそうなんだろうし、そう思わないのなら違う…そういうふわっとした、言ったもん勝ちなのが青春だよ、きっと」

「わっ、なんか深いね影さん…。……あれ…これ、深いのかな…?」

「いや、深くないぞ…むしろ今のは浅いぞ、我ながらな…」

「開いてる店は開いてるけど、閉まってる店は閉まってるみたいな感じだもんなー」

「はは…あ、そういや影って……」

「…あぁ…別に隠す訳じゃないが、語る程の事はないな。少なくとも、茜とデートとして出掛けた事なんて殆どない」

 

 呑気な調子で言うグレイブの言葉に軽く笑った後、カイトは影を見やる。するとそれだけで影は察したらしく、自分の事を…自分の場合の事を話す。

 

「おや、そうなのかい?確かに君は好き好んでデートをするタイプじゃないだろうけど…」

「茜の方はむしろ、積極的に誘いそうですよね」

「そこはまぁ、事情が事情なんだ。…付き合う期間ほぼ無しに、結婚した訳だし…な」

「そ、それはまた…凄いね、君達夫婦も…」

「というか、少し驚きだな。まさか話してくれるとは…」

「今さっきも言ったが、別に隠す事でもないからな。それに下手に隠して、色々と想像される方が敵わん。…まぁ尤も、この場においてはその心配もあまりなさそうではあるが…」

 

 イメージとは異なる反応に驚いたと言ったカイトだが、影からの返答で納得。確かに女性陣も交えていた場合、隠した場合は勿論、隠さなかった場合でもあれこれ想像されるのは火を見るよりも明らかであり…全員揃って苦笑。

 

「…うーん、でも…よく分からないや」

「うん?何が分からないんだ、愛月」

「ほら、さっきワイトさんが、付き合う期間ほぼ無しで結婚した、って事に凄いねって言ったでしょ?それが、どう凄いのかな…って」

「言われてみたらそうだな。何がどう凄いんだ?」

『それは……』

 

 男性陣の中では年少組となる二人の疑問に対し、ワイトとズェピアは顔を見合わせる。結婚…即ち婚姻に伴う各種権利や責任、その他発生するあれこれを説明するのが最も論理的ではある…が、それを二人が理解出来るかどうかは怪しいところ。加えてワイト自身、制度云々ではなく一般的な感性…具体的な説明は難しい感覚から凄いと言った面もある為に、どう答えたものかと迷い…そんな中で、口を開いたのはカイトだった。

 

「…そうだな、俺もはっきりした事は言えないけど…付き合うのは、好きって気持ちだけで出来るけど、結婚はそうじゃない…みたいな感じなんじゃないかと思う」

「…うん、そうだね。結婚というのは、責任を持つ事であり、『今』だけじゃなくて、これから…『未来』の事も考えて、覚悟してするものなんだよ。…いや、より正しく言えば、本来そうでなくちゃいけないもの…かな」

(…堪えるな。子としても、夫としても、親としても……)

 

 結婚は、こういうものじゃないか。それをそれぞれの視点と想像で語るカイトとワイト。二人の言葉を、グレイブと愛月は分かったような、分からないような表情で聞いていて…影は一人、結婚の意味を強く、或いは重く受け止めていた。

 二人が語った数秒後、聞こえたのは乾いた音。それはズェピアが手を叩いた音であり、その音でズェピアは仕切り直す。

 

「さて、折角こんな話になったんだ。少し、恋の話でもしてみようじゃないか」

『恋の話…?』

「偶にはそういう話をしてみるのも面白いと思ってね」

 

 首を傾げる五人を見やり、ズェピアは軽く笑う。実のところ、この話を振った…話を切り替えた一番の理由は、このままだと何をしたって難しい話に…グレイブと愛月がぽかんとする話になりそうだと思った為なのだが、当然それについては言いはしない。

 

「恋、ねぇ…こういうのって、言い出しっぺから話すもんだろ?ズェピアはどーなんだよ」

「私かい?言い出しっぺなのに申し訳ないが、私は恋愛に関してはさっぱりでね。娘…家族愛でも良いのなら、200枚の原稿用紙3セット分位に纏めて伝えようと思うのだが……」

『それはまた…って、200枚を3セット!?原稿用紙600枚分!?』

 

 一旦は普通に受け止めようとした一同だが、200字詰め3枚分ではなく、200枚3セットである事に気付いて全員仰天。続けて「合計すると全て埋めて12万文字…文庫本並みじゃないか…」と影は呟くものの、直後にズェピアは「まぁ、書こうと思えばもっと書けるんだけどね。纏めるというのは苦しいものだよ」と、何気なく言っており、これには全員仰天を超えて軽く戦慄していた。

 

「…ま、まあ良い事ではないのでしょうか。家族愛は尊いものですし」

「ありがとう、ワイト君。…して、君はどうなのかな?」

「私、ですか?」

「あ、俺も聞いてみたいです」

 

 振られたワイトが訊き返せば、カイトがそこへ興味を示す。程度の差はあれど、他の面々も少なからず興味があるような目でワイトを見ており…そんな反応に対し、ワイトは軽く頬を掻く。

 

「…恋愛に関しては、私もズェピアさんと似たようなものかな。普段は仕事が忙しいし、そもそも真っ当な恋愛が出来る程器用でもないんだ。残念ながらね」

「そうか、ワイトは『ぶきよう』なんだな」

「いやそんな、道具を使えなくなるような感じじゃないとは思うが…。…けどワイトさんって、ルウィーの近衛隊長なんですよね?ブランとは、仲良かったりしないんですか?」

「…まあ、良いか悪いかと言われれば、ありがたい事に良い方…だと思うよ。ただ、あくまで私は君主に従う身。一応共に出掛けた事もあるけど、それ位だよ」

「女神と出掛ける…っていうと、最初のカイトさんの話に戻るね。あ、もしかしてそれもデートって名前のお出掛けだったり?…なんて」

「…………。…まぁ、二人での外出をどう表現するかは、各々の自由だよ、うん」

((あっれぇ……?))

