超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
する側としてはもう慣れたもの、でもされる側としては初めての監査が、終わった。結果としては…まぁ、正式な結果の公表はまだ少し先だけど、一先ずは「問題なし」という判断を受けるに至った。探られて困るような事なんてないんだから、当然の結果と言えば当然だけど…やっぱり、ほっとする。
と、同時に監査が終わった事で、うずめ達が神生オデッセフィアに留まらなきゃいけない理由もなくなった訳だけど…もう少しの間、居てくれるらしい。居てくれるっていうか、普通に神生オデッセフィアを観光したりのんびりしたりするつもりとの事で…まあなんであれ、留まろうと思ってくれたのは嬉しい。だって、それは神生オデッセフィアを、追加でもう少し留まりたいと思ってもらえたって事だから。
「そういやいりっち…っていうか皆は、結構前からライブとかやってるんだよな?」
「うん、そうだよ。初めての時はびっくりしたなぁ…だって、私は別の場所で戦ってたのに、大々的に呼ばれた…っていうか、出る一択の状況にされちゃったんだもん」
今…というか今日は、三人共教会でゆっくりのんびり。そこで私はお菓子を作って振る舞い、そのまま四人で駄弁る事に。
話しながら、その時の事を思い出す。本当にあの時は驚いたし…でもなんだかんだ嬉しかった。待ってくれる皆や、送り出してくれた皆の為に、精一杯やろうと、心からのパフォーマンスをしようと思った。それから何より…楽しかった。
「ライブ、か…オレも守護女神だった頃は色々とやってきたけど、ライブという発想はなかったよ。けど、女神の性質を考えれば、中々上手い政策とも言えるね」
「え、えらい冷静に分析するね…。…二人共、ライブに興味あったりするの?」
「うぇ?い、いやいやいや、俺はそういう柄じゃねぇって」
「ふっ…オレにそんな事が似合うと思うかい?」
「…俺は、見てみたいけどなぁ…今の姿でも、女神の姿でも、似合わないなんて事は絶対ないだろうし…」
ほんのり恥ずかしそうにしながら否定するうずめと、薄く笑い、暗に「自分には合わない」と返してくるくろめ。そんな事ないと思うけど…と私が思っていると、そこでウィード君が呟いて…ウィード君の呟きが聞こえた事で、二人はぴくりと肩を動かす。
「…本当に?」
「本当だって。てかくろめは…いや、くろめもうずめも、柄とか似合うかどうかとか抜きにして考えた場合は興味ないのか?勿論、ないならないでいいんだけどさ」
「や、別に興味がないって訳じゃねぇよ…ライブ、っていうか…アイドル自体は、その…良いなって、思う事もあるし…」
「…衣装とか、ダンスとか…?」
「そ、そうそう…マイク持って、会場皆に呼び掛けたり、歌って踊って皆の視線を集めたり、時にはユニットも組んだりしたら、楽しそう…うん、すっごくキラキラしてて、楽しそうだよねっ♪」
「あ、分かる。パフォーマンスは勿論だけど、歌と歌の間のフリートークとか、観客との掛け合いも楽しそうだし…衣装もふりっふりの可愛いのとか、シュッとした格好良いのとか、色々着てみたいよね〜♪」
「うんうん、うずめもそう思う〜!かっこかわいい衣装着て、後ろの席までちゃんと見えてるからね〜って言って、見てくれる一杯の人と一緒に楽しめたら、絶対素敵だよぉ〜♪」
「かっこかわいい服、良いかも〜♪…ぁ…でも、くろめが出たら、ライブが台無しになっちゃうかも…くろめは暗くて後ろ向きだから、皆も乗ってくれないかも……」
「もー、何言ってるの。そういう時は気分だよ気分♪頑張ろ〜って思って、思いっ切りやれば、心配する事なんてないってば〜♪」
追求するウィード君の言葉で、二人は少しずつ話し始める。どうやら二人共、アイドルに対する興味…というか、憧れ的な感情はあるみたいで、段々と心の内を明らかにしてくれていったんだけど……
…………。
………………。
……………………。
(……お、おおぅ…)
──なんだか、凄い事になってしまった。うずめだけでなく、くろめまで妄想モードに入ってしまい、しかもその途中でくろめのネガティヴ思考も作動してしまい、軽いカオスが出来上がっていた。…ど、どうしようこれ……。
「…くろめの妄想状態自体は前にも見た事あるけど…う、うずめと共演状態になる事もあるんだね……」
「あー、うん。偶にあるぞ…」
「こ、声掛けた方がいいかな…?」
「はは……」
問いに対して返ってきたのは、乾いた笑い。それは恐らく、声を掛けるにしても掛けないにしても、苦笑いを禁じ得ないって事で……つられて私も苦笑い。
…に、しても…くろめがこんな姿を見せるなんて、こんな一面もあるだなんて、思いもしなかった。性格が変わったのか、それとも本来のくろめが…『うずめ』だった頃の部分が戻ったのかは分からないけど、こういう面を見せてくれるって事は、くろめなりに今の日々を、今の信次元を受け入れてくれているんだと思う。
「…ねぇ、ウィード君。ウィード君も、うずめも、くろめも…皆、元気?」
「うん?そりゃ、見ての通り元気…って、意味じゃない…よな?」
「まぁ、ね。ちょくちょく会ってるとはいえ、やっぱりどうしても、あの時の事が気になって…さ」
「あぁ…ま、そうだよな。悪い、気を遣わせちゃって」
「あ、ううん。それこそ気にしないで。私が勝手に気にしちゃってるだけなんだから」
私は声を掛けない事を選んだ…って訳じゃないけど、妄想を絶賛展開中な二人を見ている内にある思いを抱いて、それをウィード君へと訊く。元気なのは、取り繕ってる訳じゃないのは見れば分かる事だけど…それでも、訊きたくなった。
