超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
どんなに強かったり凄かったり、常識が通じなかったりしても、完全無欠って事はそうそうない。タイプ的に弱点のないポケモンがいないみたいに、イリゼ達女神にはシェアエナジー?…ってものが必要不可欠だったりするみたいに、誰だって、なんだって、穴はある。
そう。これは本当に、誰にだって言える事。たとえそれが、無茶苦茶の化身みたいな存在だったとしても。
「へっくしょん!…うー…駄目だ、くしゃみが止まらん……」
部屋の中に響く、大きなくしゃみ。それに続くのは、何とも調子の悪そうな声。
ここは、神生オデッセフィア教会の部屋の一つ。こっちに来ている間の、グレイブの部屋で…くしゃみをしたのも、グレイブ。
「グレイブ、やっぱ風邪引いたんじゃない?」
「そんな馬鹿な…バンカーは風邪引かないって言うじゃねぇか」
「いや言わないし、言うとしてもグレイブは銀行員じゃないでしょ…」
変な事を言うグレイブに、僕は呆れる。風邪の影響で変な事を言った…訳じゃないだろうなぁ。普段から、ふざけてこういう事言ったりするし…。
と、思っていたら、部屋の扉がノックされる。それにグレイブが答えれば、扉が開いて、廊下からイリゼが入ってきた。
「愛月君、グレイブ君の調子はどう?」
「うーん、見ての通りかな。普段より調子は悪いみたいだけど…」
「なんで本人がいるのに愛月に訊くんだよ…」
「だってグレイブ君、くしゃみ出るだけだから休む必要はない…とか言うでしょ?」
「俺的にゃ、マジでくしゃみ出るだけなんだけどなー…」
イリゼの指摘に僕がうんうんと頷く一方、グレイブは不満そうに言葉を返す。仮に風邪じゃなくても、くしゃみが何度も出る時点で何かしら調子が良くない筈なんだけど…グレイブは中々それを認めようとしない。
「じゃあさグレイブ君、くしゃみが出るようになったのはいつから?」
「いつからって…昼寝の前は特に何もなかったし、数時間位前からだな」
「昼寝の前は何してたの?」
「朝のトレーニングだな。今日は氷淵も結構やる気だったから、凍える世界のパワーアップを目指して思いっ切りやりまくっ…ぶえっくしょん!」
((あ、原因これだ……))
物凄く寒い凍える世界の中で、そんな事気にせずトレーニングしてるグレイブの姿が思い浮かんだ僕は、イリゼと顔を見合わせてお互い呆れた顔を浮かべる。で、多分身体が冷えたまま、疲れたからって温かくしないで寝たんだろうなぁ…。
「とにかく、俺は大丈夫だっての。愛月もイリゼも心配し過ぎなんだよ」
「…グレイブ君。確かにグレイブ君は身体が強いみたいだし、ちょっと位の風邪なんて何ともないのかもだけど、誰かに移しちゃったら大変でしょ?グレイブ君も、そうなるのは望まないよね?」
「う…そりゃまあ、そうだが……」
「あ…なんだ。風邪っぽいかも、って事自体はグレイブも認めてたんだ」
「うっせぇ」
じっと見つめて、少し低いトーンの声を出したイリゼの言葉に、グレイブは口籠る。…まあでも多分、最初からそれは意識してたっていうか、誰かに移すのは不味い…って考えてたんだろうね。じゃなきゃ、文句言うだけじゃなくて部屋を出ていっちゃいそうだし。くしゃみが出るだけ、って言うだけあって、今のグレイブは普通に歩ける位の元気があるし。
「分かったなら宜しい。じゃあグレイブ君、何か食べたいものある?ちゃんと栄養を摂れば回復も早まるだろうし、リクエストがあれば作ってくるよ?」
「じゃあ、ステーキ」
「病人が食べるものじゃないでしょうステーキは…お粥でいい?卵とか鶏肉とか使って、クドくない程度に濃いめの味付けにしてあげるからさ」
「あー、じゃあそれで頼む。…悪いな、イリゼ」
「気にしないで。ここの主としても友達としても、放っておけないだけなんだから」
済まなそうに謝るグレイブに優しく笑って、イリゼは部屋を出ていく。見送ったグレイブは、小さく溜め息を吐いて、後頭部を掻く。
「なんだかなぁ…」
「え、何急にぶらっと途中下車をしそうな声出して…」
「違ぇよ、冴えないヒロインの方だ」
「そっち!?僕が言った方もそうだけど、そっちはもっと無いと思うんだけど!?」
「いや、どっちでもないんだけどな」
「うん、だろうね…で、どうしたのさ」
「どうもこうも…格好悪いだろ、世界を超えてまで旅行しに来たのに、体調悪くして世話されるとか……」
また変な事を言い出した…と思ったけど、実際は違った。ふざけてはいたけど、考えていたのは普通の事だった。
