超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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 先日アンケートでコラボに関しての選択肢も上げましたが、これまでコラボをしてきた作品は多く、個人(一作品)とのコラボはこれまで通りに出来たとしても、ORの様な他作品同時コラボは(私的にはやりたいですが)製作する上での難易度が高い、というのが実情です。
 これ(他作品同時コラボ)に関して、私の作品を読んで下さっている方や、実際にコラボして下さった方々はどう思っているのか、もし宜しければ教えて下さると幸いです。感想に限らず、どんな形でも伝えてくれさえすれば助かります。……あ、別に答え辛い場合は見なかった事にしてくれても大丈夫ですよ?本当に意見が欲しいなら、ここ(作品の前書き)よりもっと伝わる方法があるでしょう、という話ですからね。


第十六話 夢と理想、そして現実

 うずめ、くろめ、それにウィードくん。お仕事の関係でいつもいる訳じゃない三人だけど、そうじゃない時…要は普段の時は、これまでのイリゼみたいに、三人共プラネタワーに住んでいる。まあ取り敢えず、元々はプラネタワー…っていうか、女神としてプラネテューヌの教会に住んでたうずめとくろめがここにいるのは当然の事だし、ウィードくんもプラネテューヌ国民だったんだから、ここで暮らしてるのは当然だし普通。勿論ウィードくんは教会に住んでた訳じゃないらしいけど…くろめの事もあるし、ウィードくんは本来『過去』の人間でもあるしって事で、ならもうここに住んだ方が何かと好都合でしょ、って話になった。…あ、これそこそこ前の話ね?

 って訳で、今はプラネタワーに住んでる女神が四人で、男の子なウィードくんはドキドキな状況!…かどうかはさておき、友達としても女神としても、三人には『今』のプラネテューヌにも馴染んでほしいものだよね。

 

「とりゃりゃりゃりゃー!ラッシュラッシュねぷスラーッシュ!」

「なんの!連打ならこっちだって負けねぇよ!」

「お、お姉ちゃん?ラッシュとスラッシュって似てるけど、意味は大分違うと思うよ…?」

「はは…二人共ボタンを押す速度ぱねぇ……」

 

 本気でボタンを押しまくり、ラッシュ攻撃をかけるわたし。真っ向から迎え撃つうずめと、キャラを操作しつつ指摘してくるネプギアと、自分じゃ付いていけないから…って事で、ソファに座って観戦しているウィードくん。今、時間帯は夜で…やっているのは、格ゲー対決。

 

「でもねぷスラッシュって、ラッシュ技扱いなんだよね〜。…くっ…にしてもわたしに付いてくるなんて、やるじゃんうずめ…!」

「ねぷっちこそ、やるじゃねぇか…けど、勝つのは俺だぜ?」

「…お姉ちゃん、うずめさん、わたしだって負けませんよ?」

「おわっ…いいぜ、姉妹揃って相手にしてやろうじゃねぇか!」

 

 勝負が付かず、お互い弾かれるわたし達のキャラ。そこにネプギアのキャラが割り込んできて、わたし達は三つ巴の勝負に。

 うんうん、やっぱりゲームは一人で没頭するのも楽しいけど、皆でわいわいやるのも違った面白さがあるんだよね。…けど、勝負である以上はゲームでも勝ちを目指さない訳がないんだよねー!四人対戦のこの勝負、勝つのはわたし……って、あれ?…四人、対戦……

 

「おっと、悪いねねぷっち」

「あぁッ!し、しまったぁぁぁぁーっ!」

 

 あれ?…と思った次の瞬間、身を潜めていたキャラがわたしのキャラを吹っ飛ばす。無防備なところを狙われたわたしのキャラは、さっきまでうずめと削り合っていた事もあって、そのまま撃破されてしまう。そして、その虚を突く一手を放ったのは……もう一人のプレイヤー、くろめ。

 

「や、やられた…まさかくろめ、ずっとこのチャンスを狙って…!?」

「ふっ…バトルロイヤルなら、わざわざ目立つ必要もないだろう?」

「で、だんまり決め込んで存在感無くしてたって訳か…それ、ゲームとして楽しいのか…?」

「勿論。策略を立て、その通りに事を進める…ふふ、オレからすればこの戦い方は、馬鹿正直に突っ込むよりよっぽど達成感があるものさ」

「お、おおぅ…前作の黒幕の一人がそれ言うと、なんか色々と響きが違うね…」

 

 薄く笑いながら、くろめはネプギア、うずめそれぞれのキャラに牽制をかける。うずめは下がるくろめのキャラを追い掛けて、わたしは残機が一つ減った状態で戻ったキャラを操作して、ネプギアとの一対一を繰り広げる。

 思いっ切りしてやられたわたしだけど、別に嫌な気持ちはない。だってルール違反は何もしてないし、くろめがした事は立派な作戦の一つだもんね。

 

「へっ、追い詰めたぜ《オレ》。こうなっちまえば、もう隠れる事も出来ねぇな」

「だから自分が有利だとでも?…考えが浅いね、《俺》。もしも追い詰めたんじゃなくて、オレに誘われたんだとしたら、どうする?」

「どうもこうもねぇさ。どっちにしろ、ぶっ飛ばしゃ良いだけなんだから、よッ!」

「……仲良いなぁ、二人は」

「あ、あれは仲良いって言えるのかな…。確かに、いがみ合ってる訳じゃないと思うけど…」

 

