超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
一つとなった四大陸の上空に位置する浮遊大陸。私の国、神生オデッセフィアの存在するこの大陸を四大陸の様に表現するならば、ここは『蘇る原初の大陸』。くろめとレイの力によって形作られ、オリゼの《女神化》で再構成された、縮小再現版のオデッセフィア。だから、ここはただの土地じゃ、普通の環境じゃない。規格外の女神やその能力によって生まれたという点は勿論、それを抜きにしても遥か昔の環境が再現されているというだけで、それが現代に存在している事の価値は高い。
だから、求められるのは調査。資源の面でも、環境研究の面でも、調査し把握する事の意義は大きい。そしてその調査は…国として推し進めたい、事業の一つ。
「皆、頑張ろうね!大発見をした人には、イリゼから金一封が送られるよー!」
『おー!』
「送られないよ!?皆も乗らないでね!?」
右手を突き上げ音頭を取るREDと何故か普通に乗ってる皆に、纏めて突っ込みを入れる私。皆というのは、第一期と第二期パーティーメンバーの皆で…今回皆は、調査に協力するべく神生オデッセフィアへと来てくれた。
「もう…女神として依頼した訳だから報酬はちゃんと出すし、そりゃ大発見をしてくれたなら追加報酬を出すのも吝かじゃないけど…勝手に金一封とか決めないでね?」
両手を軽く腰に当て、怒ってますよポーズしながら私が言えば、REDはあははと笑いながら謝ってくる。…反省してるのかなぁ…まあ、元から冗談だったんだろうけどさ。
「…こほん。じゃあ皆、今日は頼むね?皆なら大概の事は切り抜けられるだろうけど、それでも場所が場所だから、絶対に単独行動したりはしないで、適宜休息も入れる事」
「油断大敵、って事だね。大丈夫、わたしも皆も、その辺はちゃんと心得てるよ」
「如何に未知故の危険があると言えども、犯罪神との戦いや、負常モンスターの濁流に匹敵するような事はないだろう。…まぁ勿論、だからと言って高を括って良い事などない訳だが」
真面目な顔でコネクトちゃんが頷き、マジェコンヌが肩を竦める。いつもの通り、皆は和気藹々とした雰囲気だけど、これからする事を軽んじている様子はない。
縮小再現されたような大陸とはいえ、それでも広大。とても国側だけじゃ手が回らないし、だから事業として民間にも協力してもらう予定だけど、最大のネックは危険性。危険な場所もあるから…ではなく、どの辺りに、どの程度の危険があるのかすら今はまだ分かっていないから、そんな状態じゃ大々的に民間へ調査事業を推し進める事なて出来ない。
その事があるから、今現在は調査の第一段階として、軍や皆の様な実力者のみでの活動を行っている。まずはざっくりした調査と危険性の判別を行って、それが済んだ場所から順次細かな調査と、民間への働き掛けをしていく予定。
「さて、では未開の地へ踏み入れるとしようではないか」
「あたし達も行こうか。報酬を用意してくれてるなら、ちゃんとそれに見合うだけは働かないといけないしね」
MAGES.と大人ファルコムが切り出し、一期二期で分かれて皆は調査を開始。私も皆を見送った後に女神化をし、飛んで空から調査を始める。
(…なんか、懐かしいな……)
こうして生活圏外を飛んでいると、思い出す。イストワールさんと共に、オリゼが再構成する前の浮遊大陸へと突入した時の事や、オリゼと共に、オリゼを本調子に戻す手掛かりを探しに訪れた時の事を。どちらもつい最近の事…ではないにしても、そこまで前の出来事じゃないのに、遥か昔にあった事のような気がしてしまう。それは、一連の戦いの中で本当に色々な事があったからか、オリゼは今はもういないからか、それともその両方か。なんであれ、私は飛びながら懐かしさを感じていて…っと、いけないいけない。ただの空の散歩ならいいけど、これは調査なんだから、注意力散漫になるような事は避けないと…。
「…うん?あれは、洞窟…か」
飛行する事十数分。私は視界の端に映った穴らしきものを洞窟と判断し、場所を記録。一応側に降りて、ただの窪みではない事を確認してから、空に戻る。
(ここには、どれだけの資源が眠ってるんだろう…)
洞窟を詳しく調べないのは、気になる場所を見つける度に調べるんじゃ、女神の機動力を活かせないから。必要とあらば調べるけど、今は飛び回り、『調べるべき場所』を見つけていくのが優先事項。