…いや、違う。普段だったら、グレイブはこんなしょぼくれた感じで言ったりしない。やっぱり、グレイブはいつもの調子じゃない。
「そう思うなら、大人しく休んで、早く治す事だね。じゃなきゃ氷淵だって責任感じちゃうだろうし、他の手持ちの皆も心配するよ?」
「へいへい、分かってるっての。…けど、休むって言ってもなぁ…さっき昼寝したから眠くはねぇし、ただ横になってるだけなんて暇過ぎるし…そうだ、軽く運動すりゃ疲れて眠気も……」
「そんなの駄目に決まってるでしょうが。はぁ…(これだからグレイブを一人に出来ないんだよね……)」
一人にしたらこっそり外に行きそうだから、誰かが見ていなきゃいけない。最初はイリゼやセイツさんが、自分達が見るから…って言ってくれたけど、二人共やる事があるだろうし、えっと…身内の恥?…とは違うけど、僕と一緒に来たグレイブの体調不良なんだから、こういう事は自分がしないと…なんて思ったのが、僕もこの部屋にいる理由。
まあまだ何日もこっちにいるし、今日は手持ちの皆をここで出してのんびりするのも良いのかも…なんて風に考えた僕。でもそこでまた、扉が開く。今度はノックなしでいきなり開いて、凄い勢いで誰かが入ってきた。
「グレイブ君、倒れたって聞いたけど大丈夫!?」
『へ?』
びゅんっ!…って音が聞こえそうな位のスピードで入ってきて、グレイブが座ってるベットの側まで駆け込んで来たのは、ネプテューヌお姉ちゃん。ベットの側まで来ると同時に、お姉ちゃんは慌てた様子で尋ねてきて…その質問に、僕もグレイブもぽかんとなる。
「…えーと…ネプテューヌ?俺、別に倒れちゃいないんだが…?」
「え…?急病とか、持病の再発とか……」
「ないな」
「じゃあ、大怪我を負ったとか……」
「でもないな。てか、怪我じゃねーのは見れば分かるだろ」
「…あっれぇ…?もしかして、なんともない…?」
「そういう事だ」
「そういう事ではないでしょ…ちょっと体調悪いのは事実でしょ……」
さらっと具合悪くない事にしようとするグレイブに突っ込んだ後、僕がさっき聞いた経緯を説明。するとお姉ちゃんは「なーんだ…」とほっとした様子で脱力をして…開けっ放しになっていた部屋の出入り口から、また別の人が…今度はカイトさんが部屋に来た。
「よっ、グレイブ。具合は…そこまで悪くないみたいだな」
「あ、カイト…もー、聞いてた話と全然違うじゃん」
「うん?聞いてた話?」
「ほら、今さっき言ったでしょ?グレイブ君が倒れたらしいって」
「倒れた?いや、俺は体調崩したとしか言ってない…よな?」
怪訝な顔でカイトさんが訊けば、お姉ちゃんは腕を組んで、うーん…と考え始める。そのままお姉ちゃんは目を閉じて、首を傾げて……それから、苦笑い。
「あはは…ごめん、ここに来るまでに自分の中で勘違いしてったのかも…」
「…お姉ちゃんって、伝言ゲームで内容を凄く変えちゃうタイプ…?」
「うっ…そんな事ないって言いたいけど、完全にそのパターンだから何も言い返せない……」
しょぼーんとするお姉ちゃんの様子に、今度は僕達が揃って苦笑。…で、えっと…カイトさんがお姉ちゃんにグレイブの事を話して、二人が来たって事は…二人共、グレイブも心配して見に来てくれた…って事だよね。
「ま、とにかく思ったより大丈夫そうで安心したな。もしかして、朝のトレーニングで頑張り過ぎたのか?」
「ある意味そう、かもなぁ…。…うん?てか、朝の氷淵との特訓中は、カイトもいたよな?なのになんで俺だけ……」
「氷淵…あぁ、そういう事か。そりゃ、俺はこれがあったからな」
そう言って、カイトさんは掌から小さく炎を出す。要は、カイトさんは炎の熱でグレイブよりは冷えなかった…って事、らしい。
「あー…俺も獄炎にボールから出てもらうとかすりゃ良かったな…だーっ!上手くいかねぇなぁほんと…」
凄く単純な冷え対策を思い付かなかった(というか、気合いで寒さを乗り越えてた…?)っぽいグレイブは、唸りながらベットに倒れて仰向けになる。そんなグレイブに、お姉ちゃんは苦笑して…それからベットに座る。
「そういう事は、誰にもあるものだよ。だからむしろ、ここは逆に考えてみたらどうかな?」
「逆?」
「体調を崩した、最悪だー…じゃなくて、体調が崩れたけどかなり軽く済んだ、ラッキー…ってね」
「コップに半分入った水を見て、もう半分しかないって思うか、まだ半分もあるって思うか…みたいなやつか」
「そうそうそれそれ、因みにカイトはどう思うタイプ?」
「俺は…その時々だな。喉が渇いている時は半分しかないって思うだろうし、そうじゃなきゃ半分もあるって思う…と、思う」
「それは…誰だってそうなんじゃないかな…?」
