超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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第三十二話 重なりし多元の破壊者

 緊急用の経路を利用し全員現実に戻った後、全てのデータを消し去って事態を収束させるのではなく、バグを仮想空間の中から何とかし、データを消す事なく解決させる。誰かがではなく、皆でそれを目指す。それを、その選択を、わたし達は選んだ。

 そうなったのは、きっとイリゼだから。勿論、一人一人の優しさがあっての事だけど、そんな皆と繋がりを、絆を紡いだイリゼだからこそ、皆も協力してくれるんだと思う。だからわたしは、そんなイリゼの事が誇らしいし…皆の思いは間違いじゃなかったと証明する為にも、必ずこれからの事を成功させる。皆と共に、させてみせる。

 

「…ここ、みたいだね」

 

 地上から空へと視線を上げながら、茜が言う。わたし達も同じように、それを見やる。

 今、わたし達の前にあるのは、四つの塔。上部からは渡り廊下が伸び、四方向からの渡り廊下でのみ支えられた部屋の存在する、物々しい建造物。

 

「なんていうか…見るからにゲームで出ていそうな塔だよね。それも序盤じゃなくて、終盤とかクリア後に登場するダンジョン系っていうか…」

「それは結構当たってる、かな。これは元々、ゲームでいうボスバトルみたいなイベント用のものだったから」

 

 天の声の様に聞こえてくる、ネプギアの声。ネプギアからの案内を受けて、わたし達はここまで来た。

 何故、わたし達が今ここにいるのか。どうしてこの塔の前まで来たか。…それは、ネプギアや技術者の人達が解析を進めてくれた事で、バグの大元…発生源とでも言うべきものが見つかったから。それが今は、この塔…というよりシステムを飲み込んでいるらしくて、発生源を何とかするには、この中に入り、進んでいくしかない。

 

「確認だけど、ここを攻略して、ボスに当たる存在を倒す事が解決に繋がる…って事で良いんだよね?」

「はい。普通、『バグを倒す』…なんて事は成立しないんですが、もうただのバグ…データの域を超え始めているからこそ、撃破という概念が通用するんです。更に、それでいてデータとしての要素が全てなくなってしまった訳ではないようですから、同じくデータの状態になっている皆さんが倒す事が、そのまま撃破に繋がるんです」

「けどそれは、今解析出来た範囲での推測でしかない。そして正しかったとしても、いつまでもこの方法が通用するとも限らない…そうよね?」

 

 イリゼからの確認にネプギアは答える。続くイヴの言葉にも、肯定を示す。

 こうして解析をしてくれたおかげで、発生源を見つけてくれたおかげで、どれだけ掛かるか分からない、『解決方法を探す』という段階をクリアする事が出来た。わたし達の無茶を受け入れてくれただけでなく、大きな後押しもしてくれた。

 でも、それはあくまで道筋を照らしてくれただけ。その道を進むのはわたし達で…道の先まで行けるかどうかも、わたし達次第。

 

「本来の仕様だと、ここではまず各塔のボスを倒す事で中央への道が開けて、最後のボスに挑める形となっているんですけど…」

「その通りなら、四つのチームに分かれて攻略する方が良さそうですね。各塔での戦いがどんなものになるかは未知数ですが…そもそも時間に余裕がない以上、安全策ばかりを取っているわけにもいきません」

「そッスね。で、チーム分けはどうするッスか?公平に分けるなら、四人チーム二つに、五人チーム二つってとこッスが……」

「ワイトの言った通り、各塔の事が分からない以上、戦力の配分なんてしようがない。であれば必要なのはチームの人数よりも、組み合わせ方だろうさ」

「ま、そうよね。普通に考えるなら、前衛に後衛、それにサポートの立ち回りが出来る人が各チームに一人ずつは欲しいかしら」

 

 頬に指を当てて、エストちゃんが言う。どのような組み合わせにするか…それはチーム毎の目的や作戦に沿って考えるべきだけど、そもそもその参考になる「どんな相手と戦うか」が分からない以上、バランスの良い、癖のない組み合わせを考えていくのが無難。

 そしてそれを念頭に、わたし達はチームの編成を開始。とはいえチーム編成にあまり多くの時間はかけられないし、とにかく仮想敵が未知数だから、考えようのない部分も多い。だから各チームのバランスはしっかりと考えつつも、考え過ぎない…必要以上に凝り過ぎない形で、わたし達は四つのチームとなる。

 

「んー…うん、こんなところかしらね」

「いいんじゃねーの?宜しく頼むぜ、セイツ」

 

 にっと笑うグレイブ君へ、わたしも同じような笑みを返す。チーム名や番号はまぁ別に良いとして…わたしにグレイブ君、ディールちゃんにエストちゃん。イリゼにアイにルナにイヴ。ピーシェにビッキィ、カイトにズェピアに愛月君。そしてネプテューヌにイリスちゃんに、茜と影にワイト。こんな形で、四つのチームは完成した。

 

「後は、それぞれどこの塔に行くかだけど…そうだ。茜だったら、中にいるのがどんなボスか分かったりしない?」

「うーん…期待してくれたルナちゃんには悪いけど、元々データが見えてもよく分からない部分が多いし、しかも今は情報が滅茶苦茶になっちゃってるから、把握するには物凄く時間がかかっちゃうかな」

「それなら勘で選ぶのが一番ですね。因みにわたしの勘は、あの塔が良いと言っています。…多分」

「イリスは、あそこが良いと思う。イリスの中の、勘の良いイリスが言っている」

 