そして、同時に私は思い返す。まだ私が神生オデッセフィアの守護女神となる前…戦いが終わって間もない頃に知った、ある真実の事を。
*
戦いの中で、ネプテューヌ達女神は本当に頑張っていた。…と、表現するとなんだか偉そうだが、とにかく俺なんかじゃ力的にも精神的にも絶対真似出来ないと思う程、人の為に、次元の為に、戦い抜いた。その果てで、全てを救い、守り切った。…本当に、女神は凄い。勝てたのは、女神の皆だけの力じゃないのかもしれないが…女神あっての勝利、未来なんだと俺は思う。
けど、戦いが終わったからって、女神はのんびり出来る訳じゃない。国の長である女神の皆は、終わった後も後処理やらこれからに向けた事やらで、何かと忙しくしてて…だというのに、そんな忙しい中で、ネプテューヌ達は俺の…俺達の都合に付き合うと言ってくれた。…前に一度、あの時は果たす事が出来なかった、俺にとっての確かめたい事に。
「確かこの辺りに…っと、あった」
途中までは女神化したネプテューヌ達に運んでもらい、周辺まで来た後は降りて、歩いて探した。…前の時はくろめと鉢合わせした事で調べ切る事が出来なかった、あの洞窟を。
少し歩いたところで、俺はその洞窟を発見。振り返って皆を呼び、皆も洞窟前へと集まってくる。
「ここは……あぁ、そうだ…ここだ…」
「…くろめさん…?大丈夫ですか…?」
ぽつり、と呟くように言うくろめの表情は暗い。それに気付いたネプギアが声を掛けると、くろめは問題ないよと返していた…けど、表情は取り繕い切れていない。
「…ウィード。お前もここを、知ってたんだな」
「知ってたっていうか…まあ、な」
「おぉ?なんだかこれは、ビックなイベントが起きそうな予感…!やっぱりこれは、付いてきて正解だったかも!」
「付いてきたってか、俺達からすりゃ運んでくれた…だけどな」
「まぁ、いつものネプテューヌらしい発言だよね…」
何やらテンションの高いネプテューヌに対し、うずめが軽く苦笑い。
ネプテューヌにネプギア、それにイリゼが俺達三人を運んでくれた。女神化にシェアクリスタルが必要なうずめは勿論、くろめも女神化に関しては不安定…というか、少なくとも俺はあれ以降一度も見ていなくて、だから三人の同行はありがたかった。
ただ、三人は良い息抜きになるとも言っていたけど…多分、くろめが目の届かない所に行くのを危惧した面もあると思う。それは当然の事だし…今後もそうやって懸念されるか、それとも少しずつでも信用されるようになるかは、くろめ次第。
「んーと、確認だけどわたし達に何かしてほしい、って事じゃないんだよね?」
「確かめたい事があるだけだからな。ただ、モンスターが出てきた時は……」
「任せて。こんなに女神がいるんだもん、ウィード君に戦ってもらうような事は起こさせないよ」
「イリゼ、同感だけどそれは微妙にフラグ感が……」
大丈夫、と頷くイリゼにネプテューヌが何とも言えない表情を浮かべて、それに俺達は苦笑い。…今の俺なら、ちょっと位のモンスターは対処出来る…と思いたいが……正直、ここに限っては無理かもしれない。ここは、ここだけは。
そんな風にも思いながら、俺は洞窟の中へ入っていく。同じく過去に一度来た事のあるネプギアと共に先頭を歩き、洞窟内を進んでいく。
「…………」
「…おい【オレ】、ぎあっちも心配してたが、本当に大丈夫か?気が乗らないなら、別に外で待ってたって…」
「いいや、行くさ。ここに確かめたい事があるのは、オレも同じなんだ…」
「…ならやっぱ、ここは二人の過去に纏わる場所なんだな……」
後ろから聞こえる、二人のやり取り。あの時はくろめも来たんだから、やっぱりここか、この付近のどこかである事は間違いない。
と、思うと同時に思い出す。その場に俺はいなかったが、確かうずめは……
「…うずめこそ、大丈夫なのか?聞いた話じゃ、前に来た時はあんまり気分が優れなかったんだろ…?」
「あー…まぁ、そうだったんだが…あの時と違って、もう今は自分がどんな存在なのか分かっちまったし…記憶もくろめの側にある以上、何したって思い出せないような気もしちまってるからな…。そう思うとなんか、前の時は感じたものも、今はどうでもよく思えるっていうか……」
「…そう、か……」
「あ、別に気にしなくていいからな?俺だって別に気にしてないってか、こう…ある意味割り切れてる?…感じなんだからよ」
不味い事を訊いてしまったか。そう思った俺だったが、先んずるようにうずめは否定。けど、さっきの言葉も、今の返しも、なら安心だと思えるようなものじゃなくて…空気が、重くなる。元気のないくろめに、悲しさを感じさせる元気を見せるうずめ。それに俺自身、内心じゃ緊張と不安を感じているものだから、普段程明るくなれなくて……そう思っている内に、前来た時の最終地点(って言っても目印なんてないが)を越え、俺達は更に洞窟の奥へ。
「…あれ…?あの、皆さん…なんか、段々……」
「うん…この感覚、シェアエナジー…だよね…」
ふとネプギアが上げた声に、イリゼが同意。俺には分からないが、ネプテューヌやうずめ達も感じてるみたいで…こんな場所でシェアエナジーを感じるって事は、やっぱりここなのかもしれない。
だが、ここまでは何もなかった。もしかしたらあるかもと思ったものが、何もなく…自分自身で分かる確証が今の俺にはないからこそ、緊張が高まっていく。
(…ここで、正解なのかもしれない…けど、確かめたとして、俺はどうするんだ…?確かめてそれで満足なのか…?…いや、そもそも…ここにうずめとくろめがいる以上、本当に確かめるべきものがあるのか……?)
