超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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第二十二話 探り探りの序盤戦

 思い出すのは、前の時の事。初めの部屋…じゃなくて、空間?…でディールちゃんも言っていたけど、それだけじゃない。本来の目的とは別の目標…ここで言えば勝負とその景品があったり、勝負の内容がゲームちっくだったり、なんだかまるであの時の続き…っていうか、第二弾?…みたいな感じ。ぜーちゃんの事だから悪い企みをしてる訳じゃないと思うし、何かあってもえー君がいるんだから何も心配なんてないんだけど…なーんかちょっと、気になっちゃう。

 でも、楽しみでもある。それはそれとして、凄く楽しみ。だって、ここだからこそ、この機会だからこそ出来る事があると思うから。折角の機会なんだもん、楽しまなくっちゃ損だよ、損。

 

「えー君えー君、どうしよっか」

「どう、というと?」

「攻略法、どうやって優勝するか、だよ!」

 

 取り敢えず教会に入って、部屋を確保して、えー君と二人になった私。早速話をしようとした私だけど、えー君はピンときてない様子だった。

 

「…まあ、そういう事だとは思ったが…茜はやる気だな」

「もっちろん!適当に時間を潰すだけじゃ勿体ないし、色々やった方がぜーちゃん達的にもありがたいんだろうし!…えー君は乗り気じゃない感じ?でも、質問とかしてたよね?」

「別にやる気がない訳じゃないが……確かに、無為に過ごすのも勿体ないな」

「でしょ?という訳で…期待してるよ、えー君!」

 

 それは何をだ、作戦か?共闘か?それとも両方か?…そんな視線を向けてくるえー君に、私は答える。それは当然、全部だよ!…と。

 

「だと思った…。……まぁ、いい。だがその前に、一つ確認がある」

「そうだよっ」

「訊く前に答えるな…とんでもない確認だったらどうする気だ……」

「え、でもそういう確認じゃないでしょ?」

「…そうだが」

「なら問題ないよね?」

「茜には勝てないな…」

 

 嘆息し、肩を竦めるえー君に私はふふんと笑う。因みに能力は使っていない。えー君の事なら、使わなくたって分かるもんね。

 更に因みに、えー君が確認したかったのは、仮に共闘しても一つのチームになる訳じゃないから、一緒に勝つ事は出来ない。それでも尚共闘体制を取るのか、って事だった。それならやっぱり、「そうだよっ」以外の答えなんてないよね。私とえー君でワンツーフィニッシュ決められたら、そんなの嬉しいに決まってるもん。

 

「…なら、まずはおさらいといくか」

「おさらいと称して、前の話で触れなかった部分を捕捉したり、改めて出す事で理解を深めてもらうんだね?」

「…茜、何か前に比べてそういう発言が若干増えてないか…?」

「そーかな?だとしたら、ぜーちゃん…っていうか、信次元に影響受けてるのかも?」

「…………。…おさらいだ。この勝負は、様々な手段で以ってポイントを稼ぎ、その結果で勝敗を決めるというもの。つまり、とにかく沢山稼いだ者が優勝する……訳じゃない」

「稼ぐだけじゃ駄目、って事?」

「そうだ。例えば仮に100万ポイント稼いだとしても、誰かと直接対決し60万ポイント奪われたとすれば、そいつは負ける。逆に手に入れた側は60万ポイントしか稼いでいないが、その時点で奪われた側より多くのポイントを取得している訳だからな」

 

 これは掘り下げないでおこう…って思ったみたいで、えー君は本題に入る。私も元々その話をしたかった訳だから、普通に聞く。聞きつつ「こういう語りをする時のえー君も格好良いなぁ」なんて思っちゃったりする。

 

「直接対決でのポイント移動がある以上、優勝を狙うならただ稼ぐだけじゃ足りない。稼ぎつつ対決で優勝候補のポイントを削るか、圧倒的ペースで…稼ぎ続けるかの二択が基本的なプランになる」

「まあ、そうだよね…あれ?でも、直接対決は不意打ち可能な場所以外じゃ申し込む必要があるんだよね?申し込む、って事は拒否権があるんじゃないの?でさ、もしそうなら対決は全部拒否して稼ぐのに集中する事も出来るんじゃない?」

「かもしれないな、だがそれは口頭説明…しかも運営ではなくプレイヤーの一人であるイリゼとセイツの口から語られた事だ。つまり、嘘はなくとも解釈違いをしている可能性はあるし、ポイント差によっては負けている側からしか仕掛けられないように、一定ポイント以上を保持していると拒否権がなくなる…といったような、細かいルールや仕様があってもおかしくはない。…幸い組んでいれば対決関連の『試し』は幾らでも出来る。本格的に動く前に、気になる部分は調べておいた方が良いな」

 

 言われてみれば本当にその通りで、私達が知っているのは、実際に試したり説明書みたいなものを読んで得た情報じゃない。だから、「え、そうだったの?」と思うような事があっても全然不思議じゃない。そして私一人だったら、これに気付くのはもっと後だったろうし…やっぱりえー君は頼りになるなぁ…。

 

「じゃあ、早速動く?」

「そうだな、ある程度の話は動きながらでも出来る。…が、その前にもう一つだけ確認だ茜。今度は聞く前に答えるなよ?」

「なぁに、えー君」

「今、茜には何が見えている?何が、どこまで見えている?」

「あー…」

 