その為に飛び回る中で、懐かしさの次に抱いたのは期待と不安の混じった感情。森にしろ山にしろ、地上にしろ地下にしろ、この大陸には多くの資源が眠っている筈。そして資源の量は、国の力に直結するもので…だからこそ、大量にある事を期待するし、環境的に多く眠っていると見込んでいる分、その想定を大きく下回ったらどうしようという不安もある。…まぁ、これは調べて明らかにするまでは拭えないし、それを明らかにする為に今調査している訳だけども。
「出来る事なら観光資源も色々とあってほしいけど、交通の便が悪いんじゃ…っと、あそこにいるのは……」
複数の気になるポイントを発見した後、次に私の目に留まったのは、渓谷とそこを通る第一期パーティー組の皆。ぱっと見ピンチって事はなさそうだし、用事がある訳でもないけど…だからってスルーするのも何か違う。そう思って、私は皆へと声を掛ける。
「皆ー、調子はどう?」
「あ、イリゼちゃん。うーん、調子は悪くないけど……」
「今は地味な作業を淡々としているところにゅ」
着地し女神化したまま訊けば、マベちゃんとブロッコリーが答えてくれる。どうやら皆は今、この渓谷に数多くある横道や洞穴を調べているらしく、確かに軽く見回しただけでもそれ等が幾つも目に入る。
これが自然のものなのか、何らかの生物によるものか、はたまたあの最終決戦での影響か。何にせよ、調べた方が良い事には変わりない。
「地味…まあ、言われてみるとそうかも。ごめんね、わざわざ来てもらったのにひたすら横道とか洞穴とかを確認しては戻る…みたいな作業になっちゃって」
「ううん、気にしないでイリゼさん。それにあたしとしては、結構楽しんでるんだよ?だって未開の地の調査なんて、冒険そのものなんだから」
「わたしも楽しんでる…というか、全然苦には感じてないよ〜。ここみたいに起伏が多くて足場も悪いところなら、歩くだけでもトレーニングになるし……段々負担が溜まっていくのは、凄く気分良いし…」
「あ、そ、そっか…それなら良かったよ、うん……」
私の言葉に答えるこっちの、第一期パーティーのファルコムの表情は朗らか。冒険家のファルコムにとっては楽しめる事なのだ、と分かった私はちょっぴり安堵。それから鉄拳ちゃんも、ここでの調査を肯定的に捉えているらしく……でもその理由が独特過ぎて、私には乾いた笑い声を漏らす位しか出来なかった。…トレーニングになるのは分かるけど…そこまでは理解出来るけど……。
「イリゼちゃんは、空から探してるんだよね?調子はどう?」
「うーん…私はここまでピックアップを中心にやってるから、こんなのがあったよ、って語れるものは今のところないかな…。…あ、でも綺麗な花畑なら見つけたよ?空からだと一面見渡せるし、あそこはほんとに綺麗だったなぁ…」
「人知れず咲き誇る花達…ってところかな?フコーカにもフラワーミュージアムっていう、凄く沢山の花が咲いてる場所があるんだけど…よし。折角だから、今度その花畑にも行ってみようかな」
「それなら私が案内するよ。正直あれは、皆にも見てもらいたいって思う程綺麗だったからね」
忍者らしく軽快な動きで近くまできたマベちゃんと、出身地であるフコーカの事を少し教えてくれるコネクトちゃん。実はその花畑の写真を私は携帯端末で撮っていたんだけど、それを今見せるか、それとも行ってみたいって事なら後のお楽しみって事で今は見せずにいた方が良いかで少し迷い…それを考えていたところで、ブロッコリーから問い掛けられる。
「ところでイリゼ、イリゼとしてはどんな資源が見つかってほしいんだにゅ?良質な森林資源にゅ?豊富な鉱物資源にゅ?それとも水や水産資源にゅ?」
「んー…まあ、身も蓋もない事を言っちゃえば、なんだって欲しいよね。今の段階でも結構資源は得られてるけど、多く手に入ればそれだけ沢山の事に活用出来るし、当然輸出にも回し易くなる訳だから」
「ふむ…では、エルトライト鉱石やハルモニア鉱石探すとしよう。ここならば、或いはあるかもしれん」
「いやそれは流石に…と、いうか後者はヤバい石も一緒に存在してそうだから本気で勘弁……」