「あはは、確かにね。でも、『そういう答えを最初に出す』っていうのが、カイトならではの答えとも言えるよね」
立てた人差し指を上に向けてくるくるさせながら、お姉ちゃんが言う。カイトさんがそれに答えて、僕の言葉には「それも答え」だってお姉ちゃんが返す。で、グレイブはといえば、へー…って感じで聞いていて…そのグレイブの側に、プリンの容器がぽふんと置かれた。
「ね?体調崩しちゃったのはもう変えられないんだから、前向きに考えよ?軽く済んだし、何なら可愛くて優しい女神様からプリンも貰えた〜、ってさ」
「…くれるのか?」
「ちょっとぬるくなっちゃってるけど、プリンならこういう時にもぴったりでしょ?こんなサービス、滅多にしないんだからねっ!」
「…じゃ、貰うかな。へへ、これでイリゼのお粥にデザートが出来たぜ…」
貰ったグレイブはちょっと笑って、プリンをベット近くのテーブルに置く。うんうん、と素直に貰ったグレイブにお姉ちゃんは頷いていて…見た目はイリゼの方が大人っぽいけど、やっぱりネプテューヌお姉ちゃんの方がお姉ちゃんっぽいなぁ、って思う僕だった。……いや別に、イリゼが見た目の割に子供っぽいって訳じゃないよ?ただこう、『お姉ちゃんっぽい』っていう言葉が似合うのは、イリゼよりネプテューヌお姉ちゃんかなって事で…それにほら、イリゼはお母さんキャラもある訳だし。
「ごめんね、愛月君のはなくて。次何かあったら、その時は愛月君にもあげられるようにするからね」
「え?い、いいよ謝らなくても。元々このプリンだって、自分用だったんでしょ?」
「じゃ、愛月には代わりに俺からこれをやるよ。期間限定って事でつい買ったチョコなんだが…よく考えたら、普通の商品も俺達にとっては『期間限定』なんだよな」
苦笑しながらカイトさんがくれたのは、個包装の一口チョコ。悪いと思って一回は断った僕だけど、「歳下なんだから遠慮するなって」って言って、そのままカイトさんは渡してくれた。…カイトさんは毎回グレイブのトレーニングに付き合ってくれてるみたいだし、結構お世話になってるのかもなぁ…。
とまぁ、そんなやり取りをした後は、暫く四人で話した。流石のグレイブも話し相手がいればどっか行こうとはしなくて、お姉ちゃんが次から次へと話題を出してくれたから、僕も楽しく過ごす事が出来た。後から思えば、これもお姉ちゃんの気遣いかもしれなくて…そうして時間を忘れて話していた中で、イリゼが戻ってきた。
「お待たせ、グレイブ君。…って、あれ?」
「やっほー、イリゼ。お姉さんとお兄さんが、お見舞いに来てたよー」
「お兄さんっていえば、イリゼ知ってた?カイトさんって、弟がいるんだって」
「あ、そうなの?じゃあカイト君は、ほんとに『兄』なんだね」
「まぁな」
お盆を持って、そこにお粥の入ったお鍋とお茶を載せて入ってきたイリゼ。そのイリゼにさっき知った事を言ってみると、イリゼは目を丸くしていて、カイトさんは小さく肩を竦めていた。…兄弟っていえば、お姉ちゃんには一誠兄さんっていう弟がいるし、イリゼもセイツさんって姉がいて、イストワールさんも姉らしいし、皆一人っ子じゃないんだよね…ちょっと、羨ましいな。
「おー、これは…うん、お粥って感じのお粥だね!」
「…別に、特別褒めるところがなければ無理に褒めなくてもいいよ…?お菓子作りならそれなりに得意だけど、それ以外は普通だし」
「ううん、違うよイリゼ。…料理を普通に作れる、普通に美味しい料理が出来る…それがどれだけ価値のある事か……」
((あぁ、遠い目に……))
なんて言ったらいいのか分からない顔で窓の外を見つめるお姉ちゃんに、僕達もなんて言ったらいいのか分からなくなる。そのまま変な時間が数秒過ぎて…何事もなかったかのように、グレイブは鍋を開ける。これ位は自分で出来ると言って、お粥を鍋からお椀によそう。
「んじゃ、早速頂くとするかな」
「召し上がれ、グレイブ君。でも出来立てでまだ熱いから、気を付けてね?」
「あいよー。…うん、美味い。塩っけがいいな、これ」
「でしょ?グレイブ君、そんなに具合が悪いみたいじゃないから、平時に食べても満足出来るような味にしておいたんだ。…皆もちょっと食べてみる?」
「いいの?」
「いいも何も、見ての通り一人分じゃないからね」
え?と僕が訊き返すと、イリゼはにこりと笑う。確かにお鍋の中には、一人分としては多過ぎる量のお粥が入っていて、元から僕の分も作ってくれていたみたい。
っていう訳で、お姉ちゃん達とちょっとずつ分けて僕も食べる。グレイブの言った通り、お粥は程良く塩っけがあって、具材の鶏肉は柔らかいし、卵もふわっとしている。つまり…美味しい!