 ネプギアと一進一退の攻防戦をしながらも、わたしはちらりと二人を…うずめとくろめを見る。二人は今、お互いを挑発し合うような事を言っていて…でもネプギアの言う通り、いがみ合ってる感じはしない。…ま、ぶっちゃけ今言った「仲良い」は冗談半分だし、二人の関係は色んな意味でかなり複雑なんだけどさ。

 

「あっ、てめっ、こんにゃろが…ッ!」

「なっ、おまっ、逃がすものか…ッ!」

「…ほら、ある意味仲良しでしょ?」

「仲良しっていうか…まあ、元を辿れば同じな訳だしな……」

 

 物凄く…本当に物凄く闘争心剥き出しでぶつかり合う二人を見て、わたしは肩を竦める。今度は同感な様子のネプギアは、あははと苦笑を浮かべていて…そんな二人の攻防戦には、ウィードくんも頬を掻いていた。

 

「やったー!わたしの勝利ー!アイアムチャンピオン!」

「チャンピオンって…でもま、おめっとさん。前…ってか、昔か。…も、思ったけど、やっぱ女神同士の対決ってなると、ゲームでもレベルが違うな」

「それって、くろめさんが守護女神だった頃の話ですか?」

「そうそう、ネプテューヌ達みたいにくろめ…ってか、うずめ達も仲良くでさ。…今の二人みたいに、変に競ってバチバチしてる時もあったが……」

『ぐぬぬぬ……』

 

 懐かしそうに頬を緩めるウィードくん。そのウィードくんが見やるうずめとくろめは、最終的にもつれ合いからの相討ちになった事で、消化不良らしく…互いにメンチを切り合ってた。…うずめはまぁ、分かるけど…くろめも同じ態度を取ってる辺り、やっぱり表面の部分は違っても本質は同じって事かなぁ…。

 

 

 

 

「はふぅ、気持ち良かったなぁ…」

 

 お風呂に入って、パジャマに着替えて、ほかほか状態で廊下を歩く。…あ、ほかほか状態だからって、別にダメージが100%溜まってたりとかはしないよ?四人対戦の格ゲーは、もう終わってるからね?

 

「〜〜♪」

 

 わたしが今向かっているのは、リビング的なルームから出られるバルコニー。持っているのは読みかけの漫画で、この後ジュースも用意する予定。お風呂上がりで火照った身体を、涼しいバルコニーと冷えたジュースでクールダウンさせつつ、のんびりと漫画を読む…これも一つの贅沢だよね!ジュースと漫画はともかく、バルコニーに関しては特に!

 

「…って、あれ?」

 

 コップに入れたジュースを持って、バルコニーに出ようとしたところで、わたしはそこに人影が、先客がいた事に気付く。

 それは、くろめだった。後ろで二つに結んだ髪をなびかせながら、景色を見ている…そんなくろめの後ろ姿がそこにはあった。

 

「…夕涼み?」

「うん?あぁ、ねぷっちか。…まあ、そんなところだよ」

 

 窓を開けて声を掛ければ、ぴくっと肩を震わせた後にくろめは振り向く。実は一度戻ってくろめの分も汲んでいたわたしがコップを渡せば、くろめはありがとうと言ってコップを受け取る。

 

「ねぷっちは…お風呂上がりに涼しさを求めて来た、ってところかな?」

「大正解!…って言っても、この格好ならそりゃ分かるよねぇ。…あ、そうだ。さっきの事でちょっと思ったんだけど、くろめ…というかうずめって、元々は策略家っていうか、クレバーに戦うタイプなの?」

「はは、どうだろうね。ただまぁ、オレからすれば、《俺》の戦い方は感覚に頼り過ぎている。例えば渦攻吸障壁…盾からシェアエナジーを放出して防御するあの技なんて、《俺》は使い方を間違えてるせいで本来の能力を発揮出来ていないんだからね」

 

 全く、困ったものだ…って言うみたいに首を振り、肩を竦めるくろめ。その声や表情からは、呆れてる感じが物凄く出ていて…けど、侮蔑したり、見下してたりするような雰囲気はない。

 そう感じられたから、わたしはほっとした。ゲームの時もそうだったけど、くろめは相変わらずうずめといがみ合う事はあっても、前みたいに本気の憎しみを向けてたりするような事は、もうないんだって分かったから。

 

「全く。女神本来の姿もその戦闘能力も有しているというのに、酷い体たらくとしか言いようがないよ。あれこそ宝の持ち腐れというものさ」

「容赦ないね…あれ、でも一回だけ、くろめも女神化出来たんだよね?ウィードくんから聞いたよ?」

「あぁ…あれは正直、あのタイミングだから辛うじて一瞬出来た、成り立ったようなものさ。勿論、一瞬でも出来たんだから、今も可能性はゼロじゃないんだろうけど…まだ、自在に使えるようなレベルじゃないよ」

 

 まあ尤も、本来の事を思えば「使う」というのも変だけどね。くろめはそう言って、また視線を夜景に戻した。

 漫画を…と思ったけど、なんかそんな気分にもならなくて、わたしは眺めるくろめの隣に。数十秒間位、静かな時間が流れて…それからくろめが、ぽつりと呟くように言う。

 

