超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
「虫を捕りに行こう!」
「唐突ッ!」
プラネタワー、某日。クロちゃんことクロワールに逃げられて、何故か会得していた次元移動能力(?)が現状全く使い物にならないという事で、暫く信次元に留まる事を選んだおっきいわたしが、ある日いきなりそんな事を言い出した。…某日って、ちょっと使ってみたい言葉だよね。え、そうでもない?
「ちょっ、いきなり何さわたし…え、虫捕り?
「
「えー…?なんでまた、急に…?」
わたしとわたしなだけあって、早速メタ発言が連続で登場。でもおっきいわたしはそのやり取りを早々に切り上げて、改めてわたしを誘ってくる。
対するわたしは、取り敢えず質問を返す事を選択。これは勿論、言葉通りの疑問を持ったから、っていうのもあるけど…正直言うと、わたしは即答する程の魅力を虫取りに感じていない。…だって、ねぇ?わたし、女の子だよ?おっきいわたしが好きなのは否定しないけどさ…。
「ふふん、よくぞ訊いてくれました!今回は多分、わたし一人じゃ取り切れない位の虫が手に入る……かもしれないからね!」
「お、おおぅ…そんな大量の虫が…?」
「入れ食いだよ?取り放題だよ?…けど、ちっちゃいわたしは気乗りしない感じ?」
「うぇっ!?あ、あー…いやぁ、そんな事は……ごめん、実はしない感じ…」
「ま、だよねぇ。別に大丈夫だよ?虫捕りが同性ウケしない趣味なのは分かってるし。男の子だって好きな人ばっかりじゃないしね」
女神か人かの違いはあるっていっても、同じわたしを相手に誤魔化し切るのは多分無理。そう思ってわたしが正直に言うと、おっきいわたしは苦笑いしつつ肩を竦める。その反応は、なんていうか…前から中々理解されなくて、それはもう仕方のない事だって割り切っちゃってる感じの、ほんのり物悲しさのある苦笑いで……困ったなぁ。そんな顔されたら、断れないじゃん…。
「だから別に、嫌なら嫌でいいよ?こう、言い方は悪いけど、一緒に来て手伝ってくれるなら、別にちっちゃいわたしである必要はないしさ」
「む、そう言われるとちょっと不服っていうか、同行して活躍して、『やっぱりちっちゃいわたしに来てもらって良かった』って言わせたくなるね……はっ!もしやおっきいわたしは、同じわたしだからこそ、こういう心境になる事を読んで今の発言を…?」
「ふっ…そんな目論見は思い付きもしなかったのだ!」
「あ、そう…んー、そうだ。だったらさ、今度わたしがレトロゲー探しに街に繰り出す時、おっきいわたしも一緒に来て、隠れた名作探しを手伝ってよ。お互いの趣味に付き合うって事なら、わたしにもおっきいわたしにも損はないでしょ?」
「え?レトロゲーはわたしも好きだし、それじゃあ損はなくてもわたしだけ得が二倍……」
交換条件…って程じゃないけど、今回付いてく代わりのお願いをするわたし。するとおっきいわたしは、最初の内は怪訝な顔をして…でも数秒後、ふるふるど首を横に振る。
「…ううん、やっぱり何でもない。じゃあちっちゃいわたし、明日は虫を捕って捕って捕りまくるよー!」
「お、おー!…うん?明日?」
「そう、明日。今日は準備をしたいんだ」
「そっか、そういえば虫捕りって、事前に餌を仕掛けたりするもんね。…あ、そーだ。折角だし、ネプギアも誘う?」
「ネプギア?えと、大丈夫?ネプギアは、女神の仕事で忙しかったりしない?」
「…あの、おっきいわたし…?わたしも女神なんだけど…?」
「でも今、ごろごろしてたよね?」
「それは否定しない」
事実で返されたわたしはもう速攻で認めちゃって、ネプギアも誘ってみる。案の定、ネプギアも虫捕りそのものにはあまり乗り気じゃなかったけど、普段は色んな所に行ってるおっきいわたしと一緒に出来る事だからか、わたしよりも早く同行する事を決めて…けど、今日は流石に忙しいみたいだから、参加するのは明日の虫捕りだけって事に。準備はわたし達二人でやる事になって……言っておくけど、わたしだってごろごろする前はお仕事してたからね?朝からずーっとごろごろしてた訳じゃないからね?
