超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
災厄との戦いの最終盤、文字通りの最終決戦の際、各国の守護女神の一存によって、友好条約は…
だけど、だからって破棄したままで良いという訳じゃない。国という超巨大な組織同士の付き合いにおいては、取り決めが…確かな力を持つ約束が必要なものだから。そして、信次元には新たに私の守護する国が…神生オデッセフィアが加わった事もあり、今一度友好条約が…新たな友好条約が、五ヶ国間で結ばれる事となった。
「友好条約、締結!次回も読んでねっ!」
『なんで!?』
……なんか、いきなりネプテューヌが言い出した。まだ導入が終わったばかり、初めの地の文が出てきただけの状態なのに、何故かもう今回の話を終わらせようとしていた。…開口一番、これである。いや、メタ的な意味での開口一番であって、ここまでずっとネプテューヌは黙っていたって訳じゃないけど…。
「いやぁ、新作の第一話には出られなかったし、前作のクライマックスは殆どシリアスだったから、わたしとしてはボケずにいられなかったのさー!…あ、でも今作からは週一投稿だから、これで終わったら流石に寂しいよね。うん、反省反省」
「いやそこじゃないから…反省すべきはそこじゃないっての……」
「え?…あっ、そうだよ!よく考えたらわたし、これまで第一話かプロローグには毎回出てたじゃん!真に反省すべきは、それが遂に崩れた事じゃん…!」
「今日もネプテューヌはフルスロットルだね……」
突っ込まれても止まらないどころか、より変な思考に発展していくネプテューヌ。そのぶっ飛び具合に突っ込んだノワールは自分の額を押さえ、私達も乾いた笑いを漏らす。…まぁ、一応名前は第一話でも出てたし、ね…?
「…そういう作風とはいえ、今といい第一話といい、イリゼは完全にメタ発言を受け入れているというか、極自然なものとして扱ってますわね…」
「う…でも、ベールこそ極自然に地の文読んできてるじゃん……」
「その会話は不毛よ、早々に止めておいた方がいいわ」
ご尤もなブランの指摘に、私とベールは「です(わ)よね」と首肯。…うん、ほんと不毛だね…本題からも脱線してるし、この流れはここで止めておかないと。
「こほん。皆さん、一つ宜しいですか?
( ̄^ ̄)」
「あ、はい。なんでしょうか、いーすんさん」
「ここまで友好条約と、それに纏わる各種取り決めや締結に向けた調整を行ってきた訳ですが…女神を支え続けてきた者として、歴史を見続けてきた者として、見過ごせない事が一つあります(´-ω-`)」
今私達がいるのはプラネタワーで、集まっているのは各国の守護女神と女神候補生、それに教祖の面々。その面々を前に咳払いを一つしたのはイストワールさんで…浮かべているのは真面目な表情。
口振りからしても、重要な話である事は明白。それを受けて、私達は佇まいを正し…軽く見回したイストワールさんは、言う。
「…各国、多かれ少なかれ条約に抵触する開発や研究を行っていましたね?(。-_-。)」
『…………』
「ほぇ…?どうして急に、しずかになっちゃったの…?」
「押しだまってしまった…ってやつ?」
「いやそんな、文芸部出身のダウジンガーみたいな感じじゃないから…」
バツの悪そうな顔をするでもなく、顔を逸らすのでもなく、ただただ黙り込む皆。特にノワール、ベール、ブラン、ケイ、ミナの五人は、表情をぴくりとも動かす事なく黙っていて……伊達に国や人の長をしている訳じゃないとばかりの様子だった。一方ロムちゃんとラムちゃんは状況を飲み込み切れておらず、ユニが呆れ気味に突っ込んでいた。
「既に破棄された条約の件ですし、結果的にそれが勝利へ…信次元を守る事に繋がったのですから、糾弾するつもりはありませんが、今後条約が形骸化してしまわないよう、きちんと指摘だけはしておくべきだと、わたしは思うのです(´・ω・`)」