確かめるという目的の達成が間近に迫る中、俺の心に溢れるのは逸る気持ち…ではなく、戸惑いの感情。実のところ、俺の「確かめる」っていうのは漠然としたものでしかない。行ってみればきっと分かる、その程度でしかない。だからこそ、これまで深く考えてなかった部分に戸惑い、けれど俺が足を止める事はなく……そして、行き着く。辿り着く。洞窟の、最奥地に。
「…あれ?ここ、ほんのり明るくない?明るいっていうか…明かりがある感じ…?」
「──あ……ぇ…?」
初めに声を上げたのはネプテューヌで、あれ?…と小首を傾げる。確かにそれはその通りで…次に声を上げたのはくろめ。けどそれは言葉を発したというより、声が漏れたという感じで…次の瞬間、俺も、俺達も、認識する。最奥地に鎮座する、巨大な一つの結晶体を。
見た瞬間に、分かった。それはシェアエナジーによる結晶だと。シェアを感じたとかじゃないが…何故か、そう思った。
けど…正直、今はそんな事どうでも良かった。なんだって良かった。だって…見えてしまったのだから。その結晶の中に、人らしき姿があって……──それは、うずめだった。
「……お、れ…?」
言葉が何も出てこない俺と、茫然とした声を上げるうずめ。確かにうずめはここにいる。ここにいて…その上で、結晶の中にも眠るようにしてうずめがいる。見間違いじゃない。そして…何となくだが、分かる。結晶の中にいるうずめは、別次元の存在とか、偽者とか、そういうものではない…と。
「う、うずめ…さん…?…これは、一体……」
「ちょ、ちょっと待って…これって、わたしが犯罪神をノワール達と封印した時のと同じ結晶…っていうか、封印術じゃない…?…じゃあ、これって……」
「……ふ、ふふ…ふふふ、ふふふふふふっ…」
茫然としているのは、他の皆も同じ事。中でもネプテューヌは、これについて…この結晶を知っているような言葉を口にし……次の瞬間、突如としてくろめが笑い出す。
「くろ、め……?」
「ふふっ…ははははははははっ!あぁ、嗚呼、そうか…そういう事か!だからか、だからなのか!ああ、ああ!…あ、ぁ……」
「……っ!くろめッ!」
右手で顔の片側を押さえ、覚束ない足取りでふらふらと動き回りながら…爆ぜた感情に振り回されているような動きを見せながら、くろめは笑う。笑い、叫び、どこかへと思いを叩き付け…膝を突く。
並々ならぬ様子を見せた後、事切れるように膝を突いたくろめへ、反射的に駆け寄る俺。一体何が何なのか、さっぱり分からない。だけど…今のくろめを見て、放っておける訳がない。
「お、おい…急にどうしたんだよ、【オレ】……」
「…………」
「何か、気付いたのか…?それとも、あの結晶から何か悪い影響が……──ッ!ウィード!」
普段は言い合う事の多いうずめも、今はくろめを心配するように声を掛ける。反応がない事にも腹を立てる事なく、続けてうずめは呼び掛けて…けど次の瞬間、声を荒げた。豹変した声で俺の名を呼び…それで気付いた俺は、くろめの手首を掴む。……自らの首に回そうとしていた、くろめの手首を。
「……っ…ウィー、ド…」
「駄目だ、くろめ。俺には、今のくろめの気持ちを把握する事なんて出来ないが…それは、させない。それは、俺だって許さない」
感情が闇に沈んだような、そんな瞳で俺を見るくろめに対し、声のトーンを落とした上で、はっきりと俺は言う。
くろめがこういう状態になるのは、初めてじゃない。今のくろめは、自分の咎を認め、それを償っていくと…罪を背負い続けていくと誓っているようだが、それでも稀に、何かの拍子に心が潰れかけて、自分で自分を終わらせようとしてしまう。……けど、それは認められるべきじゃない。苦しむ事を、罪と向かい合い続ける事を、自分で終わらせ止めてしまうなんて…あっちゃいけない。だからこそこれまでも、今も、俺は止めてきた。俺はくろめ達と一緒にいたいから。罪も含めて共に歩むと、決めたのだから。
「……ごめん、ウィード…」
「…あぁ。…なぁ、くろめ…話して、くれないか…?」
止めてから数秒後。少しだけ落ち着いた様子のくろめに、俺は語り掛けるように言う。無理強いはしないが、出来る事なら今抱えているものを共有したい…そんな思いを、胸に抱いて。同じように皆も、くろめの事を見つめ…くろめは、小さく頷いた。
「……あれは、俺だ…天王星うずめなんだ…」
「…どういう、事…?それは、見れば分かる…で済むような話じゃないよね…?」
俯きがちに発した言葉へ、イリゼが返す。くろめ自身、それは理解しているようで、問いに対してくろめは首肯。