「…ここからの眺めは良いね。うん…本当に、良い景色だ」

「…でしょ?ここはわたしのお気に入りなんだ」

「奇遇だね。オレもだよ、ねぷっち」

 

 小さく笑って、言葉を返す。勿論これは、このバルコニーがって話じゃない。バルコニーも良いところだけど…わたしにとっては、全部がお気に入り。人も、街も、風景も…このプラネテューヌの、わたしの国の、全てが。

 

「…前から…って程でもないけど、一度ねぷっちとは話してみたかったんだ。同じプラネテューヌの女神として、ね」

「そうだったんだ、なら丁度良い機会だね。…と、いうか…同じプラネテューヌの女神というより、先輩後輩としてって感じ?」

「先輩、か。……身勝手な事ばっかりした挙句、プラネテューヌどころか別次元も巻き込んで信次元全体を滅亡させようとするとか、くろめはプラネテューヌ史上最低の先輩だよね……」

「お、おおぅ…えーっと…だ、大丈夫だよくろめ!わたしもいざって時以外は基本妹におんぶに抱っこな、姉史上でもかなりの駄目駄目女神だから!多分!」

「……ねぷっち…自分でそれ言ってて辛くない…?」

「…正直、結構辛い……」

 

 何の気なしに言った言葉でくろめが自虐モードになっちゃって、わたしは「うっそぉ…」と思いながら勢いでフォロー。けど、勢いで言っちゃったものだから、内容なんてよく考えてなくて…フォローする筈が、ただの自爆になってしまった。…とほほ……。

 

「こ、こほん!それじゃあ何から話そっか。あ、でもわたし記憶喪失だから、昔の事は話せないよ?」

「あ、あぁ…構わないよ。話したいとは思ってたけど、話し込もうとまでは思っていないからね」

 

 気を取り直して、わたしはくろめと景色をのんびり眺めながら話す。くろめの言った通り、女神としての信念とか、国の展望とか、そういう小難しい話じゃなくて、もっと緩く…でも女神として、今の女神と過去の女神として、言葉を交わした。

 

「ふふ、本当にねぷっちは面白いね。オレからすれば、オレの時代から考えれば、無茶苦茶な部分もあるというのに、プラネテューヌは今もこうして栄えている…大したものだよ」

「くろめこそ、やっぱりしっかりしてるよね。真の姿になる前に倒せたとはいえ、わたし達の時よりずっと少ない人数で解決しちゃった辺りも凄いしさ」

 

 時間なんて気にしてなかったから、どの位経ったかは分からないけど、結構話したような気がする。二人だし、賑やかな会話にはならなかったけど…それでも、楽しく話せたってわたしは思う。

 

「…ありがとう、ねぷっち。話した直後だけど…その内また、付き合ってくれると嬉しいよ。代わりにオレも、何かあれば付き合うから、さ」

「もっちろん!それに、わたしだって話してて楽しかったんだから、代わりの事なんて要らない……」

「……?」

「…と、思ったけど…あのさ、くろめ。一つだけ、訊いてもいい…かな?」

 

 わたしからの問い掛けに、くろめは小首を傾げる。でもわたしの表情から感じるものがあったみたいで、構わないよと小さく頷く。

 

「じゃあさ、質問なんだけど…くろめはわたしの夢、って聞いたら、何か思い付く事ってある?」

「ねぷっちの夢?…それは、望みや叶えたい事って意味かい?それとも、寝ている時に見ている方かい?」

「そう訊くって事は…そっか、そうなんだ…」

 

 もし思い付く事があるなら、これで伝わる筈。そう思って訊いたわたしだけど、くろめはぴんときてない様子。

 でも、それならそれで仕方ない。わたしが今思い浮かべてる事を…思い出している事を、くろめは知らないみたいだから。

 

「…何か、悩みかい?それとも……」

「…悩みじゃないよ。ただ、ちょっと…うーん、なんて言えば良いのかな……」

 

 悩みって訳じゃない。けど、それはわたしの中で複雑っていうか…本当に、色んな思いを抱かされる事だから、上手く言葉にする事も出来ない。こういう時、上手く誤魔化したり出来れば一番なんだけど、気付いた時点で時既にお寿司…じゃなくて、遅し。くろめは完全に、わたしの歯切れの悪さからこの事を気にしてしまっている。…だったら……うん。

 

「…くろめ。多分これは、聞けて良かった…って思えるものじゃないよ。そんな話だけど……」

「聞くよ。ねぷっちがそんな言い方をするなんて、相当な事だろうし…何となく、分かるさ。それは、オレにも関係がある事なんだろう?」

「…うん。わたしね…夢を、見たんだ。わたし達を取り戻しに来た、ネプギア達に負けた後に……わたしがわたしに、戻る時に」

 

 こくり、と一つ頷いて、わたしは言う。くろめは目を見開いて…けど、わたしを見つめる。ちゃんと聞くって、わたしへ向けた視線で返す。

 そうして、それを受け取ったわたしは話す。くろめに伝える。女神としての話をくろめとしたからこそ、思い出した事を……わたしにとって、今も大きな意味を持つ夢の事を。

 

 

 

 

 晴れた空、暖かい気温、賑わいのある街並み。そしてそこを闊歩するのは……このわたし!