「よぉし、そうと決まれば早速行こう!善は急げ、娯楽は超特急、だよ!」
「ねぷ?そんな…諺?あったっけ?」
「ふふん、今決めたわたしの格言だよ!」
「そっかぁ、中々良さげな格言かも…」
そんなやり取りを交わしながら、わたし達は外へ。準備は結構遠くに行くって事だから、わたしは女神化して、おっきいわたしを抱えて移動。…したのは、いいんだけど……
「…なんで、ラステイション…?何故にパッセ…?」
ここだよ、と言われてわたしが降りたのは、パッセの正面入り口前。
皆、パッセを覚えてるかな?わたしの友達、このOriginsシリーズにおいてはかなりの古参なシアンが社長を務める工場だよ。
「実はシアンに頼み事をしててね。って訳で、来たよシアーン!ちっちゃいわたしにティマーニを!」
「うわ懐かしっ!六年越しの天丼ネタって…いっそもう感慨深いよ…」
「い、いきなり何言ってるんだ二人して……」
わたし達は工場…じゃなくて食堂の方に行って、そこにいたシアンに声を掛ける。いやほんと、六年の年月を経てまたこのネタを、しかも今度はおっきいわたしが披露するとは…このシリーズも、随分と沢山歩いてきたんだね……。
「いやぁ、ついね。それでシアン、例の物は出来た?」
「ついって…まあいいさ。注文の品なら完成してるよ」
返答したシアンは、一度奥へ。二人はいつの間に知り合ったんだろう…と思って、わたしは待ってる間におっきいわたしへと訊いてみる。
なんでも、おっきいわたしがラステイション観光をしてる時、お腹空いたなぁ…と思って漂ってくる匂いの元を探していたら、パッセ前に来たところでシアンの方からおっきいわたしを見つけたんだとか。うん、分かる。ここの料理…シアンのおかーさんが作る料理って、正に家庭的っていうか、珍しさはなくてもほっこりする美味しさがあるんだよねぇ。
「お待たせ。リクエストを元に、わたしなりに色々工夫して作ってみたが…こんな感じでどうだ?」
『おぉー…!』
数十秒後、戻ってきたシアンが持っていたのは虫捕り網。でも、ただの虫捕り網じゃなくて、柄のところに幾つかボタンがあったり、網の枠も見るからに細工が施されている、何ともメカニカルな虫捕り網。
「なんか凄いね、これ!サルをゲッチュする用?」
「いやいや、普通に虫捕り網だから…や、『普通』ではないんだが……」
「わたしが頼んだのは、普通じゃない、スペシャルな網だからね!あ、お値段はおいくらー?」
「まあまあ、金の話は後にして、まずは機能と説明を聞いてくれよ。…あ、重いから気を付けてくれよ?」
そう言って網を渡すシアンの顔は、楽しそう。続けて今言った通り、シアンは網の説明をしてくれたんだけど…これがまた、中々に多機能だった。地味な機能もあるけど、確かにスペシャルな網だった。そしてこっちも今言った通りに、普通の人が使ったらすぐ疲れそうな位の重量だった。
「…って感じだな。悪い、機能の方は要求を満たせてると思うが、その分重量が……」
「大丈夫大丈夫、ちっちゃいわたしは女神だし、わたしも普段から剣を振り回してるからね。でもほんと、この短期間で作ってくれるなんて、流石は天才メカニック!」
「はは…まぁ、天才かどうかはさておき、武器から始まってロボットやら何やらの開発もした先で、まさか改造虫捕り網作りをする事になるなんて思ってもみなかったよ」
「…あのさ、シアン。横から口を挟む形になっちゃうけど…大丈夫?前と違って、今は忙しいでしょ?本職の方で手一杯だったりしない?」
おっきいわたしからの称賛に、シアンは苦笑しながら肩を竦める。でもそんなシアンに、わたしは思うところがあって…言う。
自分の友達が、凄いと思われるのは嬉しい。けど、MGが普及し始めてから、その開発の中心になったシアンはほんと忙しくなって、今も決して暇ではない筈。だから、無理して引き受けてたりしてないか不安になったんだけど…シアンは首を横に振る。
「いいや、大丈夫だよ。勿論忙しくはあるが、処理し切れない程じゃないし…こんな遊び心満載な改造なんて、久し振りだったからさ。楽しかったし、何なら初心を思い出せた気もするんだ」
「そう?なら良いけど…ほんと、凝ってるね…」
「だろ?やればやる程、あれもこれもって欲求が湧いてくるんだよ。奥が深いっていうか、なんていうか…もっと時間があれば、今の性能を極力保持したまま、軽量化か形状、重心の調整で使い手の負担を減らす工夫なんてのも……」
楽しかったから問題ない。そう語るシアンは本当に、面白い事が出来たって感じの表情をしていて…根っからの技術者なんだなぁ、とわたしは感じた。…その後なんて、もっとこうしてみたかったんだっていう話がぽんぽん出てきたし…ね。
と、いう訳でやり取りの後はおっきいわたしがお代を払って、改造虫捕り網はおっきいわたしの物に。
「ほんとありがとね、シアン!沢山捕れたら、シアンにもお裾分けするからね!」
「む、虫のお裾分け…?わたしとしては、それより使っての感想なんかを聞かせてくれた方が、色々参考になって助かるんだが……」
「OKOK、感想だね?ばっちり聞かせてあげるから、楽しみにしててよ!」
「じゃね、シアン!また今度遊びに来るからねー!」
改造虫捕り網を持ったおっきいわたしと共に、食堂を出るわたし。こうやってお邪魔するのはほんとに久し振りだったし、その内また皆で来て、前みたいに鍋パーティーとかやれると良いなぁ。
「そういえばわたし、ぱっと払ってたけど、結構クエストで稼いでる感じ?」
「そだよ。これでも色んな次元を渡り歩いて、旅の経験を重ねてきたからねー。お金の重要性も、ちゃんと稼いどく必要性も理解してるつもりだよ」
それにある程度お金を持っておけば、「あ、これいい!」って思った時、即買う事も出来るからね!…とおっきいわたしは胸を張る。え、それは衝動買いってやつじゃ…?と思ったけど…ま、気持ちは分かるからね!欲しいと思ったなら、その瞬間の気持ちを大事にしなくっちゃ!