 

 冗談めかして言う愛月だったが、それに対してワイトは不意に沈黙。その後、何もなかったかのように返した訳だが、そこに明確な否定はなく…全員、目を瞬かせていた。

 

「ま、まあワイト君の言っている事自体はその通りだね。…影君…は既に話したようなものだし……」

「俺か?俺は興味ないな。てか、恋愛なんてよく分からん」

「僕もかな…友達への好きと、恋愛の好きの違いも、あんまり分からないし……」

「はは、確かに『好き』の違いは難しいね。誰もが納得出来る説明を出来る人なんて、ほぼほぼいないだろう」

「あー…俺も正直話せる事なんてないですね。友達がこんな恋愛してた、って話ならまだ捻り出せるかもですが」

 

 語れる程の事はない、と返す三人。これが学友の場合、時にはしつこく絡む事もあるだろうか、既に話した三人は全員が大人。故にそれならば仕方ない、と頷き……全員回った結果、会話が止まる。

 

「…あれ、ですね…話題が悪かったとは言いませんが……」

「うん、気を遣ってくれなくても構わないよ、ワイト君。…些か盛り上がりに欠ける話題だったね、少なくともこの面子では……」

「まともに話したのは実質俺だけ…ですらないな。俺も碌に話していない」

「うーん…あっ、それじゃあイリゼ達も呼んで話す?それならもっと盛り上がるんじゃないかな?」

「いや、止めておいた方が良いと思うな。多分、別の意味で盛り上がらない…というか、盛り上がれない気がする」

 

 ゆっくりと首を振って返すカイトに、愛月は小首を傾げる。一方ワイトとズェピアは苦笑しつつもそれに頷く。異性とだと気にしてしまう事、同性だからこそ気兼ねなく話せる事…どの程度気にするかは人によりけりだが、そういうものもあるのである。

 とはいえ、ならばこれで会話を終わりにするのかという話。何とも尻切れ蜻蛉な状態である為、心境的にまあ良いかとも言い辛く……そこでふと、グレイブが思い出す。

 

「そういや、温泉に行った時も似たような話したよな。あん時はウィードもいて…あー、ウィードもいりゃ話聞けそうだったんだけどなぁ…」

「確かにな。…結局ウィードの親しい相手って誰だったんだ…?」

「流石にこの場じゃ分からないだろうさ。そもそも俺達の知らない相手だったら思い付きようがない」

「それもそうだなー。…けど、逆に知ってる相手…ってか、イリゼ達や今回来てる内の誰かだったらどうするよ?」

『それは……』

 

 どうなんだろうか。面白がって話すグレイブの言葉に、全員が自然に想像する。そんな事あるんだろうか、あるとしたら誰だろうか…想像を喚起させるような内容であった為に、各々考える。

 

「…まあ、取り敢えずセイツはなさそうだな」

『(あぁ・だね)』

「というかセイツ様だった場合、セイツ様は親しい相手がいながらカイト君とデートした事に……」

 

 真っ先に挙げられたセイツの名前に、全員が首肯。続けてワイトが何とも言えない表情でデートの件に言及し、今度は全員苦笑い。

 

「はは…こほん。それでいうと、イリス君という線もなさそうだね。彼女も可愛らしくはあるが…恐らくまだ、恋や愛の分かる歳ではないだろう(…歳、という表現が正しいか否かは別として、だが)」

「当然茜もないな。ないというか、茜についていける男なんて全次元見回しても二人といるものか」

「…愛を感じるねぇ」

「えぇ、感じますね」

 

 小声で話すズェピアとワイト。だが影には辛うじて聞こえており…影は何も言わなかった。何も言わず、ただ少し顔を逸らしていた。

 

「愛といえば…アイも、あんまりそういうイメージがないな。イメージがないというか、恋愛に興味がなさそうというか…いや、俺も人の事は言えないが…」

「イメージで語ってしまうのは雑だけど、それで言うとディール様、エスト様、ネプテューヌ様にピーシェ様もなさそうだね。…尤も、ディール様以外はまだあれこれ言える程よく知る訳ではないんだけども」

「ビッキィもなさそうだなぁ…。…じゃあ、残ったのは…イリゼとルナちゃんとイヴさん?」

「ルナ君か…いや、うん、ルナ君もないだろう。ルナ君に彼氏はいないだろう、いないだろうさきっと」

「イリゼもないな。別にイリゼが誰と付き合おうと勝手だが…こう、もにょる部分がある」

「ズェピアさん、影…?…まぁ、いいや…となると、消去法でイヴだが……」

 

 段々と「なさそう」という形で減っていき、最終的にイヴが残る。…が、誰もありそうだとは言わない。というより、共に来たアイ以外の全員と初対面であるイヴについて、どうこう言えるだけの事を知っている人物はここにいない、というのが実情であり、それを示すように全員がそれぞれ肩を竦める。

 

「…なんかこう、誰もしっくりこなかったな……」

「さっきも言ったが、この場じゃ判断のしようがないさ。……に、しても…」

「どうかしたの?影さん」

「…我ながら、まさかこんな毒にも薬にもならない話をする日が来るとは思わなくて、な…」

 

 グレイブの言葉に答えた影は遠い目をし…それから自分でも驚きだ、と言う。その言葉に、ワイトも…同じように思っていた彼も、静かに頷く。

 そしてそれは、多かれ少なかれ全員が思っていた。自分には縁遠い話だと思っていた者、単純にそんな話をしようと思う機会がなかっただけの者、それぞれ理由は違うものの、この他愛ない話に全員が何となくの感慨深さを感じていた。

