超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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 ほんの僅かですが、前話に加筆を行いました(ディール及びエスト戦のアスタリスク、その直前です)。ただ、ストーリーには関係しないギャグとその突っ込みを入れているだけなので、確認は必須ではありません。


番外編 頂点へ

 決戦の地へ至る為の最後の関門、チャンピオンロード。突破しようとしているトレーナーも、ここを特訓の場にしている人も、野生のモンスターだって殆ど例外なく強い、中を進んでいくだけでも多くの困難が待つ洞窟。だからこそ、力を、今ある強さを一層高め、磨くにはうってつけの場所。大変で、凄く大変で……だけど、今の私には必要な場所だった。この場所が、この場所での幾つものバトルが、更に私達を強くしてくれた。

 そして、私達はチャンピオンロードを突破した。長い道のりを、バトルを乗り越え、グレイブ君の…チャンピオンの待つポケモンリーグへと辿り着いた。

 心構えは出来ている。しっかりと休んだら、後は挑むのみ。私もるーちゃんも、そういう状態だった。…でも、なんていうか…そういう場所まで行き着いたからこそ、私の心には色んな感情があって…一度、戻った。旅の、出発点へと。私の、故郷へと。

 

「戻りました、カイト博士」

「ちる〜る〜」

 

 自分の家に行く前に、まず私はカイト博士の研究所へと訪れた。前はよく訪れていた…でもこの町共々、旅に出て以降は一度も来ていなかった、るーちゃんと出会った場所に。

 

「あぁ、よく戻ったなイリゼ。…これまで通り、通信での報告でも良かったんだぞ?」

「分かってます。でも、一度戻りたかったんです。…リーグに、挑む前に」

「そうか…まあ、そうだよな。…イリゼならきっと、と思って送り出したが…本当に凄いよイリゼ。俺の頼みにもしっかり応えながら、ジムを制覇して、リーグにも辿り着いて、今は挑もうとしている…送り出した身としては、これ以上ない程鼻が高いってもんだ」

「カイト博士…。…出来ればそういう事は、もう少しだけ待ってから言ってほしかったです…勿論嬉しいですけど……」

 

 鼻が高いとまで言われれば、嬉しくない筈がない。…けど、まるで私が新たなチャンピオンになったみたいな口ぶりで言われてしまえば、流石にちょっと困惑する訳で…何とも言えない気持ちになってしまった。

…まぁ、それはともかく、直接図鑑の報告をして、久し振りにライヌちゃんともあって、ライヌちゃんは今のるーちゃんの姿にびっくりしていて…そうこうしてる内に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「カイト、イリス戻った。今日もとても頑張った」

「あ、イリスちゃん?イリスちゃん久し振り……」

 

 声に続いて聞こえる足音。その声の主は、自分でも名乗ってるんだから間違いなくイリスちゃん。旅立ちの日に出会ったあの子が今日もいるんだって思った私は、振り返りながら話し掛ける。

 するとやっぱり、入ってきたのはイリスちゃんだった。完全な無表情のイリスちゃんと、ちょっと笑ってるけど目が点のイリスちゃんが、並んで歩いてきていて……

 

「って、二人いるぅ!?」

「……?イリゼ、違う。イリスは二人いない。この子は、モン太」

「も、モン太…ちゃん?えぇと…実はイリスちゃん、ディールちゃんとエストちゃんみたいな双子だったとか、そういう……」

「双子でもない。モン太はポケモン。モン太、変身を解除して」

「もんもーん!」

「へ?」

 

 訳が分からず混乱する中、イリスちゃんはモン太と呼ばれた子に呼び掛け…次の瞬間、モン太の姿が変化した。ぐにゃり、と外見が変わって……ポケモンの姿になった。変身ポケモン、メタモンの姿に。

 

「モン太はイリスの相棒。イリスと似ている。だから、仲良し」

「そ、そうなんだ…それは分かったけど、なんでモン太はイリスちゃんの姿に…?」

「変身の練習。こういう事も出来る」

「ももんっ!」

 

 私の問いに答えたかと思えば、今度はイリスちゃんの姿が変化。前の時と違って、身体全体が変化して、少女の姿からメタモンの姿に。それに呼応するように、モン太の方はまたイリスちゃんの姿になって…モン太の姿をするイリスちゃんと、イリスちゃんの姿をするモン太という形になった。…す、凄いけどややこしい……。

 

「…あ、そうだ。それよりもイリゼ、イリゼはとてもタイミングが良い」

「タイミング…?」

「イリス、さっきイリゼの知り合いに会った。名前は……」

「こんにちはー。…あれ、イリゼ!?」

「えっ、ルナ!?」

 

 噂をすれば何とやら。イリスちゃんが名前を言おうとした瞬間、研究所に次から来客が現れて…その来客、そして恐らくイリスちゃんの言う知り合いというのは、旅の途中で出会ったルナだった。

 

「イリゼ、どうしてここに…戻ってたの?」

「う、うんそうだけど…ルナこそどうしてここに?偶々?」

「ううん、別の用事で近くまで来たから、折角だしイリゼの出身の町を見てみたいなぁ…って」

「…私、ルナにここ出身って言ったっけ?」

「うん、言ったよ?自己紹介してくれた時に、『私は神生オデッセフィアタウンのイリゼ!』って」

「あー、言われてみればそうだった気がする…なんかこう、そういう言い方をしないといけない気がしたんだよね…」

 

 そういう事か、と私は納得。…したところで、ヒメちゃんがいない事に気付く。うーん?前の時は、抱っこしたり手を繋いで一緒に歩いてたりしたのに…。

 

「ねぇルナ、今日ヒメちゃんはお留守番?」

「ううん。外で遊びたいみたいだから、私だけ先に入ったんだ」

「そっか。折角だしるーちゃん、ヒメちゃんにも会おっか」

「ちっる!」

 

 今度は自分の姿に変わったモン太を見て目をぱちくりさせていたるーちゃんを呼び、私は外へ。さて、どこかな…と見回すと、研究所近くの茂みに人影…ではなくポケ影があった。

 あ、ヒメちゃんかな?その影を見つけた私は、そう思ってるーちゃんと一緒に近付き……

 

「ぐまぁーっ」

「……お、おおぅ…」

 

……見るからに厳つい、凄く厳ついポケモンと遭遇した。ある日、近所の茂みの中、厳ついポケモンさんに出会った。

 

「あ、ヒメちゃーん」

「ヒメちゃん!?この子が!?」

「えへへー、進化したんだ〜」

 

 嘘ぉ!?と私が仰天する中、ルナはポケモンに駆け寄る。駆け寄り、ぎゅっと抱き着く。そして茂みから出てきたポケモンは、確かにヒメグマの進化系、冬眠ポケモンのリングマで…いや、うん…にしたって変化が凄い…るーちゃんも結構体格が変わったけど、それ以上にちっちゃくて可愛いヒメグマから、大きくてゴツいリングマは変化が凄過ぎる……。

 

「ち、ちるる……」

「ぐま?ぐっま、ぐまぁーぅ〜!」

「ちるぅ…ちる!るるっちーる〜!」

 

 横から抱き着いたルナの頭を手でぽふんぽふんしていたヒメちゃんは、私達に気付いて鳴く。すると驚いていたるーちゃんはぱっと表情を明るくし…前の時の様に、るーちゃんとヒメちゃんはお喋りを始める。

 姿は変われど、るーちゃん達は仲良し。それが分かった私は、ほっこりとして…カイト博士とイリスちゃんに、ルナ達の事を友達として紹介した。旅の中で私が得たのは、知識や成長、実績とかだけじゃなくて…人との繋がりもなんだって、それを伝えたかったから。

 

「…で、一回帰ってきた訳。なんていうか…心の準備じゃないけど、挑戦の前に一度戻っておきたいな、って思ったんだ。自分でも、上手く言えないんだけどね」

「言いたい事は分かるわ。挑戦するのは一番の大舞台だもの、やれる事も、やりたい事も、しっかりとやっておかないと…ね」

「うん、そういう事。…勝つよ、私は。全力で、全身全霊で…私は頂点を、超える」

「えぇ、イリゼが出発した日も言ったけど…それなら、改めて言うわね。頑張ってらっしゃい、イリゼ」

 

 そうして研究所に顔を出した後、私は家に帰って、セイツに旅の話をした。話をして、色んな事をセイツにも知ってもらって…もう一度、背中を押された。…この話をしたのは、夜ご飯を食べている時だけど。また言うタイミングが間違ってるよセイツ…天丼ネタなの…?わざとこのタイミングで言ったの……?