 

「〜〜♪」

 

 どこを見ても平和な街の中を、鼻歌なんて歌っちゃいながら歩く。ほんと、人の争いは勿論野生動物の喧嘩もない、完全な平和で結構結構!後、鼻歌を歌うって、なんか変な感じあるよね。『歌』が被ってるとかそういう意味じゃなくて、鼻歌は『歌う』って表現で合ってるのかな?的な意味でさ。

 

「ほら、ねぷちゃん。揚げたてのコロッケ持ってきな〜」

「わーい、おばちゃんありがとー!」

「うちの新作のプリンも持ってきな!後で感想聞かせてくれよ?」

「おにーさんもありがとね!」

 

 大通りからちょっと離れると、周りを歩く人も減る。そうなると、自然とわたしも目立ち易くなる訳で…早速コロッケ屋のおばちゃんが、その後はお菓子屋のおにーさんがそれぞれ笑顔でわたしに声を掛けてきた。っていうか、わたしにコロッケとプリンをくれた。やったね!組み合わせ的に考えると、コロッケとプリンって微妙だけど、そこは別のタイミングで食べれば良いだけだしね!

 

「ネプテューヌ様!見て見て!テストで百点とったの!」

「百点!?凄いね!」

「ねぷ姉ちゃん!オレの話も聞いてくれよ!やっと、野球部でレギュラー取れたんだ!大会見に来てくれよな!」

「いつも遅くまで河原で練習してたんもんね。大会も見に行くから、頑張るんだよ!」

 

 素敵な貰い物で嬉しくなったわたしの所に駆け寄って来たのは、女の子と男の子。女の子はじゃーん!…って言うように百点のテストを見せてくれて、男の子も自慢げに自分の事を話してくれる。

 勿論わたしは、二人の言葉に笑顔で返す。二人が頑張ってた事を、わたしは知ってるんだからね。その努力が実ったんだって知ったら、そりゃ嬉しくなるってものだよ!

 

「よっ、女神様!お仕事の方は順調ですかい?」

「もっちろん!今も国の見回りの最中なのさー!」

「ふふっ。パープルハート様がいれば、この国は安泰よね」

「いえーす!わたしの目が黒い内は、悪をのさばらせる事なんてしないよ!…まぁ、わたしの目は黒じゃなくて紫だけどね!」

 

 更にその後も街の中を練り歩いて、色んな人と話す。いやぁ、人気者は次々と声を掛けられるから辛いね〜!…なーんて、辛い事なんて全然ないよ?皆の元気な顔や声を見聞き出来るのは嬉しいし、国民の皆と話すのは楽しいからね。

 で、気の向くままに街を回った後は、プラネタワーに戻る。正面の入り口から中に入れば、すぐに職員の皆がわたしに気付く。

 

「お帰りなさいませ、ネプテューヌ様。見回りお疲れ様です」

「女神様、頼まれていた件はこのように済ませておきました。イストワール様にご確認も受けております」

「本日もパープルハートはお美しいですね!えぇ、見ていて惚れ惚れしますとも!」

 

 女神様のお帰りだ!…とばかりに出迎えてくれる職員の皆。そんな皆を労ったり、ふふんと胸を張ったりしつつ、わたしはプラネタワーの上層階へ。敬われたり、崇められたりするのは別に気持ち良い事じゃない…って言ったら勿論嘘になるし、っていうか敬われたら普通に嬉しい訳だけど、そういうのを抜きにしても、皆に「受け入れられてる」っていうのは本当に心地良いし、安心する。…ま、わたしは女神で、ここは教会でもある場所なんだから、受け入れられて当然だけどね!魅力たっぷりなねぷ子さんでもある訳だし!

 と、いう訳でわたしが上がったのは、プラネタワーの居住エリア。エレベーターから出たところで鉢合わせしたのは、二人の友達。

 

「あ、ねぷねぷお帰りなさいです。今日もお散歩してきたですか?」

「そう!…あ、じゃない。もーこんぱ、わたしがしてきたのはお散歩じゃなくて、パトロール。立派なお仕事だよ!」

「お仕事ねぇ。じゃ、その手に持ってるお菓子屋の袋何かしら?」

「これ?ふふーん、これは貰ったものだよ!やっぱり人徳のある女神は違うよね!」

 

 またまたわたしが胸を張れば、こんぱは「流石ねぷねぷですっ」と褒めてくれて、あいちゃんは苦笑い…をしてたけど、その後は「ま、ねぷ子らしいと言えばねぷ子らしいか」と言って笑ってくれる。同じ笑みでも、苦笑いとそうじゃない笑顔は違うし、こんぱのほんわかした笑顔と、あいちゃんのちょっぴり勝気な感じの笑顔も違う。…あ、因みにコロッケの方はもう食べちゃったよ?冷めてしんなりしちゃったら、くれたおばちゃんにも悪いしね。

 