「確かに、それはそうですね。条約に縛られて守るべきものを守れなくなるのでは本末転倒ですが、そもそも友好条約は意味があって存在する訳ですし」
「でも、明白な違反をしてた!…って断言出来るのなんて、そんな沢山あったっけ?…まぁ、一つは考えるまでもないけど……」
落ち着いた様子で同意を示したミナの発言を受けて、ネプテューヌが人差し指を頬に当てつつ考える。…と、言ってもそれは数秒の事で…ネプテューヌの言葉に応じるように、私達の多くは視線をベールへ。
「あら、なんですの?」
「しらばっくれるのは流石に無理があるわ、ベール」
「あれだけの存在感と活躍を見せておいて惚けるのは、いっそ記憶力に不安を抱くわよ?」
「…まあ、ですわよねぇ…」
ブランとノワールからさらっと返され、苦笑いしながらベールは肩を竦める。
そう。最も条約に抵触していた、条約に真正面から喧嘩を売っているも同然な開発は何かと言えば…それは、リーンボックスの超巨大艦、ヘブンズゲートに他ならない。
「ベールさん、よくあれだけ巨大な艦を造ろうと思いましたね…」
「大きさは力ですもの。適材適所、どんな目的においても大きい事が正義とは言いませんけれど、巨大さはそれ自体が無理を、困難を捩じ伏せる強さがあるのは事実ですわ」
「実際防衛線の大幅強化も、ダークメガミの殲滅もヘブンズゲートの大火力あってこそですものね。お姉様の判断は、正しかったと言えますわ!」
「それはそれ、これはこれだけどね。条約と結果、どちらかではなくどちらも重要という話だろう?」
「そういう事です。そして、この件に関しては……(ーー;)」
うんうん、とチカがベールを肯定するのに対し、ケイは淡々と言葉を返す。イストワールさんはケイへと同意していて…次に視線が向けられたのは、ネプギア。
「…まあ、結果から大目に見たとしてもギリギリですね(-_-)」
「うっ…で、ですよね…以後、そのラインを超えないように気を付けま……」
「いえ、ギリギリアウトです( ˘ω˘ )」
「そっちだった!?」
がびーん!…とショックを受けるネプギアだけど、不服ではないようで、ごめんなさいと態度で示す。ネプテューヌも口では何も言わずに…だけど視線で、ごめんねと私達へ伝えてくる。
結論から言うと、ヘブンズゲートの開発にはネプギアも関わっていた。これが、ネプギアが主導するプラネテューヌとしての協力、共同開発なら(ヘブンズゲートそのものの問題を除けば)問題はないんだけど…私的に、秘密裏に、しかも個人ではなくプラネテューヌとしての技術で以って協力していた。これは流石に良くない。よくないというか、女神でありそれが功を奏したから良かったものの、そうじゃなかったらかなり不味い。
「ネプギアちゃん、悪いこと…したの…?(じー)」
「ダークネプギア?」
「あぅ…違うと言いたいけど、返す言葉がない……」
「…いいえ、ネプギアちゃんは悪くありませんわ。これはわたくしが、ネプギアちゃんの優しさと機械に対する『好き』の気持ちへ付け入っただけですもの」
「べ、ベールさん…いえ、だとしてもわたしも女神として……」
「…分かるでしょう?庇われてもそれに甘んじる事はない、心優しいネプギアちゃんをわたくしが利用しただけ、それだけなのですわ……」
「ベール、さん……」
「ベール……って、しれっと今ネプギアを懐柔しようとしてない!?」
言い訳しようとしないネプギアと、黙っていればいいのにそれをせず、真に悪いのは自分だと言うベール。二人の包み隠さない在り方に、何となく良い雰囲気となり…けどそこで、ネプテューヌが「まさか…!」と指摘した。しかもそれを受けたベールは、にやりと笑って…これはベール、指摘されるところまで見越して言ってたね…。
「くぅ、ほんとベールは油断ならないんだから…!いーすん次だよ次、ネプギアがこれ以上影響される前に次いこう!」
「あ…は、はい。えー…次に指摘すべきは、ラステイションですね(; ̄ェ ̄)」
「え?うち、何か問題でした?」
「ネプギアとは対照的な反応ね…姉の違いかしら…」