 

(やっぱり、一度帰ってきて正解だったな)

 

 バトルの準備と違って、帰るのは必須だった訳じゃない。でも帰って、皆に会って…自分の中で、力が強まった気がする。気持ちっていう、大切な力の一つが。

 そして翌日。私は、再びポケモンリーグへと向かう。ここからは、決戦になる。頂点へと手を届かせる為の…その頂点を掴み、乗り越える為の決戦が……始まる。

 

 

 

 

「ここが……」

 

 ポケモンリーグは、一つの施設。最終準備と確認の場所を兼ねているロビーで承認を受けた私が扉を抜け、短い廊下の先で行き着いたのは、広い空間。承認を受けたら即チャンピオンとバトル出来る訳じゃない、その前に最後の試練があるって事だったけど……

 

「うわっ!?」

 

 床の何ヶ所かが開いたかと思った次の瞬間、突如現れる四つの柱。高く、私の背よりもずっと高い位置まで四つの柱は一気に伸び…私は気付く。それぞれの柱の上に、人影がある事に。それも全員が立っている訳じゃなくて、立っている人もいれば、柱の縁に腰掛けている人もいる事に。

 

「え、えぇ…?なんだろうこの、七の光で十三の闇に立ち向かわなきゃいけない感じの場所……」

「よく来たわね。まずはここまで辿り着いた事…そして『挑戦出来る状態』で満足せず、その先に踏み出した事を称賛するわ」

 

 当然の事に圧倒され、更に困惑もする中、私は上から…柱の上から声を掛けられる。

 照明の関係で初めはよく見えなかったけど、目の慣れてきた今なら分かる。柱の上の四人は、女の人が三人に、男の人が一人で、三人は全く知らない人。だけど、残りの一人…私に声を掛けてきてくれた人の事は、見覚えがあった。

 

「え…?…イヴ…?」

「久し振りね、イリゼ。蜜探しを手伝ってもらった時以来かしら」

 

 まさかの再会に私は驚く。いつかまた、とは思ってたけど、こんな場所でだなんて…。

 

「……へ?じゃあもしかして、イヴの言ってたお店ってここ?」

「違うわよ、そんな訳ないでしょう…。…分かってて言ったわね?」

「いや、まぁ…はい」

「全く…。…でも確かに、あの時はちゃんと言っていなかったわね。改めて自己紹介するわ。私はイヴォンヌ・ユリアンティラ。副業でパティシエをしている…ポケモンリーグ四天王の一人よ」

 

 仕切り直すようにして、イヴは言う。自分はポケモンリーグの四天王なのだと。そして私が一度見失っていた緊張感を再び抱く中、イヴは続ける。

 

「これから貴女には、私達との四連戦をしてもらうわ。誰から挑んでも良いし、一回毎に休憩しても良いけど、途中で出る事は出来ないわ。負けるか、全員に勝つかするまでは…ね」

「…それが、チャンピオンに挑む為の、最後の試練……」

「そういう事だ。だが、ジムと同じように思っているならすぐにその認識を改めた方がいい。あくまでトレーナーを試す事を目的としていたジムリーダーと違って、俺達は純粋に、挑戦者を倒す為にここにいるんだからな」

「でも、きゅーけーを邪魔したり急かしたりはしないから、そこは安心して。それに…最強になる為にここまで来たなら、こんな事で物怖じしたりはしないよね?」

「わたし達は、全員本気で貴女を倒しにいきます。ですから、貴女も…全力で、わたし達に勝ちに来て下さい」

 

 それぞれの声から感じる、自信と実力…それに、私への期待。初めにイヴが言ったけど、ジムを制覇しても、リーグには挑まない…って人は結構いるらしい。ジムを制覇したって実績で満足したり、制覇までが限界だと思って止めてしまったり、或いは「いつかは挑戦したいけど、きっとまだ今の実力じゃ敵わない」と思って特訓していたりと、理由は色々らしいけど…だから、こうして挑戦しに来る人は、イヴ達にとって貴重なのかもしれない。そして、その事に…私という挑戦者に期待をしてくれているのなら…応えてみせる。

 私は一歩、前に踏み出す。見上げて、四人を…四天王をはっきりと見据えて、そして……って、あれ…?

 

「……あのー…」

「何かしら?」

「…そこの柱の上って、どうやって登ったらいいんですか…?というか、皆さんもそこから降りられないんじゃ…?」

 

 さあ、挑戦だ!…と思った私だけど、四人の乗る柱は高過ぎて、そのままじゃバトルが成立しない。しかも、登る為の階段や梯子も見つからない。これで一体どうしろと?としか言えない状況で…おずおずと訊いた私に対し、イヴは言った。

 

「あ、それなら大丈夫よ。この柱、普通に降ろせるから」

「…じゃあ、これってまさか…ただの演出…?」

「まあ、そうなるわね」

「…………」

 

 早速下がり始める…今度は常識的な速度で下がっていく柱。それを何とも言えない気持ちになりつつ眺める私。…き、気を取り直そう…うん、確かに演出としてはインパクトあったもんね!ならそれ以上は気にしないのが吉ってものだよねっ!

 

「さてと、それじゃあ私達はそれぞれの部屋で待ってるから…命懸けで獲りにきて。…なーんて、ね」

「それだと格闘タイプの技使ってこい、って意味にも聞こえますね…後、出来ればそれは手持ち的に私が言いたかった…」

「もしそれを偽アドバイスとして言ってたなら、戦術的だな。…らしくないけど」

 

 柱が完全に折りたところで、四天王の四人はここにある五つの扉の内、一番奥を除いた四つへそれぞれ入っていく。…部屋が分かれているのは、こっちの手の内を四天王側が把握出来ちゃう事を避ける為かもしれないけど、こうなると柱は本当に演出でしかなかった訳で…ほんと、気にしないでおこうかな…。……よし。

 

「あら?…もう来た、って事は…私が一人目なのね」

「はい。嫌でした?」

「ううん、むしろ嬉しいわ。一人目って事は、完全に万全な貴女とバトル出来るって事だもの」

 

 そう言って、イヴは小さく笑みを浮かべる。私の中にあったイメージとは、少し違う雰囲気だけど…四天王の一角だと思えば、別に不思議な事じゃない。

 さっきまでの部屋よりは狭い、けどバトルをするには十分な広さのある部屋。その部屋の中で、私達は向かい合い…イヴは、ボールを放る。

 

「出番よ、アントルメ」

「ふぃーぅ!」

 

 現れたのは、クリームポケモンのマホイップ。パティシエであるイヴの手持ちとしては、正にピッタリなポケモンで…私もまた、るーちゃんに呼び掛ける。るーちゃんとアントルメも、向かい合う。