「二人はどうしたの?あ、もしかしてわたしに会いに来たとか?」

「ま、そんなところよ。って言っても、仕事として…だけどね」

「わたしもです。けど、帰る前にねぷねぷに会えて良かったです〜」

「えー、遊びに来たんじゃないのー?っていうかそこは、嘘でもわたしに会いたくて来たって言うところじゃなーい?」

「あら、嘘吐いてほしかったの?」

「わたし、あんまりねぷねぷには嘘吐きたくないです…」

「うっ、そう言われると辛い…えぇい、ならせめて遊ぼうよ!二人のお仕事が済んだ後でも良いから、ね?」

 

 お願いっ、と両手を合わせて頼み込むわたし。それプラス、頭を下げつつもちらっ、ちらっと二人を見上げて、せがむわたし。その甲斐あってか、顔を見合わせた二人は肩を竦めて、またちょっと笑って…それから、言ってくれた。仕方ないわね、って。ですね、って。

 

「やったー!よーし、それじゃあ二人が来るまでの時間を有効に活用する為に……」

『為に…?』

「途中までしか見てない録画アニメを、きっちり消化しておくねっ!」

 

 ぐっ、と二人にサムズアップをしてみせて、わたしは軽快に走っていく。二人が戻ってきたら目一杯遊びたいもん、だったら万全の状態にしておかなくっちゃね!

 

「お姉ちゃんお帰……わわっ!?」

「おおっと、ごめんねネプギアー!…って、あれ?いーすん?いーすんがわたし達の部屋にいるなんて珍しいね」

「あぁ、やっと帰ってきましたか。中々帰ってこないから、今電話をしようかと思っていたところですよ?(。-∀-)」

 

 廊下を駆け抜けて扉を開け、ネプギアとの共用部屋に入ったわたしは、ぶつかりかけてネプギアを華麗に避けた後にいーすんを発見。

 

「え、いーすんまでわたしに用事?やー、参ったなー!ほんとわたしってば人気者だなー!」

「えぇ、先日の国道整備に関する件で色々と話が……」

「そうだネプギアはっ!?ネプギアはわたしに用事があったりしないかなっ!?」

「ふぇっ!?…あ、美味しそうな期間限定のチョコが売ってたから、一緒に食べようと思って買ってきたけど…い、いーすんさんの話はいいの…?」

「大丈夫!何せいーすんはわたしが信頼する、超優秀な教祖だからねっ!」

 

 本日四度目の胸張り発動!わたしはいーすんへの信頼を示しつつも、勢いで流れを掌握する!

 

「…………(´-ω-`)」

「…………」

「…………( *`ω´)」

「さ、流石いーすん!何も言わずとも、地の文すら使わずとも、活字媒体でありながら感情表現をするなんて凄い以外の何物でもないよっ!これはもう顔文字の魔術師・いーすんだねっ!」

 

……しょ、掌握するぅ!掌握するったら掌握するんだからねっ!

 

「はぁ…わたしは何も、厄介な案件があると言っている訳ではないんですよ?確認を頂きたい部分が色々とあるので、話を…と思っていただけです( ̄◇ ̄;)」

「大変な仕事だったりしない?」

「しませんよ、真面目に話に付き合ってもらわなくては困りますけどね( ̄▽ ̄)」

「んもう、そういう事なら心配しないでよ!やる時はやるどころかやりまくりなのがこのわたしなんだからねっ!」

「また調子の良い事を…。…そんな事、言われなくても分かっていますよ( ´ ▽ ` )」

「ですよね。お姉ちゃんは、わたしの憧れの…自慢のお姉ちゃんですからっ」

 

 さっきのあいちゃんみたいに表情を緩めて笑ってくれるいーすんと、満面の笑みでそれに続くネプギア。パトロール帰りに仕事が一個出来ちゃったけど…こんな事言われちゃったら、頑張らない訳にはいかないよね。なんたってわたしは、ネプギアに憧れられる、女神様なんだからっ!

 

「うん、その件もOKだよ!なんたっていーすんを始め、優秀な皆が熟考を重ねて出した結論なんだからね!ならそれに太鼓判を押すのがわたしのお仕事なのさ!」

「あれ、太鼓判ってそういう意味なんだっけ?…と思ったけど、いーすんさん達が信じられる事をお姉ちゃんが保証してる、って事なら、間違ってはいないのかも…?」

「そーそー、わたしは皆を信じてるからね。…ネプギア、女神のお仕事は責任を持つ事なんだよ。皆のする事、こうだってした事に、責任を背負えるのが良い女神様なんだからね」

「お、お姉ちゃん…格好良い、今のお姉ちゃん凄く格好良いよ…!」

「こーら、体の良い言葉でネプギアからの尊敬を得ようとするんじゃないっての」

「言っている事自体は正しいですし、それを実現出来る女神というのは実際立派なものですけど…ネプテューヌさんが言うと、どうにも素直に受け止められませんね…

( ̄▽ ̄;)」

「けど、わたしはそんなねぷねぷが大好きですっ」

 

 ぽふり、とネプギアの肩に手を置いて、静かな声音でわたしが言えば、返ってくるのはキラキラと輝くネプギアの瞳。それにわたしがゆっくりと頷いていると、呆れ気味の声が聞こえてきて…でもその後に、だけど好きだっていうこんぱの声も聞こえてきた。わたしが見た時には、腰に片手を当てたあいちゃんも、肩を竦めるいーすんも、なんだかんだ楽しそうっていうか、こんぱに同意するような顔をしていて、ネプギアなんて「わたしもですっ!」って力強く首肯していて……幸せだなだって、わたしは思う。