「惚けても無駄よ?条約の規定を超える性能の装備を使っていた事は、もううちだって掴んでいるんだから」
何の事やら…と、揃って素知らぬ顔をするラステイションの三人。とはいえここにいるのは各国の首脳陣。情報はきっちり掴んでいて…私もこの件は知っている。
友好条約の中には、増槽に関する規定もある。防衛の為の戦力であり、行動が自国内で完結させるという事になっている条約下の軍では、それを大きく超えるような活動…有り体に言えば、他国の生活圏に単独で侵攻出来るような長距離・広範囲活動用装備が禁止されているにも関わらず、それに引っかかるような装備をラステイションの機体が使っていた。これもまた、過酷な決戦の中で防衛線を維持するのに貢献していたのだろうけど、少数の試作品ではなく、明らかに大量に作り、保持していたというのは頂けない。
「あぁ…そうね、この件は反省すべきだと思ってるわ。廃棄予定だった装備を、予算とか他の政策との兼ね合いとかで、いつまでも処理していなかったんだもの。これは私の落ち度として認めるわ」
「…つまり、緊急的に廃棄予定の装備を使っただけ、と?」
「えぇ。廃棄予定でも使えるなら出し惜しみしている場合じゃない、と判断しての事よ」
一見殊勝な態度を見せるノワールは、私からの問いにも首肯する。でも、それに対して抱くのは、白々しい…という感情。
保持していたのではなく、廃棄予定のまま止まっていただけ。廃棄するつもりの物を引っ張り出しただけ。釈明としては巧みなもので、一見殊勝なように見せかけて、その実条約違反である事を躱そうとしている。
(…まあでも、それはそうだよね…)
仲間内とはいえ、多分全員が本気で糾弾する気はないとはいえ、これが国の長として当然の応答。ヘブンズゲートの様にどうやっても言い逃れ出来ないならともかく、そうじゃないなら弱みを見せる、認める事は避けるべきなんだから。
そしてその点では、違反を認めつつも話の最終的な印象を「ネプギアを懐柔しようとした」というものにしてしまったベールもまた巧み。ノワールもベールも、全くもって抜かりがない。
「じゃ、今は信次元も落ち着いてきたし、廃棄するの?」
「する予定よ。でも他にもやる事があるから、適切なタイミングで…ね」
「わー、言い逃れする気満々の発言…流石ブラックカラー、悪どい事に躊躇いがないね!」
「失礼ね…というか、色の話で言うなら貴女も暗色系でしょうが…!」
「…ネプギアちゃんは、明るい感じのむらさき、だよね」
「でもネプテューヌちゃんも、いつもは白って感じよねー」
「うーん、それは服の色次第じゃないかな…確かに女神化したら、わたしは白寄り、お姉ちゃんは黒寄りの紫色をした髪になるけど…」
また脱線する会話。けど今度はノワールが仕掛けたものでなく、ネプテューヌがふざけた結果で…守護女神の中でも、ネプテューヌはあまり謀をしない。それでも他の三人にやり込められていないのは…方向性が違うだけで、やはりネプテューヌもまたれっきとした守護女神だって事。…私も、ネプテューヌの様なスタンスではいけないけど…出来ないからこそ、凄いと思う。
「全く…貴女達は皆油断ならないわね。白の大陸の女神として、わたしは清廉潔白でいないと…」
「あらブラン。確かに最後の戦いにおいて、ルウィーのはっきりした違反はありませんでしたけれど…戦闘艦に搭載された魔術迷彩の詳細は、まだ開示していませんわよね?」
「そうね。国防や国益の面を考慮し吟味した上で、新技術に関する情報は開示する…それも条約に規定された事の一つの筈よ?」
やれやれと小さく肩を竦めるブラン。それをロムちゃんとラムちゃんが真似していて、姉を真似る二人の姿は可愛らしいものだったけど…ほっこりしている場合じゃない。
清廉潔白を語るブランを否定する、二人の指摘。でも、ブランは素知らぬ顔。
「…ミナ、説明してあげて」