 ただの勘な筈なのに、妙に自信あり気な雰囲気を見せるビッキィとイリスちゃん。それ自体には皆、苦笑だったり呆れ気味に笑っていたりはしたけど…実際のところ、塔の外観から推測出来る事なんてない。であれば、勘で選ぶっていうのも悪くない…かもね。

 

「それじゃあ皆、塔の先でまた会おう…なんてね」

「皆さん、お気を付けて。…エスちゃんも、頑張って」

「取り敢えずは私とビッキィで先行します。私は女神ですし、ビッキィも結構タフですから」

「では、何かあればバックアップしよう。裏方に関しては得意なのでね」

 

 四チームに分かれて、わたし達は塔へと向かう。自分達がこれから挑む事になる存在も、違うチームの皆が挑む存在の事も、全く分からない。

 でも、相手の事は分からなくても、皆の事は知っている。まだ長い付き合いではないけど、皆の力は分かっているし、頼れるとも思っている。だから、わたしがこれまで経験してきた戦いや、その中で一緒に戦ってきた皆と同じように…信じるだけ。

 

 

 

 

 チームの編成について、そこまで細かく枠組みを決めていた訳じゃない。でも何となく、不文律…暗黙の了解とでも言えそうなものはあった。例えばそれは、どのチームにも一人は女神がいるようにしよう、とか、四人チームは五人チームより人数が少ない分、女神が複数いる形を作ろうだとか、そんな風に。

 その結果、チーム間の戦力差はあまりない形で、四チーム作れたように思う。問題は、四つに分かれたチームで、各塔を攻略出来るか…効率に見合う戦力かどうかだけど、それはもう試してみるしか、戦ってみるしかない。

 

「外もだったが…中は全然バグってる感じないな」

「うん、どこも壊れてたりしないもんね」

「恐らく、バグが異物ではなく、正規のものになっている…バグが掌握している空間だからこそだろうね。バグはあくまで異常の結果、壊れているという状態を指す言葉だから、表現としては些か語弊のある言い方であるけど…」

 

 塔の中は見た目より広く、今私達は螺旋階段を登っている。私とビッキィが前を歩いて、少し後ろから愛月君達三人が続いている。

 後ろから聞こえてきた会話の通り、今のところ塔の中でバグってるような場所はなく、塔周辺も特にバグってはいなかった。少し離れるとバグ塗れで、そこから更に遠い位置…比較的まだバグの影響が少ない地点に、白い空間から私達は転移してきた。直接発生源付近に転移するより、バグの影響が少ない所からの方が良いだろうという事で、歩いて塔の所まで来た訳だから、ここに入ってから…というより、塔周辺に着いた時点で、まるで台風の目に入ったような…そんな感覚が私にはあった。

 

「罠も進むのを邪魔する敵もいませんね…油断を誘ってるんでしょうか」

「何とも言えませんね。ただ何にせよ、油断していい状況じゃないのは事実です」

 

 周辺を警戒しつつ、ビッキィの言葉に答えながら歩みを進める。まさか、階段の途中でボスに当たる存在が出てくる事はないだろう…なんて考えてはいけない。そういう勝手な思い込みが命取り。

 

「…大広間?」

(と、思ってたら本当に何もなかった…まぁ、戦い辛い場所で仕掛けられるよりはいいか……)

 

 一歩分先に行くビッキィが階段を抜け、私もすぐに上層階へ辿り着く。そこは下層階以上に広い、女神の姿で飛び回るのも余裕な位の大広間で…奥には、扉が見える。

 

「方向的には、あの扉の先が渡り廊下だろう。外見からされる広さと実際の広さが明らかに違う事を思えば、確実な事は言えないけどね」

「…行ってみれば分かる、よね?」

「その通りだな。けど、ゲームだったら……」

 

 大広間には何もいないし、何も起きない。そして見ていても変化したりもしない訳で…私はビッキィと頷き合ってから、扉の方へ歩き始める。そして、階段から扉までを結んだ距離の、四分の一程進んだところで…扉の前の空間が、歪む。

 

「……!皆、戦闘準備…!」

 

 それが何かは分からない。けれど事前知識のおかげで、多分この塔のボスが現れるんだろう、とすぐに考える事が出来た。

 私はナイフを取り出す。まだ女神の姿にはならない。相手の姿も分かっていない状態なら、こっちの手札も不用意に見せない方がいい。

 

「…人型に、変わっていく…?…いや違う、ただの人型じゃなくて…おわッ!」

「っと…向こうは早速やる気みたいだ、な…ッ!」

 

 歪みは次第に人の姿に変わっていく。ただビッキィの言った通り、単なる人の姿じゃない。人の姿、その背後には翼の様な物も見えて…次の瞬間、闇色の電撃が駆け抜けた。

 それが襲ったのは、私の真横。ビッキィのいる位置。常人なら気付いた時には貫かれている、そんな速度の先制攻撃が放たれて…けれど常人じゃないビッキィは、間一髪跳んで回避。そこからビッキィは宙返りからの着地をし、反撃としてカイトさんが大剣を振る。その大剣から、床を這うように火炎が走る。

 

「愛月君、君は下がって!」

「う、うん!けど、僕も…僕達も戦うよ!バックス、レックス!」

 

 迫る炎を右腕に持った、棒状の武器…らしきもので歪みは捌く。それを視認しながら私は床を蹴り、接近を掛けつつ愛月君に下がるよう言う。何か色々おかしいグレイブ君はまだしも、愛月君は攻撃を受けたらきっと一溜まりもない。