ゲマ含め、見た目はパーティーメンバーの中でも特にインパクトが強いブロッコリーだけど、実はこの通り知的。同じく魔法と科学の両方に精通しているMAGES.も、知的且つ思慮深い…んだと思うけど、MAGES.の場合はちょこちょこ冗談を言う(しかも芝居掛かった言い方のせいで冗談っぽく聞こえない)ものだから、普通に知的って感じがあまりしない。…と、いうか…二人にしてもブランにしても、私の周りの知的な人って、知的な筈なのに皆中々癖が強い気がする…。…癖が強いのは知的云々関係なく皆そうな気もしないでもないけど……。
「あはは…でも、この大陸にしかない資源とか、ここでしか生息してない植物とかはありそうだよね。ありそうっていうか、あるんだっけ?」
「ふふ、それが我が神生オデッセフィアの強みというもの。…既に現代じゃ絶滅しちゃってる植物なんかが特にそうで、そういう存在を発見して、出来る限り保護するのも調査事業の目的の一つだよ」
頬に指を当てて考える鉄拳ちゃんの言葉に私は頷く。保護した植物や地域が観光のスポットになる事もある…というのを除けば、保護する事そのもののメリットは薄いけど、無駄な事では決してない。一度失われてしまった種は基本的に戻らない以上、メリットは薄くても保護する事の『価値』はあり…今あるものを守る事で、未来の何かに繋がるかもしれない。そういう未来の可能性に投資するのも、指導者の務めの一つだって、私は思う。
「さて、と。問題ないみたいだし、私も空からの調査に戻るね。最初も言ったけど、ほんと皆気は抜かないように」
「如何なる時も油断しないのは忍者の基本。心配ご無用だよ」
「イリゼさんも気を付けて。大変…というか面倒事があれば、あたし達すぐに駆け付けるから」
さっきとは逆に皆からの見送りを受けて、私は飛び立つ。皆の事だから、渓谷がいきなり崩壊するとかそういうレベルの事が起きない限りはきっと大丈夫。というか、崩壊が起きても何とか切り抜けられるんじゃないかと思う。そんな事、起こらないのが一番だけどね。
「え、っと…向こうからこっちに来た訳だから……」
ぐるりと見回し、方向を確認。似たような風景もそこそこあるからこそ、うっかり同じ場所を二度調査してしまうという事がないようしっかりと確認。そして方位に確信を持ってから、私は調査を続ける。
*
第一期パーティーと第二期パーティーの調査区域は全く別で、私が飛んで調べる範囲もかなり広大。だから第二期パーティー組の皆と、二期組に同行するマジェコンヌの姿を見つけたのは、一期組と別れてから数時間程したところだった。
「あ、湖……」
まず見つけたのは、皆…ではなく大きな湖。それに目を引かれ、そちらへ近付いてみたところで、私は五人を発見する。それから今度は特に考える事もなく、そのまま皆の近くへ降下。
「よっ、と。皆、お疲れ……って、ごめん。休憩するところだった?」
「えぇ、そのつもりよ。でも別に謝る事はないわ」
私が声を掛けたのと、皆がレジャーシートへ腰を下ろしたのはほぼ同時。謝罪に対してケイブが問題ないと首を振り…私も私で少し反省。
考えてみたら、確かに今の流れで謝らなきゃいけない理由は薄い。そして、その必要もないのに安易に謝るのは…あまり、良い事じゃない。
「イリゼもこっちおいでよー!」
「折角だ、イリゼも少し休憩していくといい。お前の事だ、まだこれといった休憩はしていないのだろう?」
「よ、よくご存知で…(なんだろう…もしこれがRPGだったら、無料回復が挟まりそうな気がする……)」
脚を投げ出して座るREDと、整った姿勢で腰を下ろすマジェコンヌ。何となく気になる言い方なのはともかくとして、天真爛漫なREDと堂々としたマジェコンヌじゃ座り方一つとっても結構違い…同じく冷静沈着なケイブ、性根が真っ直ぐな5pb.、穏やかながらも胆力のある第二期パーティーのファルコムでも、やっぱり座り方は少しずつ違う。
「じゃ、お言葉に甘えて…ふぅ。ここ、良いところだね。景色が良いし、風も気持ち良いし、ここでお弁当食べたりバーベキューしたりするのも良いかも」
「うん、アウトドアにうってつけの場所だよね。…こういう場所だと、ちょっと歌いたくなっちゃうな…」
「あたしだったら釣り、かな。中々深い湖のようだし、釣り竿を持ってくればよかったと少し後悔してるところだよ。…なんて、ね」
そう言って肩を竦めるファルコムだけど、ここで釣りをしてみたいというのは本当な様子。私は釣りなんてほぼした事がないから、想像に過ぎないけど…確かにここなら気分良く釣りが出来そう…な、気もする。