 ほーんと、えー君は鋭いんだから。そう思ってから、私は答える。えー君の訊いてる、えー君の確認しておきたい事に。

 

「いつも通り、全部。……では、ないかな。見えなくはないけど、普段よりせーどが低いっていうか、ちゃんと機能してない気がするっていうか…」

「そうか…システムの側で、意図的にセーブしているのか、それとも再現し切れていないのか…何れにせよ、普段通りとはいかないんだな?」

「そだよ。これ、ぜーちゃん達に伝えておいた方がいいかな?」

「いや、今はまだ言わなくていい。どちらだとしても、すぐ何とかなるとは思えないしな。それに……いや、何でもない」

「……?」

 

 何かを言いかけて止めたえー君に、小首を傾げる。明らかに思うところがあったみたいだし、気になる……けど、こういう時は何を言っても教えてくれない。だから私は諦めて、それより…と部屋から出る事にした。さっきも言ったけど、早速動かないと、ね。

 

「よーし、頑張るよえーく……あっとそうだ、一応部屋を片付けておかないと…」

「…夕が落っことして怪我したりしないようにか?」

「うん、ゆーちゃんは賢いけどまだ小さいから……って、あっ…あはは、またやっちゃった……」

 

 うっかり小物や転がり易い物を仕舞っておこうとして、ゆーちゃんは来ていない事を思い出した私。分かってはいるんだけど、もう習慣になってるからついついいつもやっちゃうんだよねぇ……って、あれ?

 

「…茜、どうかしたか?」

「なんか、棚に仕舞ってあったお菓子が手に入っちゃった。これ、ゲームでいうアイテム扱いなのかな?」

「まあ、手に入ったならそうなんだろうな。…そうか、拾えるのはポイントだけじゃなく、道具や消耗品が手に入る事もあるのか……」

「ねぇねぇ、これってTVとかタンスとかもアイテムとして取れるのかな?……あ、手に入った」

「いやそれはない……と思ったら手に入ったのか…!?というか、取ったのか!?」

「うん、取れちゃう取れちゃう。わっ、窓ガラスとか壁紙までアイテムとして手に入るよ?なんだか住民が皆動物の村に引っ越してきたみたいだね」

「取るな取るな仮に取れても取ろうとするんじゃない…!」

「でも、アメニティグッズって可能性も……」

「あるか!どこの次元に家具や電化製品、果ては内装まで持っていける宿泊施設があるって言うんだ…!」

 

 クールで冗談なんて滅多に言わないえー君だけど、実は意外と突っ込みの方はしてくれる。それも状況によるから、ノリが良いタイプって訳じゃないけど…今日のえー君は結構ノリが良かった。

 こほん。それじゃあ今度こそ、私達は行動するよ!目指すは優勝、狙うはここだからこそ出来る事。過程も結果も、私は両方妥協なんてしないんだからね!

 

 

……あ、因みにお菓子以外はちゃんと戻したよ?流石に持って行ったりはしないって…。

 

 

 

 

「おっ、またポイントゲット」

 

 皆と解散してから、今に至るまで大体数十分。俺は教会周辺を歩き回っていて…その道中で、何度もポイントを発見していた。

 

「今回のは結構多いな…場所によって増減したりもするのか……?」

 

 今現在の総ポイントを確認し、俺はまた歩き出す。見付け辛い場所のポイント程高い…と考えるのが普通だが、地域ごとにも差があったりするなら、比較的多い地域を中心に探した方が効率良くポイントを稼ぐ事が出来る。…まぁ、差があったりするかどうかを知る為には、色んな場所でポイントを発見しなきゃいけない訳だけど。

 

「…うん?あれは……」

 

 それからまた、ポイントを得つつ移動する事十数分。建物同様、大半が色の薄い通行人の中に、そうではない人物を…見覚えのある人を、俺は見つける。

 

「ワイトさん!」

「やぁ、カイト君。…もしかして、君も探索中かい?」

「はい。街は一通り調べておくのがゲームの鉄則ですからね。…と言っても、本当に街中を探索していたら何日かかるか分かりませんが…」

 

 肯定してから俺は頬を掻く。そもそもこれはゲームじゃない…それを分かった上で俺は言い、出会ったワイトさんもそこについては何も言わなかった。

 

「ワイトさんも、探索ですか?」

「ルールやシステム方面はイリゼ様達がある程度説明してくれたけど、街の作り…どこに何があって、何を出来るかは不明な部分が多かったからね。それに、仮に良い稼ぎ場を見つけられたと思っても、実はもっと良い場所があった…なんてなったらあまりにも勿体無い。だからそうならない為にも、まずはじっくり見て回っている…といったところだよ」

「って事は…ワイトさんは、結構本気で勝とうとしているんですね」

「参加すると決めたからね。自分の意思でやっている以上、適当な事はしたくないんだ」

「分かります。勝つ勝たないは別にしても、やれる事やった上で負けるのと、やる気出さないで負けるのとじゃ、終わった後の気持ちは全然違うと思いますし」

 

 ただ立ち話するより、軽くでも見て回りながらの方が無駄がないという事で、会話しつつ俺はワイトさんと歩く。自分の意思でやる以上、適当な事はしたくない…か。ワイトさん、いつも冷静で正に歴戦の軍人って感じだけど、結構真っ直ぐというか、ほんといつも格好良い大人なんだよな。

…と、思っていると、ワイトさんは俺の方見て、少し笑っていた。それもまるで、何かに感心しているかのように。

 