「ずっと、気になっていたんだ…。見ての通り、昔オレはオレ自身のせいで、封印されるまでになってしまった。…けど、オレは信次元から別の次元に飛んだ記憶がない…気が付いた時にはもう違う次元にいて、『何かが起こった後』だった…。それに、何より…ねぷっちの言う通り、これは封印術…状況から都合の良いように解釈はしていたが……幾らオレの力があったって、封印された身体を別次元に飛ばすなんて、そうそう出来る事じゃないんだよ…」
「…けど、くろめさんは事実として、別次元にいたんですよね…?…いや、そもそも別次元に飛んだなら、ここにくろめさんがいる筈がない…?」
「そう…オレが飛んだならここにいる筈がないし、ここにいるままなら、オレが飛んだ事も、『オレ』の存在自体もあり得ない…そして、封印を脱したと考える事自体も非現実的……考えてみれば、当然の事なんだ…現にオレはここにいる…それを理由に、考えようとしなかったから…だから、気付かなかった…」
「…言ってる事は分かる…けど、結論が見えねぇよ…だったら、あれは身代わりって事か…?」
「…いいや、違う。あそこにいるのは、間違いなくうずめだ。…本物の、うずめなんだよ。そう、なんだろ…?」
ゆっくりと首を横に振り、うずめの問いを否定する。俺にとっても、くろめの話は難しい。けど…やっぱり、あそこにいるのが本物の、本当のうずめである事は分かる。確信が持てる。
そうして俺が見つめながら訊くと、くろめはまた頷く。…もう、何となく分かっていた。思考ではなく、感覚で、真実が見えていた。そして、それが伝わったかのように、くろめは俺の事を数秒見つめ返して……それから、言った。
「…あぁ。あそこにいるのは、本物のオレだ。オレは今も…あの日からずっと、封印されたままなんだ。だから……──きっとオレは、俺の…本物の天王星うずめの能力で、思いで生まれた、仮初めの存在なんだよ」
──仮初めの存在。うずめの…本来のうずめの妄想能力によって存在が創られた、うずめであっても本物ではない存在。それが自分なのだと、くろめは言う。その言葉に、皆が息を呑み……俺もまた、言葉が出ない。感じていた通りの答えだったとしても…本人から言われる言葉は重く、そう簡単には飲み込めない。
「は……?何だよ、そりゃ…自分で自分を生み出したっていうのか…?」
「…ふっ、滑稽だろう…?【俺】の事を散々でっち上げだの寄せ集めだの言っていたオレが、その実本物じゃなかったんだ。所詮自分も、本当の自分から結果的に生まれただけの存在に過ぎないのに、自分こそが真なる存在であるかのように振る舞うなんて、そう思い込んでいるだなんて、愚かな道化も良いところ。…ははっ…こうなるともう、オレこそがでっち上げだったのかもしれないね…。俺の望みによって【俺】が生まれ、けど能力の歪みで、バグの様に身勝手な部分ばかりが寄り集まったオレまで生まれてしまった……だとしたら、そんなオレが多くの人に不幸を振り撒いたのなら…傍迷惑な厄災以外の何物でもないじゃないか、オレは……」
そう言って、くろめは笑う。あまりにも悲痛な、自虐の感情に満ちた笑みで。それは、途中からはくろめの想像で、確たる根拠のある話ではなくて…けれどそう思ってしまう程に、くろめの心は揺らいでいた。自分によって、自分の存在を否定される…今のくろめは、そんな状態なのかもしれない。
俺にはその気持ちを、推し量る事しか出来ない。くろめの立場で考えてみるだけでも辛い事で、でも想像でしかないからこそ、どんな言葉を掛けてやればいいのか分からず……
「──それは、違うよ。存在の意味は、存在意義は、存在価値は…そんな簡単に、否定されるものじゃないから」
そんな中で、一つの声が空気を変えた。よく通る、芯のある声が…くろめを見つめる、イリゼの声が。
「くろめ。貴女のしてきた事、しようとしていた事…それは断じて、肯定されるべきものじゃない。私も信次元の女神として…いや、信次元関係なしに、心から否定する。……でもね、女神も人も、自分で思ってる在り方が否定されたからって、それが間違っていたって、存在する意味まで否定される訳じゃないんだよ。自分で思ってる、考えてる事だけが、自分がいる意味じゃない。…そうでしょ?皆」
どこかオリゼを…もう一人のイリゼを思わせる雰囲気で、イリゼはくろめの『これまで』を否定する。けどイリゼの言葉はそれで終わらず、表情を緩めて、くろめを見つめた後に俺達へ、ここにいる全員の事もゆっくりと見回す。