 そうして接近した私は、スピードを落とさずすれ違う形でナイフを振るう。その時にはもう、歪みは翼を持った人型へと…影の様な(凍月さんじゃないですよ?)存在へと変わっていて、影には難なく躱される。影は真上へ跳ぶ形で避け…そこに飛んできたのは、火炎の球。一瞬カイトさんの追撃かと思ったけど…違う。ちらりと飛んできた方を見れば、そこには脚を振り抜いた格好の、二足歩行の兎っぽいポケモンがいて…更にその後方、愛月君を守るような位置には、斧の様な牙を持つ、怪獣みたいなポケモンもいた。

 

「さっきの電撃、まずはそのお返しをさせてもらう…!」

「意趣返しか。では、私も共演させてもらおう」

 

 火炎球を武器で受け止め防御した影を左右から襲うのは、ビッキィの雷遁と、ズェピアさんの…多分魔術の電撃。挟撃で激しいスパークが上がる中、今度こそカイトさんが二発目の炎を打ち込み…それが届く寸前、衝撃波が影から放たれた。全方位への衝撃波は電撃を蹴散らし、炎を裂き、私にも上から襲い掛かってくる。

 

「大丈夫ですか?ピーシェ様」

「見ての通り大丈夫。…残念ながら、向こうもみたいですが」

 

 バク転の連続で私は避けつつ後退。何度目かのバク転を掛けたところで強く跳んで、着地と同時に立て直す。

 こっちはまだ、誰もダメージを負っていない。けどそれは向こうも同じ。同じ無傷と言っても、ここまでは小手調べだとしても、五対一でお互い無傷というのは、そこにある意味が全く違う。

 

(予想はしていたけど、やっぱり強い…。それに、あの姿…何となく、見覚えがあるような……)

 

 相手は影の様な存在。シルエットみたいな姿だから、はっきりした事は分からなくて…でも、どこかで見たような気もする。ただでも、それが何か、どこで見たのかじっくり考える時間はない。

 

「まだまだ来るよ、気を付け給え!」

 

 電撃と衝撃波を織り交ぜた、空中からの乱射攻撃。私は走り回る事で、走りつつ細かいステップも繰り返す事でそれを躱していく。前後に、左右に避け、時には飛び込み前転も交えて躱し、立ち上がると共に拳銃を抜いて一発放つ。…けど、結果は無意味。武器で軽く弾かれて、それで終わり。

 

「力押しは…今はまだ、厳しいか…ッ!」

「…ビッキィ、懐に飛び込める?」

「やってみます…!」

 

 次々放たれる電撃と衝撃波に、カイトさんが炎で対抗。噴出する炎は衝撃波を割り、電撃を飲み込み進む…けど、影にまでは届かない。どうしてもその前に押し返される。

 遠距離攻撃が強いのは分かった。なら、近距離はどうか。そう思った私はビッキィに言い…聞いたビッキィは、答えると同時に突っ込んでいった。…私としては、出来そうだったら援護の話をと思っていたんだけど…その前に行ってしまった。…いや頼もしいけど、その気概は頼もしいけども…!

 

「はぁぁぁぁ……ッ!」

「わっ、すっごい…よーし、バックスも続いて!」

 

 ただ走り回るだけでなく、上方への跳躍も行って立体的に接近を掛けるビッキィ。不規則に跳ね回る事で、着実に影へ近付いていく。

 そのビッキィに、愛月君のバックスが追随。見た目通り、バックスは跳躍能力が高くて、宙にいるところを狙われた時も、炎を纏った蹴りで電撃や衝撃波を蹴り砕いていく。

 そうして近距離にまで踏み込んだビッキィは、床を踏み切りアッパーカット。下から迫る拳に対し、影は武器を突き出し…直後、大きく跳んだバックスが上から跳び蹴り。追随からの追撃は影に迫り……

 

「ぐっ……!」

「ニィィ……!」

 

 蹴りが当たる寸前、振り上げられた武器でバックスは迎撃された。影は一瞬前にビッキィとの押し合いを制して、叩き落として、即座にバックスにも対応してみせた。

 

「そらよッ!大丈夫か?ビッキィ、バックス」

「感謝します、カイトさん。…ピーシェ様、どうも接近戦も一筋縄ではいかないようです。それと…」

「それと?」

「多分あの武器、刃物じゃありません。殴った感じとしては、打撃武器…棍とか杖とかかと思います」

「それは…あって困る情報でもない、か……」

 

 炎の壁でカイトさんがビッキィ達を守り、ビッキィ達は即後退。戻ってきたビッキィからの報告を受けて、私は少し考える。

 遠距離は、威力範囲共に強力。近距離も、数の不利をまるで感じさせないレベル。今のところ、搦手みたいな動きはしてきていないけど…まだ今の段階じゃ、そういう戦法がないとも言い切れない。

 

「隙のない敵だね。そしてこの大部屋に遮蔽物らしき物はなく、相手から感情らしい感情も感じられない以上、どうしたって正面切っての戦闘にならざるをえないだろう。…さて、どうしようか」

「えっと…あ。ピーシェは女神の姿にならないの?」

「それは俺も思ったな。何か、出来ない理由があるのか?」

「そういう訳ではないんです。使わずに済むならその方が良いし、使うにしても、何も分からないからこそ使うタイミングは考えるべきだと思ったからで……けれどもう十分です。出し惜しみするような相手じゃない事は、よく分かりましたから」