「はい。申し訳ありません、ベール様、ノワール様。お二方の仰る通りではありますが…なにぶんルウィーは魔法技術が持ち味で、科学技術は他国程長けている訳ではない国家。それ故に、科学技術の塊である戦闘艦へ魔法技術を組み込んだ形である魔術迷彩は、まだまだ試験運用の域を出ていないのです。そしてその、半端な状態で開示するなどルウィーの恥。どうか皆様には、きちんと開示出来る状態になるまで待って頂きたいのです」
「ふむ。その割には、魔力砲や魔力障壁等、他にも魔術兵装がルウィーの戦闘艦には搭載されているようだけどね」
「砲や障壁とは何かと違う魔法ですから。その点含め、ご理解頂けると助かります」
振られたミナが語るのは、さっきのノワールと違う…でもやっぱり、体良く違反である事を躱す弁明。共通するのは、どちらも「その気はあった、でも出来る状況じゃなかった」としている事で、意外と政治の場では「その気があっても、やってないなら同じ事」とはならない。国の運営には本当に色んな事柄が絡んできて、何かをしようとするなら順を追って少しずつ進めなければ、反発や混乱、不安を生みかねないものだから。皆それを分かっているから、こういう論調を展開されると安易には否定出来ないし…現に女神の一存で条約破棄をした時は、始めかなりの混乱を生んだのが事実。
「…どこまでが本当で、どこからが嘘なのかしら…」
「さぁ、ね。全部本当かもしれないし、嘘かもしれない。重要なのは真偽じゃなくて、何が結論になるかよ」
ふと聞こえた、ユニとノワールのやり取り。ノワールの言葉…真実よりも、歪んでいようがなんであろうが、事実となったものが…事実という事になったものが優先されるという考え方は……
「丁度今日エピローグを迎えたオリジナル作品の、主人公の一人が用いたのと同じ考え方だね!」
「ダブルで来たね!地の文読みっていうメタと、パロディネタとでダブルの変化球ボケしてきたね!」
「ダブル…ダブル主人公だけに?」
「違うけど!?」
びっくりなボケをかましてきたネプテューヌに、私は全力突っ込み。全く、なんていうこじ付けを…ほんと、違うからね!実は地の文読みとそこからのメタネタ、更にパロネタでトリプルの変化球って言おうとしたけど、ダブル主人公である事に合わせて「地の文読みもメタネタの一つ」と解釈してダブルにした、とかもないからね!OP開始と同時に始まって、OPのプロローグでもパロネタにしたんだから、出来れば完結のタイミングも本作の第一話と合わせたかったなぁ…なんて事もないんだからね!
「いや、前者はともかく後者は完全に作者さんの思考ですし、イリゼさんが『ないんだからね!』…というのは違う気が……」
「うっ…まさかの二回連続で地の文を読まれた……」
「…妹も教祖として支える姉妹も揃って全然関係ない話をするのですが、わたしはどうしたらいいんでしょう……(´;ω;`)」
「貴女も大変ね、イストワール…」
何か変なテンションになっていた私だけど、イストワールさんの発言と、チカの同情的な言葉で我に返って鎮静化。…うん、まぁ…落ち着こう、私…。
「こ、こほん。…こうなると、下手に他国を糾弾すれば自分の側も危なくなるどころか、他国を糾弾しておいて自分の国も…となりかねない。だから荒波を立てない事が一番だ…って訳で、指摘はすれども糾弾はせず、という形を取ったんですね?」
「仰る通りです。尤も、実際どうするかは皆さんにお任せしますが(´・ω・`)」
仕切り直すように咳払いをし、イストワールさんを見る私。わざわざ言うまでもない事だろうけど、全員でそれを再認識するという意味で、決して無駄な発言ではなかった筈。そしてイストワールさんは、落ち着いた声音で締めの言葉を口にして…全員が、無言という肯定で返答した。
「…さて、本題に…いえ、本題の大詰めに入るとしましょ」
「そうですわね。イストワールの指摘は、改定された上で尚万全ではなかった友好条約の穴、問題点を挙げたとも言えますし」
「まぁ、何の障害にもならない条約じゃ、そもそも結ぶ意味がないんだけどね。自由っていうのは、水みたいなものだし」