 

「ちるちる…ちる!?ち、ちる……」

「ふゅ〜?」

「…ちるっ」

「…え、っと…イリゼ?いきなりるーちゃんが、翼を頭と首に沿わせて横になったんだけど……」

「こ、これは…るーちゃんの渾身のモノマネ、卵サンド…!まさかるーちゃん、アントルメのケーキみたいな見た目に対抗しようと…」

「えぇ…?…そんな事しなくても、るーちゃんの翼は綿菓子みたいだし、進化前は蒸しケーキみたいだったと思うけどね…」

 

 突然のるーちゃんのモノマネに困惑するイヴだったけど、すぐに気を取り直し、私とるーちゃんに四天王としての眼差しを向けてくる。それに私も、挑戦者としての意思を乗せた視線で返す。

 ここから始まるのは、四連戦。チャンピオンとの最終決戦を加えれば五連戦で、途中で負ければそれでお終い。だから四天王とのバトルで力を使い果たす訳にはいかないし、ましてやこのバトルは万全の状態だからこそ、出来る限り余力を残したまま勝つ事が、私達には求められる。…でも…きっと、無理だ。イヴは…そして恐らく他の四天王も、『通過点』だと思って勝てるような相手じゃない。

 

(五回のバトル、その全てで全力を出さなきゃいけない、か…。…いいよ、ここまで来たんだもん…五回でも十回でも、やってみせる…!)

 

 起き上がり、振り向いたるーちゃんと頷き合い、私達は臨戦体勢を取る。最強に挑む為の、最後の試練……その一つ目が、始まった。

 

 

 

 

 イヴとアントルメの戦い方は、一言で言うなら柔軟且つ堅牢、だった。自分から積極的に攻めるんじゃなくて、防御体勢をしっかりと整え、相手の動きをよく見て対応する…という点では私達と同じだけど、向こうはより相手に合わせて動きを変える、仕掛ける方法を切り替えていく…というスタイルだった。四天王の初戦ながら、ぶつかり合いより策の詰め合いが割合の多くを占めるバトルだった。

 トレーナーである私の集中力を相当消耗させられるバトルではあったけど、反面アントルメの攻撃能力はそこまで高い訳じゃなかった(といっても、るーちゃんと比較すれば素早さに劣る分攻撃面は勝ってる感じ)おかげで、るーちゃんの余力はある程度残せたバトルであったようにも思う。…そう。私は勝った。まだ一勝、五連戦の序盤ではあるけど…勝利を収める事に、成功する。

 

「…やるわね、イリゼ。まさか私が、似たような戦い方をする相手に上をいかれるなんて……」

 

 戦闘不能になったアントルメを撫で、労いの言葉を掛けた後、私に向き直ったイヴは言う。驚きと、やられたなっていう感情…それに多分、感心も籠った表情を浮かべて。

 

「上なんて、そんな…正直今回のバトルは、上手く賭けに勝てたからこの結果が得られた…って部分が大きいですし…」

「賭けだろうとなんだろうと、結果は結果よ。それに碌な元手も無しにする賭けはただの博打だけど、十分な元手…準備と下地を用意した上での賭けは、立派な戦術よ。…多分だけどね」

 

 この結果は、賭けに勝てたから。そう私が返せば、イヴは肩を竦める。私が賭けに出たのは、賭けに勝てればるーちゃんの消耗を抑えつつ勝利に繋げられると思ったからで、同時にるーちゃんの防御能力と、アントルメの攻撃能力、それに互いの機動力を踏まえれば、賭けに負けても致命傷にはならない…かなり劣勢にはなるけど、勝利の可能性が潰える程には至らないと読んだから。

 そしてそれは、決して運任せなんかじゃない。徹頭徹尾運に任せた無策ではなく、考えて、準備して、状態も整えた上で…最後に運も混じるというだけの事。だから…そうだ。賭けではあったけど、この結果は誇っていいものなんだ、きっと。

 

「さ、行きなさいイリゼ。貴女なら他の三人にも遅れを取る事はない筈だけど…四天王の一人に勝ったからって油断はしない方が良いわ。私達はそれぞれ戦い方が違う…だから私とのバトルよりもう少し楽に勝てる相手がいるかもしれないし、私よりずっと苦戦する相手がいるかもしれないって思っていた方が身の為よ」

「…いいんですか?そういう事話しちゃって」

「別に具体的な話をしてる訳じゃないもの、大丈夫よ。…それじゃ、前の事もあるし、私はイリゼとるーちゃん用にケーキでも作ろうかしら。それがお祝いのケーキになるか、慰めのケーキになるかは、貴女達次第だけど…ね」

「イヴ…なら、とびきり甘いのをお願いします。とびきり甘い、お祝いのケーキを」

 

 ジムリーダーの時と同じように、私はイヴとも握手を交わし、部屋を出る。消耗を抑えられたとは言っても少なからず疲れているるーちゃんを大部屋で休ませて、持ち込んだ準備で出来るだけ状態も整えて…次の、部屋へと向かう。

 

「…来たか。時間からして、俺が二人目…その表情からすると、一人目はイヴだった、ってところか」

「よ、よく分かりましたね…時間はともかく、相手まで分かるんですか…?」

「表情から推測したまでだ。それに、結局のところ三択だからな。であれば消去法でどうとでもなるさ」

 

 いや、普通は表情から読み取って消去法に移る事自体出来ないような…早速そんな感想を懐く事になった、二人目の四天王。彼を二人目に選んだ理由は、実のところ何となくで……って、そうだ。

 

「…私は、イリゼです」

「うん?…あぁ悪い、自己紹介がまだだったな。…四天王が一角、凍月影。俺はあまり雑談が得意じゃない、来た以上は早速…と、言いたいところだが……」

「……?」

「一つ、問おう。イリゼは何の為にチャンピオンを目指す。何がしたくて、最強の座を望む?」

 

 一拍の後、投げ掛けられる問い。何故、何の為に目指すのか…即ちどうして今、私はここにいるのかを、真正面に立つ影君から問われる。こんな質問をされるなんて微塵も思っていなかった私は驚いて、すぐには返せなくて…でもちゃんと、理由はある。思いがある。だから私は、自分の中の気持ちを整理して…真っ直ぐに見て、言う。

 

「理由は、沢山あります。チャンピオンへの道は、ポケモン図鑑を作る上でもプラスになりそうだからとか、バトルしてくれたジムリーダーや多くのトレーナーから背中を押されたからとか、グレイブ君にリベンジしたいとか沢山あって…正直、初めの頃は試しにやってみようっていう、軽い気持ちもありました。でも、一番の理由は、相棒と……るーちゃんと、高みを目指したいからです。自分達の限界まで…ううん、限界を超えて、どこまでも駆け抜けたいと思ったからです」

「そうか…青いな。青いし、似たような事を言うトレーナーは多くいる。…だが、君は…イリゼはここまで来た。ただの夢想、夢物語ではなく、それを現実とする為にここまで歩んできた訳だ。…そういう信念の伴った青さは、嫌いじゃないさ」

 

 ここまでどこか淡白だった、冷めた様子を感じられた影君の表情が、初めて緩む。嫌いじゃないという言葉に、ほんのりと温かみが籠る。

 それは、私の答えに納得してくれたって事だと思う。挑戦者として認めてくれた…って面もある気がする。だけど私は、それで満足しちゃいけない。今影君が言った通り、私は私の思いをただの夢にしない為にここまで来て…まだ先に、進むんだから。

 