 

(うん、本当に幸せ。楽しいし、嬉しいし…何より皆、笑顔だもん)

 

 家族も、友達も、毎日一緒に頑張ってる相手も、皆笑顔。ここにいる四人だけじゃなくて、街にいる皆も、プラネタワーで働いてる皆も、今日わたしが会ってきた人皆が幸せそうな顔をしている。それが楽しくて、嬉しくて、夢みたいだって思える程に幸せで、だから……

 

 

 

 

 

 

「──これも、くろめの仕業?」

 

 わたしは、皆から背を向ける。そしてわたしは、振り返る。…くろめへと、向き直る為に。

 

「よく分かったね、ねぷっち。…いつから、気付いていたんだい?」

「いつからだろうね。どこからか、違和感があって…まあでも、確信したのは今さっきだよ」

 

 最初から、って言えたら格好良いんだろうけど、残念ながらそこまでわたしはクレバーじゃない。それに…簡単に気付ける程、雑な作りの世界でもなかった。

 今はもう、確信がある。わたしが見ていたのは、感じていたのは、全部嘘。…と、いうのも少し違和感があるけど、本物じゃない。それは、分かる。分かってる。

 

「驚きだよ。ねぷっちの『夢』は、オレからすれば違和感のない…自然なものだったと思うんだけどね。まあ尤も、オレは普段のねぷっちを詳しく知らない訳だけど」

「って事は、これは夢なんだね。…うん、思い出したよ。わたしは…ネプギア達に、負けたんだったね」

 

 言われた事で思い出す。わたしがこれまで、何をしていたのかを。思い出せた事で、何となく『何がどうしてこうなったのか』も分かってくる。

 

「…本当に、驚きだよ。何の変哲もない、ただの…ただ温かいだけの時間が、ねぷっちにとっての幸せとはね」

「ふふん、女神らしいでしょ?」

「あぁ、女神らしいね。…だからこそ、不可解だよ。現実離れした夢でないなら、何故気付く。まさか、ただの日常すら存在しない程、普段のねぷっちは荒んだ日々を送っている…なんて事はないだろう?」

「まさか。わたしが見てた夢は、なんて事ない普通の日常だよ。あんな感じの日々は、数え切れない位…当たり前みたいに、経験してるもん。……ある一点を、除いてね」

「ある一点?」

 

 夢の中で夢と気付く…明晰夢、って言うんだっけ?…事自体の難易度はまあ置いておくとして…その一点がなければ、わたしは気付かなかったかもしれない。そう思う程に、わたしが見ていた夢は自然で、現実味があった。でも一つ、ある一点だけは大きく違っていて…それでわたしは気付いた。気付かされた。これは違うって、わたしにとっての『本当』じゃないって。

 その一点が気になるように、訊き返してくるくろめ。わたしはそれに、小さく頷いて……言う。

 

「…皆がね、笑顔だったんだよ。皆が、きっと心からなんだろうなって笑顔をしていたから、わたしは気付けた」

「笑顔だったから気付けた?それは、どういう……」

「──違うんだよ。そんな事は、あり得ないんだよ。だって……現実なら、誰かは最後まで、心からは笑えてないからね。…わたしが仕事を、面倒な事を避けてばっかりいる女神だから」

 

 こんな事を、言う日が来るなんて思わなかった。思いもしなかった。…思える訳が、なかった。

 いつの間にか、部屋も皆も消えていた。今は何もない空間で…ここにいるのは、わたしとくろめだけ。

 

「誰もが笑顔故に、現実はそうじゃないが故に、その差異から気付く事が出来た、か…。大部分は自然だったからこそ、数少ない違いがむしろはっきりとした、と言ったところかな?」

「そんな、目敏く気付いたなんてものじゃないよ。…むしろ、わたしは気付かなかったんだからね。この夢を、皆が本当に笑っている光景を見るまで、現実はそうじゃなかったって事に」

 

 情けない話だけど、本当にわたしは気付いてなかった。…わたしが仕事をサボろうとしたり、その結果誰かに負担がかかったりしたら、その人は心から笑える訳ないだなんて、当たり前の事なのに。たとえ、ちゃんとしてない部分を含めてわたしを好きだって言ってくれる人がいても、それで自分が大変になったら、どこか困った笑顔になるのは当然なのに、そんな事すらわたしはこれまで気付いていなかった。

 本当に、情けない。情けないし…だけど漸く、わたしは気付いた。やっと、気付けた。

 

「見て見ぬ振りを、しようとは思わなかったのかい?…気付かないフリを、しても良かったじゃないか。少なくとも、ねぷっちにとってはそっちの方が好都合……」

「そんな事ないよ。確かに、気付かない方が…気付いてないって思えたら、そっちの方が気は楽だけど…そんなのは、わたしじゃないもん。駄目だって分かってるのに、皆が幸せじゃないって気付いてるのに、そこから目を逸らすなんて……それは、パープルハートの在り方じゃないわ」

 

 ゆっくりと首を振り、否定する。そしてわたしは、くろめを見据えて……女神化。パープルハートとしての姿で…わたし本来の、女神の姿で、今一度くろめと正対する。

 

