超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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第二十一話 仮想の世界で

 私がこれまで信次元の外で、信次元じゃない場所で出会い、繋がりを紡いできた皆と過ごす日々。自分の意思で招いた、信次元での時間。それは穏やかで、楽しく、充実していた。…まぁ、時には穏やかとはとても言えないような事もしてきたけど、それも含めて『日常』と呼べる毎日を、皆と過ごしてきた。

 それだけでも、良かったと思う。というか、良かった。でも…それだけじゃ、終わらない。今は、今回の事は、私達の交流を介して幾つもの次元や世界が繋がりを持つという事で……その機会を何にも活かさないのはあまりにも惜しい。…そう思ったのが、切っ掛けだった。

 

「皆、準備は良い?肩の力を抜いて、気を楽にね?」

 

 場所はプラネテューヌのプラネタワー。ある一室にて、私は皆に呼び掛ける。皆からの返答を受け、私は機材へ身体を預ける。

 

「それでは、起動します。具合が悪くなったり、そうでなくても違和感があったりしたら、すぐに言って下さいね?」

 

 全員の準備が出来たところで、最終確認を兼ねたネプギアの声が聞こえてくる。それにも返答を、今度は私も言葉を返し……目を閉じる。

 そうしてネプギアの操作により、機械が起動。私にとってはそこそこ経験している、皆にとっては殆どが恐らく始めてであろう感覚に、私達は包まれて……

 

『おぉぉ……』

 

──数十秒後、私達は真っ白な空間にいた。どこを見ても白一色な、どこまでも広がっていそうな空間に。

 

「これが仮想空間…なんか正に、キャラメイクとかチュートリアルとかをやりそうな場所だよね!」

「全面真っ白な空間……ちょっとあの空間を思い出しますね…」

「なんというか…ヤック・デカルチャーだね」

 

 驚きと興味の浮かんだ表情で見回す皆。中でもネプテューヌは興味津々で、一方ディールちゃんは何ともいえない顔をしていた。その表情と言葉に、茜、ルナ、アイ、カイト君、ワイト君の五人は…同じ経験をした面々はうんうんと数度頷いていた。でもって何故か、ズェピア君は全然違う言語を口にしていた。…え、ズェピア君吸血鬼だけじゃなくてその要素もあったの…?

 

「…凄いわね。説明は受けていたけど、ここまで現実と変わらない感覚で身体を動かせるなんて……」

「今は場所が特殊過ぎるから分かるけど、周りも普通だったら仮想空間だって事も忘れそうかも…」

「あー、確かに。リアルな夢の中にいるのと近い感じかしら」

 

 イヴは左右の手をぐーぱーとし、ビッキィは軽く歩き回る。エストちゃんは魔法が使えるかどうかを試していて…掌に小さな氷を作り出せた事で、大した技術だわ、とこの空間、そして恐らくはこの空間を作り出している機材に対しても感心していた。

 そう。ここは、仮想世界形成装置によって作り出された、電子の世界。全面白の空間となっているのは、そこが待機や準備の為の場所だからで…けれどここは、これまでに私が経験してきた、またワイト君に軍のシミュレーターという形で試してもらってきたものと同じ…って訳じゃない。

 

「皆さん接続は大丈夫ですか?おかしいと感じる事はありませんか?」

「大丈夫だ、問題ない」

「恐ろしく違和感のないネタ発言…流石はえー君、私じゃなきゃ見逃しちゃうよ!」

「そんな事まで褒めるんですね、貴女は…後、さらっとネタを重ねている茜さんも中々凄い気が……」

「あはは…取り敢えず皆大丈夫みたいだよ、ネプギア。でも、悪いけどモニタリングはお願いね?」

「はい、勿論です!こんな経験、滅多に出来ませんからね!」

 

 アナウンスの様に聞こえてくる声に影君が返答し、そこへ茜とピーシェが続く。私の言葉にネプギアが嬉々とした声を返せば、皆はネプギアの「らしい」様子に苦笑いを漏らす。

 

「それにしても、本当に凄いよね。この空間もそうだけど、これが色んな次元から…えと、複合的に形成出力…?…してるんだっけ…?」

「あ、悪い。そこんところは俺よく聞いてなかったから分からねぇや。ま、取り敢えずあれだよな?」

「うん、アレだね」

『科学の力ってすげー!』

 

 疑問符を浮かべつつ問い掛けるルナに対し、グレイブ君は肩を竦めながら返答。それからグレイブ君は愛月君と顔を見合わせて、やっぱこれだよね!…とばかりの言葉を口に。聞いた限りじゃ割と普通の言葉っぽいけど、何やらカイト君とズェピア君だけは感慨深そうな顔で二人を見ていた。

 

「さてと、じゃあおさらいだよ。別に覚えてなきゃいけないって訳でもないけど、分かっているに越した事はない…と、思うからね」

「おさらい、大事。おさらいをすると、知識の質が上がる。質が上がるという事は、より賢くなれる。…ので、イリスはちゃんと聞く」

「ふふ、偉いねイリスちゃん」

 

 大変殊勝な態度のイリスちゃんを撫でれば、イリスちゃんは心地良さそうにした…ような、気がする。そして、撫でた手で感じた髪の感覚は、現実で撫でた時の感覚と遜色ない。

 

「こほん。まずこの空間だけど…ここは仮想空間、シミュレーターで構築、形成された電子の世界。分かり易く、且つ身近な例で言うなら……」

「ゲームの中、だろ?」

 