 

 一度攻撃を止め、回避に専念しつつ、言葉を交わす。愛月君とカイトさんから当然の質問を受けて、私はその理由を返す。返して、意識も切り替える。

 不甲斐ない話だけど、相手を見極め、戦術を組み立てる事と、私の女神化は相性が悪い。それはもう、致命的に合わない。それもあって、出来るだけ見極めるつもりだったけど…そうも言っていられないという事は、十分に分かった。加えてここには頭脳労働が得意そうなズェピアさんもいる。ならここからは見る事考える事より、積極的に仕掛ける事の方が…女神としての力を全力で振るう方が勝利に繋がると私は判断し…女神の姿に。

 

「はいはーい!ぴぃにいい考えがある!」

『考え?』

「まずね、ぴぃがつっこむ!その後ぴぃがばーんってやって、どーんってやって、最後はすこーん!」

「具体性が何もないよ!?ま、全く何も伝わってこないよ!?」

「というか最後、当たりが軽くなかったか…?」

 

 ぐるんぐるーん、と腕をまわしながらぴぃはてーあん。でも、あんまりみんなはさんせーって感じじゃない。むー、いいアイデアだと思ったのにー……。

 

「はは…だが愛月君、ピーシェ君が積極的に仕掛けていくというスタンス自体は良いのではないかな?ビッキィの機動力も中々のものだが、やはり最も動き回れるのはピーシェ君だろう。そしてピーシェ君の動きが撹乱になれば、我々も動き易くなるから…ね!」

 

 しゅばっ!…と出てきたまっくろな…なんだろ?かげ?…でデンゲキをガードするずぇぴあ。そうそうそーゆーこと!…なのかどうかさわからないけど、とにかくわかってくれたみたいだからぴぃはアタック!

 

「とりゃー!」

「確かに、速いな…!」

「でしょう?これがピーシェ様の、イエローハート様の本気ですからッ!」

 

 ジャマなこーげきはよけて、無理そうなのはぱんちときっくで跳ね返して、ぴぃはどんどんとつげき。えいやっ、ってしょーげきはを突破して、そのまま爪でカゲにぴぃぱんち。でも、残念。とちゅうまではぐぐぐーって力くらべが出来たけど、あとちょっとで逸らされちゃった。

 

「でも、これだけじゃないんだよねー!」

 

 ななめヨコに逸らされちゃったぴぃだけど、そこからぴぃはくるっと身体を回して、かかとでキック。それも武器でガードされちゃったけど…やたっ!ちょっとカゲがぐらっとした!

 

『今だッ!』

 

 バランスが崩れたカゲに、たくさんの炎がぶつかる。これはかいとばっくすの炎かな?と思ったけど、ばっくすじゃなくて、びっきぃの火遁とかいとの炎。二人の炎はおっきぃ爆発を起こして……

 

「わ……ッ!?」

「あいつき、あぶな…おぉ…!」

 

 ふきとぶ爆発。その中からすごいスピードで出てきたカゲ。そのカゲが向かう先にいるのはあいつきで…だめ、間に合わない!……と、思ったけど…ぶつかる直前に、れっくすが飛んでくるカゲからあいつきを守る。カゲの武器とれっくすの牙がぶつかり合って、れっくすははじかれて…でも一度受けとめてくれたおかげで、ぴぃが間に合う。ぴぃが後ろからきっくして、次のこーげきを止める。

 

「トレーナーを直接攻撃とは、どこぞの漫画版の様な事をする…!」

「ありがと、レックス!いけそうなら、反撃のドラゴンテール!」

「あ、響きがなんか某スパーク系の一種っぽい…せぇいッ!」

 

 ぴぃのきっくを避けたカゲの方に、黒い…ヤリ?…みたいなものが、何本も飛んでいく。それを全部よけたカゲは、とっしんしてきたれっくすのしっぽこーげきもぼーぎょした…けど、今度はぴゅーんと飛んでいく。後で知ったけど、今の…ドラゴンテール?…はすごいパワーがあったんじゃなくて、当たったら相手がおもかったりおっきかったりしても「吹き飛ばせる」技なんだって。

 そうして飛んでいったカゲを、びっきぃはダッシュで追いかける。そのまま追いついて、下に入って、くるっとさまーそるときっく。ぴぃたちの連続こーげきの最後、びっきぃのきっくはばっちり当たって…でもまだカゲはやられない。

 

「飛ばせるかよ…ッ!ピーシェ!」

「まかせてッ!」

「バックスも行って!」

 

 床におちて、だけどすぐ立ったカゲが飛ぼうとしたところで、かいとの炎が上に広がる。その後すぐにかいとは走ってきて、ジャンプアタック。ぴぃもてーくーひこーで追いかけて、カイトのヨコからもっかいぴぃぱんち。ばっくすも炎を出しながらとっしんをしてきていて、ぴぃたちは三人でどーじにカゲにこーげきをした。

 やっぱりガードされちゃうぴぃたちだったけど、またカゲはよろける。ここだ、と思ったぴぃはれんぞくぱんちでカゲを押していく。カゲはパワーもスピードもあって、ガードも固いけど…みんなでたたかえば、ぜんぜん怖くなんてないもんねっ!