 

「…恋愛云々はまあ別として、俺はイリゼ好きだな。明るいし、真っ直ぐだし、諦めない事を諦めないし。…いや、うん。イリゼ『も』好きだな」

「分かるよ、カイト君。ディール様もアイ様も、方向性や在り方は違えど、自然と好ましさを感じる、感じさせてくれるものがある……それが、女神というものなんだろう」

「好ましさ…ネプテューヌは好ましさっていうか、面白さだよなー。面白いから一緒にいると楽しいしよ。んで、ピーシェは…なんだろうな。時々変で、明るいって感じじゃないけど、何だかんだ世話焼きっていうか……」

「ピーシェも僕はすっごく優しいと思うな。後、セイツさんも。なんかちょっと変な感じのイメージが強いけど、そうじゃない時はちょっとした事でも丁寧に教えてくれたりするし」

「エストは、ディールの妹…だったか。無邪気な様で、一歩引いた視点を持ち合わせているような立ち居振る舞いは、経験を感じさせるな。…明るいがそれだけではない…女神には、そんな部分も必要だろうさ」

「ふむ…ふむふむ。ワイト君も言ったが、それぞれにそのような部分が…自身は特に意識せずとも、自然体でいるだけで、周りを惹き付けるのが女神というもの…なのかもしれないね。…これを天賦の才…いや、後天的な女神もいるらしいが…と言うべきか、そんな言葉で片付けてはいけない、信念や積み重ねがあっての事なのか……」

 

 呟くように言ったカイトの言葉を皮切りに、女神へ触れる言葉が続く。その締め括りをするのはズェピアであり…その上で彼は、だが、と続ける。

 

「女神の皆が好ましい事は私も同意だ。…けれど、それは女神だけに留まる事ではないんじゃないかな?」

「だよな。面白いって意味で、俺はビッキィの事も好きだぜ?なんせビッキィは色々無茶苦茶だからな。無茶苦茶だし、クールぶってるけど実は熱いタイプだしさ」

「あ、グレイブが無茶苦茶とか言うんだな…。…ルナはそういうのとは真逆だが…多分、凄く芯は強いんだよな。後、連携技が上手くいった時はテンションが上がったっけ…」

「僕がそう思ってるだけかもしれないけど、僕は茜さんも優しいって思う。優しいだけじゃなくて、接し易い…っていうのかな?」

「基本的に茜は人当たりが良いからな。…恐らくそういう明るさとは縁遠いのかもしれないが、イヴには好ましさを感じる。…何かしら背負っていて、そこからきちんと前へ歩んでいる…気がするから、だろうが」

「前へ、というとイリスさんもだね。本人としては子どもらしく、好奇心に忠実なだけかもしれないけど、私はあの学びへの、知る事への姿勢を見習いたいと思うよ。…歳を取ると、何につけてもやらない理由、言い訳を探してしまうものだから…ね」

 

 良いと、好ましいと感じるのは、何も女神の専売特許ではない。女神でなくとも、女神以外でも、それぞれに魅力や敬意を抱く部分がある。そんな風に、一同は話し…肩を竦めた。これは、女性陣には聞かせられないな、と思いながら。

 

「…本人達は、どう思ってるんだろうな」

「至極当然の事だけど、そう思っている人もいれば、そんな事ない…と否定する人もいるだろうね」

「そこにも性格が現れるな。自信から肯定する者もいれば、その思いに応えようと肯定する者もいるだろうし、謙遜で否定する者もいれば、謙遜ではなく卑屈さから否定する者もいる…そこにゃ人も女神も関係ないだろうよ」

「褒められた時は、素直に喜べば良いと思うんだけどなー。そりゃ、褒められたくてそうしてた訳じゃないなら、そうじゃないんだけどなー、って気持ちになるのも分かるけどさ」

「でも、恥ずかしかったり、そんなに自分って凄いのかな…って気持ちで、否定したくなるのは分かるなぁ…」

「うん、グレイブ君の気持ちも、愛月君の気持ちも分かるよ。…故に、実際どうなのかではなく、どう思われたかが肝心なんだと私は思うよ。実際と違ったとしても…感じた思いは、嘘でも間違いでもないのだから」

 

 自身の思いが自分にとっての真実ならば、他者からの思いも他者にとっての真実なのだ。そう言うワイトに全員が頷き……切っ掛けからはそれなり以上に離れた会話は、それで終わる。

 

「…そろそろ頃合いでも良いだろ。今の流れからして、これ以上は蛇足になりそうだしな」

「まあ、確かにそうだね。時間としてももう遅いし…というか君は、意外としっかり睡眠時間を取るね……」

「朝起き、昼活動し、夜眠る。無理も無駄もない人本来の生活スタイルに準じるのは、良い事だと思うよ」

「吸血鬼がそれ言うのか、しかも川柳っぽいし…ま、同感だけどな。眠くなったら寝て、起きたらばっちり動く。それが一番だ」

「だな。それじゃ、今日もこれで寝るとするか。皆、今日も一日お疲れ」

「うん、お休み〜。…ふわぁ…明日は何をするのかな…何をしよう、かな……」

 

 そうして部屋の電気は消える。今日の話は…否、こうして日々交わす会話の中で、彼等は特別何かを得る訳ではない。六人が交わしたのは、ふと思い出す事はあっても、積極的に思い返したりはしないような、そんな会話。

 しかし初めから、誰も価値のある、有意義な話をしたいと思ってしていた訳ではない。何気なく、気楽に交わした会話であり……それで良いのだと、全員が思っていた。価値を求めるばかりの人生など窮屈だから、単純に楽しいから…それぞれに感じ方は違えども、満足したという思いは同じだった。

 

 

 

 