 カイト君の言葉に、首肯を一つ。実際仮想世界形成装置は、ゲームの様に使う事も…というか、ゲームっぽい設定で仮想空間の構築を行えば、そういう使い方をする事も出来る。…まぁ、ゲームとして使うには、出来る事…要は自由度が高過ぎて『ゲーム』という枠組みに落とし込むのが大変だったり、開発にも運用にもゲームとするにはコストが高過ぎるとか、色々問題があったりもするけど。

 

「そう、例えるならここはゲームの中。でもさっきルナが言った通り、今回は初めての試みを色々してるの。具体的な話は長くなるし私もどこまで説明出来るか分からないから省略させてもらうけど…端的に言うなら、これから皆に体験してもらうのは、各次元にも協力してもらう事で作り出す、仮想空間を超えた仮想空間…言うなれば、新たなる世界の創世、その第一歩……なんて、ね」

 

 最後は少し冗談めかして、締め括る。これは少し誇張し過ぎたかもしれないけど…各次元にも協力してもらって、複数の次元から一つの仮想空間を作る、という大掛かりな事をしているのは事実。

 そして、その為のシステム構築においては、私達の体験が…あの空間を作り出した、くろめ達の経験も少なからず役に立っている。まあだからって、今いる場所があの空間と似ているのはそれが理由…みたいな事は特になかったりするんだけど。

 

「なんと言いますが…改めて聞いても、壮大な話ですね。…しかし、何故それの体験を私達に?少なくとも、私に関しては他にもっと適任者がいたのでは?」

「ところがどっこい、そうでもない…というより、ワイト君含めて、別次元や別世界の住人である皆こそが適任なんだよ。本来交わる事のない次元同士から複合的に形成される仮想空間…それを安定させるのには、それぞれの次元の人や、信次元にとっては存在そのものが特異になる別世界の人を仮想空間へ内包するのが良い…らしくてね。だから皆に、協力を頼んだの」

「言ってる事は分かるッスけど、よく分からない性質ッスね。後、ところがどっこいって……」

「よく分からないからこそ、やってみて、データを集めて、解析したり機械だけで安定させられる方法を探したりするって事だよ」

 

 別次元からの接続単体だと干渉し合ってしまうけど、そこにそれぞれの次元の人が挟まる事で、『次元A─次元Aの人─次元Bの人─次元B』という形での接続になって、干渉の度合いが軽減される…そんな仮説もあるらしいけど、実際のところは完全に謎。ただまぁ、全く新しい試みな以上、よく分からない事柄があるのは当然でもあって……そんな事を考えつつ、アイの後半の指摘に関しては、やんわり流す私だった。…だって、何となく言っただけだし…。

 

「ブラックボックス、というやつか。まあ、発明ってのは暗闇を手探りで進む様なものだからな。分からない事があるのは良いが…安全性に関しては、どうなんだ?」

「そこは心配しないで…とは言い切れないけど、ネプギアを始めモニタリング体制はしっかり整えてあるし、色々安全性確保の為のシステムも組み込んでもらってるし、最悪の場合に備えた強制接続解除とか緊急停止プログラムも、複数のパターンで用意してあるから、余程の事がない限りは大丈夫だって保証するよ」

「…余程の事がない限りは、ですか…」

「まぁ、ね。ただ、絶対的な安全に関しては確保出来ないというか、それに関しては皆を信次元に招く事自体にも言える訳だからね…」

 

 僅かに眉を寄せたピーシェの呟きに、私は肩を竦める。残念ながら、絶対的な安全の保証は流石に無理。例えば極端な話、今この時も誰にも気付かれない形で何者かが信次元を破滅させようとしているかもしれないし、もっと言えば「予測不可能な事故」はどんな時、どんな場所でも起こり得るものなんだから。

 とはいえ、徹底的に回避していたら何も出来なくなるような偶発的事故と、別にやらなくてもいい事に潜む危険とを同列に扱うのもおかしな話。

 

「何かあっても大丈夫なよう、万全を期す事はわたしからも約束するわ。けど、そもそも皆からすれば背負う必要のないリスクである事も事実。だから……」

「うん。皆が気乗りしないなら、体験はここまでにしてもらって構わないよ。けど、もし協力してくれるなら、仮想空間ならではの経験を私達は提供する。…と、いう事で…どうかな?皆」

 

 セイツの言葉に頷き、皆の事をゆっくりと見回す。これは厳密には、質問ではなく確認。今日の朝、朝食の時点で、実験でもあるこの体験の事は軽く話していて…けれど百聞は一見に如かず、最終的な判断は直接体験してもらってからの方が良いだろうと思って、それが済んだ今私は皆に今一度訊いた。…まあ、直接体験といってもまだ、仮想空間に入っただけではあるんだけどね。

 

「どうかと言われれば、まぁ…危険はないに越した事はないと思いますけど……」

「こんな経験滅多に出来ないだろうし、雑な安全管理をしてるとも思えないのよね。…というか、雑な事して何かあったら、一番困るのは信次元な訳だし?」

 

 少し考えてからディールちゃんが言い、けれど、とエストちゃんが返す。今の二人のような呟きや軽いやり取りが、皆からちらほらと出て、その間私とセイツは黙って待った。そして……

 