「水……あっ、水は幾らでも形が変わるし掴まれる事もない、自由そのものの存在だけど、枠…つまり囲う物がなければバラバラに流れていってしまう、纏まってはいられない存在でもある…って事ですか?」
「あー、そういう。んもう、わざわざそんな例えをする辺り、ノワールったら自分を格好良く見せる事に余念がないんだから〜。でも、そんなノワールも嫌いじゃないぞっ!」
「ネプテューヌさーん…脱線してます、早速また脱線してますー……」
ぽんっ、と手を打ったネプギアが納得の反応を見せる一方、ネプテューヌは茶化しつつもサムズアップ。見事に脱線させたネプテューヌへユニが困った顔で声を掛け…今度こそ、この会談は向かうべき結論へ。
「むむ…今日もむずかしい…」
「いつも、むずかしい…(しゅん)」
「あはは…大丈夫だよ、ロムちゃん、ラムちゃん。確かにまだ二人には難しいかもしれないけど、だからって聞き流したり別の話をしたりせず、二人は理解しようとしてたでしょ?なら、きっと理解出来る時が来るよ。二人はちゃんと、そっちに向かって行動してたんだから」
「おぉ、イリゼも格好良い事言ってる…なんかあれだね!今にも落ちてきそうな空の下で語ってる感あるよね!」
「ふふっ、単に私は二人の事を評価してるだけ…って、それお亡くなりになってる人の話じゃん!わ、私は死んでませんけど!?」
そんなこんな(?)でちょこちょこ脱線しつつも、結論が…新たな条約の事項が決められていく。本当に難しい話ではあるけど、今に至るまでも色々話してるし、破棄したとはいえ旧友好条約をベースに出来る事は間違いないし、各国の有識者にも多くの意見や提案を受けた上での会談だから、詰めとして求められるのは組み立てる行為。枠もピースももうあるから、それを使って新たな友好条約という絵を完成させようというのが今の段階。
出来上がるのが、完全完璧な条約になるかどうかは分からない。それは、後にならなきゃ誰にも判断なんて出来やしない。でもきっと、完璧かどうかは分からなくても、悪い条約にはならない筈だと私は思う。私は信じている。だってこれは、多くの人が知恵を絞って、私達が各国の…信次元の皆の幸せと安寧を願って作り上げる友好条約なんだから。
そして、形の決まった新友好条約。旧友好条約から有用なものは引き継ぎ、変えるべきところは変え、更に新たな条項を加えていき……その中で、私達が災厄を乗り越えた直後から構想し、その為に準備も進めてきた、新たな組織が正式に発足する事となった。信次元国家間連携機構──信国連という、信次元の平和維持と更なる発展、別次元を始めとする次元の外側に存在する由々しき事態への対応等まで含めた、信次元全体でより良い未来を目指す為の国際機関が。
*
新生友好条約の締結に纏わる会談は無事終了。とはいえ当然、条約は家族のルールやゲームの設定なんかと違って、決めた時点で即有効になる訳じゃない。発表は勿論、締結の為の式典だって行う必要があるし…この友好条約が機能し始めるのは、もう少し先になる。…まあ、当たり前の事だけどね。突然「こういうの決めたよ!大概は日常生活に直結しない事だけど、取り敢えず明日から皆も守るように!」…なんて事になっても、皆守れる訳ないんだし。
「んっ…まだ条約の内容が決まっただけで、ここからやらなきゃいけない事もあるのに、ちょっと肩の荷が降りた気分になっちゃうね」
「気が早い…と言いたいところどけど、気持ちは分かるわ。ゲームで言う、回復とセーブが出来る中間地点まで来た気分っていうか…」
「そうそう、そんな感じ!ふふっ、思ってた事をスパーンっと言い当ててもらえると、凄く気分が良いな♪」
「ま、まあネプギアとの付き合いも、なんだかんだ長いし…これ位の事なら……」
「えー、じゃあわたしたちはー?」
「わたしたちも、長いよね…?(ちらちら)」
「へっ?…あ、う、うん。…わざわざ訊かなくなって分かる事でしょ。アタシ達が…アタシ達女神候補生の付き合いも、長いものになった事は」