「確かに美味いな、体調崩してなくても食べたくなる味だ。…イリゼはいいのか?」
「私はもう、味見してどんな感じか知ってるからね。…っと、そうだ。おかわりはしてもいいけど、少しだけ残しておいてくれるかな?」
『……?』
少し残しておいて。その言葉に、どうして?と首を傾げる僕達。その僕達の疑問に、イリゼは答えてくれようとして…そのタイミングで、またまた扉がノックされた。
「へいへいどうぞー。…もう面倒だし、今日は開けておこうかな……」
「お邪魔するわね。グレイブ君、貴方にお見舞い…って、あら?」
扉を開けて入ってきたのはセイツさんで、セイツさんは早速グレイブに何か言おうとした。したけど、お姉ちゃんとカイトさんを見て目をぱちくりとさせた。それは、二人がいた事に驚いているみたいな反応で…セイツさんが目をぱちくりさせたのとほぼ同時に、僕も気付く。今入ってきたのが、セイツさんだけじゃないって事に。
「ぬ、ぬらぅ……」
「ちるる〜、ちるっち!」
「るーちゃん!それに、ライヌちゃんも…って事は、もしかして……」
「そっか、見舞いに来てくれたんだな」
セイツさんに抱えられてる青い子と、ふわりと飛んでいる黄色い子。一緒に来ていたのは、ライヌちゃんとるーちゃん。僕達を見てぷるぷるし始めたライヌちゃんと違って、るーちゃんはすぐに僕達の方に飛んできて…グレイブが手を差し出すと、その手の上にるーちゃんは止まる。
「イリゼイリゼ。少し残しておいてって言ったのは……」
「そういう事。セイツに連れてきてくれるよう、さっき頼んだんだ」
「わざわざありがとな、るーちゃんライヌちゃん。…けど、なんで呼んだんだ?」
「ライヌちゃん達がいれば、グレイブ君も部屋にいるのが苦じゃなくなるかな…と思ってね。…実際にはネプテューヌとカイト君が来てたし、不要だったかもしれないけどね」
「そんな事ねーよ。なー、るーちゃん」
「ちるちるぅ〜♪」
頭を撫でられたるーちゃんは心地良さそうに鳴いて、グレイブも機嫌良さそうに笑う。…あ、そうだ。
「るーちゃんって確か、『うたう』を覚えてたよね?グレイブ、眠気ないならるーちゃんに寝かせてもらったら?」
「要らないっての。割と外れるし」
「外れる?…音程が?」
「いや、技が」
「えぇ…?歌なのに…?」
「外れるんだよ、歌なのに。命中率は…55%だったかな」
「め、命中率55%…?え、歌だよね…?なんでそんな、大体二回に一回は外れる位の確率なの…?」
「さぁ?因みに相手が複数いても、同時に狙ったりは出来ないぞ?勿論一度に寝かせられるのも一匹だけだし」
「歌だよね!?同時に対象取る事が出来ないってどういう事!?音波に指向性を持たせてるとか!?だとしたらむしろ、普通に歌うより難しくない!?」
なんで!?…とイリゼは思いっ切り突っ込んでくるけど、そんなのは僕達に訊かれても分からない。あれかな…歌そのものじゃなくて、歌う事で発生する、対象を眠らせる見えない何かを飛ばす技なのかな…ってイリゼはぶつぶつ言っていたけど、そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。…不思議だよね、ポケモンって。
「…なんか、前に会ったお嬢様みたいな事言い出すんだな、イリゼって」
「いや普通に気になるところだよ…?だ、だよね…?」
「言われてみれば、まぁ……」
「でもそういうのは、気にし始めたらキリがない気もするけどねー」
「わ、私がアウェー…?そんな……」
そんなにぱっとしない反応の二人に、イリゼは信じられない…って感じの顔をする。続けてイリゼは肩を落として…そんなイリゼを見たライヌちゃんは、セイツさんの腕の中からぴょこんと飛び出して、イリゼの脚に擦り寄った。
「ほらイリゼ、わたしは概ね同意だけど、イリゼがライヌちゃんに心配してもらうのは違うでしょ?」
「あ…うん、ありがとねライヌちゃん。でもねライヌちゃん、今は私より、グレイブ君の方が元気じゃないの。だから、グレイブ君の事を心配してあげてほしいな」
しゃがんでライヌちゃんを撫でたイリゼは、そう呼び掛けて、グレイブの方を向く形で抱え上げる。すると凄く怖がりなライヌちゃんはぴくっと震えて…それからグレイブを、じっと見つめる。
「ぬ、ぬら…ぬらら……」
「…怖かったら、イリゼの側にいればいいぞ。ライヌちゃんが来てくれたってだけで、俺は嬉しいからさ」
「ちるー?…ちるっ、るるっちるる!」
逃げたり隠れたりはしない、でもイリゼの腕の中から出る事もないライヌちゃんへ、グレイブは優しい声で呼び掛ける。言ってから、気にすんなって感じにグレイブの方から視線を外す。
数秒後、グレイブとライヌちゃんを順番に見たるーちゃんは、イリゼの側、ライヌちゃんのすぐ近くに飛んで、明るく高い鳴き声でライヌちゃんへと話し掛ける。ちるちる、ぬらぬらと話して、ちらりちらりとグレイブを見て、そして……ライヌちゃんは、跳ねた。イリゼの腕の中から、グレイブのいるベットの上に。