「よっし、ここは分かり易くいこっか!このまま超絶面白体験がしたい人は〜…サムズアップ!」

「ちょっ、ハードル上げるのは止め…というか何故に挙手じゃなくてサムズアップ…?」

 

 何故か仕切るネプテューヌの呼び掛け。それを受けた皆は、力強くだったり苦笑いしつつだったりとそれぞれの形でサムズアップをしてくれて…結果は、満場一致。そんな皆に、私とセイツはありがとうの言葉を返し…ならばと続ける。

 

「それなら、始めよっか。ネプギア、準備は大丈夫?」

「出来てますよ。後はそちらから合図をくれれば、それに合わせてフィールドを発生させます」

「じゃあ、合図は…誰かやりたい?」

「はいはーい!はい、はい、はいはいはい!」

「何やらあるあるネタを言い出しそうな主張だね、ネプテューヌ君…」

 

 予想通り、ネプテューヌは手を挙げ自分がやりたいと主張を行う。ズェピア君の返しに私達も苦笑いし…他に合図役立候補者がいなかった事で、合図を出すのはネプテューヌに決定。

 

「ふっふっふー、こういう時にはやっぱりあの台詞だよね!」

「確かに仮想空間と言ったらあれッスよねぇ」

「さぁここからだ、って感じもして良いもんな」

「……?イリスには分からない。でも、アイとグレイブには分かった?…つまり二人はとても賢い?」

『そう(ッスよ・だぞ)』

「わぁ、二人共平然と肯定を…。…ま、まあここは深く考えなくても良いんじゃないかな、イリスちゃん」

「それじゃあいくよ!仮想空間、仮想世界、まだ見ぬ世界を顕現させる為の言葉を!こほんっ!」

 

 謎の小ボケが挟まった後の、やる気一杯なネプテューヌの咳払い。そして、きりっとした表情を浮かべたネプテューヌは、大きく息を吸い……言う。

 

「──今こそ示せ、我が真に臨む世界を!」

『あれ!?なんか想像してたのと違う!?』

 

 そっち!?いや、そっちというか…それはそんなにぴったりな台詞でもなくない!?確かに世界云々で多少関連性はあるけども!…みたいな事を思いながら突っ込む私と、突っ込みのハモる私達。…ただまぁ、合図の台詞は何でも良い訳で……数秒後、真っ白だった空間は変わる。書き換わるように、塗り替えられるように、白一色だった空間は色付き、次々と物が実体化していき…十数秒後、私達がいるのは仮想世界内に構築された街の中だった。

 

「…データ上の事とはいえ、壮観な光景でしたね…」

「同感です。それでイリゼさん、ここでは何を?」

 

 凄いものだ、とワイト君が呟き、同意したピーシェの視線は私に向かう。その視線に私は頷き、言葉を返す。

 

「こほん。ここでやれる事は沢山あるけど…やる事は一つ!皆、この仮想空間で…仮想空間だからこそ出来る形で……勝負だよッ!」

 

 仮想の、けれど現実と変わらない感触の地面を踏み締め、右腕を横に振り抜き、口角を上げて言い切る。ふふ…さぁ、始めようか。私達による、仮想空間だからこその…勝負ってやつをね!

 

 

 

 

「という訳で、端的に言えばこの仮想空間…というか街の至る所に用意された手段を使って、或いは単純に確保していく事でポイントを稼いで、最終的に一番稼げた人が勝利、って事よ。分かり易くて良いでしょ?」

「あっ、即バトルって訳じゃないんですね…無駄にファイティングポーズ取っちゃった……」

 

 ばっ、と威勢の良い勝負宣言をイリゼがしてから数分後。わたし達は取り敢えず近くのレストランに移動し、そこで席に座って説明を開始した。

 

「あれー?おねーさんが勝負だって言ってから今の説明が入るまで、移動もしたしその分の時間あったわよね?なのにどうして、今ファイティングポーズを解除したのかしら?」

「うっ……そ、それはその、メタ的な視点から来る発言というか、そこに落とし穴があったというか…」

「そこ突っ込むのは止めてあげなよエスちゃん…ビッキィさん、エスちゃんがすみません」

「あ、は、はい…はい……」

「ビッキィ、可哀想に…」

 

 意地の悪い笑みを浮かべたエストちゃんの指摘。それでビッキィが言葉に詰まれば、ディールちゃんが代わりに謝る…ものの、その発言は傷口に塩を塗るようなの。実際ビッキィはしゅーんとなってしまい、同情するピーシェに肩へと手を置かれていた。…因みにわたしは、そんなビッキィの心境を想像してなんだか楽しくなりそうだったけど、それは秘密……え、バレてる?どうせ皆気付いてる?そんな事……まぁ、否定出来ないわね…。

 

「何となくは分かったけど、稼ぐってまさか、バイトするとかなのか?後、単純に確保ってのは、道端にポイントが落ちてるとか、そういう感じか?」

「えぇ、バイトも方法の一つよ。けど他にも、街中で依頼を受けてその報酬で稼いだり、賞金のある大会で勝ったり、稼ぐ手段は多種多様に用意してあるわ。で、単純に確保っていうのは……」

「樽とか壺とかを片っ端から叩き割って手に入れるんだよね!」

「…うん、まぁ、そういう感じに隠されてるのを見つける形ではあるね……」

「因みに叩き割ってアイテムを得るイメージが強い樽だが、壊さず中を調べる形で得るパターンもあるよ」

「ズェピアさん…?それは何の説明なの…?」

 