 偶然か、はたまた似たような話を思い付くような理由…出来事ややり取りがその日にあったのか、同様に別室で集まる女性陣も、この日は珍しい会話を交わしていた。

 

「へー、ネプテューヌちゃんって彼氏いたのね。…えっ、ネプテューヌちゃん彼氏いるの!?」

「あ、う、うん。コテコテのコントみたいな反応だね…」

 

 何気なく、半ば口を滑らせたような形でネプテューヌの言った、恋愛に直結するような言葉。そこからネプテューヌに彼氏…異性のパートナーがいる事が判明し…エストは驚いた。エストどころか、ほぼ全員が驚愕した。彼女に彼氏がいた事、ネプテューヌが恋愛をしている事…その両方の面で。

 

「これは驚きッスね…まさか、かなり違う次元…というか世界のとはいえ、ネプテューヌがとは……」

「ネプテューヌさんが恋愛…あ、あんまり想像出来ないかも…」

「そ、そんな驚く…?というか皆の知ってる自分って、そんなに恋愛と縁遠いの…?」

「縁遠いっていうか、普通の恋とか愛の枠に収まる感じがないというか…んーと、愛を超えて、憎しみをも超越した……」

「それ最終的に宿命になるやつじゃん!いやならないならない、わたし普通に恋とかするから!」

「恋をするネプテューヌ…見てみたい、見てみたいわ!」

「……わたしの彼氏を?」

「恋する貴女の心を!」

「ですよねー…」

 

 何とも不服な反応に対して突っ込んでいたネプテューヌは、最終的にセイツの平常運転な発言に辟易。…が、続けて「これは流れを変えなくては」と思い、すぐさま次の言葉を口にする。

 

「っていうか、皆こそどーなのさ。皆だって年頃の女の子…っぽいんだから、恋愛の一つや二つしてないの?」

「あっ…ネプテューヌ、多分そんな振りしたら……」

「ネプちゃん…それは私の、私とえー君のめくるめく愛の話を聞きたいって事だね!?」

「…こうなっちゃうから、止めようと思ったんだけど…遅かったか……」

「…私とえー君の愛……」

「…なんッスか。ウチは篠宮であって凍月じゃないッスよ。後、ウチ的にそっち方面は良い思い出がないから止めてほしいッス」

「あ、それはごめん…というか、失礼しました……」

 

 まるで何かのスイッチが入ったかのように、嬉々としてネプテューヌに迫る茜。そうなる事を予期していたイリゼは「一歩遅かったか…」と額を押さえる。そんな中、思わず浮かんだ連想でピーシェはアイを見やるが、珍しくアイの反応は淡々としており…その一方で、気を悪くさせてしまったか、と彼女が謝ると、すぐにアイはいつもの調子に戻って笑う。

 

「あれ、これって恋バナの流れ?…恋バナ、懐かしいなぁ……」

「懐かしい?ルナは、前にもした事がある?後、恋バナとは?バナナの一種?」

「あはは、恋バナはバナナの一種じゃなくて…なんていうのかな。好きな人、気になる人の話…みたいな感じ?」

「好きな人の話…それならイリスも出来る。イリスはミナとブラン、ロムとラムが好き。皆も、好き」

「ふふっ、ありがとねイリスちゃん。私もイリスちゃん好きだよ」

 

 恋愛絡みの話で盛り上がり始める中、ルナとイリスは対照的にのんびりとした雰囲気。自分も好きだと言いながらルナが撫でると、イリスはちょこんと座ったままそれを受け入れ…だがのんびりとしつつも興味がない訳ではないらしく、ルナは話へ耳を傾ける。

 

「恋愛といえば…意外とセイツさんは食い付かないんですね。ネプね…ネプテューヌさんには食い付いていましたが」

「……えっ?あ、ごめんなさいビッキィ。今皆の気持ちに浸ってて、よく聞いてなかったわ…」

「は、はぁ…。…何だろう、何かちょっと違う気が……」

「…縁遠い話ね…」

「ま、まあそうですね…」

「……?」

 

 どうも本当によく聞こえていなかったらしいセイツにビッキィは何とも言えない表情を浮かべ、ぽつりと呟いたイヴの言葉にピーシェは頷く…が、何となくその際の言葉に歯切れの悪さを感じ、イヴは小首を傾げる…が、すぐにその理由は判明する事に。

 

「あれ、何言ってんのピー子。縁遠いどころか、ピー子もこっち側でしょ〜、このこの〜」

「うっ…それはそう、ですけども……」

「へ?ピーシェそうだったの?」

「そうだったんスか?」

「まさかピーシェもだなんて…意外な二人よねー、ディーちゃん」

「う、うん。…一応訊くけど、エスちゃんは……」

「いると思う?というか、仮にいるならディーちゃんが気付かないと思う?」

「だよね…」

 

 ネプテューヌにより明かされた、新たな事実。セイツ、アイ、エストと神次元の女神としての面も持つ三人がその事実に目を丸くし、そこから双子のやり取りに発展。そしてピーシェ本人はほんのり赤くなった顔を隠すように顔を背けており…それをビッキィが穏やかな表情で眺めていたのはまた別の話。

 

「ほんと意外だわ、ピーシェがだなんて。あ、でもわたしの知ってるピーシェより貴女は少し大人っぽいし、そう考えるとそこまで意外でもないのかしら…」

「わ、私の事は別にいいんですよ。というか、そんな事を言うセイツさんはどうなんですか?付き合っている人とか、そうでなくても好きな相手とか……」

「わたし?わたしは老若男女、誰でも好きよ?だって一人一人違う感情を、違う煌めきを放つ心を持っているんだもの」

「…あ、そうか…セイツさんの感性って普通の恋愛云々とは少し違うから、さっきも分かり易く食い付いてなかったのか…だからなんか違う気がしたのか……」

「っていうか、セイツってばほんと見境いないのね。…でもこれ、ある意味分け隔てなく、誰に対しても平等に接してるとも言えるのかしら……」

「物は言いようッスねぇ。じゃ、その妹のイリゼはどうなんッスか?」

「え、わ、私?」

 