「…ぬらぬら、ぬーら…?」
「ははっ、ありがとな。…おぉ…見た目通り、ひんやりしてる……」
「良かったね、グレイブ」
「良いなぁ…自分ももっと色々話せば、ちょっとは怖がらないでくれるかな?」
安心させるようにイリゼも隣に座ったところで、グレイブはライヌちゃんに触れる。ライヌちゃんが近付いてくれたのは、イリゼやるーちゃんの言葉もあるんだろうけど、ほぼ毎日僕とグレイブは、るーちゃんやライヌちゃんに会いに行って、仲良くなろうとしたから…っていうのも、ちょっとはある…のかもしれない。
それから僕は、るーちゃんを撫でる。もこもこの翼が特徴のるーちゃんだけど、翼以外も撫で心地が良くて、なんだかほっこり。
「…よし。そんじゃお見舞いに来てくれたお礼に、ネプテューヌがくれたプリンをあげるとするか。ネプテューヌ、るーちゃんとライヌちゃんにあげてもいいよな?」
「もっちろん!そのプリンはもうグレイブ君にあげたものだから、それを更にあげるのもグレイブ君の自由だよ」
「けど、先にお粥をあげたらどうだ?プリンの後にお粥じゃ、モンスターやポケモンだって『えぇぇ…?』ってなるだろ。…多分」
確かに…と思った僕達は、ちょこっとお粥をお椀によそって、二人でるーちゃんとライヌちゃんにお粥をあげる。その後は、プリンも半分こにして食べさせてあげる。るーちゃん達は、どっちも凄く喜んでくれて…あげたのは僕達なのに、むしろ僕達が何かを貰ったような、そんな気分になる僕だった。…いや、お粥もプリンも僕の物じゃないんだけどね。
そんなこんなで、セイツさんとるーちゃん、ライヌちゃんが来てから部屋の中はもっと賑やかになった。グレイブの具合がそこまで酷くない事もあって、お見舞いって感じは全然ない、普通に話す時間が過ぎていって…ある時グレイブが一つ欠伸。
「ふぁー、ぁ…なんかちょっと眠くなってきたな…」
「じゃあ、わたし達はそろそろ出る?眠気があるなら、寝た方が体調も良くなる筈よ」
「そりゃそうだな。グレイブ、ちゃんと休んでちゃんと治すんだぞ?治ったらまた、トレーニングに付き合うからさ」
「そうそう、この後はちゃーんと大人しくする事。約束だよ?」
「分かってるよ。こんな心配かけちまったのに、ちゃんと治そうとしないのは、幾ら何でもダサいもんな」
「宜しい。じゃ、私も一度出るけど、また後で来るからね。それと愛月君も念の為、体調不良が移らないように今日は特にしっかり栄養を取って、寝る時もゆっくり休んでね?」
セイツさんの呼び掛けに頷いて、皆は出ていく。皆の言葉に、僕もグレイブもしっかりと頷く。そうして部屋はまた、僕達二人に。
「愛月ももういいぞ。俺もう寝るし」
「そう?まぁ、そっか。お大事にね」
「へいへい。…ありがとな、今日は」
「えっ、何急に…えぇぇ、こんなまともに感謝されるとか、違和感凄いんだけど……」
「いや、感謝は素直に受け取れよ…ったく、偶にゃちゃんと言おうと思ったのにそれかよ…」
「だって、ねぇ?…でも、気にしないでよ。僕は別に、何もしてないしさ」
「それは確かにそうだな」
「切り替え早っ!それに酷い…」
やっぱりグレイブは遠慮がないような、でもしっかり感謝してくるグレイブよりは良いような気がするような、しないような…そんな風に思いながら、僕も立って、歩いていく。扉を開けて、廊下に出て…扉を閉める間際、グレイブが言う。
「てか…今更だが、俺別に体調悪いんじゃなくて、誰かが噂してるだけだったりしてな」
「いやいやいや……」
また変な事を…と僕は否定しつつ、部屋を出た。その後の事は知らないけど…流石にちゃんと寝ていたんじゃないかと思う。
後から知ったけど、その後もお見舞い…って程じゃないけど、グレイブの様子を見に来てくれた人がいたんだとか。同じように、僕にグレイブはどうだって訊いてきた人もいて、グレイブは皆に心配されていた。皆に心配をかけたんだから、これからはグレイブも少しは大人しく、常識的になってくれたらなぁと思ったけど…まあ、無理だと思う。だって、グレイブだし。
…因みに、グレイブはその日の夜には元気になっていた。次の日の朝には、じゃなくて、夜の内にいつもの調子に戻っていた。その回復力の高さもグレイブらしいと言えばらしいけど……まさか、本当に噂をされてただけって事?くしゃみも「止まらん」って言ってた後は出てなかった気がするのも、噂されなくなったからって事?…いや、いやいや…まさかね…。
*
体調不良。リーダーが、ワルになる事。…ではない。悪くなるのはリーダーではなく身体で、具合が良くない状態になるという事。
その体調不良に、グレイブがなったらしい。元気がなくなるのは悲しい。体調不良を知ったイリスはグレイブに会いに行って…でも、グレイブは元気だった。…グレイブは、体調不良ではなかった?誤報…?