 

「てりゃりゃりゃりゃりゃりゃーっ!」

「カイト君、君は左を!」

「はい…ッ!」

 

 ぱんちぱんちでぴぃは影を追いつめる。カゲはおっきくうしろに飛ぼうとしたけど、そこでまたかいとの炎、それにずぇぴあの…なんだろう?タツマキ?…が壁を作って、うしろに行けなくなったカゲはいっしゅん止まって…そこへぴぃが、思いっきりぱんち。ばーんって当てて、どーんと飛ばして……

 

「最後は……すこーんッ!」

『それがすこーん!?』

 

 すぐにジャンプして、ふるぱわーで追いかけて、おなかの辺りにもう一回ぱんち。上から下に、ぶんって振り抜いて…床に、すこーんとカゲをぶっつけた。

 

「さくせんどーり!ぶいっ!」

「いや、あの、ピーシェ…?今のはすこーんじゃなくて、ずどーんとか、ばこーんじゃない…?」

「…ほぇ?そう?じゃあ、ずこんばこーん!」

「…なんというか…ネプテューヌとは真逆だよなぁ…」

 

 くるっと振り返って、ぴぃはぴーす。ぴぃのぴーす!ぴぃがぴーす!ぴぃでぴ……あ、なんかどっかでねぷてぬが、「ストップストーップ!駄洒落ネタはパッと出してパッと終わらせないと大怪我になるよ!」…って言った気がする…ねぷてぬがそう言うならもうやーめたっ。

 と、思ってたら、あいつきが「すこーんは違うかも」って教えてくれたから、ずこんばこーんにチェンジ!そしたらかいとが、えっと…くしょう?…をして……

 

「……──ッ!」

「ピーシェ様?どうし──な…ッ!?」

 

 上から飛んできた、たくさんのビーム。まっくらなかんじの色をしたビームが、ぴぃのいたとこをばーんってうって…あ、あぶなかったぁ。なんだかよくわかんないけど、いやなかんじがして、だからよけといてよかったぁ…。

 

「これは、翼…いや、遠隔操作端末か…」

「えんかくそーさたんまつ?ひっさつわざの名前?」

「百聞は一見に如かず、見ての通りさ。どうやら向こうも本気になったようだ…!」

 

 びゅんびゅん飛んでくる、羽みたいな…えと、えんかくそーさたんまつ。ちっちゃいし、速いし、しかもビームをばんばん出してくる。うぅ、こういうの苦手なのにぃ!

 しかも、いつのまにかカゲがいない。どこ?と探したら、羽がどっかいっちゃったカゲはぴぃの上にいて、上から武器を振ってくる。

 

「……っ、これは…!」

「接近戦に、持ち込めない…!」

 

 うしろにジャンプしてよけて、お返しのきっく。よけられたらすぐにぱんち。でも、さっきみたいなれんぞくこーげきはできない。その前に、たんまつが上とかヨコとか色んなとこからうってきてぴぃのこーげきをジャマしてくる。かいとやびっきぃも、カゲにとつげきできない感じ。むむむ、それなら…!

 

「こっちからっ、落としちゃうっ、だけだっ、もんねーッ!」

「だよね…!スター、スピードスター!レックス、守ってあげて!」

 

 いっかいカゲからはなれて、今度はたんまつを追いかける。追いかけて、追いついて、ぱんちときっくでこなごなにする。一個こわしたら次のたんまつを狙って、それもこわしたらまた次にいって、こわして追っかけてまたこわす。

 下ではあいつきがもふもふしてそうなポケモンを出していて、その子は星のかたちの…エネルギー?…を出していて…なんとその星はぜんぶがたんまつにめーちゅー。わっ、すっごい…。

 

「端末に気を取られるのは…と、思ったが……」

「あれどうにかしなきゃ話になりませんからね!ピーシェ様、本体はわたし達で抑えます!」

「ありがとー!」

「わたし達…って事は、俺もか…!」

 

 カゲはびっきぃたちに任せて、もっとぴぃはこわしていく。たんまつはすばしっこいけどかんたんにこわれるし、真っ直ぐは速いけど曲がるのはそんなにだから、一個一個こわすのはそんなにむつかしくない。それにあいつきの方もやっつけてくれるから……

 

「よーし、これで…おしまいっ!」

 

 最後にのこったたんまつを爪できる。これでもうジャマされたりはしないよね!だからあとは、もっかいカゲにずこんばこーんってやっちゃうもんねー!

 

「…って、あれ?」

 

 びっきぃたちと、カゲがたたかってる。それはふつーのことだけど、知らないうちにカゲの羽が元どーりになってて…そういえば、ぴぃがこわしたたんまつと、あの羽ってにてるよーな…えとえと、ってことは…どっちもおんなじかんじで、たんまつが出てきた時に、カゲの羽はどっかいってたから…も、もしかして…あのはね、さいせーするの…!?

 

「がーん、じゃあまたこわさない、と……?」

 

 せっかくこわしたのにー、ってぴぃはしょんぼり。だけど今のでなれたし、今度はもっと早くこわせる!たぶん!……なんて思ってたぴぃだけど…もっかい、「あれ?」って思った。じーっと羽を、あつまってる時の羽を見てたら、どっかで見たことあるよーな、って思って……

 

「……あーーっ!」

『え!?』

「この羽、おんなじ!あのおばさんのと…おんなじ羽っ!」

 

 気づいた、どこで見たか思い出したぴぃは、自分でもびっくりしながら言う。……前にエディンで、大きいとうで、みんなといっしょにたたかった、あのナスのおばさんとおんなじだって。

 

 

 

 