って事で、明日に向けた準備は完了…かと思いきや、まだ準備はある様子。しかも今度はルウィーらしくて、またわたしはおっきいわたしを抱えて大空を飛ぶ。
「よ、っと。今度は教会で良いのかしら?」
「そうよ、用事があるのはここにいる人だもの」
「え…何故わたしと同じ口調を…?」
「いやぁ、ちっちゃいわたしって女神化すると、格好良い大人の女性っぽくなるでしょ?だから、ちょっと真似してみたくなって」
ルウィー教会に到着したわたし達は、もう連絡してあるって事で裏手へ回る。そこでインターホンを押すと、すぐに反応が返ってきて…中から出てきたのは、フィナンシェ。
「いらっしゃいませ、パープルハート様、ネプテューヌさん」
「(あれ?フィナンシェって、わたしの事をこれまでパープルハートって……あ、おっきいわたしもいるからか)お邪魔しまーす。おっきいわたしが用事あるらしいんだけど、フィナンシェは知ってる?」
「はい、知っていますよ。先日、地理に関するお話を伺いましたから」
フィナンシェの返答に、わたしは目をぱちくり。え?と思いながらおっきいわたしの方を見ると、おっきいわたしはそうだよ、と廊下を進みながら頷きを返す。…って事は…ルウィーでの用事の相手って、フィナンシェだったんだ…。
「地理に関する話…あれ?虫捕りって、ルウィーでやるの?」
「ううん、神生オデッセフィアだよ?」
「……?え、ごめん…全然話の流れが分からないんだけど、なんで神生オデッセフィアで虫捕りするのに、フィナンシェに地理の話を?フィナンシェって、地理に詳しいの?」
「えぇと、少しややこしい話なんですが…神生オデッセフィアが、オデッセフィア時代の四大陸を元にしている…というか、再現されているのはご存知ですよね?」
それは勿論、とわたしは首肯。だからか神生オデッセフィアって、一つの大陸の中に結構違う環境があるっていうか、中々特殊な大陸になってるんだよね。言うなれば、某エンドコンテンツの狩り場とか、嘗ての城塞都市が存在する狩り場的な感じ?
「その為、完全に…ではないのですが、各国の地理情報は、神生オデッセフィアの地理にも活用出来るんです」
「ほうほう…あ、って事は虫捕りに行くのは、今のルウィーに当たる地域…って、あれれ?ルウィーに当たる地域だったら、寒くて虫はいないような……」
「と、思うじゃん?でもわたしが目星付けた所って、そんなに寒くないんだよね。だからルウィーの端っことか、完全再現された訳じゃない部分だとかなんじゃないかなー」
ちょこっと気になる部分もあったけど、どうしてフィナンシェに?って疑問は解決。それから案内されたのは、プロジェクターの準備がされた会議室の一つで、何でもフィナンシェはただ纏めた情報をくれるだけじゃなくて、これを使って説明までしてくれるんだとか。
「では、まずはご依頼頂いた地域と、そこに当たるルウィーの地域の概要ですが…お手元の資料の二ページ目をご覧下さい」
「お手元…わっ、レジュメが用意されてる…」
「しかも読み易い、分かり易い…!流石侍女さん、レベルが高い…!」
侍女…というかメイドさんって、創作の世界においては多芸且つ有能なのが定番。そんなメイドさんのイメージ通りなフィナンシェの用意の良さに、わたし達は揃って感動。しかもだよ、お茶とお茶菓子まで用意してくれてるんだよ?くぅっ、外見も可愛いし、羨ましいぞブランっ!
「……ふぅ。わたしが調べられたのは、この程度です。お役に立ちそうですか?」
「ふっふっふ…控えめに言ってばっちりだよ!これはもう、ルウィーの地理の全てを知ったと言っても過言じゃないね!」
「いや、普通に過言かと…それと、あくまでこれは神生オデッセフィアではない、ルウィーの情報と、わたしなりの推測に過ぎません。実際の地理、地形とか異なる部分があってもおかしくないので、その点は気を付けて下さいね」
「ふふん、安心してよ!どんな地理地形でも、わたしのネクストフォームにかかれば更地どころか何もない空間を作る事だって出来ちゃうからね!」
「そ、そんな物騒な返答をされてわたしは何に安心をしろと…!?」
びしっ、とサムズアップするわたし達と、最初は落ち着いて、でも次はがびーん!…という擬音が出てきそうな顔で突っ込んできてくれるフィナンシェ。…まあ、ちょっとふざけちゃったけど…本当に、フィナンシェの説明は分かり易くて、すんなり要点を覚えられた。おっきいわたしがフィナンシェに頼んだのは、この話をルウィー教会に持っていった時、応答してくれたのがフィナンシェで、そのままフィナンシェが調べてくれるってなったかららしいけど…シアンといいフィナンシェといい、おっきいわたしって人選が良いよね。