だけど、良かった。元気なのが、一番。友達が元気だと、イリスも元気に、なれる。
「という訳で、グレイブ君の回復を祝って…いや、祝う程具合悪そうな感じもなければ、半日位で治っちゃった訳だけど…ともかく、何かしたい事があるか訊いたところ、ライヌちゃんやるーちゃんと散歩したいって事だったから、散歩するよー!」
「わー、物凄い説明口調…」
くるり、と振り向いたイリゼが言う。そうなのか、と思っていたら、エストが変な顔をしていた。
説明口調…よく分からないので、調べる事にする。これは調べる事、とイリスは頭の中でメモ。
「散歩する…のは良いんですけど、既にわたし達散歩していません?教会からここまで、ずっとじゃないですけどある程度は徒歩でしたし」
「確かに私達はそうとも言えるけど、ライヌちゃん達は違うからね。でもここからは立ち入りが制限されてる自然保護区だから、ライヌちゃん達ものびのび出来るって訳」
「立ち入りが制限…そんな所に入っていいの?」
「いいも何も、私はここの国の長だよ?」
今ここには、イリスとイリゼ、グレイブと愛月、それにディールとエストもいる。イリスがライヌちゃんとるーちゃんと遊んでいる時に、この話を聞いた。イリゼがイリスを誘ってくれたから、イリスもディールとエストを誘った。
「さ、それじゃあ…ライヌちゃん、るーちゃん、出ておいで」
「スターも、一緒にお散歩しよっか」
「んじゃ、俺も…って言いたいところだが、今連れてきてるのは皆ライヌちゃんが怖がりそうな面子ばっかりなんだよなぁ…ライヌちゃんの性格を考えりゃ、ベイビィポケモンでも初対面なら怖がりそうだが…」
もぞもぞ、とチャックが開いたままのバックから、ライヌちゃんとるーちゃんが出てくる。愛月も、ボールからスターを出す。グレイブは出さないみたいで…イリス、残念。
「ちる〜、ちっちる〜!」
「ぶーいぶいっ!」
「ぬ、ぬぬ…ぬらぅ……」
「ライヌちゃん、おいで」
元気にるーちゃんは飛び出して、スターも出てすぐ愛月の周りを一周走る。
でも、怖がりなライヌちゃんは、皆を見てぷるぷるする。だから、イリスが抱っこしてあげる。抱っこして、お散歩開始。
「…ほんと、ライヌちゃんってイリスちゃんにだけは懐いてるわよね。まあ、別にいいんだけど」
「…エストは、ライヌちゃんと仲良くしたく、ない?」
「いや、したくない訳じゃないけど…やっぱりスライヌっていうと、倒す相手ってイメージが強いのよね。…勿論ライヌちゃんを倒す気はないわよ?」
「あったら流石にわたしもドン引きだよ…。でも、こうやって見るとスライヌって可愛いよね。ライヌちゃんみたいに攻撃してこない、敵意もないスライヌなら、仲良くなりたいって思えるし」
歩きながら、ディールとエストがライヌちゃんを見てくる。見られたライヌちゃんは、じっとしてる。
イリスとライヌちゃんは、仲良し。イリゼとライヌちゃんも仲良しで、愛月とグレイブの事は、まだちょっぴり怖いけどって感じで、ディールとエストの事は普通に怖い…らしい。
「ライヌちゃん、ディールとエスト、優しい。イリスに色んな事を教えてくれる、一緒に遊んでくれる、優しい人…じゃなくて、女神。だから、怖がらなくても、大丈夫」
「…ぬ、ぅ…ぬらぬら、ぬー…ぬらぁーぬ……」
言いながら、イリスはライヌちゃんを撫でる。ライヌちゃんは、大事な友達。ディールとエストも、大事な友達。だから、皆仲良くしてくれたら、イリスはとても嬉しい。
けれど、やっぱりまだライヌちゃんは怖いらしい。だから、今日のお散歩で、ちょっとでも『怖い』以外の事を思ってもらえるよう…イリス、頑張る。
「ちるーる、ちるぅ…」
「あ、るーちゃんがイリゼの頭の上に…」
「あはは…ライヌちゃんもだけど、これじゃあんまり散歩にならないなぁ……」
「いいんじゃねーの?るーちゃんもライヌちゃんも、俺達もとにかく楽しめりゃそれで成功だろ」
ちょっと前では、歩くイリゼの頭にるーちゃんが乗っている。
あれは、羨ましい。けど、何日か前にイリスが頭に乗せたら、るーちゃんはすぐに離れてしまった。るーちゃんは、イリゼの頭の上が良いらしい。
「ぶいぶい、ぶぶーい?」
「ちるるっ!るっちる、ち〜」
「スターとるーちゃん、何話してるんだろう…」
「さぁな。…ってか、イリスは分かるんじゃなかったか?」
「あ、そういえば…ねぇイリスちゃん、イリスちゃんは分かる?」
「うん、分かる」
たたっ、とイリス達の方へ走ってきた愛月に、頷く。
そう、イリスにはモンスターの言葉が、何となく分かる。ポケモンの言葉も分かるのは、恐らくポケモンもモンスターだから。
「…………」
「…………」
「…え、あの…イリスちゃん…?スター達は、どんな話をしていたの…?」
「……?愛月は、それが訊きたかった?」
「…はは…イリスちゃんは、相手の意図を読み取る勉強をした方が良さそうね……」
困った顔をした愛月にまた訊かれて、イリスも訊き返す。どうやら愛月は、内容について訊きたかったらしい。
そして訊いたところで、イリスはエストから…苦笑い?…をされた。相手の意図…どういう事か、分からない。これは、後で確認する。
「愛月の質問に、答える。スターとるーちゃんは、愛月とイリゼの話をしてる」
「そ、そうなの?」
「へぇ、そりゃ気になるな。具体的にはなんて言ってるんだ?」