「イリゼ…うん、そうだね。そうだよくろめ。わたしにはよく分からない部分も多いし、くろめの辛いって気持ちも全部分かってあげられる訳じゃないけど…くろめが本物でも、でっち上げでも、どんなくろめだったとしても…わたしはくろめの事、友達だって思ってるんだからね?」
「くろめさん。わたしもくろめさんの事は、もう許してる…なんて事はありません。だけど…自分で自分を否定するなんて、存在そのものが間違ってるみたいに言うなんて、そんなの悲しいです。くろめさんがどんな存在だったとしても、いてほしい…そう思っている人は、絶対にいる筈です」
「…ねぷっち…ぎあっち……」
呼び掛けに応じるように、ネプテューヌとネプギアもくろめに語る。どっちの言葉にも思いが、心からの言葉なんだって感じる響きがあって…俺は頷く。ネプギアの、くろめにいてほしいと思う人はいる…その言葉に、当たり前だと応えるように。
それから、気付く。後から聞いた事だが、イリゼもくろめ達との戦いの中で…オリジナルである自分と直接出会った事で、自分を見失いかけていたって話を。そんなイリゼが自分を取り戻せたのは、自分の紡いできた繋がりや絆…『複製体』としての在り方とは別の、皆に気付かせてもらったもののおかげなんだって事を。…だから、イリゼには分かるのかもしれない。複製って意味でも、くろめの気持ちが。くろめの、思いが。
「…あのさ、くろめ。俺にとってうずめは、大切な存在だ。掛け替えのない存在だ。それは記憶がなくたって変わらないし、でっち上げだったとしても関係ない。そんなのどうだっていい位に、俺はうずめの事が大事なんだ」
「ぶ……ッ!?うぃ、ウィードぉ!?」
「……この流れで、惚気…?…普通に泣きたい…」
「いやいや待てって、まだ言いたい事の途中だって。…だからさ、俺がうずめを想う気持ちに、うずめの存在する意味だとか、どんな存在であるかだとかは、何も関係しないんだ。うずめがどう思ってるからじゃなくて、俺が大切だって思ってるから、大切なんだ。…なら、くろめも同じに決まってるじゃねぇか。自分でもよく分からない次元移動やら何やらをしてまでここまで辿り着いた、今の俺の言葉が嘘かどうかなんて…くろめだったら、分かるだろ?」
早とちりで落ち込むくろめに待ったをかけて、俺は続ける。小難しく考える必要はない。俺はうずめの事も、くろめの事も大切で、心から想っていて…だから共に居たいんだ。だったらそれで、良いじゃないか。それ以上に必要な事なんて、あるものか。
見つめる俺に対して、くろめは沈黙。数秒、数十秒と、長い沈黙が続き…そしてくろめの気持ちが零れる。
「…そんな事、言われたって…オレは…くろめはずっと、自分の存在を信じてきたんだ…オレは本物だって、疑わないようにしてきたんだ…それなのに、こんな現実を見て…すぐに気持ちを切り替えるなんて、出来る訳がない……」
「…くろめ……」
「…でも…嫌だ…ねぷっちが友達だと言ってくれて、皆もこんなオレなのに気にかけてくれて…ウィードがオレの事を想ってくれてるのに、ずっと俯いてるのだけは…絶対に、嫌だ…っ!」
そう言うと共に、くろめは目元を拭う。辛い気持ちを振り切るように…或いは振り切れずとも、それでも抗うように、立ち上がる。
…昔の『うずめ』に近いうずめと違って、くろめは後ろ向きな性格に変わっている。何が理由なのかは分からないが、普段の冷静さが崩れると途端に消極的なマイナス思考になってしまって…今だって、きっとそう。
だというのに、そんなくろめが今は、前を向こうとしている。冷静さを取り戻したんじゃなく、感情が酷く揺れたまま…それでも立ち上がっている。それが、その位…そうしたいと思える位、俺や皆の事を思ってくれてるなら…嬉しいし、誇らしい。なんたって俺は、ずっと前から…『うずめ』を尊敬しているんだから。
「…くろめ、ちょっとは元気出た?」
「……すぅ、はぁ…あぁ、少しはね。まだ暫くは引き摺りそう…というか、整理が付かないだろうけど…受け取った言葉は、気持ちは、今ここにいる『オレ』だからこそ…だもんな」
「へっ、やっと少し調子が戻ってきたみたいだな。…自分の方がでっち上げとか、言うなよな。俺がずっと求めてた…ウィードや皆との記憶のある【オレ】が、そんな事」
「…確かに、幾ら【俺】でも言っていい事と悪い事はあるね。その事は、反省するよ。……ふふ…記憶があって、力だって女神の姿にならない事以外はそのまま引き継いでるのに、自分の方がでっち上げだなんて…我ながら酷い自惚れがあったものだ…」
「なんか鼻につく言い方だな…って、なんでまたネガティヴ思考になってんだよ【オレ】は……」