「まぁ、ご満足頂けたのでしたら何よりです。また何か、お力になれる事がありましたら、その時は助力させて頂きますね」
「ありがとね、フィナンシェ。…けど、いいの?仕事外の事してたら、ブランに怒られたりしない?」
「ふふ、ご心配には及びませんよ。無駄のない時間配分は、侍女の基本ですから」
問題がないよう予定を組んでいるんだ、とフィナンシェは言って、ちょっぴりだけど自慢げな表情を浮かべる。なんていうかそれは、上手くやれた事で達成感を抱いてるって感じで…ならシアンの時みたいに、これも良い息抜きになったのかな?んまぁ、フィナンシェの説明もシアンの改造も、息抜きなんてレベルじゃないんだけど。
「よぉし、この地理の情報を活かして、虫を見つけまくるよー!フィナンシェに合いそうな虫がいたら連れてこよっか?」
「あ、あー…遠慮しておきますね…。何せここは、ルウィーの中心ですし…」
「そう?じゃあ、ねぷのーとで標本にしたやつを……」
「おっとすみません!わたしはそろそろブラン様にお茶をお淹れする時間ですので、非常に申し訳ないのですが、ここで失礼させて頂きますね!必要でしたら、代わりの者を呼んできますよっ!」
「わぁお、なんて強引な凌ぎ方…ブランの侍女だけあって、胆力も凄いね…」
多分気候の事は建前だって分かってるんだろうけど、やんわり断るフィナンシェに対しておっきいわたしは食い下がろうとする。けど、言い切る前にフィナンシェは勢いのある声で捲し立てて、力尽く(?)での乗り切りを実行。その躊躇いのない…けどメイドさんとしてしっかり気は遣った発言に、自然とわたしは感心していた。
それからわたし達は顔を見合わせて、お礼と共にもう帰るという事を伝える。因みに確認したら、おっきいわたしは「もし欲しいって事ならあげるけど、要らない人に虫押し付けるなんて事はしないよ」との事。んもう、ほんとおっきいわたしってばからかうの好きだよねぇ。わたしもだけどっていうか、同じわたしなんだからそりゃそうだよねって話だけどさ。
「…あ…そうだ、おっきいわたし。さっきさらっとねぷのーとで標本に、って言ってたけど…あれから大丈夫?具合が悪いとか、そういう感じの事はない?」
「見ての通り健康だよ。あ、でも……」
「でも…?」
「最近は街で生活する事が多くて、毎日美味しい物食べてるから、もしかしたらちょっと太っちゃったかもな〜」
フィナンシェと別れて、外に出たところで、ふとわたしは気になった事を口にする。
おっきいわたしの持つノート…というより、本?…であるねぷのーとは、物凄い力を持った魔導書。でも同時に、手にした相手と勝手に契約して、魔導書としての力を使う時はその人の生命のエネルギーを利用する、危ない存在でもあるらしくて、実際そのせいでおっきいわたしは一度ピンチにもなった。だからまだ使ってる事に、ちょっと不安になったわたしだけど…どうやらおっきいわたしは大丈夫みたい。
「あぁ…大変だねぇ。その点わたしは、女神だからまあまず太る事なんてないのさー!ふふん、いいでしょ〜」
「いいなぁ。背が伸びてもっと大人な感じになるなら良いけど、これ以上栄養が胸の方に行っちゃうと正直動き辛い──」
「おっきいわたし、わたし先に帰るからプラネテューヌへは歩いて帰ってもらっていいかな?」
「なんで!?え、何故唐突に冷たい態度に!?」
びっくりした顔で聞き返してくるおっきいわたしに、わたしは無言で半眼を返す。全く…こーいう部分だけは理解し合えないようだね、残念だよ…。
「…ま、元を辿るとわたしの発言も原因の一つだからいいけどさ。で、今度こそ準備は完了?それともまだどこか寄る?」
「あー、えっとね…今度はリーンボックス行ってほしいんだけど、いいかな…?」
「リーンボックス?虫捕りの行き先は神生オデッセフィアだし、これもうちょっとした信次元ツアーだねぇ」
移動はほぼ飛行だし、立ち寄るのもそれぞれ一ヶ所だけだったから、ツアーっていうには詰まらな過ぎる内容だけど、次々回っているのは事実!
…まあでも別にそこはどうでも良くて、リーンボックスに行くのも嫌じゃないから、三度目の女神化をしてわたしはリーンボックスへ。
(けど、リーンボックスには何の目的で行くのかしら…ここまでの流れからすると、リーンボックスでも誰かに頼み事をしてるんだと思うけど……)
どうせ着けば分かるとはいえ、こうなると気になるというもの。ラステイションではシアン、ルウィーではフィナンシェだったし、となるとリーンボックスも最初の旅で出会った誰かかしら?けど、最初の旅で出会った人の中で、リーンボックスにいる相手って…え、まさか兄弟!?兄弟に会いに行くつもりなの…!?…いや、いいんだけど…!会っちゃいけないとかではないんだけども…!