「それは……」
「わわっ、待って待って!それは僕も気になる…けど、言わないで!なんかちょっと、恥ずかしいから……」
「恥ずかしい?それは、何故?」
「うーん、と…誰かが自分の事について話していた内容を知ったり、それを誰かから聞いたりするのは、嬉しい内容だったとしても、恥ずかしい気持ちになる事がある…って言っても、あんまり説明にならないよね…。感覚的なものだから、難しいな……」
何故か恥ずかしがる愛月の代わりに、ディールが答えてくれる。でも、納得していないようで、頬を掻く。イリスより賢いディールでも、これは難しい事らしい。
「…イリス、言わない方がいい?」
「う、うん、そうしてくれると嬉しいな…」
「俺は言ってくれた方が嬉しいんだけどなー」
「う…愛月は言わないでほしい、でもグレイブは言ってほしい…これの両立は不可能、困った……」
「こらこらグレイブ君、そんな意地悪な事言わないの」
「そーよそーよ、イリスちゃんが凄く素直な事は貴方も分かってる筈よね?」
「あーいや、俺は愛月を弄ったつもりだったんだが…確かにそうだな、すまんイリス」
「ちょっと?そういう事なら僕にも謝ってほしいんだけどー?」
どうすれば分からず頭を抱えていると、その頭をグレイブに撫でられる。撫でられながら、謝られる。
前も今も、グレイブの撫で方は、ちょっと強い。…でも、こういうのも悪くはない。
「ぬら?ぬぬーらー?」
「ライヌちゃんも、撫でてほしい?」
「ぬーらら〜」
「よしよし…あ。イリゼ、しゃがんで」
「え?」
抱えているライヌちゃんから片手を離して撫でると、ライヌちゃんは気持ちよさそうな顔をする。ライヌちゃんはひんやりぷにぷにだから、撫でているイリスも気持ち良い。
それからイリスは、イリゼを呼ぶ。じゃがんでもらって…イリゼの頭の上の、るーちゃんも撫でる。
「るーちゃんも、よしよし。…ライヌちゃんはぷにぷにで、るーちゃんはもふもふ。どっちも良い。どっちも、素敵」
「そ、そっか。それは良かった…でも、なんかこれは、イリスちゃんに撫でられてるみたいでちょっと恥ずいかも……」
「へー。ね、るーちゃん。わたしも撫でて良いかしら?」
「ちるぅー?ちっちっる!」
「少なくとも嫌ではなさそうね。じゃあ、わたしもなでなで〜っと」
「ちょ、え、エストちゃん…!?」
にやり、と笑ったエストがるーちゃんを撫でる。人懐っこいるーちゃんは、エストのなでなでに喜んでいて…だけどイリゼはあたふたし始める。…これも、恥ずかしいから?
「おいおいエスト、さっきと言ってる事が違うんじゃないか?」
「だってイリスちゃんじゃなくておねーさんだし?」
「まぁ、それはそうか。るーちゃん、俺にも撫でさせてくれ」
「グレイブ君まで…!?も、もう!るーちゃん撫でたいなら降ろすから、それで問題ないよね!?」
「イリゼ、るーちゃんはまだイリゼの頭の上に居たいみたい」
「まさかのイリスちゃんからの妨害…!?うぅ、るーちゃんの気持ちを引き合いに出されるとは……」
「…いや、普通にイリゼさんが立ってしまえばいいだけでは?」
「あ……って、そう言いつつディールちゃんも撫でるのは止めてくれないかなぁ…!」
エストに続いてグレイブもなでなで。ディールもなでなで。その度にイリゼは顔を赤くして、怒っ…ってはいない。
最近分かった。これは突っ込みと言って、怒るのとは違うらしい。でも、怒り気味の突っ込みというのもあるらしい。…突っ込みは、深い。
「ほら、手を離した離した!離さなくても私は立つからね!」
「え、あ……うん…」
「しまった、乗り遅れちゃった…みたいな顔してしょんぼりしないでよぉ……!」
「…ふふっ。そう言って愛月さんも撫でられるよう待ってくれるところ、わたしはいいなって思います」
「ディールちゃん…さっきまでしれーっと撫でてたのに、変わり身早いね……」
「ぶいー…」
「スターも、撫でてほしい?ならば、なでなで」
まだやり取りは続いているけど、イリスにはよく分からない。
それよりも、スターがこっちを見上げていた。撫でてほしそうだったから撫でると、ふかふかそうな尻尾を振って喜んだ。スターは、頭も尻尾もふかふか。
「はぁ…って、いうか……今気付いたけど、今回は見た目年少なメンバーが集まった形か…そう思うとなんか、引率の先生の気分になってきたかも」
「え、おねーさんも年少組でしょ?主にメンタル面で」
「し、失礼な!……失礼な!」
「あ、言葉が出てこなかったっていうか、内心否定し切れなかったのね…なんか、ごめんなさい」
「余計に悲しくなるから謝らないで!?」
またまた突っ込みをしているイリゼ。こんなに沢山するという事は、きっとイリゼは突っ込みが好き。イリスもこれからは、イリゼが突っ込めるように、頑張る。
「あぁっ、今何か私に不利益のある勘違いが生まれた気が…!」
「…イリゼさん、もう少し肩の力を抜いて構えるという事は……」
「出来たらもうしてるよ…出来ないからこうなってるんだよ……」
「で、ですよね…」
「…けど、仮にイリゼがそれを出来たとしても、なんだかんだ突っ込んでる気がするなー」
『確かに…』
歩きながら、後頭部で手を組んで言ったグレイブの言葉に、皆が頷く。それには、イリゼも「確かに」と言っていた。…これは、自覚がある…という事?