「…ワイトさん?」

「あぁ、いや、何でもないよ。…因みにカイト君、今の事を逆に、『やれるだけやっても勝てなかったら無力感に苛まれるが、やる気を出さずに負けたなら平然と受け止められる』…なんて捉えたりは?」

「あー…言われてみれば、そういう考え方もあるか……」

「…うん、私は君のそういうところを尊敬するよ」

「……?」

 

 まあ確かに、初めっから頑張ってなきゃ負けるのも当然だし、当然なら辛さも軽くなるだろう。…けど、そんな考え方は勿体ないと思う。何せそれは、初めから負ける事、上手くいかない事を前提にした考え方なんだから。…あぁ、でも、軍人なら負けた場合の事も想定しなきゃいけないか…。…うん?いやだとしても、それとこれとは別な気もするな…。

 とかなんとか思っていたら、ワイトさんから尊敬されてしまった。…何故だろうか。

 

「…さてと、折角だから情報の共有でもどうかな?」

「あ、いいですね。って言っても俺は、教会周辺の施設の事位しか知りませんが……」

「私も似たようなものだから構わないよ」

「…つまり、探索してた場所が被ってたと…?」

「いやそうではなくてだね…」

 

 あ、やっぱりそっちじゃなかったか。そう思った後、俺はワイトさんと情報交換。携帯端末を取り出し、聞いた情報をメモしていく。

 

「…こんなところ、ですかね。…もしかして、この街の施設って……」

「うん。薄々予想はしていたけど、この街に存在する施設は地区毎にある程度の傾向がありそうだね。教会のすぐ側には、色々あるようだけど…これは分かり易さ、やり易さ重視といったところかな」

「けどこういうのって、高効率だったり高難度だったりするのは大概、もっと離れた場所になりますよね。…これもゲームだったら、ですけど」

「その辺りは、実際に入って確かめてみないと分からないね。それと、もう一つ。今分かっている範囲では、だけど…ここでの稼ぎ方は、大きく分けると四つだね」

 

 稼ぎ方は四つある。そう言ったワイトさんは続け、俺も自分の中の認識と確かめ合わせる為、聞き手に回る。

 

「まず、一つ目は落ちている…と言っていいのかは分からないけど、とにかく直接手に入れる手段だ。これは一番簡単な反面、多く稼ごうとすると広範囲を隈なく探す必要があるし、どこにどの程度あるかは見つけてみないと分からない。だから少量稼ぐ、何かのついでに見つける形でなら良いにしても、これを主軸にするのは難しいだろう」

「ですよね。…凄まじい桁のポイントが落ちてたりとかしたら別ですけど……」

「その可能性も否定は出来ないけど、それに期待するのは最早ギャンブルの域だね」

 

 ギャンブル…その表現を聞いて、確かになと俺は思った。やっている事は地道な作業そのものなのに、結果はギャンブル…やっぱりこれで稼ぐのは難しそうだな。

 

「次に二つ目、ゲームセンターやアミューズメントパーク等の施設にある設備や企画等で稼ぐという手段だ。まだ発見は出来ていないけど、セイツ様の言った『大会』も、種類分けするならここに入れるべきだろう」

「これは現実でもある方法ですね。現実でもあるって言っても、それで稼ぐのは基本その道のプロですけど」

「こちらは一つ目とは違い、稼げる場所も一度にどの程度稼げるかもはっきりしている点が長所だね。その一方で、もし現実と同じなら、一つのものを連続して行う事は出来ないだろう。難易度や一度にどの程度稼げるかは…ピンキリだろう。それと、プロはその道で金銭を稼ぐ者を指す言葉だから、稼ぎを得ている時点で皆プロとも言えるね」

「上手く勝てたり入賞出来たりするなら、安定して稼ぐ事が出来る…ってところですかね」

 

 二つ目として挙げられたのは、俺も気になっていた手段。ゲームで言うならこれは、寄り道要素だったりそれこそ稼ぎ手段だったりする、ミニゲームみたいなもの。もう少し細かく考えるなら、多分大会みたいにタイミングが決まっているものと、行ってその場で出来るものがあって…そういや、UFOキャッチャーみたいなのはどうなんだろうか。もしそういうのでも稼げるなら、景品がポイントになってるとか、換金アイテムだとかか?…それも後で調べてみるか…。

 

「続けて三つ目、ギルドや依頼人から直接依頼を受け、それを達成する事で稼ぐという手段もあるだろう。これも現実にある手段で、二つ目と比較した場合、依頼ごとに別の場所へ行かなくてはいけない分一回辺りの時間は長くなりそうだけど、移動のついでにポイントを拾ったり、自分の利になる物や情報を見つけたりと、移動を有効に使えるのなら決して二つ目より劣る手段とはならないんじゃないかな」

「…これ、一度に複数の依頼…というか、クエスト?…を受ける事も出来ると思います?」

「それは…そうか、その可能性もあるね。もしそれが出来るなら、高効率の稼ぎ手段にもなり得るだろう。…工夫次第で効率は変化する、当たり前の事だけど忘れてはいけないね」

 

 ギルドやクエストは、ゲイムギョウ界に来てから知った…けど今の俺からすれば馴染みのあるもの。討伐系のクエストがあれば、街の外の探索も兼ねてやってみるのも良いかもしれない。もしかしたら、高く売れる素材みたいな物を採取出来るかもしれないしな。

 