ここまでにも何ヶ所か、観光やアウトドアに向いてそうな場所はあった。第一期の皆に話した花畑もそうで、ここなら小さい子や家族連れもそれぞれの目的を持って楽しめそう。加えてここは、生活圏からは少し離れてはいるけど、山や大河で隔てられてるって事はないから、道の整備さえすれば往来は難しいものじゃなくなる。
(…けど、本当にアウトドア向けかどうかは、周辺も調べないと分からないよね…)
ただ、懸念要素がない訳じゃない。その最たるものが周辺環境で、仮にこの湖に危険はなくても、周囲やここまでのルート…道を作る上での選択肢に上がる場所に危険があるのなら、ここを観光地として推し進める事は難しくなる。
更に、管理の問題もある。今私達がいる場所はまだ良いけど、湖の周りは草が生い茂り過ぎててとても普通の人が踏み入れられるような状態じゃない場所も複数あるから、一度整備した後、その状態を維持する人も必要で……
「イリゼさーん…?今、とても休憩中の人がするものじゃない表情をしてるよー…?」
「イリゼは真面目だもんね。でも、アタシはそんなイリゼも大好きだよっ!」
「あ…うん、ありがとうRED…。…けど、うーん…駄目だね。ついつい休憩中だっていうのに今後の事を考えちゃう…」
言われるまで休憩中なのに休息していなかった事自体気付いていなかった私は、駄目だなぁと後頭部を掻く。これを真面目と称してくれるのはありがたいけど、ちゃんと切り替えが出来ていなかったのもまた事実な訳で、そんな私に皆も苦笑い。
「まぁ、無理に休もうとする必要はないんじゃないかな。休む為に気を張るんじゃ本末転倒だもの」
「それよりは、このまま話していた方がイリゼは休めそうね」
意識して休む必要もないだろうと言う二人。こう、いつの間にか私は気を遣われる状態になってしまっていて…って、駄目駄目。こういう思考してたら、ほんとに休めないよ私…!
「よし、じゃあ休もう!一旦女神化解除!」
「やっぱり休む人とは思えない発言だね…でも、これ位の方がイリゼさんらしいかも」
「そうね、少し空回っている位がイリゼらしいわ」
「そ、そう?それはまぁ、何というか…って、そうなの!?え、ケイブ!?微笑む感じで何言ってくれてるの!?」
普段は無表情…とまでは言わずとも、感情表現が豊かな方ではないケイブが、穏やかさのある表情と共に発した、まさかのdisり。穏やかだった分、思わず私は流し掛けて…結果、ノリ突っ込みみたいになってしまった。しかもそのせいか、皆くすくすと笑っていて…なんで私、皆のアドバイスに乗ったら逆に恥をかく事になってるの…?
「…って、違った…変に休もうと意気込むなと言われたのに、普通に意気込んでた私の自爆だった……」
「…………」
「…マジェコンヌ?」
なるべくしてなった結果だと気付いた私は頭を抱え、更に思考が途中から口に出てしまう…周りから見れば脈絡なく変な事を言い出したみたいな感じになる悪癖が出てしまった事で更に項垂れて、もう精神的には休憩をするなんて状態じゃない。
と、思っていた中で、少し気になる視線が一つ。それはマジェコンヌからのもので…何だろうかと私が訊けば、マジェコンヌは小さく笑って肩を竦める。
「いや何、イリゼはイリゼらしいまま、随分と変わったものだなと思っただけだ」
「…えぇ、っと…どういう事?」
「記憶喪失…いや、元から真っさらな状態だった君は、個性がなかった…とは言わないが、やたらと個性的なネプテューヌ達に比べれば、個性の面では大人しい、という印象があったのだ。だが、今はもう違う。今や君も、ネプテューヌ達に遜色ない程個性的で…その上で、しっかりしてるようでしっかりしていない、戦闘中はあれだけ威風に満ちているというのに、普段はその片鱗も見当たらない君らしさは今も健在だと思うと、感慨深いというものさ」
「マジェコンヌ……それ絶対からかってるよね!?良い雰囲気出してるけど、思いっ切り私を弄ってるよねぇ!?」
初めは敵対関係だったけど、マジェコンヌとの付き合いも、ネプテューヌ達や第一期パーティー組の皆と同じ位長い。敵対関係だったからこそ、感じるものや思うところもあったのかもしれない。そんなマジェコンヌからの言葉だからこそ、言われた私も感慨深さがあって…と思えるとでも!?いや、確かに感慨深さはあるよ!?けどそれ以上に、弄られたって印象の方が強いよ!?いやこれ…最後の弄りが言いたくて大仰な前置きを入れたとかじゃないよね…!?