 腕を組んだカイトの問いに答えていると、ネプテューヌに割り込まれてしまった。…まぁ、そっちはそっちでイリゼが答えてくれたから良いけど。そして明後日の方向を向いたズェピアは、誰に対して言っているのか分からない補足を口にしていた。愛月君の言う通り、何をしているの…?感が凄かった。

 

「現実なら身分証明だったり資格が必要だったりするものだけど、ここじゃそういうのは関係ないわ。特定の大会で上位に入らないとエントリー出来ないより高位な大会…みたいなのはあるけどね。さっきカイトが言ったけど、ゲームみたいな形でやる事が出来る、と思って頂戴」

 

 それはともかく、わたしは説明を続ける。ゲームを例えに出したのは、これが分かり易い例だから、というのもあるけど、それだけじゃない。今回の仮想空間が、ゲームをコンセプトにしているのもまた理由の一つ。

 

「…セイツ様、それにイリゼ様。そもそもの話ですが…どうして勝負という形に?」

「それは、仮想空間内で色々な事をする為には、様々な展開や行動を試すには、勝負という形を取るのが一番だと思ったからだよ」

「あぁ…確かにそれはそうだね。全員がそれぞれ別の何かを試していれば、それだけで多くのデータが得られるだろうし、当然全員で勝負という事であれば、一時的な共闘や、場合によっては裏切りも選択肢に入ってくる。これは共闘一択となる、協力して何かをする…という形では得られないデータだろう」

「その通りよ、ズェピア。まあでも勝負って要素自体はほんとにゲームみたいなものだし、そう気負わなくても大丈夫よ。一発逆転要素もあるし、ね」

 

 次なる質問は、ワイトからの真っ当なもの。それにイリゼが答えれば、同意しながらズェピアがより細かく話してくれて…察しの良さが凄いのよね、彼。…いや、彼というか、男性陣の年長組三人は、かしら…。

 

「他に何か、疑問や質問はある?」

「この勝負に、必勝法は?」

「ないだろうし、仮にあってもそれは教えられないよグレイブ君…」

「ない『だろう』って事は、何も全部把握してるって訳じゃないんッスね」

「ご明察。わたし達も概要は理解してるけど、細かいところまでは知らないわ。知らないというか、片っ端から把握しようとするとキリがないというか…それに全部知っていたら、わたしとイリゼのワンサイドゲームになっちゃうでしょ?」

『え……?』

『何その反応!?酷い!』

 

 半分は冗談として、わたしがウインクと共に言った言葉。でもそれに対する反応は、強気な態度でも歯噛みでもなく、全員揃っての「何を言ってるの?」感満載な訊き返しで…イリゼと二人、わたしはちょっとの間しょげた。

 

「イリゼ、セイツ、よしよし」

 

…で、その後イリスちゃんに撫でられた。優しさが沁みるわ…主に、心の傷口に。

 

「…こ、こほん。じゃあ、他には……」

「なら、俺からも一つ」

「うん、何かな影君」

「この場において、稼ぐ方法は様々と言ったな。聞いた限り、ルール…いや、システム上出来ない事はあっても、逆に言えばそれ以外なら何でも出来ると考えて間違いないのか?」

「そういう事ではあるけど…具体的には、何を考えてるの?」

「単純な事だ。勝負…対戦ゲームなら、直接ぶつかって相手から奪うのも定番だろ?」

 

 あぁ、そういえば。彼の問いで、わたしはそう思った。そういえば、そこに言及していなかった、と。そして影に問われたイリゼは…こくりと頷く。

 

「勿論あるよ、直接対決での奪い合いも…ね。けど、色々制限があると思っておいて。例えば不意打ちが出来るエリアは限られていて、そこ以外だと決闘みたいに勝負を申し込まないと出来ないとか、不意打ち出来るエリアでもポイントに大きな差がある場合は、負けてる側からしか仕掛けられないとかね」

「まあ、そうでしょうね。その辺りはリアリティより遺恨を残さない事を優先した…ってところかしら」

「だよねー、じゃなきゃギスギスしちゃうだろうし、直接対決以外で稼ぎたい人にとってはデメリットばっかりになるもんね。じゃあさじゃあさ、わたしからもしつもーん。勝負って事は…勿論、優勝者への景品はあるんだよね!?」

 

 それはそうだ、と肩を竦めたのはイヴ。うんうんとそこにネプテューヌも続いて、更にネプテューヌは食い気味にわたし達へと訊いてきた。あるよね、ない訳がないよね!…とばかりの雰囲気とテンションで。…景品、景品ねぇ……。

 

「…イリゼ、どうする?」

「んー……じゃあ、優勝者には特別に、土地と別荘でも用意する?」

『別荘!?』

「あー、悪くないかもしれないわね」

『しかも肯定的…!?』

 

 顎に人差し指を当てて言ったイリゼに対する、皆からのぎょっとした反応。わたしが前向きに検討するみたいな声音で返答すると、更に皆はぎょっとしてわたし達の顔を交互に見る。…ふふ、さっきのお返しが出来たわね、イリゼ。

 