「…こほん、では四つ目、最後になるけど…直接対決、戦って相手から勝ち取るのもまた手段だね。けれどこれは、今のところ何とも言えないかな。難易度が高いであろう事は間違いないが」

「まぁ、そうですね。…何人か、これを主軸にしそうな人はいますけど……」

「はは、同感だよ。…これがどの程度稼げるのか、同じ相手に連続で仕掛けられるのか、負けた側は単にポイントを取られるだけで終わるのか…他の事にも言えるけど、これは特に、よく分からない内は下手に手を出さない方がいいだろう。まあ尤も、仕様を知る為には実際に経験しなければいけないのかもしれないけどね」

「…ワイトさんは、これで稼ごうと思います?」

「まさか。自分だけが徹底的に準備を出来るならまだしも、仮に生身の私が仕掛けたとしても、大概は返り討ちに遭うのが関の山さ」

 

 ここで生身、と言うのも少し変だけどね。そう言って締め括ったワイトさんは、軽く肩を竦めてみせた。…俺からすれば、絶体絶命の状況でも冷静に頭を働かせて、一旦でも危機から全員を救ったワイトさんだって、真面目に戦うなら十分手強い相手だと思うんだけどな…。

…と、四つ目の手段を言ったところで、ワイトさんの話は終了する。

 

「まとめると、メインにするなら二つ目か三つ目、一つ目はメインじゃなく何かのついでにやる方が良くて、四つ目は未知数…ってところか」

「そんなところだね。後は…何かを売るという手段位かな」

「ワイトさんは、どうしていくつもりで?」

「どうしたものか…と言ったところかな。カイト君は……」

「全部に手を出してみるつもりです。…どれも、やってみたいですから」

 

 そう。目標は優勝だが、それだけを目指すつもりはない。色々やってみたいし、稼ぐだけじゃなく、その手段も俺は充実させたい。だってそっちの方が、終わった時により満足出来そうじゃないか。

 

「それじゃあ、物は試し。分析はここまでにして…何かやってみようか」

 

 俺のやる気を感じ取ったのか、ワイトさんは立ち止まり、ある方向に向き直る。

 そこにあったのは、ボウリング場。ワイトさんが何を言いたいのか…そんなのは、考えるまでもない。

 

「負けませんよ?ワイトさん」

「お手柔らかにね」

 

 入店し、ここで二つ目の手段を実行出来るかまずは確認。するとここでは店舗内で行われる小規模の大会に参加出来るらしく、勿論俺とワイトさんはエントリー。

 因みにこの時、少しだがエントリー料がかかった。こういうところは、結構現実的みたいだな。

 

「参加人数は、我々を含めても一桁か…大会というより、定期的に行っているちょっとしたイベント位のものかもしれないですね」

「初挑戦には丁度良いね。…さて……」

 

 段々勝負の顔になっていくワイトさんと共にボールを選び、割り振られたレーンに立って大会開始。1フレーム目は感覚を掴む、小手調べのつもりで投げて、2フレーム目から俺は本気を出していく。

 ワイトさんは隣のレーン。俺はボウリングの技術をまともに学んだ事なんてないから、良し悪しなんて分からないが…ワイトさんの投球フォームには、無駄がなかった。けど、「流石だなぁ、真似してみるか」と思って見様見真似で似たようなフォームで投球してみた結果、ガーターすれすれになってしまった。…安易な真似はしないで、自分の調子でやろう…。

 

「よっし、ストライク!」

 

 大会は2ゲームを行い、その合計得点で競うというもの。1ゲーム目前半は小手調べしていたり、真似でミスったりして低調だったが、慣れてきた後半からはスコアが伸び始めた。連続で、とは言わないものの、ストライクもそこそこ出てくるようになった。そして……

 

「おめでとう、カイト君。君がナンバーワンだ」

「ありがとうございます、ワイトさん。…よし!」

 

 勝利。優勝。俺が掴んだのは、最終的な目標と比べれば、小さく些細な…だとしても確かな、勝ち。

 

「1ゲーム目の時点では私が僅かに勝っていたけど、2ゲーム目で完全に逆転されてしまったね。本当に君は、後半の伸びが凄かった」

「ワイトさんこそ、2ゲーム目前半は凄まじかったじゃないですか。立て続けにストライクやスペアを出してましたし、あの時は隣で投げてて『あ、これは負けたな』って思いましたし」

「あれは…なんだろうね。1ゲーム終えて、程良く力が抜けていたのが良かったのかな。でも結局、2ゲーム目後半はそれで逆に調子が崩れてグズグズになってしまったし……」

「…ワイトさん?」

「…いや何、自分ももう若くないと常々思っていた訳だが…やっぱりこうしていると思うんだよ。若者と、若そうな事するのも偶には悪くない、とね」

 

 上手くいかないものだ。そんな風に語っていたワイトさんだったが、途中から雰囲気が変わり…俺が訊けば、ワイトさんは軽く笑いながら言った。しかもその声音には、今初めて感じたのではなく、ここ最近で何度も感じているかのような雰囲気があって…これをイリゼが知ったら、さぞ喜ぶだろうな。

 で、俺を祝ってくれたワイトさんだが、実はワイトさんも三位となっていた。しかも2ゲーム目最後の投球では、調子が戻り始めた感じもあった。だからもし3ゲーム目以降があったら、結果はまた違ったかもしれない。

 