「やっぱりイリゼは反応が面白いなー。…でも、マジェコンヌこそ前よりちょっと変わってない?」
「あ、それはそうかも…ボク達が初めて会った頃に比べて、接し易くなってるというか……」
「そうだろうか…?私としては、特に接し方を変えたようなつもりはないが……」
「なら、マジェコンヌがどうこうじゃなくて、あたし達の認識…彼女へのイメージが変わったという事かもしれないね」
「それはあるでしょうね。特に5pb.の場合、人見知りでもあるんだから」
私の精神が大荒れ状態にある中、話はマジェコンヌの事に移り、五人は言葉を交わす。第二期パーティーの皆からの印象やイメージに、マジェコンヌはほんの少し照れ臭そうな表情をしていて…自然と私は嬉しくなった。
あの時、マジェコンヌとの最後の戦いの後、私は後先考えず負のシェアの柱へと飛び込んだ。マジェコンヌを救う事を選んだ。その時はマジェコンヌを放っておけなくて、助けたいと思って、だから行動したんだけど…後の事なんて一切考えてなかったんだけど…今ここにある日常の一風景も、あの時行動したから生まれたもの。確かに過去から繋がっている今。…だから、嬉しかった。
「…ん、なんかちょっとリフレッシュ出来た気がする。元々疲れてた訳じゃないけど」
「え、今の流れでリフレッシュ出来る要素あったかい…?…と、言いたいところだけど……」
「うん、すっきりした顔をしてるね」
確かにやや唐突な私の言葉にファルコムは目を瞬かせる…も途中で言葉を止めて、5pb.がその後を引き継ぐ。
疲れてはいなかったし、気分転換したかった訳でもないけど、たった今嬉しいものが見られたし、なんだかんだ言ってもやっぱり皆と話すのは楽しい。…弄られるのはまぁ、不服だけども。
「じゃ、そういう訳だからもう私は行くよ。あんまり女神がのんびりしてると、各地で調査してる皆に示しが付かないからね」
「えー、もうちょっといてくれてもいいのにー。イリゼ、頑張り過ぎは良くないよー?我慢や努力も必要だけどー、って猫に叱られるよー?」
「大丈夫だよ、RED。頑張り過ぎも何も、基本私は飛び回って気になる所をチェックしてるだけだし…それに、楽しいからね。今やってる事って、正に自分の国の開拓な訳だから」
「確かに、普通の人間にはゲームの中でしか体験出来ない事を、イリゼは実際にやってるとも言えるわね。…なら、頑張って」
そう。未開の地を開拓し、資源を集め、国力を向上させていく、国運営のストラテジーゲームみたいな事を、今私は実際にやれている。ゲームみたいなというか、そういうゲームの元になるような事を、今私は出来ている。それだけでも楽しいというのに、これによって私の国が豊かになり、国民の皆の幸せに繋がるのだと思うと、やる気しか出てこないというもの。…まぁ、イストワールさんやセイツにも休息は大事だって言われてるし、働き詰めは禁物だけどね。
そして私はケイブの頑張ってを、エールの言葉を受け取って、女神化。軽く手を振りながら飛び上がり、第一期パーティー組の時と同じように、再び皆に見送られながら…私も「皆こそ頑張って」とエールを返しながら、空に向かう。
「さて…ここからまた頑張るとしよう。私の姿を見て、皆が気力を持てるように」
自然に浮かんだ笑みと共に、私は呟く。自分の姿を見れば皆が元気になる…と思うのは傲慢かもしれないけど、それが女神というもの。そうあってこそ、信仰を力に変える女神の在り方。
勿論、今日一日で全て回れる訳じゃない。これは長い時間を掛けて行う事業であり…そういう意味じゃ、確かに頑張過ぎは良くない。今日どれだけ私が頑張ろうと終わる事じゃないんだから…という思考は少し後ろ向きだけど、それ位の余裕を持った方が、確かに良いかもしれないな。
*
調査は原則、夜になる前に終わりとなる。理由は至って単純で、未開の地で視界の確保が難しくなるのは危険だから。
そういう事情があるから、まだ明るい内に第一期第二期それぞれのメンバーが調査の拠点(といっても簡易なものだけど)へと帰還して、それを先に戻っていた私が出迎えた。
「皆、今日はお疲れ様。一人ずつじゃなくてチームごとで良いから、最後は報告をお願いね」
個人差はあれど、大概身体能力やら技やらが常人離れしている皆でも、流石に一日中調査をした今は疲れている様子。でもその疲労具合も、へとへとで動けない…って感じではなく、「今日はよく働いたなぁ」って感じであり、そこからも皆の人外級っぷりが伺える。