「あ、いたいたー!イーヴォーさんやっほー!」
「イーヴォーさん!?」
「あ、イヴォワールの方だった!?」
リーンボックスの教会周辺まで到達し、そんな事を思いながら降下していると、声が上がる。それを聞いて、声の向けられた先を見て、わたしは…わたしと眼下のイヴォワールは、ほぼ同時に声を上げた。わたしはそっちだったの!?…と思った事で。イヴォワールは、妙な呼ばれ方をされた事で。
「あれ?駄目だった?イヴォワールでイーヴォーなら、そこまで変でもないでしょ?」
「だとしても、そんな某闇の帝王風の呼ばれ方を突然されれば、驚くに決まっているじゃろう…こほん。ようこそおいで下さいました、パープルハート様」
「え、えぇ……なんか懐かしいねー、わたしもイボ爺さんとか呼んだ事あるし」
「それを思い出すのは止めて下され…」
着地して、女神化を解いたところでわたしが前の事を振り返れば、イヴォワールはがっくりと肩を落とす。…これだけ見ると、ただの元気なお爺ちゃんなんだよねぇ。でも実際にはわたしを前に毒殺しかけた超アグレッシブお爺ちゃんだし、負常モンスターや負のシェアの城との最終決戦じゃ、女神に変わって四ヶ国の全軍の指揮を執ったスーパーお爺ちゃんでもあるんだから、信次元ってほんと凄いものだよ。
「それで、リーンボックスではイヴォワールに用事なの?けど、イヴォワールって…あ、もしかして若い頃は、虫捕りでブイブイ言わせてたとか?」
「はは、まさか。私も男故、幼き頃は虫捕りに興じた事もありますが、ブイブイ言わせるなどとてもとても……」
「あー、じゃあブイブイ言わせてたのは色恋方面とか?イヴォワールお爺ちゃん、若い頃はモテモテだった説?」
「はっはっは」
(あっれぇ…?否定しないの……?)
100%冗談として言ったのに、イヴォワールはまさかの笑うだけ。え、何?ただでさえ設定盛り盛りなのに、そこに更に元プレイボーイ設定まで追加されるの?確かに髭とか皺が特徴的だけどそれを抜きに見れば整ってるし、素手でも結構強いらしいし、おまけに教祖家系の分家っていう高貴な家柄まで兼ね備えてるんだから、モテてもおかしくはなさそうだけど…ほんと、設定盛り過ぎじゃない…?
「それでさイヴォワールさん。前に教えてくれたあれ、見つかった?」
「やはりそれが目的だったのじゃな。待っているといい、すぐに持ってこよう」
わたしが思考を脱線させている間に、おっきいわたし話を進める。尋ねられたイヴォワールは持っていた園芸道具を置いて、庭から教会の屋内へ向かう。
「けど、あの二人組じゃなかったにしろ、イヴォワールかぁ…なんか悉く、最初の旅の面々だなぁ…」
「最初の旅?」
「うん。わたしが記憶喪失になってからの、色んな始まりになった旅だよ。他にもガナッシュとかわたしを可愛いろりっ娘って言った教会のおにーさん…もとい職員とかも、その旅で出会ったんだ〜」
あれ?でもあの職員は記憶喪失になる前に面識があった…というか、少なくとも顔位は見た事あっただろうから、出会ったっていう表現は少し違うかな?『今の』わたしにとっては、間違いないんだけどさ。
「でも、ちょっと惜しい感あるよねぇ。女の子、女の子ってきて、三人目がお爺ちゃんなんだもん」
「いやぁ、それは流石にわたしじゃどうしようもない事だから…」
「まーね。でもリーンボックスなら、外見的特徴はトップクラスならんらんという選択肢……は、ないのか。うん、そういえばなかったね」
「らんらん?仲間呼びをしてくるあの?」
「それは『ら』じゃなくて『り』だね…んっとね、らんらんっていうのは豚で、顔が特徴的で、その顔っていうのが……」
「これですな」
「あー、これかぁ」
「そうそうこれ…って、なんであるの!?なんで持ってきてるの!?」
どっかでちらっと見た気はするけど、幾らわたしでも流石に豚の知り合いはいない。となれば当然おっきいわたしが信次元で知り合ってる筈もないし、わたしは豚の顔の説明を……と思ったところで、戻ってきたイヴォワールがなんと、その豚の顔をした仮面を、『(´・ω・`)』なペルソナを差し出してきた。…いや、ほんとに何故!?
「何故も何も、彼女に頼まれていたのはこれですからな」
「あぁ、そういう……とはならないよ!?むしろ、余計に謎が深まったよ!?あれ!?これも虫捕りに関わるものなんだよね!?…って、そんな訳あるかーい!」
「ち、ちっちゃいわたし…?あの、大丈夫…?情緒が崩壊レベルで不安定だよ…?」
「訳が分からな過ぎたらこうもなるよ…。これが一体どういう事なのか、説明プリーズ…」
もう駄目だ、考えるのを止めて普通に訊こう…と脱力しながら言うわたし。っていうかよく見たら、豚のペルソナ複数枚あるじゃん…。
「いやほら、今回捕りに行くのって、人がほぼ立ち入った事ない場所じゃん?だから他の場所以上に警戒されたり逃げ易かったりすると思うから、そこを誤魔化せる何かを探してたんだ。そこを知識と経験と根気で解決するのも良いんだけど、わたし一人ならともかく、誰かに一緒に来てもらうなら、対策は用意しておきたかったからね」
「それで、これ?」
「うん。ネットで訊いてみたら、これが一番だって教えてくれたんだー」
「わー、胡散臭い…イヴォワールもよく調達出来たね…」
「人脈には少しばかり自信がありましてな。知人を頼ったまでの事ですぞ」
着ぐるみとかならまだしも、ペルソナ一つで何とかなるのかなぁとか、イヴォワールは人脈まで持ち合わせているのかとか、説明を受けてもまだ釈然としない事がちらほら残る。っていうかもうこれ、真面目に話してるだけでギャグだよね?後わたし、前から思ってたけど、ボケの申し子的な扱いされる割には突っ込みに回る事もちょくちょくあるよね?そうせざるを得ない状況が地味に多くない?