「…ところでワイトさん。俺達、何気なく他の参加者と勝負していた訳ですが……」

「うん、全員架空の人物なんだろうね。ゲーム的に考えれば当たり前の事だけど…少し、不思議なものだ」

 

 不思議なものだという表現に、俺は頷く。参加者が俺とワイトさんだけじゃ、順位の違いはあっても入賞によるポイント獲得は確定しているようなものだし、大会を成立させる為のNPC的な存在なんだと思うけど…普通のゲームなら当たり前のものとして流している事でも、この現実の様な仮想空間の中でだと、不思議な存在の様に思える。…仮想空間自体もそうだが…なんていうか、凄いんだよな、ほんと。

 

「…こほん。それじゃあカイト君、店舗大会優勝のお祝いに何か奢るよ。といっても、ここで得られるのは味と感覚だけだけどね」

「いやいやそんな、いいですって」

「君こそ遠慮する事はないよ。楽しかった君とのボウリング勝負のお礼も兼ねているんだから」

「けど、俺は優勝でワイトさんは3位だった訳ですし…」

「あー…うん、そうだね…それは確かに、奢られるのは気が引けるか……」

 

 そういう事です、と俺が頬を掻きつつ返せば、ワイトさんは苦笑い。結果、奢るのは次の機会にという事になって、俺達はボウリング場を後にする。次は何をするか、何を試すか…と考えながら。

 

「…因みに、一ついいかなカイト君」

「何です?」

「君…途中からは報酬の事忘れてシンプルに楽しんでいなかったかい?」

「あはは…バレてました?」

 

 見抜かれていたか、とまた俺は頬を掻く。ワイトさんの言う通り、報酬の事を意識していたのは1ゲーム目の中盤辺りまでで、そこからはボウリングで勝つ事、その為に1ピンでも多く倒す事に熱中していて…報酬がある事を思い出したのは、勝負が終わってからだった。

 

「ワイトさん。俺はもう少しここ周辺を回ってみて、それから二つ目と三つ目の手段をそれぞれ試してみたいと思います。ワイトさんはどうしますか?」

「私は主に二つ目、かな。…それと…こういう機会はそうそうないんだ、君が嫌でなければ行動を共にするのは一先ずここまでにしようか」

「え?…それは、色々と逆では…?」

 

 ここからは別行動にしよう。その提案に、俺は正直疑問を抱いた。困る訳じゃない、そうじゃないが…こういう機会だからこそ行動を共にしたり、嫌じゃない場合にするのは共闘だったりするような気が……。

 

「うん、言いたい事は分かるよ。でも、これまで私達は、前の時も含め基本的に協力し、行動を共にしていただろう?私が言いたいのは、それを踏まえての事で……嫌じゃなければというのは、確かに少し表現が良くなかったね。ただ、意図は分かってくれるとありがたい」

「あ、はい、それは分かります。…そうですね、取り敢えずはここまでにしましょうか。後々また一緒に行動したくなったら、その時言えばいいですし…偶々あったタイミングで、さっきみたいにまた勝負するのも楽しそうですしね」

「あぁ、今回は遅れを取ったが…次は負けないよ、カイト君」

 

 それは、本心からの言葉なのか。それとも、俺に合わせて「次は負けない」だなんて言ったのか。そんな事は、訊いてみなくちゃ分からない。けど…多分、100%嘘って事だけはない筈だ。そう、俺は思った。だって、こういうのも悪くないと言ってたのだから。あれはきっと、本心なんだから。

 ワイトさんとの会話はそれで終わり、別れる。それぞれ別の方向に行く。まだこの空間での勝負は始まったばかりで、稼ぎも凄い訳じゃない。女神を始め、相手だって強敵揃い。でも、だからこそ燃える。そういう相手だから、より一層勝ちたいって思える。そしてそんな思いを胸に抱きながら、俺はまた街を回り、気になった施設へ入っていくのだった。

 

 

……あ、てかここ、なんか光ってると思ったら植木鉢の中にポイントがあった…鍵みたいというか、やけに生活感のある隠し場所だな…。

 

 

 

 

 ギルドで依頼を受けるっていうと、モンスターの討伐が多いイメージだけど、実際はそうでもない。まあ、割合は?…って言われると、それは次元とか時代によるんだろうけども…とにかくギルドに来る依頼は、護衛とか採取とか、もっと言えば街の中でのお使いみたいなのもあって、討伐は沢山ある種類の一つでしかない。なのに討伐のイメージが強いのは…自分も周りもそういうのばっかりやってるからよねー。討伐系なら訓練にもなるし、逆にお使いなんてやってもねぇ?…って感じだし。…あ、別にお使い依頼そのものを悪く言う気はないわよ?それだって、必要としてる人がいるから依頼が出てる訳だし。

 そんな訳で、こっちでも討伐系に目を付けていたわたしだけど…今は、街の内外を奔走中。

 

「ふぅ、ふぅ…お待たせしました」

「ルウィー運送がお荷物をお届け」

 

 待っていた依頼人に、ディーちゃんが荷物を渡す。報酬…は、ギルドを介して受け取る形だから、これでこの依頼は終了。

 

「これで四件目…だけど、やっぱりあんまり稼げないわねー。三等分だから、余計に実入りは少ないし」

「それは仕方ないんじゃないかな。難易度はどれも一番低い、三人どころか一人でも簡単に済むような依頼だもん。…っていうかさっきの、洞窟にいるお爺さんにナスを届ける依頼って何……?」