と、そこで皆とは違う方向を見ている人物が一人。それは、MAGES.。
「…どうかした?」
「いや…あの機体はバックパックを兼ねる支援無人機だろう?それが単体で駐留されている事が少し気になったのだ」
「あぁ、よく知ってるね。確かにあれはうちの主力MG、マエリルハのバックパックでもある支援無人戦闘機ルヴァゴだけど…ルヴァゴは元々、装備を換装する事で有人小型輸送機としても運用出来るように開発されてるんだよ」
機械にも詳しいMAGES.らしいなぁと思いつつ、私はその疑問に対する答えを返す。
無人支援機であるルヴァゴか換装で有人輸送機になるのは、それをコンセプトに、その仕様を前提に開発されたからに他ならない。街自体は元からあった、再現されたオデッセフィアの物を改装するという形で通常よりも遥かに早く、資源の面でも金銭の面でも遥かに低コストで作り上げられたとはいえ、何でもかんでも流用出来る訳じゃない。特に、オデッセフィアの時代にはなく、数も質も必要ながら一機辺りのコストも相当なものとなる兵器…MGの開発、運用においてはどうしたって多くのリソースを割かざるを得ないからこそ、兵器としての要求水準をきちんと満たした上で、マエリルハには様々な工夫が施されている。輸送機としても運用出来るようにする事で、軍民共に輸送の一部を担えるようにしているのも、その内の一つ。
「そういえば、軍の方はまだ調査を続けてるのかな?」
「みたいですね。イリゼさん、そっちは大丈夫なの?」
「うん、軍の方ももう順次帰還するよう指示を出してあるし、飛べる以上時間は然程……」
今度は二人のファルコムへと返す私。この調査には…というか、毎回調査は訓練も兼ねて軍の部隊が参加している。まだ戻ってきていないのはマエリルハやルヴァゴを運用している部隊で、でも戻ってくるのも時間の問題…そう思っていた時だった。
「イリゼ様、ご報告です。山岳地帯で調査を行っていた部隊が、大規模なモンスターの群れと遭遇。現在交戦中です」
「……!戦況は?ここまで撤退出来る見込みは?」
駆け寄ってきたのは、一人の軍人。どうやら交戦中の部隊は下手に撤退してモンスターの群れをここまで誘導してしまう事を危惧しているらしく、だからその場に留まっての迎撃をしているとの事。
確かにここは軍の基地じゃなく調査の為の拠点だし、今は戦闘艦も来ていない。なら被害を考慮し迎撃を選ぶのは一理ある選択で…だけどそう判断したという事は、その群れはかなりの規模、かなりの戦力である可能性も高い。…なら、その報告を受けた私の対応は一つ。
「…分かった。各部隊は、ここで待機。軍以外の調査要員にも、予定通りに行動するよう伝えてほしい。交戦中の部隊の援護には、私が向かう」
「イリゼさん、わたし達も……」
「いいや、その必要はない。ここは私に…この国の守護女神に任せてもらおうか」
自分達も、と言ってくれたコネクトちゃんへと首を横に振り、それから私は不敵に笑う。パーティーの一員、仲間としてのイリゼではなく、神生オデッセフィアの守護女神、オリジンハートとして言葉を返して空へと飛び立つ。
「プライマリー隊δ、聞こえているか!君達の勇敢な判断を、私は女神として称賛する!だが、君達だけで背負う必要はない!君達の戦いには、私は君達と共に在る!」
インカム越しに私は鼓舞し、戦闘地点へ向けて加速。その際、すぐに撤退するよう言う事も考えたけど…止めた。無理して戦っているならともかく、そうでないのなら、勝算を持って戦っているのであれば、勇気ある決断に対して簡単に「もうそれは不要だ」なんて言いたくないから。
そうして見えてきた戦闘の光景。そこへ向けて私は急降下し……一閃。
「はぁぁぁぁッ!」
両手持ちの長剣による、大上段からの振り下ろし。完全に視界の外から仕掛ける形となった私の斬撃は、甲羅から木の様な部位を生やした亀風のモンスターの頭部を叩き斬り、その一撃で以って沈める。
直後、私の頭上を駆け抜けていく無数の光弾。それを放ったのは、ルヴァゴと分離し人型形態となったマエリルハ。
「オリジンハート様!」
「ご助力、感謝します!」
「これは元々も私が進める調査事業。ならば責任者としても、貴君等を守る女神としても、私が戦うのは当然の事!」
次々聞こえる声に言葉を返し、私は跳躍。派手に飛び回る事でモンスターの群れの注意を引き付けつつも、シェアエナジーの圧縮により精製した武器を撃ち込んでいく。