「わたしはノワールみたいに常日頃から真面目に出来る訳でもなければ、ベールみたいにきっちり切り替えてオンもオフも手を抜かないなんて事も出来ないし、ブランみたいに思慮深く先の事を考えて行動出来る女神でもない。正直、ネプギアに憧れられる程の女神なのか自分でも不安になるような、そんな女神よ。…でもね、そんなわたしでも、皆を幸せにしたい…皆が笑顔でいられる国を、未来を作りたい、守りたいって思いだけは、誰にも負けないって言い切れるわ。同じ守護女神の皆にも、歴代の女神にも、別次元の女神にも…誰が相手でも、ね」

 

 自覚はしてる。わたしには駄目な部分が沢山あるって。わたしはわたしを間違ってるとは思わないけど…全肯定する程、高慢でもない。

 それでも、そんなわたしでも、この思いだけは誇れる。誰にも負けないって、断言出来る。…それが、わたしの『夢』だから。皆が笑顔で、幸せな世界…その為なら、幾らでも頑張れるから。

 

「…ふむ、残念だよ。折角友達になったんだから、良い夢を見せてあげようと思ったけど…どうやら、余計な事をしてしまったようだね」

「そんな事ないわ、くろめ。むしろ、わたしは感謝してるもの」

「…感謝?」

「えぇ、だって…この夢のおかげで、わたしは自分自身を見つめ直せたもの。自分が曇らせていた笑顔があるって…考えてみれば当たり前なのに、考えてなかったから分からなかった事を……教えて、もらえたんだもの」

 

 多分…いや間違いなく、くろめにそんな意図があった訳じゃない事は分かってる。わたしを惑わす為か、引き留める為か…それは分からないけど、くろめに意図があるんだとすれば、それはきっと自分の目的の為。

 だとしても、この夢はわたしにとって大きな意味のあるものだった。大切な事を、教えてもらった。だから……

 

「…だから、ありがとねくろめ。わたしに、気付かせてくれて」

「……ふ、ふふ…ははははははっ!ありがとう、ありがとうか!流石だ、流石だよねぷっち。これには完全に一本取られた。…本当に、君は…『ねぷっち』は、オレの想像を超えてくるね」

 

 わたしは微笑み、伝える。くろめのへの感謝を、気付かせてくれたお礼を。それを聞いたくろめは目を見開き、笑い…それから、口角を上げた。感心したような、愉快そうな…そんな、表情を浮かべながら。

 今はわたしとくろめだけになった空間が、薄れ始める。この空間が消えた時…きっとわたしは、目覚める。

 

「…どうやら、終わりみたいね」

「君が君を取り戻したんだ、であればもう止める術はないさ。ねぷっち自身の意思で、またオレのところに来てくれるのなら、オレは歓迎するけどね」

「残念だけど、それは出来ない相談ね。…妹にあれだけのものを見せられたんだもの。それに応えないようじゃ、姉失格だわ」

 

 やれやれ、と言うような声音のくろめへ、わたしは返す。正直、くろめの事は嫌いじゃない。くろめの影響下に置かれていた事で、理解出来た部分もある。それでも、わたしの戻るべき場所は決まっている。戻る場所も…これから、進む先も。

 

「ならばせいぜい、後悔するといいさ。オレとの道を違える、その選択を」

「後悔なんてしないわよ。信じる道を、全身全霊、全速力で走る…それが、わたしだもの」

 

 夢の世界が消える。意識が薄れて、そして目覚める。最後に聞こえたのは、皮肉を効かせたくろめの声で…わたしはそれに、笑ってみせた。選んだ道が正解だなんて確信はないけど…皆と歩む、自分の思いを貫く道なら、何も不安なんてないのだから。

 

 

 

 

 わたしは語った。あの時見た、夢の顛末を。夢も、くろめとのやり取りも、わたしが気付けた事も…全部。

 

「…そんな、事が……」

 

 語り終えた時…ううん、わたしが語ってる間、ずっとくろめは茫然としていた。その顔を見るだけで、分かる。やっぱりくろめは、この事を知らないんだって。

 

「…あ、先に言っておくけど、これについて謝るのは無しだよ?そりゃ勿論、良い夢を見させてもらったとは思ってないけど…見られて良かった、そう思える夢ではあったんだから」

「あ、ああ…ねぷっちがそう言うなら、謝りはしないよ…」

(って事は、言わなかったら謝ってたかもなんだ…)

 

 相変わらず後ろ向きだなぁ、と思うわたし。…あ、でも何かと自分の責任だって考えちゃうのはうずめもそうだし、その辺りは『うずめ』の性質なのかも?んまぁ、夢に関してはくろめもがっつり関わってる訳だから、責任感じるのも分かるけどさ。

 

「にしても、不思議な話だよね。わたしは精神世界的な場所でくろめと確かに話したのに、くろめの方は心当たりないなんて。あれも含めて、夢だったって事かなぁ…」

「それは…推測だけど、恐らくそうなんだろうね。…始めに言っておくと、オレはそんな仕掛けを…ねぷっちに幸せな夢を見させる細工なんてしていないんだから」

「え、そうなの?」

 