「用意してくれてありがとね、イヴォワールさん!お礼は格好良い虫が良い?それともちょっと可愛い虫の方が好み?」
「お礼などよい、友人と久し振りに会う、良い機会になってくれたのじゃからな。じゃが、これは借り物故、紛失だけはしないように」
「はーい。…ふふ、改造虫捕り網に、地理の情報に、このペルソナ…三種の神器が遂に集まったよ、遂に!」
「め、女神的には微妙な心境だよ、それを三種の神器扱いされるのは…」
網、地理情報を纏めた書類、それに受け取ったペルソナを持って、ふふーんとおっきいわたしは胸を張る。対するわたしは苦笑いし、イヴォワールも肩を竦め…けど何にせよ、これで準備は整った。
イヴォワールと別れ、わたし達はプラネテューヌへと戻る。戻って明日の虫捕りに備える。この準備で上手くいくのかは謎だけど…それはやってみないと分からないよね。
*
一日経って、今日は虫捕り当日。昨日受け取ってきた物をちゃんと持って、神生オデッセフィアに来て、森の中を三人で進む。
「…………」
「…………」
「〜〜♪」
ぽてぽてと歩く、わたしと、おっきいわたしと、ネプギア。後ろから見たら、きっと可愛いんだろうなぁって思われる女の子の後ろ姿で……前から見たら、奇妙な豚さん三人組。
「…ねぇ、お姉ちゃん…これ、側から見たら凄まじくシュールなんじゃないかな……」
「まぁ、だろうねぇ…」
持ってるだけじゃ意味ないもんね、と、森に入る時点でわたし達は豚のペルソナを装着した。これが中々優れもので、付けてもちゃんと前が見えるし、息苦しくなったりもしないんだけど…とにかく見た目がシュール過ぎる。携帯端末の内カメラで自分の姿見てみたけど、雑なコラ画像みたいになってるし…。
「にしても、これ一つで意味があるのかなぁ…効果があるとしたら、これ特殊機能持ちのペルソナだよね…?」
「悪霊の力を制御する事で使えるやつとか、使い過ぎると身体が塩になっちゃうやつとか?」
「そ、そんな恐ろしい力がこんなペルソナにあるとは思えないけど…」
サブカルにおいて仮面は大概強化アイテムだよねぇ、とか思いながら、わたしがネプギアとの会話を続行していると、一歩先を歩いていたおっきいわたしがくるりとこっちの方を振り向く。
「もー、テンション低いよ二人共〜。もっと元気に行こうよ、元気に!」
「いや別に、テンション低い訳じゃないけどね。おっきいわたし的には、もうわくわくが止まらない感じなの?」
「もっちろん!わたしにとって今は、ゲームを買った帰り道と同じ位と言っても過言じゃないのさ!」
そう語るおっきいわたしは本当に楽しみそうで、けどペルソナで表情は一切変わらない訳だから、これもこれで凄くシュール。
「…あ、でも二人共、テンションは上げても浮かれ過ぎないようにね?分かってるとは思うけど、攻撃的な虫とか、触れるだけでもかぶれるような虫だって当然いるだろうし」
「はーい。…っと、大きいお姉ちゃん。そろそろ大きいお姉ちゃんが目星を付けてた場所ですよね?」
「だね。やっぱり地理の情報を仕入れておいたおかげで、前に来た時よりずっと安全な道を選ぶ事が…おぉっ!」
何でもおっきいわたしは前にもここ周辺に来たらしくて、でもその時はただ移動するだけでも一苦労な場所に出ちゃったから、地理の情報が必要だって思ったんだとか。
と、そんな話をしている最中に、ふわりとわたし達の頭上を横切った小さな影。それは黒い羽をした蝶々で、目にしたおっきいわたしは目を輝かせる。
「見た?見た?今の蝶々、ちらっとしか見てないけど、もしかしたらわたしの知ってるどの蝶々とも違う種類かも!」
「あ、そうなの?じゃあ追う?」
「ううん、それはまだ大丈夫。ここも普通に進むのは問題ないけど、走って追いかけるのは少し辛いし、何もあの一匹だけしか存在しないなんて事はないだろうしね」
はしゃいではいるけど、同時に結構冷静でもあるおっきいわたし。ぱっとそういう判断をする辺りは、やっぱり虫捕りに慣れてるって感じで…でもその後、少しおっきいわたしの雰囲気が変わる。表情は見えないけど、どこか遠くを見つめてるような…そんな感じの雰囲気に。
「…おっきいわたし?」
「どうか、したんですか?」
「へ?…あー、えっと…今の蝶々、黒かったでしょ?だからちょっと、クロちゃんを思い出しちゃってさ」
気になったわたし達が問い掛ければ、おっきいわたしは頬を(勿論ペルソナの頬部分じゃないよ?)掻きつつ答えてくれる。おっきいわたしとは特殊な関係で、今はもうどこかに行ってしまった、クロちゃんの事を口にする。