先程倒した亀風のモンスターに、狼の様なモンスターに、猛禽類を思わせるモンスターと、どういう訳か群れを構成するモンスターには一貫性がない。という事は、普通なら成り立たない混成の群れを統率する強力な個体がいるのか、何かしら普通じゃない事態や影響が発生しているのか、それとも……
(…いや、違う…これは……)
突進してきた翼を持つモンスターをすれ違いざまに斬り裂き、その後ろから更に突っ込んできた個体を刺突で貫き、消滅する前に下へ投げ放つ事で地上のモンスターの動きを妨害…したところで、私は気付く。一見群れの様に見えるモンスター達の中で、威嚇し合うような動きも見られる事に。
その姿で、はっきりとした。これは一つの群れじゃない。恐らく複数の群れが一堂に会してしまった状態であり、モンスター同士での正面衝突になっていないのは、数でこそ劣るものの、ここの戦闘能力は高いMGがいるから。この中では、最もMGが異質且つ外部からの存在だから。敵の敵は味方、呉越同舟…モンスターがそんな言葉を知っているとは思えないけど、より危険で、より邪魔な存在から優先して倒そうとするのは、本能で動いている以上当然の判断。
「…で、あれば…隊長!このモンスター群は、ある程度蹴散らせば撤退しても追撃はしてこない筈だ!私の見立て通りなら、我々という脅威を排除したいだけに過ぎないだろう!」
「了解!そういう事でしたら…全機、出し惜しみはなしだ!一気に蹴散らし、一気に撤退するぞ!」
私から小隊長、小隊長から小隊全機に指示が渡り、小隊は陣形を組み直す。その間私は地上に降り、地を蹴り突っ込み大立ち回り。斬り付け、殴り、蹴撃を浴びせ、それぞれの群れに…全てのモンスターに私こそが真の脅威だと認識させる。
「ここは我が国。原初の女神が創り変え、私が統治する、神生オデッセフィア。故に私は、この蛮行を許しはしない…ッ!」
袈裟懸けで正面のモンスターを撃破。振り抜いた体勢から、思い切り引き抜くようにして長剣の柄尻を背後に突き出し、後ろにいたモンスターの鼻面へと叩き付ける。直後に空から飛来したモンスターの攻撃はサイドステップで避け、すぐ側のモンスターを長剣の腹で掬い上げるようにして持ち上げ、そのまま飛来してきたモンスターへぶつけて二体同時に攻撃する。数は多いし、種類も様々だから普段以上の判断力が必要になるものの、単一の群れじゃないが故に、モンスター側の連携は乏しい。群れ同士が警戒し合ってるおかげで、案外一度に相手取らなきゃいけない数は多くない。だからこそ私は、一体一体着実に潰していき…小隊の陣形再編も完了。地上と空、その両方から次々と攻撃がモンスターを襲う。
「女神様に続け!助けられるだけでなく、支える事こそ我等軍人の使命だ!」
「隊長、それは言われるまでもなく……」
「イリゼ様に仕えると定めた時点で、心に決めている事ですわ!」
空戦形態でのヒットアンドアウェイで飛行するモンスターを抑える数機と、人型形態でビームマシンガンとビームシューターの一斉射をかける数機。地上の数機から分離したルヴァゴはカノンとミサイルによる支援砲撃を行い、私に意識が向いている群れを側面から突き崩す。
集中砲火で各群れの動きに乱れが生じた瞬間、私は回転斬りで周囲のモンスターを纏めて攻撃した後一体のモンスターを踏み台に大跳躍。直上のモンスターを斬り上げで倒し、掌底で他の個体より一回り大きいモンスターを隊長機の射線軸へ向けて突き飛ばす事により蜂の巣へ追い込み、急降下からの飛び蹴りを地上のモンスターに浴びせ…た直後、またそのモンスターを踏み台にする。陸へ空へと動き回り、否が応でもモンスターの群れに注意をさせ、撃破を重ねながらも小隊が攻撃し易い状況を作り続ける。そして……
「総員、一斉掃射ッ!」
シールドを一度投棄し左腕部で引き抜いたビームサーベルによる斬撃を放った直後の、小隊長の攻撃指示。それを受けた全機がマエリルハ本体と分離したルヴァゴ、それぞれに備えられた全武装を用いた射撃と砲撃を叩き込み、群れの最前線を蹂躙する。私も武器射出による追撃を仕掛け、各群れの戦力だけでなく闘争心すらも削り取り……シールドを回収した小隊長へ指示を飛ばす。もう十分だという、撤退指示を。
合体と変形により航空形態となり、離脱をしていく小隊各機。追加バレルを用いたロングビームライフルで攻撃を続けていた小隊長機も、全機が撤退へ移行したところで同じく機体を変形させ、私へ「先に行きます」と言ってから推力全開で離れていく。殿を務める私も、攻撃しながら思い切り敵陣深くへ切り込む…と見せかけてからのインメルマンターンで背を向け、直線機動重視に翼を変形させつつマエリルハ小隊を追っていく。その最中、ちらりと後ろを見てみるけど…群れが追い掛けてくる気配はない。