「因みに先日グレイブに同じ問いをした時は、こう返されたよ。『理由?そんなの、最強になりたいから最強になったに決まってんじゃん』ってね。…全く、彼も大したものだよ、ほんと」

「あはは…確かにグレイブ君らしいですね…。…うん?彼も……?」

「…さあ、バトルといこうか。一つ一つのバトルに固執する気はないが…負ける気もない」

 

 彼は、ではなく彼も、という表現をした事に引っ掛かった私だけど、やり取りを打ち切るようにして影君はボールを手にする。その瞬間、剣呑な…油断出来ないとかじゃなくて、油断しちゃいけないと思わされるような雰囲気が部屋の中に満ちて…影君が軽く投げたボールから現れたポケモンが、両脚で静かに床へと立つ。

 

「るそぅぅ……!」

 

 鋭い眼光をこちらに向けてくるのは、火の剣士ポケモン、ソウブレイズ。影君の事はまだよく分からないけど、その静かな…それでいて研ぎ澄まされたような雰囲気は、影君とそっくりに感じる。

 

「レイズ、相手は一戦交えた様子だが、休息も取った後と見える。初手から全力でいくぞ」

「…るーちゃん、今言われた通りこっちはこれで二戦目。ここで勝ってもまだチャンピオンまで二戦ある…っていっても、もう分かってるよね?目の前の一戦に集中しなきゃ、勝ち目なんてない…気を引き締めていくよ!」

「るぅーちるっ!」

 

 力強く一鳴きしたるーちゃんの様子で今の状態を再認識した私は、るーちゃんに言った通り気を引き締める。

 向こうはどこからでもかかってこいとばかりの面持ち。それを真っ向から見つめ返し…二戦目の幕が開く。

 

「攻めてこないなら好都合…!るーちゃん、まずは……」

「レイズ」

「そうる…ッ!」

「……!」

 

 防戦を得意とするるーちゃんにとって、防御体勢を整える隙を作ってくれるのはありがたい。そう思って指示を出そうとした瞬間、影君はレイズの名前を呼び…それだけで理解したらしいレイズは、一直線に突っ込んでくる。

 特別速いって訳じゃない。けど、初手を譲ってくれるものだと思っていた…そういう表情をしていたからそう判断した私の裏をかいてきた行動に、私は面食らう。そしてそこから、私は知る。影君とレイズ…このコンビの、戦い方を。

 一戦目のイヴとアントルメの戦い方は、臨機応変に、的確に相手に対応していくというもの。対して影君とレイズの戦い方は、こちらに対応を強いる…狙った対応の仕方へと誘導し、そこを叩いて追い詰めるという、目に見えない形で優位を取るスタイル。レイズは高い攻撃能力と近接格闘能力を持つポケモンで、攻撃能力以外も低くはない。そして『なら下がって遠距離戦に徹すれば』と思った時点で、向こうの策略の入り口に立ってしまっている…といったところ。狙った通りに誘導されていると気付かなければそのまま追い詰められ、気付いてもそのタイミングが遅ければ同様、早期に気付いたのならそれを前提に第二第三の策を放っていく…これまでほぼこういうスタイルの相手と戦った事がなかったのもあって、私もるーちゃんも苦労した。物凄く、追い詰められた。

 

「…………」

「…………」

「…自分を貫いた、か…見事だ、イリゼ」

 

 着地したるーちゃんの前で、レイズが膝を突く。そのままレイズは倒れ…決着となった。

 自分を貫いた。自分で言うのもあれだけど、それがこのバトルの突破口となった。勿論簡単に出来た訳じゃないけど、それをさせないのが影君の戦術な訳だけど…影君の先を読むような指示とレイズの狡猾さを感じさせる攻め手に隠れているだけで、使ってくる技自体は特に搦め手のない、高い攻撃能力を活かした純粋なアタッカーだと気付いてからは、一気に勝利への道が開けた。純攻撃型なら防御に長けるるーちゃんにとっては戦い易い相手だし、タイプ的にもこっちが有利。まやかし…ではないにしろ、物理的ではなく心理的に追い詰めてくる戦法を跳ね除ける前と後じゃ、全く違う相手だったと私は思う。

 

「……っ…連続で、凄い疲れた…るーちゃんも、気持ち的に凄く大変だったよね…」

「ちるう」

「えっ、違うの?」

「いや、今のは『違う』って言ったのか…?…まぁ、言ってそうな響きではあるが……」

 

 私はるーちゃんを撫で、影君もレイズの肩に優しく手を置く。ちるう、という鳴き声に私が反応すれば、影君は困惑し…会話が途切れる。

 

(どうしよう…雑談は得意じゃないって言ってたし、早く退室した方がいいのかな……)

「仲が、いいんだな」

「へ?…あ、はい。でも、それは影達もですよね?」

「…そう見えるか?」

「だって、指示は殆ど端的だったじゃないですか。なのにどれもちゃんと伝わっていたって事は、それだけ互いを理解してる、信頼してる…って事、ですよね?」

「徹底的に訓練した結果、とは思わないんだな…。…まあ、否定はしないさ。ここまで来たなら分かると思うが、鍛錬も戦略も信頼も、全てに手を抜かないのが強者というものだ」

 

 影の言葉に、私は頷く。これまで私が強いと思ったトレーナーとポケモンの間には、いつも信頼関係があった。信頼があるからポケモンはトレーナーの指示を躊躇う事なく行動に移してくれるし、トレーナーはポケモンが自ら判断しての選択をしてもその意図を察する事が出来るし、理解なくして信頼はない。よく理解してる、それだけ深く知ろうとしたからこその信頼であって…それを軽んじたら、当然強くなれる訳なんてないよね。

 

「…バトル、ありがとうございました。ここまで来てこんな事言うのも変ですが…もっと、ポケモンバトルへの理解が深まった気がします」

「変でもないさ、俺も自分を貫く相手にはどうするかを考える参考になった。…チャンピオンは勿論、残りの二人も強いが…それなりに期待してるぞ」

「そ、それなりなんですね…はいっ!」

「…それと、さっきの疑問だが…『最強になりたいんじゃなくて、憧れに追い付きたいから…憧れを超えたいからここまで来たんだ』って答えたトレーナーもいた。そういう事だ」

 

 握手を交わしたところで、影君は教えてくれた。一瞬何の事が分からなかったけど…バトル前のやり取り、影君が打ち切ったそれに対する答えなんだと、一拍置いて私は気付いた。それが誰の答えなのかは、分からないけども…そういう思いも素敵だって、そう思った。

 

「失礼しまー……」

「お、来たね!その顔を見るに、えー君とバトルした後かな?私は凍月茜、えー君に勝つなんてやるね!」

 

 また休み、休息後に入った三つ目の部屋。入った瞬間、私は三人目…茜へと軽快に話し掛けられ、思わず戸惑う。え、影君に続いて顔だけで読まれた…これ、向こうが凄いってより、私が分かり易いだけ…?…って、いうか…凍月……?