 時折妙な方向に転がりつつも進む恋愛話。自然な流れでアイはイリゼに話を振り、振られたイリゼは頬に指を当てて少考した後、複雑そうな表情で言う。

 

「…一応、男の人と添い寝した…というか、起きたら抱き着かれてた事ならあるけど……」

「ふぇっ?い、イリゼそんな事があったの?」

「イリゼおねーさんったら、実は大人な経験してるじゃない。どういう状況でそうなったの?」

「どう……変に思わないでほしいんだけど、半裸…というか、ほぼ全裸の状況でかな…少なくともお腹より上にあったのは、髪のリボンだけだし……」

『全裸…えぇぇっ!?ご、強姦…!?』

「あ、ち、違うよ!?全然そういうのとかじゃないよ!?確かにその前に殺されかけてるけど、治療してくれたし!その後は妹と重ね合わせて何だかんだ気にかけてくれたし!」

『尚更ヤバげな情報が出てきた…!?』

 

 これは面白い話が聞けそうだ。そう思ったエストは驚くルナに続いて問うも、返ってきたのは仰天の答え。明らかに普通の恋愛…どころか、まともな状況ではない答えにほぼ全員が戦慄し、慌ててイリゼはフォローの発言をしようとするも、結果は火に油を注ぐ形に。一体何がどうして…と皆が慄き、そんな中で茜だけは一人、頭を抱えていた。

 

「イリゼさん…というか、女神がそんな状況に陥るなんて、相手は一体何者なの…?(ぶるぶる)」

「そんな事をした相手をフォローって…完全にストックホルム症候群じゃない……」

「む…それは違うよイヴ。私はそんな理由で人を思ったり、ましてや助けよう、救おうとは思わない。私が彼を思うのは、私が女神だから。オリジンハートとして守るべきもの、救うべきものが、そこにはあるからだよ」

「イリゼ…言ってる事は格好良いけど、この流れでそんな事言っても情緒が不安になるだけだよ…」

 

 最早心配すらされるイリゼだったが、ふっ…と女神の表情を浮かべると、それは違うと冷静に返す。だがネプテューヌの言う通り、今の流れでは不安を助長させるばかりであり……これ以上掘り下げるのは止めておこう。誰も何も言わなかったが、そんな意思が全員の心の中で一致していた。一方のイリゼもイリゼで、「ほんとに違うのに…」と不服そうな様子であった。そして気を取り直すように、ビッキィが別方向からまた切り出す。

 

「い、イリゼさんといえば、恋愛というより、やっぱり滲み出るお母さん感じゃないかなぁ…と思いますね、わたしは」

「お母さん…イリゼさんが、お母さん…?」

「確かに朝ご飯用意したりお弁当作ったり、母っぽい事はしてきたけど…イリゼって、そこまで母性が強かったりするの?」

「うーん…イリゼがそう呼ばれたのは、割と状況や面子的にイリゼがそういう役回りになりがちだったのも大きいというか……」

 

 思い返せば、あの空間ではそこまでお母さんっぽい訳じゃなかったし…と思いながら、イヴの言葉に答えるルナ。因みにその「お母さん」呼び自体、ビッキィを始め数人が冗談半分で言っていたという側面もあるのだが…それは言わないビッキィだった。

 

「でもまぁ、普段からお菓子作ってくれたり、ご飯のリクエストも笑って受けてくれたり、お弁当なんて一人一人に合わせてたりで物凄く至れり尽くせりにしてくれるから、お母さんっていうか駄目人間製造機的な感じはあるよねー。お隣の女神様に気が付いたら駄女神にされていたー、的な?」

『気が付いたら…?』

「あ、酷い!それはシンプルに反応として酷いや!というか皆わたしが実はしっかりしてる事知らないでしょ!これでも弟を全うに育てた自負があるんだからね!」

 

 それは元からでは…?という視線にネプテューヌは猛反発。一方イリゼは私そうかなぁ、とイマイチピンときていないようであり、イリスから「製造機?イリゼは機械だった?」と彼女らしい疑問をぶつけられる。無論これには苦笑いのイリゼである。

 

「まぁネプテューヌの事はさておき「さておき!?」…そーんなにイリゼに堕落するような魅力があるッスかねぇ?ウチからすれば、割と我の強い性格だと思うッスよ、イリゼって」

「…んー…シノちゃん、今日髪を梳かしてくれたのって誰だっけ?」

「うぇ?今日はイリゼッスね」

「そういえばアイ、さっき靴下が見つからないって言ってたけど……」

「それならイリゼが見つけてくれたッスよ」

「…アイもさ、お菓子作りしてみない?自分で色々作れると、自分好みの味を自前で用意出来たりもするよ?」

「いやいや、何言ってるんスかイリゼ。そんな事しなくても、イリゼに頼めば好きな味が……」

『…………』

「……はっ!?う、ウチはいつの間にか、イリゼに駄女神にされていた…!?」

 

 ぴしゃーん!…と雷が落ちたような顔で愕然とするアイ。あははー、と笑う茜に呆れるイヴ、何故私が悪いみたいに…と半眼を見せるイリゼと、問い掛けた三人の反応はそれぞれであり…流れは続く。

 

「んもう、油断しちゃ駄目よイヴ。そうやって女神を腑抜けにさせて他国のシェアを自分に向けようとするのがおねーさんの策略なんだから」

「くぅっ、抜かったッス…!こうもズボラになるまで、イリゼの目論見に気付かなかったとは……!」

「いや、貴女は元からズボラでしょ……」

「というか、私を悪者にするのは止めてくれないかな…そんな事言ってると、これから二人にはお菓子作ってあげないよ?或いは逆に、ほんとに堕落させてシェア獲得を図るよ?」