いつもの会議室を出て、何をする訳でもないけどプラネタワーのリビングルームに当たる部屋へと移動した私達。そこでネプギア達女神候補生の四人はバルコニーへと出て、いつものように仲良く話す。…あ、ネプギアがユニに抱き着いた。しかもロムとラムがそれに追従して……ほんと、仲良いなぁ…。
「長い付き合いって…女神基準で考えれば、まだまだそんなレベルじゃないでしょうに……」
「良いじゃありませんの。見ていて微笑ましいやり取りですし」
「同感よ。それに、女神基準って言ったって、わたし達とあの子達とじゃそもそも生きてきた長さが大違いなんだから、わたし達とは感じ方自体違ってもおかしくないわ」
その四人の姿を、中から私達は座って眺める。ブランが言ったのは「確かになぁ」って思える事で、実際十年しか生きていない人の一年と、五十年生きている人の一年は、違うものだと思う。だって、同じ一年でも前者にとっては人生の十分の一になるけど、後者にとっては五十分の一になってしまうんだから。…まあ、そもそもこの考え方が女神にも当てはまるのかどうかは分からないけど。
「…長い付き合い、かぁ…感覚的に言うと、私もネプギア達とあんまり変わらないんだよな…」
「わたしも記憶喪失だから、ノワール達と同じ位生きてるって感覚がないんだよねぇ…まあ、その分身体も心もピチピチだけどね!」
「はは…にしても、なんか凄く懐かしい感じだな…暫くプラネテューヌを離れる事は、これまでだってあったのに……」
ふふん、と胸を張るネプテューヌに苦笑しつつ、私が感じるのは懐かしさ。プラネタワーを…プラネテューヌを長く離れるのは初めてじゃないのに、やけに懐かしさを感じるのは……やっぱり、帰る場所が変わったから。プラネテューヌは帰る場所じゃなくて、訪れる場所になったから。
「そっかぁ、懐かしいかぁ…うぅ、イリゼは違う国の守護女神になっちゃったし、いーすんもまだイリゼのお手伝い中だから、寂しいよぉ……」
「ご、ごめんねネプテューヌ。一日でも早く足場を固めて、イストワールさんが帰っても大丈夫な状態を作るから…」
「…なーんて、ね。イリゼが大変なのも頑張ってるのも知ってるし、焦らなくたって大丈夫だよ。いーすんには、笹舟に乗ったつもりでいてよね!って言ったんだから」
「ネプテューヌ…って、笹舟!?笹舟って…それはある意味泥舟より不安になる舟じゃない!?乗った瞬間重量オーバーで沈む……あ…いや、もしかしてイストワールさんの体格を考えた上で、ちょっと小粋な表現として笹舟って言ったとか……」
「ううん、普通に冗談だよ?」
「あ、そ、そう……」
まさかボケじゃなく、ネプテューヌなりの粋な表現…!?…と思ったけど、違うよとネプテューヌは真顔で返答。つまり、私は見当違いな深読みをしてたって訳で…うん、イリゼ赤っ恥です…。
「笹舟…確かにネプテューヌに任せるのは、笹舟に乗る位の感覚かもね」
「む、わたしの笹舟を舐めちゃいけないよブラン!フォトンブラスターキャノンに確率変動弾ミサイル、多数の艦載機に加えてフォールドエンジンまで搭載した、超性能笹舟なんだから!」
「それ絶対もう笹舟じゃないでしょ…で、実際のところはどうなのよ?まさかネプギアに負んぶに抱っこ状態じゃないでしょうね?」
「違うってばー、もー。…まぁ確かに、楽出来るなら可能な限り楽したいけど…今のわたしは、ほんとにやる気なんだからね?信じられないって言うなら、わたしの頑張りっぷりをネプギアに訊いてみるといいよ?」
半眼で突っ込んだ後にノワールが訊けば、少しだけ真面目な顔をしたネプテューヌが本当なんだと私達へ話す。表情もそうだけど、言葉の内容からは自信が…見栄を張る為の出任せとは違う意思が籠っていて、ならば本当なんだろうなと私は思う。思うというか、そういう噂も私は聞いている。ノワールだって、面と向かって訊いてみたっていうだけで、本当に疑ってたとかじゃない気がする。…多分。
「あぁ、その話でいうと、イリゼは教祖についてどう思ってますの?」