 僕…っていうか、スターと一緒に飛び回る端末を壊し終えたピーシェの、いきなりの大声。それに驚いた僕が見上げると、ピーシェは影みたいな敵を指差していて…あのおばさんとおんなじ羽。その言葉で、僕も気が付いた。確かにあれは、前に皆で戦った、倒した女の人…が、変身した時の羽とほぼ同じ見た目をしている、と。

 

「言われてみれば、確かに…じゃあこの影的ボスは、お前だったのかマジェコンヌぅぅぅぅぅぅッ!!」

「落ち着き給えビッキィ君。ここはバグっているとはいえ仮想空間、彼女本人がいる可能性は極めて低い。仮にあるとすれば、それは彼女本人ではなく、単なる再現データだろう」

「再現、データ…?…データになってさえ、わたしは労働力搾取の過去から逃れられない…?」

「……何の話だ…?」

 

 あれがマジェコンヌさんかもしれないと分かった途端にビッキィは怒り狂って、それをズェピアさんが宥める。カイトさんはそのやり取りを怪訝そうな顔で見ていて…あ、そっか。この中だと、カイトさんだけはいなかったんだもんね。

 

「…って、そんな話してる場合じゃないよ!?」

「っとそうだった…!てか、再生してるって事は……」

 

 大剣と影の武器がぶつかり合って、カイトさんが押し切った…と思ったら、影はカイトさんを受け流しただけ。続けて影はズェピアさんの色んな魔術も回転させた武器で防御すると、翼に付いた羽を飛ばす。飛んだ羽は、新しい遠隔操作端末になって、また僕達を邪魔し始める。

 

「もー!えっと…すたー!もっかいさっきの星をぴゅーんって出すやつやって!」

「ぶーいっ!」

「落ち着け、落ち着けわたし…そうだ、ものは考えよう…ボスがマジェコンヌの再現データなら、尚更ぶっ飛ばせば良いだけの事…!」

 

 飛んでるピーシェのお願いを受けて、イーブイのスターはスピードスターを発射。ピーシェもまた端末を追い掛け始めて、僕もスター達の指示に戻る。

 素早くてパワーもあるエースバーンのバックスにはカイトさん達と一緒に戦ってもらって、バックス以上のパワーとタフさがあるオノノクスのレックスに防御を任せて、バックスやレックスよりレベルは低いけど、遠距離必中範囲攻撃力っていう端末を撃ち落とすにはぴったりな技を持つスターにピーシェの協力をしてもらう。バグで色々おかしくなっちゃってからは、その前は出来ていた手持ちの変更が出来なくなっちゃったけど、今出してるバックス達以外にも、僕には後三匹残ってる。…でも、まだ出さない。っていうか、出せない。何にも考えず六匹全員出したって、僕の指示が間に合わなくなっちゃうから。

 

(これはポケモンバトルじゃないけど、その時その場に合わせた判断をするっていうトレーナーの基本は変わらない…筈…!)

 

 ぱんぱんっと軽く頬を叩いて、部屋の中を広く見る。三匹の事も、皆の事も、影や端末の事も、全部見るようにする。僕が一番後ろにいるんだから、何かあったらすぐに気付けるようにしないと…!

 

「カイト君、ビッキィ君、そのまま攻め給え!どうやら、というか見た目通り、羽を端末として射出している間は飛行能力が落ちるようだからね!」

「飛ばれ、なけりゃ…ッ!」

「こっちも、届く…!」

 

 ズェピアさんのサポートを受けて、カイトさんとビッキィは近接戦を仕掛け続ける。カイトさんは炎を纏った大剣で重い一撃を一発一発、ビッキィはパンチとキックを次から次へと打ち込んで、それぞれパワーとスピードで影を攻める。パワーもスピードもある影は、二人の攻撃を受けても避けて、防御して、反撃してくるけど、そのタイミングでズェピアさんが影っていうか、黒い霧っていうか…とにかくそんな感じの見た目をした刃とか壁とかを割り込ませて、徹底的に邪魔をする。何度か影は飛ぼうともしてくるけど…そこはジャンプ力に自信のあるバックスの出番。飛ぼうとする度バックスには追ってもらって、キックか火炎ボールで動きを止めて、影を押し留める。

 ボスの影は凄く強いけど、ここにいる皆も強い。だから僕達は、負けていない。

 

「今度こそー、おしまいっ!みんな、おまたせーっ!」

「…いや、残念だが終わりではないようだ。また再生が始まっている…!」

 

 またスターと協力して全部の端末を壊したピーシェの、槍が飛んでくるみたいな飛び蹴り。それは影を掠って、影は大きく後ろに下がって…下がる影の翼には、闇色の光が灯る。幾つも光が出てきて、それが弾けると中から新しい羽が現れる。

 三度目の、端末展開。もう三度目だから、ピーシェの対応は早くて、結構なペースで落としてくれる。…でも……

 

「また、再生した…!?」

「これで四度目…まさか、無限再生するんじゃないだろうな…?」

 

 焦りの混じった、ビッキィとカイトさんの声。僕もバックス達皆に頑張ってって声を掛けてるけど…もしかしたら、本当にそうなのかも。どれだけ壊しても再生する、壊される度に元通りになっちゃう羽、そういう能力なんじゃ…って思ってしまう。

 今は出てくる度にピーシェとスターに撃ち落としてもらってるから、戦えている。でもピーシェは端末が出てくる限り、影本体への攻撃は殆ど出来ないし、数が多い内は全部を引き付けられてる訳じゃないから、幾つかはビッキィ達の方に行って、影への攻撃の邪魔をされる。だから負けてないけど、勝ててもいない。

 

「ぶ、ぶいぃ…」

「グアゥ…」

 

 段々元気のなくなるスターの鳴き声。レックスがぽふぽふ撫でて上げると、少し鳴き声に元気が戻った…けど、勿論それでほんとに回復した訳じゃない。まだまだ成長中のスターは、そんなに体力がある方じゃないし…他の皆もそう。戦えば戦う程、疲れていっちゃう。

 だから、このままじゃいけない。皆が疲れ切る前に勝たなくちゃ、この先には進めない。…でも、どうしたら?どうやったら、何度壊しても再生する端末を、何とか出来る?