 

「…もしかして、茜と影君って……」

「うん、夫婦だよ。この場合、職場恋愛になるのかな?」

「さ、さぁ…」

 

 ここはまあ職場だと思うけど、ここで会ってから夫婦になったのか、夫婦になってから四天王になったのか分からないんだから、訊かれても答えられる訳がない。…明るい人だとは思ってたけど、かなり個性的な人でもあるかも…。

 

「ところで、えー君とのバトルはどうだった?」

「…凄く、大変でした。イヴとのバトルも大変でしたけど…多分、それ以上に」

「でしょでしょ?えー君強かったでしょー?…でもえー君の戦い方は、偶に全く通用しない相手がいるからね。逆にゆりちゃんの戦い方はえー君程の圧力はなくても、全く通用しない…って事は滅多にないし、どんな戦い方も一長一短だよね」

「そう…ですね。…えっと……」

「何が言いたいのか、かな?…だから、私は気になるんだ。ここまで辿り着いた、えー君も倒した貴女が、どんな戦い方をするのかが」

 

 表情はにこやかなまま、茜の雰囲気がふっ…と変わる。ここまでの二人と同じように、雰囲気だけでその実力の高さを感じさせてくる。

 

「あるまー、今日の挑戦者はレイズに勝った子だよ。…目一杯の本気で、いかないとね」

「るまぁぁ!」

 

 覇気の籠った鳴き声と共に現れる、火の戦士ポケモンのグレンアルマ。影君のレイズを連想させるあるまーは、レイズ…ソウブレイズと同じ種類のポケモンから進化する、関係性が深いポケモン。

 でも、関係性が深いからって、影君とのバトルの経験が活きるとは限らない。むしろ条件次第でそれぞれ別の姿に進化するポケモンっていうのは、強みとなる能力も大きく変わっているパターンもあるから、変に影君とのバトルを活かそうとすると、逆に危険になるかもしれない。

 

「るーちゃん、四天王戦は後半分だよ。ここで勝てば、後一人、後一戦…って思えるようになる。だから…今残ってる気力、この勝負で振り絞るよっ!」

「るるちるーっ!」

 

 まだいける、そんな風に鳴いてくれるるーちゃんの後ろに立ち、少し遅れちゃったけど私は茜に自己紹介。良いバトルにしようね、と笑う茜にしっかりと頷いて…バトル開始。私はるーちゃんに防御態勢を整える事を指示し…次の瞬間、熱線がるーちゃんに襲い掛かる。

 

「これは…それにその姿、やっぱり……!」

「そーゆー事。あるまーの砲撃に、るーちゃんは耐えられるかな?」

 

 言葉通りの、炎の砲撃。あるまーはレイズとは対照的に、遠距離攻撃を得意とするポケモン。一射でそれを理解した私は、遠距離攻撃の性質と傾向…熱線の他にも色々撃てるのか、連射攻撃もあるのか、遠距離攻撃特化なのか、それとも他の攻撃もある程度出来るのか…そういうあれこれを探る為に、るーちゃんにこっちも遠距離攻撃を仕掛けつつ、出方を伺う事を伝え…けど、すぐに気付く。あるまーが的確な偏差砲撃を…回避先を読んだ攻撃をしてくる事に。それも一度や二度じゃなく、常に…こっちが動きを変えても一切バレる事なく、動きを全て把握されているかの如く狙ってくる事に。

 影君の時と同じく、誘導されている?…ううん、違う。茜は揺さ振りをかけてきたり、策略を張り巡らせてきたりはしていない。原理は全く分からない、けど確かに…明確にこっちの動きを見切ってきている。そして、何故か分からないのに読まれるというのは…凄く、恐ろしい。

 

(…けど、だったら…向こうが読んで撃ってくるなら、私はるーちゃんの持ち味を活かす…ッ!)

 

 読まれて当てられる以上、どうしたって無傷じゃ済まない。防御自体は何とか間に合わせてるから、直撃は防げてるけど、回避だけじゃなく攻撃まで見切ってくるから、一方的に削られている。しかも、どんな避け方をしても当てられるというのはプレッシャーが凄いし、回避しようとしたところから緊急で防御をするのは、当然るーちゃんへの負担も大きい。でも、だからって初めから避けないでいると、次々撃たれてやっぱりるーちゃんの負担が増える。影君の場合は考えれば考える程、動けば動く程泥沼になってる感があったけど、茜の場合は逆。初めから、壁の様に『通用しない』とシャットアウトしてくる。

 だからこそ、私は選ぶ。避けるでも、受けるでもなく…るーちゃんの防御能力を活かして、凌ぐ事を。どうしたって、遠距離の撃ち合いじゃ勝ち目はない。それは分かってる事だから、防御で受けつつ前に出る。

 勿論それは、簡単な事じゃない。一発一発が重いあるまーの砲撃を受けて、凌ぎながらも進むなんて普通は困難。だけどるーちゃんは防御に長ける事に加えて炎タイプに耐性があるから、無防備な直撃さえしなければ一気に削られる事はないし…ふわもこの翼を持ち、体格の割に軽いるーちゃんは、風を受けて飛ぶのが大の得意。だから位置を、角度を見切れば…私が判断と指示を誤らなければ、熱線の放つ熱風を利用する事で、軽やかに躱せる。

 

「やるね、イリゼ…ううん、ぜーちゃんっ!けど、まだまだぁ!」

「スピードならこっちの方が上だよ、茜ッ!」

 

 遂に近距離まで攻め込んだるーちゃんの攻撃が、あるまーに当たる。やっぱり読まれてはいるけど、多少ながら素早さではるーちゃんが勝っているから、追い縋る事で避け切れない状況を作れる。一気に倒せるだけの攻撃力はないから、一度の肉薄で決着にまでは持ち込めなかったけど、るーちゃんは果敢に攻めて、攻め続けて……勝利を、掴む。

 

「あるまー!……くっ…ここまでよく耐えたね、あるまー…」

「…何とか、なった…これで三勝目だよ、るーちゃん…!」

 

 最後は削り合いになった。三戦目で万全じゃない事もあって、攻め込んでからもるーちゃんは相当削られた。…それでも、勝った。私達が、削り切った。

 

「…うん、私の負けだよ。流石はえー君達に勝ったトレーナー、すっごく強かったね」

「いえ、私達もギリギリでした。あるまーのエスパータイプの技に対する耐性をるーちゃんは持ってませんし、もっと攻め込む判断が遅かったら、きっと負けてたのは私達です」

「でも、そうはならなかった。ぜーちゃんはチャンスが消える前に突破口を見つけたし、るーちゃんはそれに答えたから、勝った。たらればを考えても仕方ない、って言うでしょ?あれは失敗した時によく使うけど、成功した時にも言えるんだよ?もしもじゃなくて、現実として勝ったんだ、ってね」

 

 翼を整えるようにして撫でてから、私は茜と言葉を交わす。負けた直後でも、茜はなんだか満足そうで…やっぱり茜は、明るくてさっぱりした人柄なんだと思う。バトルをする事で、ポケモンだけじゃなく、トレーナーの人となりも知る事が出来る…それも、ポケモンバトルの良いところ。

 

「そういえば、ぜーちゃんはカイト博士のところで色々学んだんだよね?うーん残念、もしぜーちゃんがポケモンスクールで学ぶ事を選んでたら、もっと早く出会えてたかもしれないのにな〜」

「え?…もしや、茜はスクールの先生なんですか?」

「うん、ゆりちゃんがパティシエやってるみたいに、四天王は副業をする事も出来るんだよね。なにせリーグは、いつも挑戦者がいる訳じゃないし」

「…じゃあ、影君も何か副業を……」

「うん、もしもの時に備えていつも家を警備してくれてるよっ」

「それ本当に副業ですか!?」

 

 楽しそうに笑う茜の表情からは、嘘か本当か、嘘だとしたら本当は何なのか…その辺りが全く見えてこない。後、結局読みに読まれた理由もバトルの中じゃ分からなかった。…まさか、元々の才能…?