「べ、別荘って…どーしよえー君、夫婦の別荘なんて出来たら私嬉しくなっちゃうよ!?」

「その反応は色々おかしくない…!?…え、えっと…イリゼ、それは本気なの…?冗談じゃなくて…?」

「流石に即決はしないけど、割と真面目に選択肢としては考えてるよ?」

「…セイツさんも、それでいいので…?」

「構わないわよ?嬉しくはないけど、神生オデッセフィアにはまだ土地が余ってるし、空き家もそれなり以上にあるもの。それ等を遊ばせておくよりは、何かしら活用した方が良いでしょ?」

 

 ルナとピーシェにそれぞれ呼ばれてわたし達は答える。これは、わたし達だから…他でもない神生オデッセフィアの女神だからこそ出来る選択肢。女神だからこそ、やる価値も感じる発想の一つ。

 

「いや、でもそんな土地って…流石にそれは、皆気が引けてしまうのでは…?後、神生オデッセフィアの別荘じゃ、気軽に来る事も出来ませんし……」

「なら、賞金1000万とスポンサーからの副賞とか?」

「それだとなんか、お笑いのチャンピオン決めるみたいになるな…というか、スポンサーって誰だ…?イリゼとセイツか…?」

「仮想空間の中での勝負ッスから、開発とか出資をしたところもスポンサーになりそうッスねぇ。…というかイリゼ、そういう阿漕な手法は守護女神の先輩として感心しないッスよ?」

「あこぎ…?」

「愛月、イリス知っている。お店で見た事がある。六本の弦が付いていて、それを弾く事で鳴らす楽器の……」

「いやそれはアコースティックギターだから」

 

 頬を掻きつつディールちゃんが言えば、イリゼが返す。その後はカイトが軽めに突っ込んで…腕を組み、軽く呆れた様子を見せるアイがイリゼに指摘してきた。それはそうと、勘違いしたイリスちゃんにエストちゃんが突っ込んでいた。手の甲をイリスちゃんの胸元に当てるようにして、所謂定番の突っ込みスタイルで腕を振ると、当ててもいないのにどこかから「びしっ」という音が聞こえた。…効果音演出のシステムでもあるのかしら…。

 

「えぇと…あの、わたしもよく分からないんですけど…イリゼさん、阿漕というのは?何か企んでたんです?」

「いやぁ、まぁ…企んでたと言えば企んでたかな。…よく分かったね、アイ」

「理由はどうあれこれは内輪の勝負。なのに土地と別荘なんて、豪華過ぎて逆に困るものを本気で景品にしようだなんて考える程、イリゼが天然じゃないのは分かってるッスからね。大方別荘をあげる事でそれを理由に定期的に神生オデッセフィアへ来てもらう事、もっと言えばそれを機に、次元間の交流をより深める事が目的なんじゃないッスか?」

「ほ、ほぼほぼ正解だよアイ…いや、ほんと鋭いね……」

 

 軽い調子でアイは語る。ほんとに声音的には軽い調子なんだけど…内容は、全く以って鋭く正確。わたしが予想したのと大体同じで…恐ろしいわね、ほんと。

 

「…ま、ウチはそれでも良いッスけどね。来なきゃいけない理由もなし、あって困るものでもなしッスから」

「あ、俺も別荘賛成だぞ。やっぱチャンピオンたるもの、秘密基地だけじゃなくて別荘も一つや二つは欲しいしな」

「さっきはああ言ってたけど、ディーちゃんも出来れば欲しいんじゃない?アイが言ってた通り、別荘があればそれを理由に来られるでしょ?」

「や、別にわたしは…。…今回みたいに、教会に泊まらせてもらえばいいだけだし…逆にイリゼさんが来た時も、教会に泊まった訳だし…」

「あー、うん…来る事自体は否定しないのね…」

 

 バレてしまった目論見だけど、最初の驚きが段々収まってきたのか、肯定的な声も聞こえてくる。というか身も蓋もない事を言ってしまえば、アイの言う通り、貰うだけ貰って放置しておけば良いだけの事。だって、こっちの都合で与えておいて管理維持を強要するなんて事わたしはしないし、イリゼだってする訳がないもの。

 

「…別に、今決定する必要はないんじゃないか?土地と別荘が構わないなら、大概の事は出来るって事だろう?無論、常識的な範囲…ではないんだが、土地と別荘っていうのは……」

「言われてみればそれもそうね。じゃあ、景品は暫定的なものにするとして…後説明するべきなのは、施設関連かしら」

 

 そう言って、わたしはちらりとイリゼを見る。そのイリゼから小さい首肯を受けて、わたしは説明を続ける。

 

「このレストランみたいに、使う事の出来る施設は色々とあるわ。稼ぎに繋げる事は勿論だけど、飲食店ならポイントを使って食事する事も出来るわよ?勿論、味は感じても現実の身体が満腹になったりとかはしないけどね」

「へー、じゃあ500ポイントあるから、ここでアイス頼もうと思えば頼めるって事か?」

「うん?グレイブ君、君はいつの間にポイントを…?」

「拾った」

 

 それ、誰かの落とし物じゃ…?という雰囲気で皆から見られるものの、当の本人はどこ吹く風。グレイブ君も中々メンタルがタフよね…実際ポイントは拾って稼ぐ事も出来るし、グレイブ君はルールに則った行為をしただけだけど。

 

「うーん…それって意味あるのかな…?ここは現実じゃないんだから、食事しなくても動けなくなったりはしないんだよね?」

「つまり、娯楽としての機能に特化してるという事だね。食事は人間の三大欲求の一つなだけあって、形だけでもするのとしないのとでは結構違うものだよ、ルナ君。それに恐らく、わざわざ形だけの食事システムを組み込んだというより、元々仮想空間に食事システムがあったのではないかな?」