 

(カイトさんの炎みたいに、威力がある広範囲技で、一気に全部壊し…ても、再生されたらお終いだよね…一気に壊せる位の炎なんて出したら、カイトさんも凄く疲れるだろうし…。なら逆に、壊さないで……いたらまともに影に攻撃出来ないんだから意味ないよ…!うぅ、ほんとにどうすれば……)

 

 色々考えてみるけど、良い案は中々出てこない。考えている間にも戦闘は続いていて、四度目の羽も全部破壊に成功する。だけどやっぱりまた、羽は再生する。再生して、影はそれを射出して、ゼロになっていた遠隔操作端末の攻撃が再開される。何度壊してもその度に再生されて、何回やっても結局は元通りに……

 

「…元、通りに…?増えるんじゃなくて、元通りに……?」

 

……その瞬間、マイナス思考になりそうになっていたその瞬間に、僕の頭の中である事が引っ掛かった。

 まだ、分からない。もしかしたら、って位の事。だけど…可能性は、ゼロじゃない。

 

「え、と…レックス、あの影への攻撃をお願い!ズェピアさん!」

「うん?」

 

 スターを抱っこして、これまで端末のビームから僕達を守ってくれていたレックスに前進の指示を出して、ズェピアさんを呼ぶ。軽やかなステップで下がってきてくれたズェピアさんに、僕は気付いた事を話す。

 

「あの、ズェピアさん!あの影が羽を再生させるタイミングって、いつか分かる?」

「再生させるタイミング?…あぁ、そういう事か…よく気付いてくれたね愛月君。それはきっと、戦況を変える突破口になる」

 

 まだ聞いただけなのに、全部理解した、って感じの顔をするズェピアさん。えぇ…?…とは思うけど、凄い…っていうか頼もしいし、早く理解してくれたなら、次の話に…一番大事な部分へすぐ入れる。

 

「けど、どうしたら良いかな…?壊さないでいる訳にはいかないし、でも壊したら……」

「それは簡単な事だよ。愛月君、私に任せ給え。…ピーシェ君、今回は端末を一つだけ残しておいてもらえるかな?」

「うぇ?いっこだけ?」

 

 ぽふり、と僕の肩に片手を置いたズェピアさんは、ピーシェに呼び掛ける。任せる事に決めた僕は、三匹の指示に戻る。バックスには跳ね回るようなヒットアンドアウェイを、レックスには牙、両腕、それに尻尾をフル活用した連続攻撃を、そして疲れ気味のスターには無理しないよう、少なめのスピードスターをするように言う。

 見れば、影は全然疲れてる様子がない。やっぱり、このまま戦っていたら、その内不利になるのは僕達の方。でも、僕が思った通りなら、ひょっとしたら…!

 

「えいやっ!とりゃ!これで……あ、そーだ!ずぇぴあ、いっこだけのこしたよっ!」

「流石ピーシェ君、仕事が早いね。では…最後に残った端末も、舞台からは捌けてもらおうか」

 

 影の武器による刺突をカイトさんが大剣で受け止めて、その間にビッキィが反撃を仕掛ける中での、ピーシェの声。それを受けたズェピアさんは、最後の一つの方へ走っていって、わざと羽の先端…ビームが出てくる方へ跳ぶ。

 当然そのズェピアさんに向けてビームを撃つ端末。対するズェピアさんは、腕を振るってマントをはためかせる。外側に向けてはためいたマントは、当たったビームを盾の様に逸らして…逆に振るわれたズェピアさんの腕からは、糸みたいな何かが伸びて端末へと絡み付く。絡まれた端末は途端に止まって、動かなくなって…落ちる。

 

「(後は……)──よしッ!分析どーり!」

「…わーお、とは言わないんだね」

 

 分析、なんてレベルの事はしていない。でも、思わず僕は言った。端末が落ちた瞬間から、僕は影の方を見ていて…そこで、僕の予想が正解だったと分かったから。これまでは、毎回再生していた羽が…()()()()()()()()元通りになっていた端末が、今度は再生していなかったから。

 

「皆、今だよ!今なら…一つだけ残ったままだから、端末は再生しない!一気に、決められる!」

「……?あ、ほんとだ!あたらしーの出てこないっ!」

「一つだけ…?それは、どういう…と、思ったけど……」

「今なら一気に決められる…なら、最優先するべき事はそれだな…ッ!」

 

 呼び掛ける僕。今の状態を理解して、一斉攻撃に動く皆。これが、ここまでで一番のチャンス。だから一気に決める。一気に…倒す!