…まあ、それはともかく、改めて考えると、茜とのバトルでも、勝利の糸口は自分を貫く事だった。自分を、自分達の得意とする事をちゃんと貫けたから、私達は勝てた。そういう意味じゃ、影君とのバトルの経験も、無意識化で役になってた…のかもしれない。

 

「…次が、最後の四天王戦だね。応援してるよ、ぜーちゃん」

「はい。最後の一人にも…必ず、勝ってみせます」

 

 握手と共に最後の言葉を交わし、三つ目の部屋を出る。三戦終えた後となれば、本格的な休息は取れないここじゃ流石に癒し切れない疲労が残る。でもせめて、少しでもるーちゃんを回復させてあげようと、私はお菓子をあげたりマッサージをしてあげたりして…そうして最後の四天王の部屋へと入る。

 

「来ましたか、挑戦者さん。その様子だと…どうやらわたしが三人目の様ですね」

「あ…いえ、四人目です」

「えっ?」

「…すみません、四人目です…」

 

 自信満々に言い放つ…でも間違っている最後の一人。なんだか申し訳なくなった私が謝ると、最後の一人はかぁっと顔を赤くする。…いや、うん、そうだよね…ここまで皆当ててきたけど、イヴはすぐだったから分かるのも当然だし、影君や茜が凄いだけで、分からないのが普通だよね…。

 

「ま、まあいいです、いいでしょう!三人目より、最後の四天王の方が気分的に盛り上がりますし!」

「えぇ、と…はい、宜しくお願いします」

「こ、こほんっ。…わたしはビッキィ・ガングニル。三人を連続で倒した時点で、貴女が一流のトレーナーである事は誰もが認めるでしょう。わたしだって、三人を連続で倒せるかと言われれば、出来る…と断言までは出来ませんから。…ですが、それはそれ、これはこれ。わたしは最後の四天王として…全力で、貴女の突破を阻みます」

 

 初っ端から拍子抜けな流れになった最後の四天王…ビッキィだけど、気を取り直してからの風格はこれまでの三人と遜色ない。だからこそ、私は痛感する。三戦やってかなり消耗した…休憩しても回復し切れてない中で、これまでと同格の相手に後一つ勝たなきゃいけないんだって。

 自己紹介し、私も気を引き締める。後一勝、されど一勝。まだ気を緩める事なんて、出来やしない。

 

「…ところで、イリゼさんが初めて戦ったジムリーダーは、ピーシェ様だったらしいですね。可能性を感じると、ピーシェ様は言っていましたが…どうやらその通りだったようです」

「え?…ビッキィは、ピーシェと知り合いなんですか?」

「知り合いも何も、ピーシェ様は私の師匠です。ピーシェ様がいたからこそ、わたしはここまで強くなれた…分かっていると思いますが、ジムリーダーとしてではない、純粋に全力のピーシェ様は、イリゼさんが知っているよりずっと強いんですからね?」

「…分かってます。ジムリーダーは、皆私を試し、成長を促してくれた。私がここにいるのも、ジムリーダー達の…多くの人達のおかげです」

「…貴女とは、良いバトルが出来そうです。それに、ピーシェ様への挑戦で始まった、チャンピオンに挑む道の最後の壁がわたしというのは…ふふ、どうしようもなく燃えてきますね」

 

 にぃ、と好戦的な笑みを浮かべるビッキィの、強い視線。最後の四天王戦、その緊張感が高まっていく。

 

「わたし達の力、見せるよハンゾウ!」

「げっこぉぉぉぉッ!」

 

 力強く投げられたボールから、片手と両脚の三点で着地したビッキィの相棒。ハンゾウこと、忍びポケモンのゲッコウガは既に臨戦体勢で、現れた時点から隙がない。

 

「…るーちゃん、まだいける?まだ、やれる?」

「ちーる。ちるる、ちーるぅっ!」

「そっか。それじゃあ…勝つよ!勝って…私達は、頂点に挑む!」

 

 疲れはある筈。それでもにこりと笑って前に出てくれるるーちゃんに、私がかけるのは気遣いではなく、勝利への言葉。今必要なのは気遣いじゃない、今トレーナーとして言ってあげるべきなのは…るーちゃんを信じ、後押しする言葉。

 後一人、でも負ければ一からの挑戦になる。だけど、気負いはない。あるのはやる気と、勝ってやるんだって強い意思だけ。だから私はその思いを燃やし…るーちゃんと共に、真っ向からぶつかっていく。

 

「るーちゃん、スピードに対抗する必要はないよ!よく見ていこう!」

「よく見る余裕をあげるとでも?」

 

 見た目通り軽快に動くハンゾウに対し、私はいつも通りの、相手の攻撃をよく見て、防いで、反撃に繋げる基本のスタイルでやる事を指示。勿論いつも通りにやるだけで勝てる相手だとは思えないから、私も意識を集中させる。今の動きだけじゃなく、次にしそうな動きや、最終的に狙ってる事柄まで、指示を出しつつ予想を立てる。

 素早く、攻撃能力も高く、遠近両対応の攻め手を持っているハンゾウは、体格的にも愛月君のケープに近い。だから普通の攻防戦においてはその経験が活きるし、今のところ影君や茜の時の様な、どんどん追い詰められていく感覚もない。…と、表現すると四天王の中で一番戦い易い、経験的にも勝ち易い相手の様に思えるけど…実際は、違う。

 

「遅い!甘い!ハンゾウ、畳み掛けてッ!」

「ぐっ…(強い…柔軟性とか、策略とか、先読みとかじゃなくて…純粋に、強い……ッ!)」

 

 次々と、どの距離にいても攻撃を仕掛けられる。防御しても、回避しても、カウンターに繋げたとしてもビッキィはまるで動じず、次の攻撃に移ってくる。けど決して攻撃一辺倒のごり押しという訳ではなく、ハンゾウは縦横無尽に動き回り、攻め手を絶やさない事によって、攻撃は最大の防御を実現している。実際こっちもある程度反撃出来ているとはいえ、それより遥かにハンゾウの攻撃回数の方が多く、既に何度か防御が間に合わない瞬間も突かれている。

 能力的にはケープに似ているけど、スタイルは違った。ケープ…というか愛月君は、攻める時は攻めるけど、基本は相手の動きを伺って対応や判断をしていく、攻めて引いてを細かく切り替えるスタイルだけど、ビッキィのスタイルは怒涛の攻撃で相手を圧倒し、主導権を握り続けるというもの。愛月君より、むしろグレイブ君に近いスタイル。そして、その積極的攻撃スタイルは、るーちゃんが苦手とする戦い方ではないけど、どうしたってるーちゃんの体力に負担が掛かる以上、出来る事なら四戦目…四天王戦の最後にはしたくないようなものだった。

 でも、私には負けたくない、勝ちたいという思いがある。るーちゃんからも、大変でも、キツくても、粘って踏ん張って喰らい付くんだって意思を感じる。向こうだって、負ける気なんてないだろうけど…思いのぶつかり合いでなら、それこそ絶対負けたりはしない。だから……

 

「最後の瞬間まで、全身全霊を尽くしてみせる…ッ!ハンゾウ、全力全開!奥義、螺旋手裏…もとい、水手裏剣ッ!」

「真っ向から押し返す、跳ね返す、そして貫く!決めるよるーちゃん、ゴッド…バードッ!」

 

 自身の右側で近付けた両手の間で、渦を巻きながら水が集まっていく。水は手裏剣の形になり、ハンゾウはそれを真上に掲げ、更にそこから手裏剣が巨大化していく。

 手裏剣が巨大化する中、私もるーちゃんに大技を指示。翼を広げたるーちゃんは光に包まれ、その光は強くなっていく。そして、るーちゃんはハンゾウ目掛けてフルパワーの突進を仕掛ける。