 

 今のところ受けていた依頼が全部終わったわたし達は、ここまで基本走ってたし…とのんびり歩きながら移動。ディーちゃんの言う事も分かる…っていうか承知の上だったけど、やっぱ報酬のポイントが少ないと達成感も少なくて……そんなやり取りをわたし達がしていると、立ち止まったもう一人、イリスちゃんがわたし達の方をじっと見てくる。

 

『……?』

「エストとディール、イリスを誘ってくれた。でも、エストとディールは、イリスより強く、賢い。…イリスがいなければ、もっと難しい依頼も受けられる…?」

「あっ…そ、そういう事じゃないのよ?えっと…ほら、言ったでしょ?採取とか、お使いみたいな依頼は色んな場所に行く事になるから、街とかその周辺の情報を得ながら稼ぐ事も出来る、序盤向けの内容だからやってるのよ」

 

 どういう訳か分からないけど、いつも無表情なイリスちゃん。それは今も同じ事で…でも何となく悲しそうにしている気がして、わたしは急いでそんな事はないと訂正をする。

 実際、今言った事は建前じゃない。本格的に動き出す前に、ある程度情報は得ておきたい。でも折角だから、その最中にも少しは稼ぎたいって事で、ここまではアイテムを集めたり持って行ったりする依頼を受けていたんだから。

 

「それなら良かった。けどイリス、二人の邪魔はしたくない…ので、難しそうな時は、遠くで見ている。ここはイリスに任せて、先に行けー」

「わー、凄い…典型的なフラグ発言なのに、無表情且つ抑揚なしで言うと、全くフラグとして成立しそうにない気がするわ…」

「状況的にも成立する確率ほぼゼロだもんね…というかイリスちゃん、どこでそんな言葉を……」

「…なら、イリスの屍を越えてゆけ?」

『だからどこでそんな事……』

 

 昔のディーちゃん位…或いはひょっとするとそれ以上に純真無垢なイリスちゃんだけど、時々変な事を言う。どこでそんな知識を?…と言いたくなる言葉が出てきたりする。…あー、でも昔のディーちゃん…とかロムちゃんも、よくよく考えたら偶に変な知識が出てくる事あった気がするわね…わたしはそんな事なかったと思うけど。……多分…。

 

「…こほん。取り敢えず受けてた依頼はもう済んじゃったけど…どうする?まだ追加で受ける?」

「んー…でも確か、同系統の他の依頼って、行き先が被ってたり、内容的に時間がかかりそうなものだったわよね。どうしようかしら…」

 

 情報を得つつポイントも確保出来たなら効率は良いけど、そこに拘ろうとすると逆に効率は悪くなりがち。だから何となく効率面での線引きをして、その上で受けたのがここまでの四つ。…あ、でも、他のギルドなら違う依頼もあったりするのかしら…現実ならデータを共有してるようだからそんな事ないけど、こっちは確かめてみないと分からない。

 と、思っていたら、そこでまた(でも今度は歩きながら)イリスちゃんが声を上げる。

 

「ディール、エスト、訊きたい事がある」

「うん、何かなイリスちゃん」

「さっき、これ拾った。これは、何かの依頼に使えない?」

 

 そう言ってイリスちゃんが見せてくれたのは、部分的に綺麗なところもある石。石ころよりは大きい、だけど岩って程でもないそれは、多分鉱石。…うーん、鉱石ねぇ…ありそうなものだけど、確かさっき見た限りでは……あ。

 

「ディーちゃんディーちゃん」

「エスちゃんまでどうしたの?」

「これ、普通に売れるんじゃない?」

「あ…それはそう、かも…?」

 

 ふと思い付いた事をディーちゃんに伝えれば、ディーちゃんもそうかも、と返してくれる。まあ正直、今イリスちゃんが持っているのでどの位の価値があるのかは分からないし、何の加工もしてない鉱石をどこで売るんだ、って問題はあるけど…取り敢えず採取してみるのは悪くないかもしれない。

 って事で、わたしはイリスちゃんからそれを拾った場所を聞いて、その場所に向かって移動開始。

 

「…あ、そういえば取りに行くって言っても、鉱石だったら基本は拾うんじゃなくて採掘になるよね?なら、道具とかないと駄目なんじゃ……」

「え、ディーちゃん知らないの?もうピッケルや虫網は持って行かなくても良い時代なのよ?」

「あぁ、言われてみれば釣りも大分前からルアーが…って、この仮想空間の話じゃないよね…!?」

「…便利な時代に、なった?」

「うん、まぁそれはそうなんだけど、イリスちゃんが言うと…というか、わたし達の会話で言うにはちょっと違和感が……」

 

 もう、エスちゃんのせいでまた変な発言が出てきちゃったじゃん、という視線を軽く受け流して、わたしはもう一度鉱石を見せてもらう。

 一つ気になるのは、仮に採れた場合、どんな感じになるのか。どんな形状の鉱石になるのか。採れた鉱石は全部これと同じような見た目になるのか、それとも現実と同じように、採掘する以上同じ見た目にはまずならないのか。大体は外見だけの張りぼてにして負担を減らしてるらしい建物の事を考えれば、鉱石の見た目もそう沢山パターンがあるとは思えないけど……これって逆に考えれば、やろうと思えば建物の方は全部中まで作り込めるって事よね。そんな事しても意味はないと思うけど…やれるって事自体に意味があるとか、そういう事かしら。