「クロちゃんは良い子ではなかったし、騙されて大ピンチになった訳だけど、旅をしてる時は何だかんだわたしが危ない時は助言してくれたり、そもそも次元を渡る旅はずっとクロちゃんと一緒だったから……正直、寂しいんだ」
「そう、だったんですね…」
「今、クロちゃんはどうしてるのかな…自由を謳歌してるのかな…。だとしたらやっぱり、わたしとの旅は嫌なものだったんだろうし、基本ねぷのーとに封印されてたんだから、嫌で当然だとも思うけど…出来れば悪い事はしないで、元気でいてほしいな…」
遠くを見るような雰囲気は、きっと別次元に…本当に遥か遠くにいるだろう相手の事を思っているから。仕方ないと思いつつも、声音に悲しさを滲ませるおっきいわたしからは、クロちゃんを旅の相棒の様に思ってたんだなって伝わってきて……でもそこで、おっきいわたしはぶんぶんっと首を横に振って、またわたし達の方を向いた。
「…って、これじゃわたしが一番テンション低いじゃーん、って話だよね。ごめんごめん二人共、というかこのペルソナ被ってする話じゃないよね、うん!」
「…別に、無理に明るく振る舞わなくていいんだよ?」
「だいじょーぶ、無理してないよ。もしかしたら、その内どこかで会えるかもしれないし…何よりこれから虫捕りなんだよ!?未開の地で、捕りまくりなんだよ!?なのにローテンションのままなんて、勿体無いにも程があるって!」
なんかもう軽く圧すらあるおっきいわたしの言いっぷりに、わたしもネプギアも「お、おおぅ…」となりながら小さく首肯。まあでも確かに、無理に明るくしてる訳じゃないっぽいから、そこについては一安心。
そうしてそこから更に進む事十数分。ここまでに比べると、ある程度動き易い環境になってきて…おっきいわたしは、足を止める。
「…よし、この辺りだね。ちっちゃいわたし、ネプギア、虫捕りを始めるよーっ!」
『お、おー!』
音頭を取るおっきいわたしにつられる形で、わたしとネプギアも右の拳を突き上げる。言うが早いかおっきいわたしは網を持って、早速虫を捕りに……って、あれ?
「おっきいわたし、それシアン特製の物じゃないよね?普通の網だよね?」
「最初からとっておきのアイテムを使っても面白くないからね!まずは普通の網で勝負って感じかな!」
「勝負…?…あ、だったらこの網、ちょっと触ってても良いですか?」
「いいよー!けど後で使いたいから、分解はしないでねー!」
そう言って突撃していくおっきいわたしを、苦笑しながらわたしは見送る。普段からそうといえばそうなんだけど、今のおっきいわたしは普段以上に、見た目とは裏腹に子供って感じで……あ、今「だったらネプテューヌは、見た目通りに子供っぽいよね」とか思ったでしょ、んもー。
「あの様子だと、暫くおっきいわたしは戻ってこないかもなぁ…」
「わっ、凄い。ここに配線用の細工をしてあるんだ……って、ほぇ?…えと、ごめんねお姉ちゃん。今、何か言った?」
「あ、うん言ったよ。言ったけど独り言だから大丈夫。…ネプギアもネプギアで、早速それに夢中だね」
「あはは、シアンさんお手製の物って思うとつい…。…お姉ちゃんは、行かないの?」
「んー…まあぼーっとしてても面白くはないし、やろうとは思ってるけど……」
約束、というかお願いの件もあるし、何もしないつもりはない。さっきの蝶々以外にも、ここに来るまでにそこそこ虫の姿は見かけてるから、確かに一杯取れるとも思う。けどやっぱり、虫捕りにテンションが上がるかといえば…ってところで、わたしは小さく肩を竦める。
でもまあ、結局楽しめるかどうかって、やる気次第だよね。楽しい事でもやる気がなきゃ楽しめないだろうし、詰まんない事でもやる気があれば楽しめる…とは限らないけど、やる気を持ってやってる内に、感じ方が変わってくる事はあるだろうし。って訳で、そこそこやる気出してやってみますかー。やっぱりビミョー、ってなる気しかしないけど、やらずに決め付けるのもわたしらしくないしねー。
*
木にいたところから、捕まる寸前で飛び立ち逃げる一匹の虫。それを目掛けて、網を持ったわたしは追う。全力で。それはもう、全力疾走で。
「あははははっ!楽しいねっ、おっきいわたし!」
「でしょー!」
ハイテンションで声を上げるわたしと、嬉しそうに頷いてくるおっきいわたし。うん、前言撤回するね。虫捕り楽しい、超楽しい!