気遣うネプテューヌに小さく笑ったくろめは、うずめの言葉にも返した後…やっぱりまだ平常心は取り戻せていないようで、再び後ろ向き思考を発揮してしまう。そんなくろめを、うずめは半眼で見ていて……
「…うずめこそ、大丈夫か?これは、うずめにとっても知られて良かった…とは言えないような事だろ?」
「ん?いやまぁ…俺だってびっくりはしたさ。けどさっき言った通り、俺は多分本物じゃねぇんだろうなって思ってたし…【オレ】の想像通りなら、むしろ俺はでっち上げじゃなさそうって話になるだろ?【オレ】にゃ悪いが…そこまで俺は、今知った事に後ろ向きな思いはないんだよ」
「そっか…って、よく考えたら俺、さっきと同じような訊き方してない…?」
「してるな。バリエーションが少ねぇのかなぁとか思ったぜ」
「うぐっ…た、偶々同じような訊き方になっただけだって……」
理由はどうあれ、くろめと違ってうずめは元気。ほんと、素直に安心出来る理由ではないが、気落ちしてないと分かって俺はほっとし…それから、触れる。前に出て、『うずめ』が眠る結晶体に。
(…ずっと、ここにいたんだな。ずっと、ずっと……)
今の信次元は、俺が生きていた…うずめが守護女神だった時代より、かなり先。違う時代っていうのは、半分位別の次元みたいな感覚で、今いるうずめやくろめ以外に過去の俺と繋がりのある人物はいない…そう思うと寂しさもあって、だけど何より思うのは…やっぱり、『うずめ』の事。きっとずっとここにいた、眠り続けていたうずめの心。
でも…触れた瞬間に、感じた。何の根拠もない。気のせいかもしれない。それでも感じた、一つの想い。
「…ねぇ、ウィード君。ウィード君が確かめたかったのって…これ、なの?」
「…いや、これももしかしたら…とは思ってたけど、そうじゃない。俺が確かめたかったのは……」
「…あれ?お姉ちゃん、何だろうこれ……」
呼び掛けられた事で俺は結晶から手を離し、そうではないと首を横に振る。続けて答えようとする中、何かに気付いたようにネプギアが声を上げ…俺もネプギアの方を見る。
そこにあったのは、かなり風化した、バラバラになった白い物体。細い物の多い『それ』は、確かに一見するとなんだか分からない。…が、俺には分かった。瞬時に理解する事が出来た。そして同時に、安心感…だけじゃ語れない、上手く言葉に出来ない感情が心を駆け抜け……小首を傾げている皆へ向けて、言った。
「あぁ…それは多分──俺の死体だな」
『…………え?』
時が止まったような、不気味さすら感じさせる静寂。その果てに皆は声を漏らし、茫然とした顔で俺を見る。…まぁ、そうだろうな。こんな事言われたら、普通こういう反応もするさ。
「…良かったよ。やっと、確かめる事が出来た。…なんだよ、結構進んでるじゃねぇか」
「い……いやいやいやいや!な、何しれっと止まらない感じの台詞言ってるの!?死体だから!?死繋がりでパロディ!?引くよ!?流石のわたしもこの流れにはついていけないよ!?」
近付き、片膝を突きながらぽつりと言葉を漏らせば、裏返った声でネプテューヌが突っ込んでくる。他の皆も、信じられないような目で俺を見ている。…別にふざけた訳じゃないんだけどなぁ…。
「し、死体ってどういう事ですか!?え…うぃ、ウィードさんって実体ありますよね…!?」
「…あ…ウィード君って、回復…っていうか、再生?…能力があるんだよね…?…まさか、本当は治ってるんじゃなくて、別の身体で復活してるパターンだったの…?」
「あー、っと…取り敢えず落ち着いてくれ皆。俺は普通に実体があるし、そんなマイスター型の人口生命体とか、ファーストチルドレン第一の少女みたいな存在でもないから…」
何やらおかしな想像を巡らせる二人にそうじゃないと言い、一先ずは落ち着いてくれるよう頼む。とはいえ、皆の立場からすればそう簡単には落ち着けないかもな…と思ったが、そこは流石に皆女神。訳が分からないという表情ながらも、俺の言葉を待つ姿勢を見せてくれて…俺も皆の事を見やる。
「…始めに言っておくと、俺もはっきりした事は分からないんだ。けど、これが俺の死体だって事と、俺が普通に生きてる人間ではないって事は断言出来る」
「…それは、ウィードに昔…オレが守護女神だった頃にはなかった力があるからか…?」
「それもあるな。けど一番は、俺自身が死んでる筈だって思うからだよ。何せ俺…昔ここに来た時、後ろからモンスターに襲われたんだからな」