「その通りよ、ズェピア…って、さっきも同じ反応した気がするわ…。…こほん。彼の言う通り、ここはこれまで試してきた仮想空間やその中で得られたデータを活用している部分も多いのよ。で、施設に関してはもう一つ覚えておいてほしい事があって…これはまず見てもらった方がいいわね」

 

 一度外に出てもらえる?そう言ってわたしは、皆を先導するようにレストランの外へ。道路の中程まで移動してから振り返り、皆にも振り返ってもらって、そこから投げ掛ける。

 

「さぁ、クイズよ。今まで居たレストランと周りのお店、そこにある違いはなんだと思う?」

「ここはアイテムを集めて店員に話しかけると、何かのタイプを変えられる特殊なお店だったり?」

「いや違うわよ、何かのタイプって何よネプテューヌ……」

「…なんかそういう店に、その内行きそうな気がするな」

「うん、僕もする…そういう食堂に訪れる気がする…」

「……?ふ、二人の言っている事はよく分からないけど…何か気付かない?見た目で分かる違いだよ?」

「…このレストランは、周りより色が濃い…というか、鮮やかに見えるけど…もしかして、それ?」

 

 そういう事なの?…という風に答えるイヴ。そんなイヴの方へわたしは向いて…こくりと頷く。

 

「そう、正解よイヴ。建物は基本的に色がしっかりしている所とそうじゃない所があって、色合いで入れる…つまり利用出来る施設か否かを判別出来るようになっているわ」

「という事は、全ての建物に入れる訳じゃないんですね。…やっぱ、オープンワールド系っぽい感じかな…」

「えぇ、それで合ってるわ。現実の地形データをそのまま使ったりするシミュレーターとか、機械側で完結する仕様のシミュレーションと違って、今回は新しい試みだから、ピーシェの言う通り大半はわざと入れる訳じゃない建物…要は張りぼての建物にする事で機材の負荷を減らしているの。些細なレベルでも負荷を減らす事が出来れば、その分バグが起こる可能性も下がるから、ね」

 

 何でもかんでも複雑に、緻密にすれば良い訳じゃないのは仮想空間にもゲームにも、多くの機械に言える事。そうしてわたし達は説明を終え、質問にも答えられる範囲で答えて…話は、終わる。

 

「さ、それじゃ早速始めましょ。…と、言いたいところだけど……」

「軽く街を回って、先に地理とかどこにどんな施設があるのかを知っておいてから始める方が良いよね」

「うんうん、新しい街に着いたら取り敢えず探索するのは基本だよね!」

 

 という訳で、わたし達は移動開始。神生オデッセフィアの時と違って今回はわたし達もこの街の事を把握していないから、一先ずは大通りから離れない形で街を回っていく。

 

「…あれ、なんか光ってる…わっ、1000ポイント!…そっか、落ちてるポイントはこんな感じで…って、え?…い、イリゼどうしよう。折角拾ったポイント消えちゃった……」

「あぁ、大丈夫だよルナ。手に入れたポイントはデータとしてちゃんと保管されるし、用意してある携帯端末から確認出来るからね」

「その辺りもゲームっぽいんだな。…うん?そうなると、グレイブはどういう事だ?グレイブの時は消えなかったのか?」

「いや、消えたぞ?けどその前に端末弄ってて、ポイントの項目があるのを知ってたから、消えた時もこっちに入ってんのかなーって思っただけだ。実際入ってたしな」

「流石は若者。順応性が高いね」

 

 道中で出てきたのはポイント獲得時の話。うっかりしていたけど、これも先に説明しておくべきだったわね…後、流石は若者って言っているワイトも、そんなに老けてるような見た目をしていないのは、自分の事だから気付かないのかしら…。

 

「〜〜♪」

「…楽しそうね、茜」

「楽しそうっていうか、楽しみって感じかなー。だってここは、これまで出来なかったような事や、もっとやりたかったような事も、もしかしたら出来るかもしれない場所でしょ?」

「…確かに、それはそうね…。……私も少し楽しみになってきたわ」

「イリスちゃん、イリゼ達の説明はちゃんと分かった?イリスちゃんも出来そう?」

「問題ない。イリスはもうこれからの事を計画済み」

「え、そうなの?凄いなぁ、もう色々思い付いてるんだ…」

「折角だから、少し教えてあげる。イリスはまず、鶴を助けて子犬を大事にする。それから帰りに、お地蔵さんに笠を被せてあげる。…あ、でもその為には家が必要…むむ、まずは家を用意しないと……」

「…い、イリスちゃんは誰かと一緒に行動した方が良いんじゃないかな…?ほら、一人より二人や三人の方が、色々出来るし…(あせあせ)」

 

 それから結構な時間を掛けて街の探索を行ったわたし達は、ある施設の前で止まった。わたし達にとっては馴染み深い…教会という、施設の前で。

 

「見ての通り、ここは教会だよ。宿泊は勿論他にも色々と出来るし、まずはここを拠点にすると良いんじゃないかな。ホテルを始め他にも拠点として役立ちそうな場所はあるし、稼ぐ手段によっては他の場所を中心に動いた方が効率が良いかもしれないけどね」