「教祖…って、それを誰にするか、そもそも選出するのかどうかって事?」
やや漠然とした問いに私が訊き返せば、ベールは首肯。これに関しては皆も気になるのか、全員の視線が私の方へ。
「そうだね…まだ暫くはいいにしても、長期的に考えれば教祖は必要だと思ってる…けど、ケイやチカ、ミナみたいに、代々続く教祖家系からって事がうちは出来ないからね……」
「流石にそれは他国から人材を…って訳にもいかないものね。私達女神程じゃないにしても、教祖だって国民からの支持は必要なんだし」
「いっそ別次元から登用する、とか?」
「いやいやいや…と、思ったけど…うちに勧誘したいなって思える相手は別次元にもいるし、別次元というか、もっと柔軟な思考で教祖の事を考えてみるっていうのは良いかも…」
教祖は必要だけど、それはそういう立場、ポジションの存在が必要になるって事であって、四大国家の教祖と完全に同じ存在じゃなきゃいけないって事じゃない。歴史とか色々絡んではくるけど、現にプラネテューヌの教祖…イストワールさんは人じゃないんだから、国民が受け入れてくれるのなら、他国の教祖とは違う形となっても良い筈。…と、顎に指を当てつつ言ったブランの発言から私は考え…気付けば皆は、何やら温かい目で私を見ていた。
「…え?いや、あの…何……?」
「再現された街を利用出来るとはいえ、一から国を興して運営するなど、苦難の道となるのは必須。それをわたくし達の様に国家運営の経験がある訳でもないイリゼが、というのは不安でしたけれど……」
「こうやって意欲的に、積極的に考えられているなら、ほんとに大丈夫そうね」
「うんうん。今もこれからも、ずっと苦労は続くでしょうけど…っていうか、それが国ってものだけど、頑張りなさいよね。じゃなきゃ、友好国としても張り合いがないもの」
「ちょ、待っ……何で撫でるの!?ねぇ、ちょっとぉ…!」
気に掛けていた子が自立後もしっかりやってると分かった時の様な、そんな微笑ましさを帯びながら私の事を撫でてくる四人。
まあ、分かる。さっき自分でも口にしたけど、私は皆よりずっと意識を持って活動している時間が短いし、当然国の運営なんてこれまでした事ないし、なのにやっている事はただの運営より難しい事なんだから、心配するのも私の様子を見て安心するのも、心情的には理解出来る。…けど、だからって撫でる必要はないよね!?ないよねぇ!?
「よっ、偉いよイリゼ!…ところでイリゼ、いーすんにはこれまで通りなのに、他の教祖の三人に対しては呼び捨てするようになったよね」
「い、今それに言及する…!?…は、話し方もそうだけど、同じ女神の皆に対しては対等の接し方なのに、教祖に対しては敬語…っていうのは、国の長としては示しがつかないでしょ…?」
『へぇ〜』
「なんでそんな、『そっかそっかぁ』みたいな顔をするかなぁ!?も、もぉぉぉぉ…っ!」
変なタイミングで訊いてくるし、答えたら答えたで生温かい反応してくるしで、とにかく私は踏んだり蹴ったり。…う、嬉しくない…嬉しくないんだからね!こういうのは普通に恥ずかしいんだからね!……振り払ってないのも、そうするのは悪いかなぁ…って思ってるだけなんだからっ!
「おおぅ…凄まじいツンデレムーブをかましていますわ…」
「頭に触れた状態での地の文読みはほんとに超能力か何かに見えるから止めてよね!?あー、もうっ!私お菓子作ってくるから!」
「あ、イリゼさーん!でしたらわたし、手伝いますー!」
「じゃあわたしもー。イリゼちゃん、手伝ってあげるわ!」
「…ユニちゃんも、行く?」
「って事は、ロムも行く気なのね。…ま、折角だしアタシも行こうかしら」
くるんっ、と身を翻して部屋の出入り口に向かう私だったけど、そこにネプギア達がついてくる。普段なら嬉しいし、今だって嬉しくはあるんだけど…恥ずかしさからの離脱を考えていた今の私にとっては、何ともタイミングの悪いお手伝い。
(くっ…け、けど嫌そうな素振りを出したら、手伝ってくれようとしている皆に悪いし、大人気ない…!)