 光り輝く神鳥となったるーちゃんと、投げ放たれた水手裏剣が…渦巻き飛翔する水の刃が、激突。光と水飛沫が拡散し、渦巻き飛び散る水によって光は四方八方に反射し、眩い光が部屋を包み……その光が収まった時、立っていたのはるーちゃんだった。

 

「…負けた、か…ハンゾウ、最後の最後まで、本当に格好良かったよ」

 

 前に倒れた、きっと最後まで挑もうとしたハンゾウを抱え、ビッキィは優しく声を掛ける。そして視線を私へと移し…言う。

 

「悔しいです。凄く、凄く悔しいです。…でも、それは負けない位…ほんっとうに、良い勝負でした!ありがとうございます、イリゼさん!勝負は、貴女の…貴女達の、勝ちです!」

「……っ!るーちゃん!やったよ、るーちゃんやったよ!私達…四天王全員に、勝ったんだよっ!」

 

 やり切った、そう言わんばかりの爽やかな顔を見せてくれるビッキィの言葉で勝利の実感を得た私は、るーちゃんに駆け寄って抱き締める。私の行動に、るーちゃんはびっくりした顔になって…でも喜びの鳴き声を上げてくれる。

 まだ、全部終わった訳じゃない。本当の、真の決戦は、この先にある。あくまで四天王への勝利は、その為の扉を開く行為に過ぎない。…でも、喜んだって良いよね。四天王全員に勝てた事だって、ほんとに嬉しいんだから。

 

「…まさか、本当に勝ってみせるとは…最後の四天王として戦って負けるのは、やっぱり色んな気持ちが生まれてきます」

「色んな気持ち、ですか?」

「えぇ。自分が負ければ『四天王が完全敗北』となる事へのプレッシャー、三人に勝ってきた相手と戦える事への高揚感、それだけのトレーナーに対する興味…そして負けた今の、悔しさと清々しさ、これからこの人がチャンピオンに挑むんだっていう期待感…正直これ程多くの感情が次々と出てくる事なんて、人生の中でもそうそうないと思います」

「…期待、してくれるんですね」

「勿論。イリゼさん達は全力を出したわたし達に勝ったんです。だから…チャンピオンとの最終決戦も、最高のバトルをして下さいね?」

 

 負けた悔しさ以外にも色々な感情がある、期待も湧いてくるんだって言葉を聞いて、改めて四天王の凄さを感じた。ジムリーダーもそう。四天王もそう。壁であると同時に、挑むに相応しくない相手に勝つ事を求められると同時に、更に先へ進むべき相手には負ける事も…壁としての責務を果たした上で敗北する事も求められるなんて、誰にでも出来る事じゃない。だから私の心には、尊敬も敬意もある。この感情は、勝った今も、何ら変わったりはしない。

 

「…けど、分かってますよね?今のチャンピオンは、イリゼさんと同じように四天王を全員倒して、その上で先代のチャンピオンを倒したトレーナーです。そのトレーナーが、万全の状態で、待ち構えているんです」

「…勝てると、思いますか?」

「さぁ?というか、今のチャンピオンもわたし達を倒してチャンピオンになったんですから、実のところイリゼさんだけを応援する気はないんですよね」

「あ、あー…。……絶対勝てる、とは思いません。るーちゃんは疲れてて、私も疲労してますから。けど…私には、ここまで歩んできた道がある。背中を押してくれた人達も、私を導いてくれた人達も、沢山いる。だから、最後まで突き進みます。るーちゃんと一緒に…この道の果てまで。果ての、先にまで」

「…その気持ちがあれば、きっと折れる事はないと思います。突き進んで下さい。イリゼさん達が望む、イリゼさん達の道の先へと」

 

 最後の握手を交わし、見送られながら部屋を出る。後、一つ。後、一勝。残るのは、最大最高の壁で……そこにこそ、目指し続けたバトルがある。

 

「ここまでよく頑張ったね、るーちゃん。偉いよ、本当に偉い。…ありがとね、ここまで一緒に来てくれて」

「ちーる、ちるるっ、ちる」

「…次で、最後だよ。次のバトルに…チャンピオンに勝てば、私達が最強になる。……大丈夫、私が勝たせてあげる。…じゃ、ないよね。私達で…一緒に勝とうね、るーちゃん」

「ちるっ!ちるちる、ちるーっ!」

 

 次が最後なんだから、もう先を見据えた温存なんて必要ない。可能な限りの、尽くせる限りの事をして、るーちゃんの体調を整えて、休憩もしっかり取って…私達は向かう。大部屋の最奥、唯一四天王が誰も入っていかなかった…四天王とのバトルの先に続いているだろう扉へ。

 押して、開ける。扉の先には長い階段があって、私はそれを登っていく。一歩一歩前へ、上へ、高みへと登っていき…踊り場の様な、少しだけ広い場所に出る。そこで私は、ある人と出会う。

 

「よぅ、イリゼ。…遂にここまで、来たんだな」

「ぐ、グレイブ君!?…もしかして、迎えに来てくれたの…?」

「まぁーな。知ってるか?チャンピオンって、リーグの中にいる間は割と暇なんだぜ?」

 

 まさかのグレイブに、私は驚く。でもグレイブ君からの返しに、ちょっと納得。四天王だって、副業をする位の余裕があるんだから、その四天王全員勝たないと挑めないチャンピオンは、暇だとしても全然おかしな事はない。

 

「にしてもほんと、世の中って面白いもんだよな。初心者中の初心者の時に出会った、軽く手解きしてやったトレーナーが、こうしてチャンピオンに挑むところまで来たんだからよ」

「あはは…グレイブ君も、私がここまで来れた理由の一つなんだよ?」

「当然だな。…まぁでも、そう言ってもらえるのは嬉しいぜ」

 

 二人で階段を登っていく。まだ、緊張はしていない。今はまだ、雑談出来る余裕がある。

 

「チャンピオンとしては、こうして挑戦者が現れるのってどうなの?現れるって事は、負けてチャンピオンの座を失うかもしれないって事だし、実は割と嬉しくなかったり?」

「まさか。勝ちゃいいんだから、何も恐れる事なんてねーよ。…それに、チャンピオンの座に固執して、挑戦者が現れない事を願うようなトレーナーが、チャンピオンになれるもんかよ。そんなトレーナーは、チャンピオンじゃない今のイリゼにだって敵わねーよ」

「そっか。…やっぱ凄いね、グレイブ君は。でも…私は負けないよ。私は勝つよ。グレイブ君に…チャンピオンに」

 

 階段の終わり。また扉があって、その先にはきっと、最終決戦の舞台がある。そんな場所に、扉の前に行き着いたところで、私はグレイブ君をじっと見つめる。するとグレイブ君は、満足そうな顔をした後……後頭部を掻きながら、言う。

 

「悪ぃ、イリゼ。待ってるなんて言っておいて情けねぇんだが──俺はもう、チャンピオンじゃねぇんだよ」

「え……?」

 

 一瞬、訳が分からなかった。意味が理解出来なかった。多分…一番、予想だにしない言葉だった。

 チャンピオンじゃない。その理由として考えられる事は二つ。一つはグレイブ君が自らその座を降りた可能性。でも、グレイブ君がそんな事をするとは思えない。という事は、もう一つの理由として考えられるのは……

 

「さぁ、行けよイリゼ。新たなチャンピオンが…俺を負かしたトレーナーが、待ってるぜ」

 

 開かれた扉、その先にいたトレーナー。それは…私の知る人物だった。二度、或いは三度戦った事のある相手だった。私とほぼ同時期にトレーナーとなった、同じように旅をしていた、私がいつかまたバトルを、と約束していた……愛月君が、そこにいた。

 