「それと道中でも言ったけど、街の各所にあるワープポイントは、一度確認すれば後は自由に使えるわ。行った事のない場所は使えないけど、よく行く場所のワープポイントは使えるようにしておいた方が何かと楽よ」

「…なんかおねーさん達、ここに来て説明口調感が増したわね…もしかして、どこかでNPCか何かと入れ替わった?」

『いやいやいや……』

 

 本物よ本物…とわたし達は揃って手を左右に振る。言われてみると、確かに凄く説明口調になってたけど…仕方ないじゃない、説明をしてるんだもの。

 

「二人共、ここまで説明お疲れ様。…して、ここからが勝負開始という事かな?」

「何人かもう、フライングでポイント獲得してるッスけどね」

「あはは…まあ、そうなるね。私はホストの立場だし、勝負そのものは遊びの範疇だけど…手は、抜かないよ?」

 

 腕を組んだ状態で片手の人差し指だけを上げて、ちょっと勝気な笑みを浮かべるイリゼ。その言葉と笑みには、同じような笑みや、やる気に満ちた眼差しが返され……勝負が、始まる。…と、いってもまぁ、まずは準備の段階だけどね。

 

(さてと、わたしはどうしようかしら)

 

 選択肢は、無数にある。どう稼ぐかもそうだけど、どこを拠点に活動するかだとか、誰かと協力態勢を敷くかだとか、目的がシンプルだからこそ、やれる事は沢山ある。

 皆にとっては完全に初めて、未知の経験だろうけど…わたしやイリゼだって、そう変わらない。けれど…だからこそ、楽しみってものよね。自分の手で調べて、理解して、進めていく…ゲームで例えるなら、それは醍醐味ってものだもの。

 

「…あら?ここって……」

 

 追加の探索を兼ねて、歩く事体感で十数分。わたしはまだ通っていなかった大通りを進んでいて…そこで見つけたのは、ギルドらしき建物。

 依頼する人と、それを受ける人の仲介を担う組織、ギルド。信次元にも神次元にも、聞いたところによると他の次元にも存在するらしいその施設がこの仮想空間にあるのは、まぁ自然な事で……同時にここは、稼ぐにはぴったりな施設。

 見つけ、立ち止まった数秒後、わたしはそこへ入る事にした。すると見立て通り、そこはギルド。わたしは早速依頼を一つ受注し、目的地を確認し…街の外へ。

 

「街で依頼を受けて、街の外に出て、その依頼を達成する…ありふれてる事とはいえ、改めて考えるとゲームっぽいわね……」

 

 そんな事を呟きながら、依頼の対象…討伐するべきモンスターを探す。何気なく呟きながら探していたけど、何かこの思考はあまり深くしちゃいけない気が……

 

「…っと、いたわね」

 

 視界の端、近くにある林の中に見えた、モンスターの姿。ゆっくりそちらへ近付いていき、モンスターの姿を再確認する。…数は…多いわね。依頼されている数より明らかに多いじゃない。…まぁ、でも…多いなら多いで、余分に倒せば良いだけの話…!

 

「先手必勝、っと!」

 

 二振りの得物を抜き、気付かれる前に突撃して一閃。不意打ちで一体倒せば、そこでモンスターの群れはわたしを認識し襲い掛かってくる。

 数は多い。でも、最初から受けられる依頼なだけあって、個々の強さは大した事ない。具体的に言えば、多いからって慎重に戦ったり、策を講じたりする必要がない

位で…要は、楽勝ね。

 

(…けど、ほんとに多いわね…これは適当に見切りを付けて、離脱した方が良いかも……)

 

 五体倒し、十体倒し、更に倒していく。もう依頼達成に必要な数は満たしていて、後は自己満足の域。仮想空間とはいえ、最初に受けた依頼で完全勝利じゃなくて無難な離脱というのは少し不服な部分はあるけど…そもそもこの依頼は、最終目的の為の第一歩。最終的な勝利からすれば、ここでどんな勝ち方をするかなんて、大事の前の小事というもの。そう判断したわたしは、戦いながら離脱のタイミングを……

 

「てぇいっ!」

「……!」

 

……図っていた、その時だった。声がした次の瞬間、割り込む形で煌びやかな髪が舞い、一振りの剣が振るわれたのは。その一太刀が、モンスターを側面から斬り付けたのは。

 

「…ルナ?どうしてここに……」

「あ、えっと、私はギルドでクエストを受けてここに来たんです。セイツさんもそうですよね?…わっ、とと…」

「って事は、偶々遭遇した…って訳ね…!」

 

 返答の途中に突っ込んできたモンスターを、乱入者…ルナは横に跳んで回避。そのモンスターをわたしが刺突で仕留めれば、ルナはぐるりと見回して、それから電撃魔法を使って複数のモンスターを同時に攻撃。

 元々わたしに圧倒されていた中での、わたし側の増援。それによってモンスターの群れは、攻撃を躊躇うようにわたし達から離れて威嚇し……足を止めたモンスターの群れを、血の様に赤く黒い旋風が左右から襲う。

 

「…差し出がましいようだが、少しばかり援護させてもらったよ、セイツ君」

「ズェピアまで?…あぁ、そういう事ね」

 

 振り向けば、そこにいたのは優雅に佇むズェピアその人…もとい、その吸血鬼。旋風に襲われるモンスターへ、ルナが電撃で更に追撃を仕掛け…これは無理だと判断したのか、生き残ったモンスターは四散するように逃げていく、二人の参戦によって…戦闘が、終わる。