「そういう事自然に言えるからお母さん扱いされてたんじゃ…と思ったら、意外と積極的…!?」

 

 本気なの!?割と意欲的なの!?…とルナが突っ込む中、それは困るとイヴ、エストの両名は発言を撤回。だがどうやら二人共冗談で言っていたらしく、あまりイリゼを脅威に感じている様子はなかった。イリゼの方も薄々感じていたようで、二人の返答に嘆息していた。

 

「…まぁ、結論としては油断ならないのがイリゼさん、ってところですかね」

「うん…いや違うよ!?なんでそっち方面で締めようとしたのピーシェ!」

「いえ、なんとなくですが?」

「わー、ぴぃちゃん弄りが鋭いね…ところで、他の皆はどーなの?」

「どう…って、恋愛の話?それならさっき聞こえてたかもだけど、わたしはそんな相手いないわ。いないっていうか、恋愛自体今のところ興味ないし」

「わたしも、そういうのはよく分からないので…」

「わたしも同じくです。…あ、エストさんに、同じくです」

「そこ拘るんだ…まぁ、ビッキィなら花より団子でしょうけども」

「えぇ、勿論。…あれ…?ピーシェ様、それ褒めてます…?」

 

 じーっと隣から見られるピーシェだが、そんな視線はどこ吹く風。気心の知れている間柄だからこそのやり取りに小さな笑いが周囲から零れる…が、逆に言えばそれだけで、ここまで流れるように続いていた会話は遂に停滞の瞬間を迎える。

 

「…あー…もしかして私、話の振り方間違えた…?」

「間違えたというか、人を選ぶ話題だっていうだけだと思うわ。恋愛してない人にとっては語りようがない訳だもの」

「そういえばゆりちゃんも縁遠いって言ってたね…うーん、前の時はなんだかんだで盛り上がったんだけど…あ、そうだ。前の時で思い出したけど、シノちゃんはあれから何かあった?」

「や、何もないッスよ。ウチの周りじゃそれなりにめでたい話もあるッスけど、ウチと恋愛は神次元と信次元位の距離があるッスからね」

「そ、そんななのね…興味云々は別として、アイだって可愛いんだから結構モテそうなものなのに」

「いやいや、自分で言うのもアレッスけど、ウチがモテると思うッスか?」

『うん』

「まあまあな人数から頷かれた…!?」

 

 女神としての信仰ならともかく、と手をひらひらさせながら返すアイだったが、セイツ以外からも頷かれた事で流石に驚愕。一方頷いた面々は、「だよね?」と頷き合う。

 

「セイツさんも言ったけど、アイ可愛いもん。肌すべすべだし、スタイルも綺麗、って感じだし」

「ノリも良いし、マイペースなようで実は割と相手に合わせてくれるもんね、アイ。…まぁ、この際私も認めちゃうけど、アイもアイで我の強いタイプだとも思うけど…」

「ふふふ、折角だし今度お洒落してみない?興味ないなら仕方ないけど、ちょっとお洒落してみるだけでも楽しいものだよ?勿論シノちゃんだけじゃなくて、えすちゃん達も、ね」

「うぇぇ…何かのイベントとか、そういう事ならまだしも、理由なくただお洒落とかほんとウチには似合わないッスよ…」

 

 ルナを皮切りにイリゼ、茜と続くものの、やはりアイは気乗りしない様子。その一方、ネプテューヌは「あ、お洒落の話ならちょっと興味があったりして…」と呟いており、周りには意外そうな顔をされる。

 

「と、いうか…そう言うルナはどうなんッスか?ウチからすれば、ルナだって可愛いと思うッスよ?」

「へ?私?私が可愛いって…いやいやいや、この面子で私がって…私なんて、この中じゃ醜いアヒルの子みたいなものだよ?」

「…つまり、将来的には美人になるって事?」

「そうそう将来の私は…って、そうじゃんこの例えだと違うじゃん……!」

「…ルナは、いつか白鳥になる?」

「しかも勘違いもされちゃってる…!?ち、違うよーイリスちゃん、これは比喩っていうものでね…」

 

 どうも例えを間違えたらしいルナはセイツの返答を受け自分で自分に突っ込んだ後、興味を抱いた様子のイリスに違うよと教えていく。

 そんなルナに対し、周囲は苦笑い。ルナは些か謙遜が過ぎる…或いは周りを自分より高く評価し過ぎな節があると多かれ少なかれ知っているが故に、苦笑し肩を竦めていた。

 

「と、とにかく私は皆程じゃない…と、思う。うん、思うだけなら勝手でしょ…?」

「いやまぁそれはそうだけど…じゃあ仮にそうだとして、ルナちゃんはどんな人がタイプなの?」

「た、タイプ?…あれ、なんか私だけ質問の内容が一歩踏み込んでるような……」

「あ、気付いた?ルナちゃんだったら、興味ない、で終わらせないで、それはそれとして答えてくれるかなー、って思ったんだ」

「えぇぇ…?…そんな、タイプだなんて…。…………」

「…あ、考えるんですね、ちゃんと…」

「ルナちゃんって基本律儀っていうか、良い子だもんねぇ」

 

 期待の眼差しと共に訊いてくる茜に押され気味のルナは、困ったように言った…後、目を閉じて思考開始。その様子にディールとネプテューヌが言葉を交わす中、ルナは黙って思考を続け…目を開ける。

 