 てっきりわたしが正気(いや別に、あの時は正気を失ってた訳じゃないけどね)にならない為のものだと思ってたから、そうじゃないと言われて驚愕。じゃあ何、完全に偶々見ただけの夢?…とも思ったけど、そういう事でもないらしい。

 

「確証はない。けど、ねぷっち達をオレの影響下から引き戻す為にシェアエナジーを…それぞれの本質であり根源である力を用いた事、オレは最初、ねぷっち達の精神につけ込む隙間を作る手段として、心を軋ませるような夢を見せた事、そして何より、オレの能力は妄想…強く思い、願う事がトリガーになっている事から考えるに、もたらされたシェアエナジーとオレの力が作用し合って、ねぷっちの願いが…理想とも言える夢を見せるに至った、という事だとオレは思う。オレとの対話は…オレの力が、残滓の様に夢へと影響を及ぼした、といった辺りだろうさ。……けれどその結果、ねぷっちは幸せになったのではなく、自らの欠点を見せられる事になったのなら…相変わらず歪んでいるね、オレの力は…」

 

 考えながら話してくれたくろめの言葉は、そうなのかも…と思わせるものだった。くろめの話し方もあって、説得力があった。……まぁ、ぶっちゃけ難しくて、自分でも理解し切れてるかどうか微妙だけどねっ!

 

「…そんな事ないよ、くろめ。さっきまでの話の中でも言ったけど、わたしはあの夢のおかげで、大事な事に気付けたんだから」

「そう言ってくれると、救われるよ。…皆を笑顔に、か…オレも同じような理想を持っていた筈なのに、どうして間違えてしまったんだろうね…」

「それは…ごめんね、ちゃんとした事は答えられそうにないや。…でも、わたしだって、そう思いつつも実際にはサボったりだらけたりしてきたんだもん。女神でも、心から信じる理想があっても、中々上手くいかない…そういうものなんじゃない、かな」

 

 まあ、上手くいかない理由で比べると、ちょっとわたしのはしょぼ過ぎるけどね!あっはっはー!…なーんて言って、空気の好転を図るわたし。さっきのもそうだけど、自虐に走りがちなくろめに対して、同じ自虐ネタで何とかしようっていうのもちょっとどうかと思うけど…今度はくすりも笑ってくれた。

 

「…さてと。じゃ、そろそろ戻ろうよ。っていうかわたしは、いい加減戻らないと湯冷めしそうだから先に戻るね」

「いや、オレも戻るとするよ。…あぁ、でもその前に……」

「……?」

「…後悔、してないかい?」

 

 表情を緩めてはくれたけど、それでもちょっと瞳に複雑そうな…色んな思いがあるような色を、くろめは浮かべていた。今は、これ以上は、この話を続けない方が良い…そう感じたわたしは戻る事を提案して、くろめもそれに乗ってくれて……でも戻る直前、くろめはわたしを引き留める。引き留め、訊く。

 それは、夢の中のくろめが、最後にわたしに言った言葉。その問いを口にしたくろめは、冗談半分…でも残り半分は本気って感じで……だからわたしも、ちゃんとくろめの方を向いて、言う。

 

「もっちろん!皆守れて、平和も取り戻せて、今はくろめも一緒にいる…そんな最高のハッピーエンドになったんだもん。後悔なんて、ある訳ないよっ!」

 

 心からの、わたしの返答。それを受け取ったくろめは、照れ臭そうに…けど嬉しそうに笑ってくれて…わたしもそれに、笑顔を返した。

 わたしは知った。わたしの駄目なところを、皆の笑顔を望むなら、本当に必要な事を。でも、知っただけじゃ駄目。思ってるだけじゃ、意味はない。ずっとだらけてきたわたしだから、すぐに180度変える事は出来ないけど…それでもちょっとずつ、変えていきたい。その為に、わたしなりに頑張ってる。大変だけど、すぐ面倒にも感じちゃうけど…だけど、止めない。止めたくはない。だって……その先にあるのが、本当にわたしの望む、あの夢の中で見たような光景だって…信じてるから。

 

 

 

 

 

 

「……あ、ところでくろめ。くろめの予想通りなら、ノワール達もそれぞれ夢を見てたって事になるよね?」

「うん?まあ、条件は同じなんだから、その可能性は高いね」

「ならさ、皆はどんな夢見てたと思う?やっぱ崖っぷちから再起する為にエクストリームなスポーツをしたり、シャインなポストを目指したりする感じかな?」

「そ、それはないんじゃないかな…多分……」




今回のパロディ解説

・ほかほか状態
スマブラシリーズに存在するシステムの一つの事。四人対戦の格ゲーといえば、やはりスマブラシリーズですよね。四人対戦出来る事自体、格ゲーでは珍しいですし。

・「〜〜エクストリームなスポーツをしたり〜〜」
Extreme Hearts及び、同名の作中大会の事。あの良い意味でぶっ飛んでる感じなところと、全体的に明るく前向きな作風は、ちょっとネプテューヌシリーズに近いですね。

・「〜〜シャインなポスト〜〜」
シャインポスト及び、作品における代名詞的なフレーズのパロディ。上記のパロディもそうですが、アイドル要素的な意味では、ノワールならこんな夢を見てるかもですね。
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