 

「ズェピアさん、お疲れ様。…すみません、声もかけずに割って入っちゃって」

「ううん、謝る事なんてないわ。二人が来なければ危なかった…って事はないけど、余計に時間がかかっていたのは間違いないし、結果大助かりだったもの」

「そう言ってもらえると助かるよ。…で、セイツ君はもう達成なのかな?」

「えぇ、そうよ。二人は?」

 

 わたしが訊けば、二人はそれを否定する。…という事は、二人は自分達の依頼がまだ残ってる状態で、わたしへの助太刀を優先してくれた訳なのね…。

 

「何分ギルドの仕組みはよく知らなくてね。ルナ君に同行をさせてもらっているという事さ」

「同行なんて、そんな…私もズェピアさんがいてくれた方が、何かと心強い訳ですし…。…と、いう事で、私達はこれから達成してきますね。セイツさん、私は皆さん程強くないですけど…私だって、そう簡単には負けませんからね?」

 

 そう言って、二人は立ち去ろうとする。ぎゅっ、と胸の前で左右の手を握るルナからは、言葉通りのやる気が伝わってきて…それを見るズェピアの雰囲気は、どこか微笑ましげだった。そして、わたしは…去ろうとする二人を、呼び止める。

 

「待って。その依頼、わたしも同行させてくれないかしら?」

「え?」

「依頼の内容にもよるけど、基本的に人手は多い方がいいでしょ?勿論、報酬は要らないわ」

「…いいのかい、セイツ君」

「助太刀のお礼よ。まだ誰かと組む気はないけど…それはそれ、これはこれ。達成までの助力は、いる?」

 

 目を丸くしたルナと、尋ねてくるズェピアに答える。二人は多分、助太刀のお礼なんて求めないだろうし、実際助太刀が必要だった訳じゃない。でも…手助けしたもらったなら、お返ししたいと思うのが人情ってものよ。わたしは女神だけど、ね。

 わたしからの問い掛けに、二人は顔を見合わせ…それから、首肯。二人の依頼に、わたしも同行する事になり…何の問題もなく、何も苦労する事なく、二人の依頼も完了した。その後は三人で戻って…街に到着したところで、わたしは二人とは別れた。

 これからどうするかはまだ決めていない。最初から組むのは味気ないけど、ずっと一人で進めるか、と言われたら悩みどころ。…まあ、でも…街を回る中で茜とイヴが話していたように、折角ここは現実じゃ出来ない、出来ても難しい事が色々出来るのかもしれないんだもの。だったら…沢山体験してみなきゃ、損よね。

 

「…そういえば、わたしやイリゼが勝った場合、景品はどうなるのかについては話してなかったわね。…ま、いっか。景品の有無に関わらず…わたしだって、勝つ気だもの」

 

 

 

 

 

 

──そうして始まった、わたし達の仮想空間での時間。ここでどんな事が起こっていくのか、勝負は最終的にどうなるのかは…まだ、わたし達の誰にも分からない。




今回のパロディ解説

・「〜〜ヤック・デカルチャーだね」
マクロスシリーズに登場する言語の一つ、ゼントラーディ語における代名詞的なものの事。時事ネタ…のつもりです。タイミングの良いネタだと思っています。

・「大丈夫だ、問題ない」
El Shaddai - エルシャダイ -の主人公、イーノックの代名詞的な台詞の一つのパロディ。汎用性も高いですし、前にもパロネタに使った気がしますね。

・「恐ろしく違和感のないネタ発言〜〜」
HUNTER×HUNTERに登場する、モブキャラの発言の一つのパロディ。こちらも前にもネタにしたかもしれません。こちらもかなり有名ですしね。

・『科学の力ってすげー!』
ポケモンシリーズに登場する、NPCの発言の一つのパロディ。こちらも所謂モブキャラの発言ですが、凄く有名ですね。毎作出ている発言でもありますし。

・「──今こそ示せ、我が真に臨む世界を!」
ヴァンガードシリーズの主人公の一人、新導クロノの代名詞的な台詞の事。同時に時空竜 ミステリーフレア・ドラゴンのフレーバーテキストでもありますね。

・さぁ、始めよう〜〜ってやつをね!
機動戦士ガンダム00に登場するキャラの一人、アリー・アル・サーシェスの台詞の一つのパロディ。まあ、流石に戦争ではないです。とんでもないというか、トンデモ展開は出てきますが。

・「樽とか壺〜〜だよね!」「因みに〜〜パターンもあるよ」
ドラクエシリーズにおける要素の一つの事。シリーズによって、樽や壺をどうするかの行動は違うんですよね。さらっと叩き割るのは…流石のパワーとしか言えません。


 前話でも書いた通り、コラボに参加して下さっている方々は、自分のキャラの戦闘能力及びそれに纏わる要素を教えて下さると助かります。
 そして今後、仮想空間の中でカジノが登場する予定です。そこで自分達のキャラが、お客として参加するか、それとも店員として(上手くギャンブルを仕向ける事で)稼ぐか、はたまた参加せずにいるか…自分のキャラならそれぞれどのようにするかも、ご要望があれば教えて下さい。因みにイリゼは店員(女神化&やたら豪奢なバニー)、セイツはお客(こちらも女神化&ドレス)として登場する予定です。
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