「…例えば、今回いる男の人達の中でなら…ズェピアさん、かなぁ」

『具体例が出てきた…!?』

「あ、あれ!?私何かまた間違えちゃった!?」

「い、いや、間違えたというか…にしても、彼…?彼は、その…物腰が柔らかいのは間違いないけど、少し胡散臭いというか……」

 

 斜め上を行くルナの回答に、そしてイヴの何とも言えない表情での言葉に、再び周囲は苦笑い。胡散臭い、という言葉に苦笑が出た辺り、分からない事もない、というのが総意らしく…されど芝居掛かった言動をし、常に瞳を閉じている吸血鬼である事を考えれば、それも無理からぬ話というものだろう。

 

「で、でもほら、ズェピアさんって紳士的ですし、家事も出来ますし、そういう人ならパートナーになった後も色々と困らなくて済みそうかな…って……」

「え、そういう理由なの…?…まぁ、それも大事だとは思うけど……」

「あ、後、優しいですし…えぇと、見た目も良いですし……」

「見た目がおまけ感覚…流石の彼もそれには苦笑いしそうな気が……」

 

 目を瞬かせるイヴと、更に回答を重ねるルナ。しかしやはり、恐らく異性の場合手放しに喜べる内容ではない為に、ビッキィは頬を掻きながら呟き……

 

「むむ…だったら同性なら良かったって事…?…同性なら……」

((…え、今見られた気が……))

 

 ちらり、と一瞬見られた。見られた気がする。そんな風に感じた二名、イリゼとピーシェは、何度も目をぱちくりとさせていた。

 

「いやぁ、相変わらずルナは時々びっくりさせてくれるッスねぇ。…しかし、紳士って意味じゃワイトも中々なものだと思うッスよ?」

「…アイ貴方、ああいうタイプが好みだったの?」

「いんや、紳士云々で言うならってだけッス。…というか、意外と興味津々ッスね、イヴ」

「へ?…別に、そんな事は……」

「いいじゃないイヴ、女の子なんだからこういう話に興味を持ったって何もおかしな事はないわ」

「そーそー、セイツみたいにどこ投げてもストライク取れそうな人…じゃなく女神だっているんだから、興味持つ位普通だって!」

「いやネプテューヌ、流石にわたしだってストライクじゃない相手はいるわよ…ロボットとか、某13の機関員とかは、興味ないし」

「そんな例しか出てこない時点で、十分ストライクゾーンが広過ぎると思うんだけど…」

 

 至極冷静なエストの指摘。流石にこれにはセイツも返せず、イヴもイヴで興味あると思われた事を恥ずかしそうにしていた…が、このままでは弄られると思い、咳払いをして話を逸らす。

 

「そういえばエスト、貴女さっき『今のところ』って言ってたわよね。それは、前は何かあったって事?それとも単なる言葉の綾?」

「あー、言われてみるとそうだったわね。…そんなとこまで細かく聞いてたなんて、イヴってやっぱり……」

「そ、そう言って誤魔化すのはどうなのかしら…(誤魔化すなんて、思いっ切りブーメランね…振る相手を間違えたわ……)」

「えー……ま、言葉の綾よ。けどまぁ、どういう人がタイプかって言われたら…活発なのも嫌いじゃないけど、パートナーなら落ち着いてる方が良いわね。可愛げもある方が良いし、でもなんだかんだ芯は強くて…うん、基本は頼られたいけど、いざって時は頼れる相手とか……」

「エスちゃんって、そういうタイプが好きなんだ…。…わたしは…落ち着いてる人も好きだけど、活発な人も安心出来るかな…可愛げとか、頼ってほしいってところは同意で…芯は…強い弱いっていうより、パートナーなら無理せず、わたしと共有してほしい…みたいな感じで……」

((落ち着いてるのと、活発な人…可愛げはお互いで、どっちも頼ってほしい…あれ、二人が言ってるのって……))

『……?』

 

 んー、と頬に指を当てて考えるエストと、軽く握った手を口元に当てて考えるディール。二人の語りを聞いた周囲は、ひょっとして…と両者を見やり……一方の二人はといえば、周りからの視線の意味が全く分からず、二人揃ってきょとんと、鏡合わせのように小首を傾げていた。

 

「ふっふっふ…こうなってくると、ビッキィも言わなきゃじゃないかなー?」

「い、いやだから、わたしは特に興味が……」

 

 それから視線はネプテューヌによってビッキィへ。そうなったところで、上手い事「色々語った」風な雰囲気を見せる、或いはそうなっているセイツやアイの様な立ち回りをすれば良かった、と思うビッキィだったが、時既に遅し。歯噛みすれども状況は変わらず……観念したように、彼女はぽつり。

 

「わ、わたしは…自分の事を受け入れてくれて、支え合う事が出来る人…とか……」

『へぇ〜』

「うぐぐ…ほら言った、言いましたからねっ!」

 

 真っ赤になった顔で、もう自分の番は終わりだとばかりにビッキィは言い切る。このように恥ずかしがるからこそ、周りから生暖かい目で見られるのだが…往々にして、そのような状況となった者は落ち着いてそこまでの思考をする、という事は出来ないものである。

 

「いやぁ、やっぱり初々しいのは良いよねぇ。それじゃあ後は……」

 

 特ににまにまとしていた一人、ネプテューヌはうんうんと頷いた後、後一人…と振ろうとする。振ろうとし…そして、気付いた。その後一人というのが、イリスである事に。

 

「……?ネプテューヌ、どうかした?」

「えぇ、っと…そ、そういえばイリスちゃんもさっき、ルナちゃんと何か話してたね…」

「うん。イリスは皆好き。皆も、そう?」

「それは……」

 

 純粋な、無垢なイリスからの問い。それを受けたネプテューヌは…否、その場の全員が顔を見合わせ…そして、言った。勿論、自分たちもそうだ、と。

 