「イリゼちゃーん?聞いてるー?」
「あ…う、うん。聞いてるよラムちゃん。皆、手伝うって言ってくれてありがとね」
ラムちゃんに呼び掛けられたところで私は歩くペースを落とし、四人と並ぶ。…相変わらずラムちゃんは私をちゃん付けだけど…これ、私が単に女神としてだけじゃなく、守護女神としてもブラン達と並んだ場合はさん付けに戻るかな…いや、戻らないかな…ネプテューヌだってちゃん付けだし……。
「…そういえば、イリゼさんは…妹だけど、守護女神…だね」
「え?あ、そうだね。イストワールさんだけじゃなく、セイツだって私の姉だし…そういう意味じゃ、立場的にはほんと私って、ネプテューヌ達より皆寄りだよね」
「ふふっ。じゃあもしかしたら、どこかの次元にはアタシ達と対等で、お姉ちゃん達とは敬語で話すイリゼさんもいたのかもですね」
「もしそうなら、そこのわたしはイリゼさんじゃなくて、イリゼちゃん、って呼んでたり…?」
「あはは、かもね。もしも本当に、そういう次元があったら…だけど」
肩を竦めつつ、少しだけ考えてみる。ネプテューヌではなく、ネプギアが旅の前に…或いは旅の始まりで魔窟に訪れて、そこで私が目覚めたら…っていう可能性を。友達の妹ではなく、友達として四人と出会っていた場合の日々を。
真面目に考えれば、そういう次元がある可能性は低いと思う。これまで私は多くの次元と関わってきたけど、どこの次元の人や女神と話してみても、そこに私はいないって話だから。でも、そういう思考を取っ払って、ただただ「もしそういう日々があったら」と思ったら…私は、間違いなく言える。きっとそういう日々も、楽しかったんだろうって。
「…さてと。じゃあ、久し振りにプラネタワーで作る訳だし、ちょっと手の込んだ物を作ってみようかな。皆にも、一杯手伝ってもらうからね?」
『おー!』
皆の方を向き、片腕で力こぶを作るようなジェスチャーを見せれば、皆も元気良く応じてくれる。そんな女神候補生の四人と共に、私はお菓子を作りに行く。
きっと、私がネプギア達と友達関係だったとしても、ネプギア達とも、ネプテューヌ達とも、皆と仲良くなれてたと思う。出会いや関係性も大事だけど、繋がりはそれだけで成り立つものじゃないから。そして、だからこそ…私が守護女神となり、住む場所や皆との関係が変わったとしても…心の繋がりは変わらないと、信じている。
今回のパロディ解説
・文芸部出身のダウジンガー
ギャグマンガ日和シリーズに登場するキャラの一人、克明の事。いつもは仲良しで愉快な女神達も、国の長としてやり取りする際は色々謀をしたりもするのです。
・丁度今日エピローグを迎えたオリジナル作品
私の作品の一つ、双極の理創造の事。はい。OP開始と同時に始まった双極も、遂に完結したのです!という事で、今回はここで私の作品と明言しつつパロディをしました!
・「〜〜今にも落ちてきそうな空の下で〜〜」
ジョジョの奇妙な冒険第五部 黄金の風における、ある回の副題の事。大丈夫です、イリゼもロムもラムも生きています。女神なので、そう簡単にはやられません。
・フォトンブラスターキャノン
機動戦士ガンダムAGEに登場する艦船、ディーヴァの武装の一つの事。という事はつまり、ネプテューヌの言う笹舟は、強襲揚陸艦形態に変形もするのかもしれませんね。
・確率変動弾ミサイル
天元突破グレンラガンに登場する兵器の一つの事。超銀河ダイグレン宜しく、艦各部から撃ち出すのかもしれません。…ネプテューヌの想像の中で。
・フォールドエンジン
マクロスシリーズに登場する機器の一つの事。フォールドまでする笹舟…一体何の為の笹舟でしょうね。そして笹舟である意味はあるんでしょうかね。