 

「ディール、エスト、もうすぐ……あっ」

「……?イリスちゃん?」

 

 わたしがぼんやり考え事をしながら歩いていた中で、不意に聞こえたイリスちゃんの、何かに気付いたような声。どうしたの?と言うようにディーちゃんが呼び掛ければ、イリスちゃんはある方向を示す。

 

「愛月とグレイブがいた」

「へぇ?二人も何か依頼を受けたのかしら」

 

 そっちを見てみれば、確かに二人が、ゲイムギョウ界じゃない世界の住人がいた。何か相談中なのか、二人共その場から移動をせずに話していた。……街の中もそうだけど、結構広いこの空間で普通に遭遇するのって、割と確率低い筈よね。けど、こういうのってわたし達以外でも起きてる気がするし、多分これからも起きる…あ、でもこれは掘り下げちゃいけない系の事かしら?ま、取り敢えず止めとこーっと。

 

「…どうする?」

「どうするって…別に、気になるなら話し掛けてもいいんじゃない…?別に、敵を見つけた訳じゃないんだし……」

「敵じゃなくても、競争相手ではあるじゃない。まぁ、それを言ったらディーちゃんやイリスちゃんもそうなんだけど」

「それはそうだけど……え、まさか仕掛けないよね…?イリゼさんならまだしも、二人の場合は流石にわたしも本気で止めるよ…?」

(あ、おねーさんの場合はそこまで止めないんだ…おねーさん、それだけ信頼されてるって事なのか、それとも扱いが雑なのか……)

 

 後者だったら流石にわたしも同情する…なんて思いながら、わたしは二人の方を伺う。ディーちゃんは普段のわたしの事を考えて言ってるんだろうけど…わたしじゃなくても、一戦交える可能性はある。だってここでは、直接対決でのポイントのやり取りも出来るし、街の外は大概不意打ち可能エリアだったから。だから一応、警戒とまでは言わずとも、向こうの動きはちゃんと伺った方が……

 

「あっ」

「うん?」

「……?エストとグレイブ、見つめ合っている…?」

「えぇ…?エスちゃん、急にじっと見てどうし……え、ちょ、ちょっ、エスちゃん?」

 

 視線に気付いたのこ、それとも偶々なのかは分からないけど…こっちを振り向いたグレイブと、目が合った。互いに認識した。…はぁ、仕方ないわね。目と目が合ったら、それは即ち…!

 

「ポケモン!」

「バトル!」

『なんで!?』

「ポケモン…エストも、ポケモンがいる…?」

 

 がっつり重なるディーちゃんと愛月の突っ込み。あ、ディーちゃんはともかく愛月の方も突っ込んでくるのね。確かポケモンっていうモンスターがいる世界では、これが…文化?…だったと思うんだけど。後、わたしに手持ちはいないわよー、イリスちゃん。実際わたしが言ったのは「バトル!」の方だし。

 

「エストはノリが良いなぁ、愛月にも見習ってほしいもんだぜ」

「ディーちゃんは見習わなくて良いからね?ノリの良いディーちゃんなんてキャラ的に……あ、でも前にロムちゃんと一緒にラムの振りした事あるんだっけ?」

「い、いやまぁ…っていうか、バトルするの…?本気…?」

「えー?…ま、わたしは別にしたっていいし、しないならしないでそれでも良いって感じかしら」

「へー、なら軽くやってみるか。よーし、いけレオン!」

「ぴっかー!」

「いやレオンは僕の手持ち…ってなんでレオン出てきたの!?乗らなくて良いよ、グレイブの悪ふざけに乗らなくても良いんだからね!?」

 

 ぴょーんとわたしの前に出てきたレオンは、臨戦体勢。…だけど、本気で戦おうって感じはないわね。もしかして、ほんとにふざけてるだけなのかしら…だとしたらこの子も相当なノリの良さっていうか、賢いわね…。

 

「ふっ、けどそういう事なら…ここはバトンタッチ!…で、イリスちゃんに任せたわ!」

「任された。おいで、レオン」

「ぴか〜、ぴっぴかちゅ〜♪」

「わっ、凄い懐いてる…そういえば温泉に行く道中で遭遇したモンスターとも、イリスちゃんは仲良く…仲良く?…なってたような……」

 

 ぽてぽてとレオンのすぐ側まで行ったイリスちゃんはしゃがみ込んで、軽く両手を広げる。するとレオンはイリスちゃんの方へ擦り寄って、イリスちゃんは頭を撫でる。ふぅ、これで無力化完了ね。後はグレイブの方を倒して……

 

…………。

 

…やっぱり止めておこうかしら。普通に考えたら負ける筈ないけど…よくよく思い出すと、彼ってポケモン抜きにも身体能力がなんか非常識だった気がするし。強いっていうか、ギャグ的な強さだった感あるし。

 

「くっ…策士だな、エスト」

「そっちこそ策士じゃない。ふざけたふりして勝負の流れに乗りつつ、自分の手持ちは出さない事で手の内を隠しながらもこっちの出方を伺ってくるなんて」

「ぐ、グレイブがそこまで考えてるかなぁ…?単に最初から最後までふざけてるだけな気も……」

「考えてるかもしれないぞ?けどほんとにふざけてるだけかもしれないな」

「…どっちなのかほんとに分からない…これもチャンピオン?…の駆け引きって事…?」

「さぁ?…で、結局どうする?」

「いやー、やっぱ止めとくわ。イリスがいるんじゃ戦えない…ってか、皆気乗りしないだろうしな」

 