「皆も、皆が好き。好き同士。それは、とても良い事。……はっ」

「どうしたの?イリスちゃん」

「好きを知るのは、嬉しい。だからここで話した事、皆にも伝えてくる」

「皆……って、まさかカイトさん達…!?ちょ、ちょっと待った!イリスちゃんストーップ!」

 

 何か思い付いた様子のイリスへ、エストが問う。問われたイリスは思った通りの事を話し、立ち上がって軽快に駆け出す。あまりにも自然な流れだった為、一同それを見送りかけたが…その意味を理解したディールは慌てて制止し、他の面々も同じくイリスを引き止めた事で、突発的に起きた危機(?)は無事回避されたのだった。

 

「あ、危なかった…危うく変な勘違いとか、お互い気不味くなるような誤解が生まれるところだったね…」

「無邪気過ぎるのも考えもの…でも、ないわね」

 

 危ない危ない、と茜は袖で額を拭うようなジェスチャーをし、彼女の発言にイヴは頷く…が、すぐに発言を撤回する。それから何故止められたのだろう、という疑問を周りにぶつけ、その回答を受けている真っ最中のイリスを見て、小さく笑った。無邪気である事、純粋である事、それは何も間違ってはいない。そこから知り、学ぶ事で、成長していくのだから、と。

 

「…そういえば、というかよくよく考えたら、恋バナなのに実際に彼氏や夫がいる人からの具体的な話を聞いてなかったわ…くっ、わたしとした事が……」

「あ、気付いちゃった?でもさー、それって要は惚気話だよね?セイツにとってはそれも楽しいのかもしれないけど、他の人にとっては惚気話なんて遠慮したいものじゃない?」

「確かに…じゃあ、今度個人的に頼むわ」

「はいはーい、私ならそれいいよ〜」

「…何この会話……」

 

 突っ込み役不在の、そのままに進んでしまった会話。それを聞いていたピーシェは呆れた表情を浮かべており…それにはネプテューヌも苦笑いだった。そして後々本当に、個人的に茜から惚気話を聞いて心を踊らせるセイツだった。

 

「む、むむ…好き、恋、愛…どれも、難しい…イリスには、まだ難解な話……」

「だいじょーぶよイリスちゃん。よく分かってないのはディーちゃんもだから」

「…確かにそうは言ったけど…ならエスちゃんは、ちゃんと答えられる?エスちゃんだって、明確な説明をイリスちゃんに出来てた訳じゃないよね?」

「それはまぁ…そうだけど……」

「別に良いんじゃないッスか?恋だろうと愛だろうと、友達や家族への思いだろうと、特別な人への気持ちだろうと、相手を好きだと思って、大事にしたいと感じてるなら、わざわざ区別する必要なんかないッスよ、多分」

「深い様な、暴論の様な……う、うーん…?…どうしよう、わたしもよく分からなくなってきた…」

「私も…って、あれ?でもそれだと、家族としての好きと、異性への好きを同じにしちゃってる…っていうか、禁断の恋を肯定する発言っぽくもあるような……」

「だからウチはそういうのじゃ…はぁ、要らん事言ったッス……」

 

 口は災いの元、それを感じてアイは嘆息。その反応に小さく笑う者もいれば、何の話?…と小首を傾げる者もいる訳で、そこで現れたのは関係の差。一堂に会する形になったとはいえ、信次元で多少なりとも共に時間を過ごしたとはいえ、それぞれの関係性、いつどこで出会い、どんなやり取りや経験をしてきたのかには依然として…否、過去である以上どれだけ今を重ねようとも変わる事のない差が、違いがあり……されどもそれは些細な事。そのような違いがあろうとも、共にこうして他愛のない話に花を咲かせる事が出来るのだから。…と、変に深く受け止める事はなく、受け止めたとしてもそれは何となくの範疇で、各々は今この時を感じていた。

 そうして何となく感じ始める、話の終わり。しかしそれは、十分に話せた上での終わりであり…そんな中で先程から妙に黙っている者が一名。それに気付いたディールが問うと、彼女は言う。

 

「……イリゼさん?何か、考え事ですか?」

「あ…うん。イリスちゃんじゃないけど、私も皆を…カイト君やワイト君、影君やグレイブ君や愛月君やズェピア君…皆の事を、それぞれに好きだなぁ…って」

「あぁ……へっ?」

「ん?……あ、ち、違うよ!?好きってそんな、深い意味じゃないよ!?…あぁいや、深い意味でも好きではあるけど、それは恋愛的な好きじゃなくて…えーと、皆も!ここにいる皆も、深い意味で好きだからねっ!」

 

 最後の最後で投下された、爆弾(?)発言。イリゼ自身は強く否定しており、続く言葉で一応の理解は各々出来たのだが…ある意味見境のないスタンスとも取れるその発言によって、セイツ共々「似た者姉妹だなぁ」と思われるイリゼなのであった。




今回のパロディ解説

・「〜〜愛を超えて、憎しみ〜〜」、「最終的に宿命に〜〜」
機動戦士ガンダム00に登場するキャラの一人、グラハム・エーカーの名台詞の一つのパロディ。これは…ギリギリ名台詞、でしょうか。それともやはり迷台詞でしょうか。

・「お隣の女神様〜〜されていたー、的な?」
お隣の天使様に気が付いたら駄目人間にされていた件のパロディ。そうです、天使様ではなく女神様です。そして相手も駄目人間ならぬ駄女神でした。

・醜いアヒルの子
童話、みにくいアヒルの子の事。正式には「醜い」は平仮名ですね。説明するまでもない知名度の作品だとは思いますが、一応パロディなので解説に入れました。

・某13の機関員
キングダムハーツシリーズに登場する組織、XⅢ機関及び、その機関員であるノーバディの事。ロボット含め、セイツの対象外かのは、心や感情のない存在だから…ですね。
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