「逃がさないよー!これでどーだっ!」
なんか自分でもよく分からない楽しさを感じながら追い掛けていたわたしだけど、虫は高度を上げて逃げ切ろうとする。
けど歴戦の女神であるわたしにとって、それ位は想定の内。ならばとわたしは網を構えて、柄にあるボタンの一つを押して……次の瞬間、構えていた改造虫捕り網からネットが飛ぶ。射出されたネットが虫を包んで、そのまま捕らえる。
「ふふーん、シアンの網を舐めちゃいけないよ!」
「おー、飛ばすタイミングがバッチリだったねぇ。で、肝心の虫は…うんうん、やっぱりこの角が格好良いんだよね!」
長射程ではないし、セットのし直しがちょっと面倒だけど、ネットを飛ばせるっていうのは強力。それに他にも色々機能があるものだから、正直この網を使う事自体がちょっと楽しい。地理情報も役立ちまくりだし、ペルソナもほんとに効果がある……気がするし、今はほんとに良い気分。
「…お姉ちゃん、さっきから見てて思ったんだけど…女神化して網振ったり、追い掛けたりした方が楽じゃない…?」
「ちっちっち、分かってないなぁネプギアは。虫捕りっていうのは、ある意味虫との勝負なんだよ?強力な相手に対して、この網みたいなアイテムを使ったりするのは面白さに繋がるけど、虫捕りそのものが緩くなっちゃうような行動は、捕まえられるとしてもナンセンスなんだよね」
「ち、ちっちゃいわたし…まさかもう、その境地にまで至るなんて…流石はわたしだよ!同じわたしとして、わたしは誇らしいよ!」
「わたしこそ、おっきいわたしには感謝しかないよ!おっきいわたしがいなきゃ、きっと虫捕りなんてこれからもする事はなかったんだから!」
がしぃ!と熱く握手を交わすわたし達。そんなわたし達の事を、ネプギアは苦笑いしつつ見ていたけど、その後「そろそろわたしも、ちょっとはやってみようかな…」とぼそり。それを聞いたわたし達は…勿論、肯定の一択だよね!
「……!ちっちゃいわたし、今かなりデカめの虫がいたよ!」
「なら、連携だね!」
頷き合い、わたし達は同時に駆け出す。既に結構な数捕まえられてるけど、まだ終わりになんてするつもりはない。またわたしの心は、続ける事を選んでいる…!
「とりゃー!」
「てりゃー!」
きっと今日帰る時には、充実した気持ちになっている。確信レベルでそう予感しながら、わたしはおっきいわたしと二手に分かれて虫を…虫が隠れたらしい茂みを挟撃。わたし自身は虫をまだ見てないけど、わたしは女神で、おっきいわたしも虫捕りの経験は豊富。ならば今は見えてなくても、瞬時に判断出来るだろうと思いながら茂みを回り込み、わたし達は同時に手にした網を振り抜き……
『……あれ?』
……網が、虫の身体に当たった。うっかり網の縁をぶつけちゃったとかじゃなくて、普通に当たった。…意味が分からない?んーとねぇ、単純に言えば…『虫のサイズ>網の輪っかのサイズ』って事なんだけど…こう表現すれば、流石に分かるよね…?
「…あー、っと…これは……」
「…うん…これはアレ、だね……」
ゆっくりと網を虫から離して、わたし達は顔を見合わせる。虫っぽい身体と、虫っぽい動き。でも大きさは、普通の虫どころか小型の動物より明らかに大きくて……わたし達は、同時に叫ぶ。
『いや、モンスターじゃん!?』
「えぇ、モンスター!?わっ、ほんとだ…っていうか沢山いない!?」
追い掛けてきたネプギアの言葉で、わたし達も他にも同種の虫型モンスターが、モンスターの群れがいる事に気付く。しかも当然といえば当然だけど、今のをモンスターは攻撃だと判断したらしくて……襲いかかってくる。モンスターが、虫の見た目をしたモンスターの群れが。
「ぎゃああキモい!虫捕りは楽しいけど、この類いのモンスターはやっぱりキモいよぉぉッ!」
「と、とにかく迎撃を……あ、も、もしかして大きいお姉ちゃん的には、見た目虫だから倒してほしくなかったり……」
「いやそんな事ないよ!?わたしだって流石にこれはうわってなってるからね!?」
生理的な嫌悪感からわーきゃー言いながら、わたし達は一時撤退。わしゃわしゃ脚を動かしながら追い掛けてくる姿もやっぱりキモくて、さっきまでの楽しい気持ちは遥か彼方へ。そして当然、もう虫捕りでも何でもない訳だから、ある程度距離を取ったところでわたしとネプギアは女神化し、おっきいわたしも抜剣をして、モンスターの群れを迎撃する。
なんというか、まぁ…これが、今回のオチ。残念ながら「楽しかったね!」で終わらないっぽいのが今回の話。楽しかったのは事実だけど…なんで同じ神生オデッセフィアの未開の地での話なのに、イリゼとパーティーメンバーの皆がメインの時は大団円で、わたし達の時はこうなるかなぁ!?
今回のパロディ解説
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ジョジョの奇妙な冒険 ダイアモンドは砕けないの各話タイトルの一つの事。ある意味虫捕りも狩りの一種ですね。狩る、ではなく捕まえる、ですが。
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ジョジョの奇妙な冒険 スターダスト・クルセイダーズに登場するキャラの一人、テレンス・T・ダービーの代名詞的な台詞のパロディ。パロにパロを返してみました。
・「〜〜サルをゲッチュする用〜〜」
サルゲッチュシリーズに登場するアイテム(ガチャメカ)の一つ、ゲットアミの事。サルゲッチュ、といえばこれですよね。何せゲッチュ、とタイトルに入ってますし。
・某闇の帝王
新日本プロレス所属のレスラーの一人、EVILこと渡辺高章の事。イーヴォー、発音的にはこんな感じですよね。やや煽るような言い方にはなりますけども。
・「悪霊の力を制御する事で使える〜〜」
BLEACHに登場する能力の一つ、
・「〜〜使い過ぎると身体が塩になっちゃうやつ〜〜」
うたわれるものシリーズに登場するアイテムの一つ、