立ち上がってから話し始め、一度言葉を区切ってまた『それ』を…白骨となった俺の死体に目を落とす。もう風化が進んで人型ですらなくなっているが、ちゃんと調べたら、後ろから襲われた痕が残っているのかもしれない。
不思議な、感覚だ。別次元の同一人物ですらない、自分そのものを見る事になるなんて。しかもそれが、風化した白骨死体だなんて。…自分の死体を見たのに案外落ち着いているのは…まあ、俺自身分かってたからだ。記憶を取り戻した時点で、状況的にも多分死んでるんだろうな、って思ってたからだ。
「な、なんでここに……って、まさか…オレを、探してなのか…?オレを探しに来たせいで、ウィードは……」
「待った、それは違ぇよくろめ。確かにここに来たのはくろめを探す為、くろめが…いや、うずめが俺を呼んだような気がしたからだが、そうしようと思ったのは俺の意思だ。そして俺は、そうした事を後悔してない。だから、自分のせいで…なんて思わないでくれ。そう思われるのは…良い気分じゃない」
少しだけ語気を強めて言った後、だから大丈夫だと俺は笑う。それはくろめが背負わなきゃいけないものじゃねぇよと、伝える。
勿論死んだのは不本意だし、多分俺は行方不明って事になってるから、俺と関係があった相手には本当に申し訳ないと思ってる。でも…それでも俺に、後悔なんてない。ここに来なければ、死なずに済んだだろうが…うずめに何も出来ないまま、うずめとの時間が全て終わってしまった未来の方が、きっと俺は後悔していた筈だ。…それに、これまではもう一つ、心残りがあったが…今は、もうそれもない。
「あれは多分、致命傷だった。だから、あの後すぐ回復魔法のスペシャリストが来たとかでもない限り、俺は死んでなきゃおかしいし…感覚的にも、これは俺の死体だって思うんだよ。けどまあ当然、本当に死んだのかどうか、死んだ後どうなったのかは分かる訳がねぇから、俺は確かめたかったんだ。多分死んだ俺の結末を、起こった事を」
「そう、だったのか…。…でも…だったら、お前は…ここにいるウィードは、なんなんだ…?…もしや、黄泉の国から現世に戻る悪魔の実……」
「だからそういう事じゃねぇって…てかそれなら、自分の身体に戻らなきゃ復活出来ねぇから…。…で、じゃあここにいる俺はなんなんだって話だが…これは、予想ですらない俺の想像だぞ…?奇跡とか、そういうの以外であり得るとしたら…って感じに捻り出した考えに過ぎない事だが……」
自分の死にまつわる話をこんな淡々とする事になるとはな…なんて思いながら、続ける。…が、淡々と話せたのは事実とそれなりに自信のある推測部分までで、そこから先を話そうとした俺が感じたのは、気恥ずかしさ。一人で考える分には問題なかったが、いざ誰かに話すと思うと恥ずかしく感じる想像で……だがここまで付き合ってもらった以上、誤魔化す事はしたくない。だから、何だろうかと俺を見つめている皆に向けて、俺は俺の想像を言う。
「俺がここにいるのは…存在してるのは……『うずめ』が、俺の事を望んでくれたからじゃ…また会いたい、共にいたい…そう思ってくれたからじゃ、ないかと思ってる…。さっきのくろめの想像と合わせると、やっぱりその思いによって、うずめとくろめ、それに俺がそれぞれ生まれたんじゃないかって…そんな感じな、気がするんだ。…それなら、俺のよく分からない再生能力も、再会して、共にいる為の力なんじゃ…って解釈出来るし、な…」
「わぁ…それは、なんていうか…ロマンチック…?」
頬を掻き、ちょっとと目を逸らしながら俺が言えば、ネプテューヌがロマンチックと評してくる。それは俺の思考に対してなのか、その通りだった場合の『うずめ』の思いに対してなのか、それとも両方なのか。何れにせよ、ロマンチックなんて言われたら余計恥ずかしくなるのは当然の事で……ちらりとうずめ、くろめを見てみれば、二人共何も言わず、ただ俯いていた。やっぱり恥ずかしいのか、耳が赤くなっていて…特にくろめは真っ赤だった。……よ、よし。
「皆、俺の確かめたい事に付き合ってくれてありがとう!けど確かめたい事は済んだし、帰るとしよう!そうしよう!」
「え、急だね…別に私達はそんな急いでもらわなくても……」
「帰ろうッ!俺達の、精神衛生を保つ為にもッ!」
「あ、あー…うん、まぁ…そういう事なら……」
勢いで押し切りにかかれば、イリゼは理解を示してくれる。これにはうずめもくろめもうんうん、と激しく頷いていて…ネプテューヌとネプギアは苦笑い。苦笑は苦笑でちょっと恥ずかしいが…兎にも角にも帰る事は決まったんだ、後はもう出ていくのみ…!