 向こうはもうやる気なし。こっちもイリスちゃんとレオンのやり取りで正直ほっこりした気分になってるから、やる気は不時着スレスレの低空飛行。だから勝負は取り敢えずなしって事になって…訊いてみたら、二人はこの空間の中でポケモンがどれ位の事まで出来るか、それをどう試すか話していたらしかった。確かに二人にとってそれは重要な件よね。わたし達で例えるなら、女神化や魔法に感じて確かめておくって感じだし。

 そんな訳で、試す予定の二人と別れて、わたし達も鉱石採取…の為の移動を再開。イリスちゃんが鉱石を拾ったっていう、ちょっとした洞窟が見えてくる。

 

「あそこなのね。それなりに取れれば良いんだけど…」

「イリスも、沢山取れたら嬉しい。その為に、イリス頑張る。えいえい、おー」

「え、わ、わたしも?…え、えいえいおー」

「ふふっ、えいえいおーってね」

 

 こういうのは、恥ずかしがるよりささっとやっちゃった方が意外と楽。そう思いながら、わたしは控えめに拳を上げるディーちゃんの隣で普通に上げて……それからわたし達は、鉱石採取を始めるのだった。

 

 

 

 

 一同が仮想空間での活動を始めてから数時間。機材のある部屋でネプギアがモニタリングをする中、機材はあるブザーを鳴らし…各々が、目を覚ます。

 

「ふぁぁ、よく寝……てないッスね。寝た感があるようでない…うぇ、なんかよく分からない感覚ッス……」

「確かに、変な感覚です」「…気分が悪い訳じゃないですが、違和感が凄いっていうか……」

 

 身体を起こしたところで、首を傾げたのはアイとピーシェ。他の面々も、大体は似たような表情をしており…それにイリゼが苦笑い。

 

「まあ、それは何度か繰り返せば自然と慣れるよ。…それで皆、具合が悪かったりはしない?」

「大丈夫!ご覧の通り、元気一杯のねぷ子さんだよ!…まあ、ちょっとお腹空いてるけどね〜」

「そうね、数日分の割にはあまりにも減っていないけど……というか、ほんとに全然時間経っていないわね…」

 

 胸を張るネプテューヌに軽く頷いた後、イヴが浮かべたのは怪訝な表情。彼女の視線の先にあるのは時計であり…イヴの言葉通り、一同は仮想空間内で数日を経験しているにも関わらず、実際には数時間しか経過していなかった。

 それも、仮想空間…現実ではない場所だからこその、意図的な時間のズレ。仮想空間の時間は加速状態にしておく事により、実際以上に長い時間の活動を可能としており…今回一同が戻ったのは、日に数度設定してある休憩の為。

 

「さてと、じゃあ暫く休憩な訳だけど…ここまで経験してみてどうだったかしら?」

「どう、と言われたら…そうですね。…面白くなるのは、ここからなんじゃないかと思います」

「だよね。皆、ここまでで何となく仮想空間の事は掴めたと思うし…本格的な競い合いは、ここからだよ」

 

 セイツの問いに、小考の後ビッキィが答え、周囲も頷く。その前向きな回答にイリゼは小さく笑みを浮かべ…やる気に満ちた表情を見せる。

 そう。仮想空間では数日経過したとはいえ、多くの者がここまでは仮想空間の事、仮想空間内で出来る事の把握と、それを踏まえた動き出しに時間を割いていた。故にまだ、各々のポイントに大きな開きはなく……しかしここからは、大きく動く。大きく変わる。そんな予感を、皆が多かれ少なかれ感じていた。




今回のパロディ解説

・「〜〜住民が皆動物の村〜〜」
どうぶつの森シリーズの事。ゲームだから、といえばそれまでですが、家具を始め家の中の物は大概軽々と出し入れ出来るのは凄いですね。

・「〜〜カイト君。君がナンバーワンだ」
DRAGON BALLに登場するキャラの一人、ベジータの名台詞の一つのパロディ。言われた相手はカカロットではなくカイト…最初と最後が同じなのは意識してませんでした。

・「〜〜洞窟にいる〜〜届ける依頼〜〜」
ペンギンの問題にて出てきた、あるネタの一つの事。ピンポイント過ぎて分かる人はそうそういないと思います。でも私的には、印象深いネタだったりします。

・「〜〜ここはイリスに任せて、先に行けー」
有名な死亡フラグの一つのパロディ。死亡フラグとして見られる以前から、割と普通に色々な作品で使われていたでしょうし、大元は何かを探るのは難しいですね。

・「〜〜イリスの屍を越えてゆけ?」
俺の屍を越えてゆけのパロディ。上記のネタの後だと死亡フラグっぽくも思えますが…屍云々の時点でもう、死亡フラグではなく死亡ですね。

・「〜〜もうピッケルや〜〜時代なのよ?」、「〜〜釣りも大分前からルアーが〜〜」
モンハンシリーズの採取に纏わるシステムの事。実際便利になったものですよね。しかしメイン要素ではないところを楽にするのは、決して悪くない事だと思います。

・目と目が合ったら、それは即ち…!、「ポケモン!」、「バトル!」
ポケモンシリーズにおける、お約束的なフレーズの一つのパロディ。実際片方はポケモンの二次創作のキャラですしね。…最新作でその辺りは変わりましたが。
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