「くっ…こほん。もう少し歩いたら、ちょっと開けた場所に出るから、そこで少し休憩しよっか。そこならライヌちゃん達も、もっと自由に走り回れるだろうしさ」
「それは良い。イリスは賛成」
「僕も!」
ここまでの道は、少し凸凹していた。こういう道を歩くのも、少し面白いけど、走り回るのには少し危険。だからイリスは賛成で、皆も賛成をした。
そうしてイリゼの言った通り、少し歩いた先で、イリス達は凸凹してない、広い場所に出る。
「確かにここなら存分に動き回れそうだな。…ライヌちゃん、俺の仲間もここで遊ばせてやりたいんだ。勿論、ライヌちゃんが怖い思いをしないようしっかりと言っておく。だから、出して良いか?」
「あ…僕も、良いかな?」
二人はライヌちゃんを、じっと見つめる。それから、イリスの方を見る。
今度は、イリスにも意味が分かった。分かったから、ライヌちゃんに二人の言った事を伝える。聞いたライヌちゃんは、少しの間黙っていて……
「…うん、分かった。イリス、二人に伝える」
「イリスちゃん、ライヌちゃんはなんて言ったの?」
「大丈夫。遊べないのは悲しい事だから、呼んであげて…って感じに言ってた」
「ライヌちゃん…ありがとね、皆の事を思ってくれて」
「サンキューな、ライヌちゃん」
聞いた気持ちを、二人に伝える。二人の言葉は、ライヌちゃんには分からない。…でも…感謝されたライヌちゃんは、ちょっとだけ嬉しそうにした……ような、気がする。
「よーっし、るーちゃん!折角だから、あれやろっか!」
「ちるるーっ!ちー、るぅぅぅぅ!」
「わっ!?ライヌちゃんが、大きくなった……」
「お、おおぉ…るーちゃん、もっともふもふになった…これは凄い…」
ばっ、と翼を広げて飛んだるーちゃんは、光に包まれて、それから大きくなる。後から聞いたけど、普通とは違う『進化』というものをしたらしい。
大きくなったるーちゃんは、可愛い姿から、可愛くて綺麗な姿になった。これにはディールとエストも驚いていて、でもグレイブと愛月は驚いていなかった。
賢い人でも、知らない事はある。皆は知らなくても、イリスが知っている事もある。
多いと少ない、とは違う。大きいと小さい、とも違う。沢山知っている、があまり知らない、の上になるとは限らないのが、知識。
「ライヌちゃんも、行っておいで」
「ぬら…ぬらら、ぬらー!」
「イリスも、一緒に?…うん、それは良い。とても良い」
跳んで、着地して、イリスの方を振り向いたライヌちゃんは、イリスな事を誘ってくれる。ゆっくりと飛ぶるーちゃんもイリスの方を見ていて…イリスは頷く。皆と、遊ぶ。
「二人は、遊ばないの?」
「んー…ま、わたしはのんびりするわ。皆が遊んでる姿を見るのも、楽しそうだもの」
「わたしも、そうしようかな」
「そっか。…うん、それも良いかもね。私も皆に呼ばれるまでは、そうしようかな」
グレイブと愛月は、呼んだポケモン達を撫でたり、お菓子をあげたり、一緒に走ったりして、遊んでいる。イリゼとディールとエストは、座って仲良く話してる。そしてイリスは、跳ねるライヌちゃんと飛ぶるーちゃんを、追い掛ける。
そういえば、これはもう散歩ではない。だけど、楽しい。皆も、楽しんでいる。なら、それで良い…と、思う。グレイブの言っていた通り…皆が楽しめていたら、それで成功。このお散歩は、大成功。
だからまた、こういうお散歩をしたい。ここにいる皆とも、信次元に来た皆とも…イリスの次元の、皆とも。
今回のパロディ解説
・「〜〜ぶらっと途中下車しそうな声〜〜」
俳優、阿藤快こと阿藤公一さんの事。なんだかなぁ、といえばやはりこの人かなぁ、と思います。なんだかなぁ、この人かなぁ。…だからなんだ、って話ですけどね。
・「〜〜冴えないヒロイン〜〜」
冴えない
・「〜〜こんなサービス、滅多にしないんだからねっ!」
マクロスfrontierのヒロインの一人、シェリル・ノームの代名詞的な台詞の一つのパロディ。ネプテューヌが自分のプリンをくれる事は、確かに滅多になさそうな気がします。