「やはり、無理して追う事はしない、か。群れが消耗した状態で強引に追い、他の群れに後ろから襲われたのでは何にもならない…至って正常な判断だ」
通信で皆に追ってこない理由、安心出来る訳となる私の推測を伝え、それから皆の健闘を労う。こういう事もあり得る、と軍には伝えているとはいえ、大規模なモンスター群と戦うのはやっぱり精神的にも大変だっただろうし…犠牲を出す事なく戦い抜いた皆の事が、私は誇らしい。
それと同時に、私は考えなくてはならない。これからも調査を続けるのなら、今日の様にモンスターの群れとぶつかる事はあるだろうし、開拓する場合もモンスターの存在は必ず懸念事項となる。神生オデッセフィアからモンスターを根絶やしにしてしまえば解決…と言いたいところだけど、流石にそれは一筋縄じゃいかないし、何よりモンスターは通常の生物ではない以上、根絶やしというのも長期的にはあまり現実的じゃない。だから、モンスターの存在も前提とした上で、調査や開拓をどう進めるかも、女神である私が考える事。
(…でもまあ、今は取り敢えず『無事に今日の調査は終了!』…で良いかな)
と、そこで思い出したのは、第二期パーティー組の皆とのやり取り。今日、頑張り過ぎは良くないって言われたし、多分第一期組の皆も同じ事を言うと思う。頑張る事、先頭に立つ事、戦闘でも政治でも皆の為に努力する事…全部大事だけど、周りの人に心配を掛けたり、女神は負担を強いてしまっていると思わせたりしないようにするのも、同じ位大切、だもんね。
「イリゼ、お疲れにゅ〜」
「怪我の心配は…なさそうだね」
「え、あれ…皆まだ帰ってなかったの?」
「うん、イリゼさんが戻ってくるまで待ってよう、って話になったんだ。立場は違うけど…ボク達は仲間だもん」
そのまま基地まで帰還する事になった小隊を見送り、ゆっくり降下…していたところで、聞こえてきたのはブロッコリーと鉄拳ちゃんの声。驚いてそちらを見れば、二人どころか皆がまだ拠点にいて、着地した私へ5pb.が理由を教えてくれる。…皆……。
「…ありがとね、皆。じゃあさ、皆が良かったらだけど…今日はこのまま教会に来ない?夕飯をご馳走するよ?」
「え、ほんと!?イリゼのお手製料理!?」
「ふふっ、それは楽しみだね…と言いたいところだけど、折角だし皆で作らない?この人数なら誰か一人が作るより、そっちの方が速いし色々楽しめるでしょ?」
「あ、それ賛成!わたしも太巻きを振る舞うよ!」
「え、いやあの、手料理じゃなくてもっと豪勢なものでも…と思ったけど、いっか。よーし、それじゃあ皆、帰ろっか」
RED、コネクトちゃん、マベちゃんと会話が続き、あれよあれよという内に話が進んでしまう。手料理のつもりじゃなかった私は訂正しようとしたけど…皆がそっちを望むのなら、私が否定する理由はない。それに、皆で作るのなら…きっと、楽しい時間になる。
勿論、最後の指示出しやら確認やらが残っているから、すぐ帰れる訳じゃない。それでも私は手早く済ませ、私達だけじゃなく他の人達ももう帰れるよう声を掛けて、それから女神化を解いて皆と共に教会へ帰る。まだまだ調査には時間がかかるし、本格的な開拓に入れるのはもう少し先だけど…少しずつでも、進んでいる。その実感は、確かにある。
仕事を終えての、皆との料理。各々で得意料理を作ったり、手伝いをしたりして何品も作り、テーブルに並べて、皆で夕飯。言うまでもないかもしれないけど、皆で談笑しながら食べる夕食は、一日頑張った事もあり……文句なしに、美味しかった。
今回のパロディ解説
・エルトライト鉱石
モンハンシリーズに登場する素材の一つの事。かなりタイムリーなネタになるかなと思って入れてみました。浮遊大陸は、G級やマスターランク…なのかもしれません。
・ハルモニア鉱石
takt op.に登場する鉱石の事。ヤバい石、というのは黒夜隕鉄の事ですね。イリゼは連携技の名前に音楽用語を入れたりしますが、勿論ムジカートではありません。
・「〜〜我慢や努力も〜〜叱られるよー?」
しかるねこのパロディ。イリゼの場合、いつもいるのは猫ではなくライヌちゃんとるーちゃんですね。どちらもイリゼの事を凄く癒してくれているでしょう。