「…あ……で、でも待って下さい…!…うずめさんは…この封印は、そのままでも良いんですか…?」
「……うん、良いんだよぎあっち。仮に封印が解けたとしても、そこにいるのは独善に駆られた『俺』だ。それに…身体は封印されていても、思いはちゃんと、オレや【俺】に繋がっているんだから」
「…でも…これじゃあずっと、これからも一人で……」
「いいや、違うぞ。…ここにはちゃんと、俺の思いもある。最後の最後で、きっと俺の心は届いている。…そう、思うんだ」
だから一人じゃないんだと、俺は答える。女神じゃない俺だが、きっとそれ位の奇跡は起こせてると…そんな風に、思う。
意識を失う前、俺が覚えている最後の記憶では、俺は結晶の前まで辿り着いていなかった。けど俺の死体は、結晶のすぐ側にある。なら多分…記憶に残らない程の状態になりながらも、俺はここまで辿り着いたんだって事だ。我ながら、凄いものだ。だからこそ、思いは届いていると…人であったウィードの想いは、守護女神であったうずめと共に在ると、そう信じてる。
(…これからも、『うずめ』の事を頼んだぜ、俺)
まず結晶とその中の『うずめ』を、次にここへ残していくと決めた人だった頃の俺を見てから、心の中で呟く。勿論これは、誰かに聞こえるようなものじゃないが…『俺』が、応えてくれた。うずめとくろめを、託してくれた。そんなような、気がしていた。
そうして俺は、皆と共に洞窟を出る。今日、漸く俺は確かめたい事を…過去を、結末を、確かめる事が出来た。だけどそれは結末であっても、終わりじゃない。『俺』の思いも、『うずめ』の思いも、繋がっている。だから、俺は進むんだ。うずめと共に、くろめと共に……これからの、未来へ向けて。
*
今思い出しても、あの時知った事はどれも驚きだった。不思議な点、不可解な点の多いうずめ達だったけど、それにある程度の納得がいった反面、本当に妄想能力は凄まじいなとも感じた。…尤も、くろめにしろウィード君にしろ、語った事は想像であって、全てが真実かどうかは定かじゃないけど。
「…いつも元気って訳じゃないが…くろめは勿論、うずめだって思い悩む事はあるが…それでも、毎日進んでいる。一日一日を、思いと一緒に積み重ねている。…そんな風に、俺は思うよ」
「…そっか。他でもないウィード君が言うなら…きっと、間違いないよね」
さっきの問いに答えてくれたウィード君に、私は微笑む。日々を積み重ねる…それは当たり前のように思えるけど、ただ毎日が流れていくんじゃなくて、決して同じじゃない一日一日を積み重ねていけているなら、それはきっと元気って事だ。そんな風に、私は思う。
「ねーねーウィード〜。ウィードはぁ、どんな衣装がうずめ達に会うと思うー?」
「そりゃ……ふむ、二人ならむしろ、似合わない衣装を探す方が難しいな。てか、今回はその状態で終わらせるつもりか?」
「…………」
「…………」
「…うずめ?くろめ?」
「……ふぅ。何度か食べているけど、いつもいりっちのお菓子は美味しいね」
「だろ?やっぱ美味しいものを作れるっていうのも、強みの一つになるよなぁ」
「…何事もなかったかのように誤魔化したな……」
しれっとした顔で、けど私達からは目を逸らしてメープルスコーンを食べるうずめくろめと、それを半眼で見るウィード君。三人のやり取りに、思わず苦笑をしてしまう私。
この三人の様に、信次元には普通じゃない過去、普通じゃない経緯を持つ人もいる。そうでなくたって、色んな人や、私達女神の様に人以外の存在だっている。でも皆、どんな存在であっても、どんな過去があっても、今を生き、未来へと向かっている。それぞれ速度が違ったり、立ち止まっていたりしても、暮らしている。だから、私は皆と共に、そんな信次元を守っていきたい。信次元の皆と共に進んでいきたい。決して穏やかじゃない過去や経緯を持ちながらも、それでも進んでいる…元気でいる三人を見て、私は改めてそう思った。そうしていくんだと…今一度、心に決めた。
今回のパロディ解説
・「〜〜後ろの席までちゃんと見えてるからね〜〜」
アイマスシリーズに登場するキャラの一人、天海春香の台詞の一つのパロディ。このシリーズの中だと、この台詞が結構印象深い私です。
・「〜〜なんだよ、結構進んでるじゃねぇか」、止まらない感じの台詞
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの主人公の一人、オルガ・イツカの名台詞の一つのパロディ。でも多分、ウィードはオルガっぽい体勢では倒れていないと思います。
・マイスター型の人工生命体
機動戦士ガンダム00に登場する人造人間、イノベイドの事。このパロディの場合は、特にリボンズ・アルマークですね。勿論ウィードはそんな感じではないですが。
・ファーストチルドレン第一の少女
エヴァシリーズに登場するヒロインの一人、綾波レイの事。こちらもやはり違います。あくまでここで語られた方のウィードは、普通の人間ですからね。
・黄泉の国から現世に戻る悪魔の実
ONE PIECEに登場する悪魔の実の一つ、ヨミヨミの実の事。もしウィードが骸骨姿でいたのなら、これの可能性があったかもしれませんね。