 

 

「喰らえッ!」

「バックス、ブレイズキック!レックス、噛み砕く!」

「ふむ、そういう事か…出番だよ、端末君」

 

 叩き付けるような、防御ごと飲み込むような、カイトさんの炎の一撃。それで影が体勢を崩したところへの、バックスとレックスの同時攻撃。バックスには得意な炎技での、レックスには「影っぽいし、ゴーストタイプ…的なところもあったりして?」と思って、ポケモンだったらゴーストタイプに効果抜群な悪技での攻撃を指示して、その両方が影にヒット。更にそのすぐ後には、ビームが一発影に放たれて…それはなんと、端末の攻撃。どうやったのかは分からないけど、今はズェピアさんが端末を操作しているみたいで…四連撃の全てが、影にダメージを浴びせる。

 でも、これで終わりじゃない。ピーシェとビッキィの…二人の攻撃が、まだ残っている。

 

「びっきぃ、いっくよー!」

「はいッ!マジェコンヌっぽい影…覚悟ォッ!」

 

 大きく崩れた体勢が戻る前に、ピーシェが宙から鋭く飛び蹴り。続けてビッキィが突っ込んで横蹴り。そこからピーシェは飛び回る事で、ビッキィは駆け回る事で次々と一撃与えては離れて、離れてはまた接近からの一撃を与えてという、凄い速度での連続攻撃を浴びせていく。

 攻撃の間隔は、同じじゃない。不規則に攻撃と攻撃の間の時間は変化していて…だけど一度も、二人のタイミングが被って失敗する、なんて事はない。二人は息ぴったりで、だからこそ『隙』が全然なくて…影は立て直さない。直そうとする度に、絶妙なところで次の攻撃がきて、どんどんやられていく。攻撃が重なっていく。

 そうして何度も攻撃した末に、離れたところからビッキィは鎖鎌の鎖側を投げる。当たると思った鎖の先端、重りの部分はギリギリのところで避けられて…でもその先にいたのはピーシェ。それも想定内だって位に、何の動揺もなくピーシェは飛んできた重りを蹴って…蹴られた重りは軌道が変わる。鎖が影に引っ掛かって、そこからぐるぐるとあっという間に巻き付き縛る。そして、最後に…完全な無防備になった影に叩き込まれるのは、二人の同時攻撃。

 

『デュアラ・ブルブレイ…クロー!』

 

前と後ろから、同時に突っ込むピーシェとビッキィ。元から装備しているピーシェは勿論、ビッキィも今は鉤爪を装備していて…すれ違いざまに、二人は振り抜く。二つの鉤爪で、影を…斬り裂く。

 

「ふぅ…やりましたね」

「うん、やったねっ!」

 

 軽く跳んで離れたピーシェとビッキィは、並んで立つ。ビッキィが軽く手を挙げて…そこにピーシェが思いっ切り手を振って、ハイタッチ。ピーシェはにっこにこで…でも「ばしーんっ!」…っていうと凄い音が鳴っていた通り、ビッキィの腕は吹っ飛びそうな位衝撃を受けていた。…だ、大丈夫かなビッキィ……。

 

「これにて一件落着…ではないね。後の事を思えば、これはあくまで中ボス…か」

「ですね。…けど、一つ残す事で再生を阻止する、か…なんかゲームみたいな攻略法だが、ネプギアの説明的には、そういうゲームみたいな要素があってもおかしくな──」

 

 ばたんと倒れた影を見て、ズェピアさんとカイトさんも力を抜く。僕もバックスとレックスを呼び寄せて、スターも一緒に頭を撫でる。ますはスターを撫でて、次はバックスを撫でて、最後は一番背の高い、ちょっと身を屈めたレックスを撫でて……

 

「……──ッ!?待って、皆…何か変だよ!?」

『……!?』

 

 心地良さそうにするレックスの顔。その横からは、影がちょっぴり見えていた…っていうか、視界に入っていて…だから、気付く事が出来た。倒れた影が、元の歪みみたいになって…でも消えるどころか、大きくなり始めている事に。

 

「ふくらんでる…?」

「膨らんでる、というより…これは……」

『まさか…第二形態…?』

 

 すぐに戦闘体勢に戻ったズェピアさんに続いた、ビッキィとカイトさんの言葉。その間も歪みは大きくなっていって、最初みたいにまた形が変わっていって…だけど、今度は違う。今度はさっきみたいな、ただの人型じゃない。

 再び現れる、特徴的な翼。楕円っぽさもある、巨大な身体と、身体とは対照的にゴツゴツしたような…影みたいな外見のせいでよく分からないけど、何か身体とは合っていないような気がする手足。浮かんだ状態だったそれは、ゆっくりと床に降り立って…身体の上の部分が、蠢く。多分、顔なんだと思う部分に目と口の様な、三つの線が入って…ぐにゃりと、歪む。歪んで、作り上げる。優しさも、明るさも、温かさも何もない……ただただぞっとするような、口元が裂けたような…そんな笑みを。




今回のパロディ解説

・「〜〜ぴぃにいい考えがある!」
トランスフォーマーシリーズに登場するキャラの一人、コンボイ(オプティマスプライム)の代名詞的な台詞のパロディ。…まあ、作戦ではなかったですね。こうやって戦いたい、という意思表示位でしょうか。

・「〜〜某スパーク系の一種〜〜」
デュエル・マスターズの呪文の一つ、反撃のサイレント・スパークの事。しかしオノノクスは光文明感も、水文明感もないですね。むしろ五大文明の中でなら、火文明っぽいでしょう。

・「〜〜分析どーり!」、「…わーお〜〜」
ポケモンシリーズに登場するキャラの一人、ネジキの代名詞的な台詞のパロディ。流石に台詞に関してはポケモンの二次創作ともコラボしていても、パロネタという扱いになる…と思います。
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