「こ、こんにちは、挑戦者さん。僕はチャンピオンの、愛月…だ…!…で、いいのかな…?」

「……っ…そ、っか…勝ったんだね、愛月君。私より先に、グレイブ君に…」

「う、うん…いや、でも、正直まぐれっていうか、運が良かったようなものだよ?もう一回バトルしたら普通にグレイブが勝つかもだし、ほんとまだまだチャンピオンなんて……」

 

 見るからにぎこちない様子を見せる、新たなチャンピオン。意外ではあったけど…納得出来ない相手じゃなかった。同時に影君の言っていた、答えの人物についても合点がいったし、ビッキィの言っていた『先代チャンピオン』がグレイブ君の前の人じゃなくて、グレイブ君だったんだって理解もした。

 一足先に、愛月君がリーグに来ていた。私と同じように四天王に勝ち、グレイブ君にも勝って、新チャンピオンになっていた。だから、今目の前には、グレイブ君じゃなくて愛月君がいて…おろおろとする愛月君に向けて、声が響く。

 

「気弱な事言ってんじゃねぇよ、愛月。まぐれじゃねぇ、運が良かったからでもねぇ。愛月は実力で、自分と相棒の力で、俺に勝ったんだ。チャンピオンになったんだ。愛月には俺が、まぐれで勝てるような相手に…運だけで何とかなるトレーナーに見えてんのか?」

「そ、そんな事……」

「だろ?…もうどうしようもねー程悔しいが、すぐに奪還戦を仕掛けてやりたいところだが…今は愛月が、チャンピオンなんだ。チャンピオンとして、挑戦者のイリゼと戦うんだ。頂点まで登り詰めたなら、最強の座を掴んだなら…背負ってみせろ。愛月が負かしてきた相手の思いを。チャンピオンの名前を。ここまで歩んできた、歩み続けて辿り着いた…愛月ってトレーナーの、その道の答えを」

「……ッ!…そう、だね…ごめん、ありがとう。…僕はチャンピオンだ。僕がチャンピオンだ。まだ不安だけど、自信はないけど…それでも今は、僕が…最強のポケモントレーナーだ」

 

 それは、叱咤であると同時にエール。きっと長い付き合いである…今まで弱さも、成長も見続けてきた、その果てに戦って負けた、チャンピオンの座を譲ったグレイブ君だからこその、愛月君への言葉。その言葉で愛月君の、それまでの雰囲気は吹き飛び……代わりに纏うのは、王者の気配。最強として君臨する、ポケモントレーナーの空気。

 気圧されそうになる。でも、引かない。引く事はない。…私もまた、この頂点を決める舞台に立っているんだから。私は相棒と共に、この先へ進んだから。

 

「…いこう、ケープ。僕達の、チャンピオンとしての初めてのバトルで…イリゼとるーちゃんとの、決着を付けるよ」

「くぁああああぁうッ!」

「いくよ、るーちゃん。愛月君とケープとの決着を付けて…私達が、チャンピオンになろう!もっともっと、羽ばたいていこう!」

「ちぃるぅううううっ!」

 

 向き合う、向かい合う、正対する。私にとってはチャンピオンとなる為の戦い。愛月君にとっては、初めての防衛戦…チャンピオンとしての守る戦い。どっちも負けられない、負けたくない理由があって…だから私達は、勝利を望む。その為に、全てを出し切る。

 これが、最後のバトル。最強を決める決戦。互いに譲れない思いを胸に、相棒と心を一つに戦う。そんなバトルが、最後のポケモンバトルが……幕を、開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以上、仮想空間でのシミュレーションでした!一種のロールプレイングでした!皆、楽しんでくれたかな?」

『でしょうね!そうでしょうねっ!』

 

 私の発言に、十人以上からの猛突っ込みが返ってきた。さ、流石に圧が凄い…。…後これ、一応皆…別次元や別世界から来てくれた皆に対する発言だよ?ロールプレイング、楽しかった?…的な意味での言葉だよ?…まぁ、読んでくれている皆に対しても、別の意味で伝えてはいるけど…。

 

「にしても、中々に出番の差があったわね…一応わたしは二回出てきたけど、内容的にはかなり薄いし…」

「あはは…まぁ、それはシミュレーションの設定が『私をメインに据えた旅』っていう内容な以上、仕方ないっていうかなんていうか…」

「俺は中々楽しめたぜ?…けど一つ、納得いかない事がある」

 

 確かにそこにはちょっと申し訳ない部分もあるけど…と思いつつ私がセイツに返すと、そこでグレイブ君が声を上げる。納得いかない…その理由は何となく予想が付くけど、一応訊いてみる。

 

「もしかして、最後負けたって事になってた事?」

「当然だ!俺が愛月に負けるなんて…しかもよりにもよってポケモンバトルでだなんて、シミュレーションの設定だとしても納得出来ねぇ!俺のチャンピオン魂が許さねぇ!」

「えぇ…そんな事言われても、イリゼだって困ると思うよ?」

「かもな。だから、ちょっと外出ろ愛月。リベンジマッチだ!」

「なんで!?ちょっ、グレイブが負けたのはシミュレーションの事であって、実際のバトルをしてもリベンジには…って引っ張らないでよ!うわっ、ちょっ…もぉぉぉぉっ!」

 

 強引に引っ張られていく愛月君に、私は苦笑い。助け船を出そうかな、とも思ったけど…止めておいた。これはバトルしないとグレイブ君の気が済まないようだし…愛月君も、心の底から嫌がっている訳じゃないみたいだから。私の見間違いでなければ…愛月君も、今はちょっぴりバトルしたい気分のようだったから。

 

(…当たり前だけど、違う次元や世界で、違う立場や背景を持って、違うタイミングで出会えば、関係性も変わってくるよね)

 

 そんな二人を皆と見送りながら、私は思う。シミュレーションには全員参加したけど、現実と全く同じ関係になった相手は誰もいなかった。友達になれたり、近い関係性になれた相手はいるけど、完全に同じ相手は一人もいない。

 でも…そんな全然違う経緯で出会ったシミュレーションでも、私は皆と繋がりを紡ぐ事が出来た。出会えるような設定にしていたから、と言ってしまえばそれまでだけど…私はこう思いたい。私達の間には、違う出会い方をしたとしても、今と完全に同じ関係になる事はなかったとしても…それでもやっぱり、きっと仲良くなれるって。

 さてと。それじゃあ今日は帰ったら…ライヌちゃんとるーちゃんと、一杯遊んであげよっかな。




今回のパロディ解説

・「〜〜七の光で十三の闇に〜〜感じの場所……」
KINGDOM HEARTSシリーズに登場する場所(ワールド)の一つの事。要はやたら大きい(高い)椅子のある部屋の事ですね。勿論今回の話で出てきたのは、椅子ではなく柱ですが。

・「〜〜命懸けで獲りにきて〜〜」
閃乱カグラシリーズのキャッチフレーズの事。ですが作中でも軽く触れている通り、「命懸け」というのはポケモンの技にもあるんですよね。そして、格闘タイプなのでレイズには当然無効化されます。

・「〜〜奥義、螺旋手裏〜〜」
NARUTOの主人公、うずまきナルトの忍術の一つのパロディ。アニメにおけるサトシ編最後のOPのゲッコウガが使う水手裏剣は、ほんと螺旋手裏剣に見えますよね。




 一旦再開したコラボ番外編ですが、今度こそこれにて終了です。次回は本編に戻ります…が、本編も次の話を最後とし、作品情報数話を投稿した後OSも一先ずの終了としようと思っております。…が、当然次回作もあります。その次回作についても後々お知らせしようと思いますので、お待ち下さい。
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