超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
その日は、皆でクエストをする事になっていた。皆っていうのは、女神候補生の皆で…前と違って、今のわたし達はわざわざ集まってクエストをする必要はない。ギルドで一般公開される範囲のクエストなら、最上級のものでもわたし一人でまず何とかなる。…探し物とか、催しの助っ人みたいな、戦闘以外のクエストってなると、また話は別だけど…。
とにかく、単にクエストをするだけだったら四人でなくても十分だし、クエストを通じて人助けを…って事なら、それぞれでクエストを受けた方が効率的。
でも、じゃあ皆で受ける事に意味がないかっていえば…それは違う。皆で受ける事に、四人で力を合わせる事に、大きな意味があるって…わたしは、思ってる。
「って訳で、今日は速さを重視してみようと思ってるんだけど、どうかな?」
「良いんじゃない?功を焦るのは良くないけど、そうでないなら何事も迅速に解決するに越した事はないんだし」
「せんてひっしょー、しっぷらいじんね!」
「しっぷ…?(ぺたぺた)」
プラネテューヌに来てくれた皆と一緒に、今日のクエストについて話しながら歩く。自信満々に四字熟語を言っているラムちゃんだけど、前半も後半も間違っていて、わたしは苦笑しつつ「湿布じゃなくて疾風だね、疾風迅雷だよ」…と訂正をする。
こうやってわたし達は、定期的に集まってクエストをしてる。それは普段の訓練とは違う、実戦での経験を得られるからで、今の自分達の…皆の力を確認し合うって意味もある。…後はまぁ、クエストを理由に終わった後は皆で遊んだり、ご飯を食べたりもしてるんだけど…し、仕事をサボってる訳じゃないですよ…?ちゃんと、やるべき事はしてますからね…?
「全く、ラムは相変わらずね…。…けど、ロムも含めちょこちょこ諺とか四字熟語とか使うのは、やっぱりブランさんの影響かしら…」
「ふふん、おねえちゃんは色んなことを教えてくれるのよ!」
「ミナちゃんも、フィナンシェちゃんも、たくさん教えてくれるよ(にこにこ)」
「そっかそっか、ブランさん達は皆優しくて、物知りって感じでもあるもんね」
嬉しそうに笑う二人を見て、わたしも自然に笑顔になる。ユニちゃんは肩を竦めてたけど…表情には、柔らかさがあった。
やっぱり、こうやって皆で集まるのはいい。ちょくちょく会ってるから、新鮮さとか喜びを噛み締める…みたいな事はないけど、何気ないっていうか、自然な楽しさや嬉しさを皆といると感じられる。…って、まだクエストを受けてすらいないんだから、しみじみするのは早過ぎるよね。依頼を適当に選ぶ訳にもいかないし、もうギルドも見えてきてるんだから、そろそろ少しは気を引き締めて……
「わ……っ!?」
「きゃっ…!」
その時、大通りと脇道の交差する場所を通り過ぎようとした瞬間、不意に現れた人影。突然の事にわたしは驚いて、でも何とか身体を捻って、ギリギリでぶつかるのを回避する。
「ネプギアちゃん、大丈夫…!?」
「う、うん大丈夫…あの、貴女も大丈夫ですか…?」
「こ、こっちも大丈夫…急に飛び出してごめんなさ……って、嘘…ぎあちー…?」
『……?』
躱した勢いで数歩斜めに出てしまったわたしへ、ロムちゃんが駆け寄ってくる。心配してくれたロムちゃんに大丈夫だと返したわたしは、相手の人へと声を掛け……直後、奇妙な声を聞く。
脇道から出てきたのは、赤い髪の…っていってもうずめさんみたいな真っ赤じゃない、もっと柔らかい感じの赤髪と、髪より濃くて茶色よりの瞳をした、一人の女の子。その子も怪我はなかったようだけど、わたし達を見て目を丸くしていて…それから、『ぎあちー』って言っていた。…ぎあちー、って……。
「…わたしの、事…?」
「あ、え、えっと……そ、そう!今をときめくイケイケ女神候補生、パープルシスターをあーしは親愛を込めてぎあちーって呼んでいるのっ!」
「そ、そうなんですか…えぇと、それはまぁ…悪い気はしないというか、なんというか……」
これまたうずめさんの呼び方に近い、ぎあちーって単語。もしやと思って訊き返すと、女の子は言葉に詰まった後、そうだと返してきた。しかも顔を近付けて、結構な圧で。いきなりの圧で、思わず頷いちゃったけど…この子、ちょっと変わってるのかも…?
「ぎあちー…こう、群体系の能力を使えそうな呼び方ね…」
「ゆ、ユニちゃん!?それだとわたし、ラスボスに消される事になるんだけど!?」
「……っ!」
「冗談よ、そう気にしな……って、あの…?何か、気に障りましたか…?」
流せない発言へ反射的に突っ込むわたしだけど、ユニちゃんはどこ吹く風。…と思いきや、急に困惑したような顔になって…何だろうと思ってわたしがユニちゃんの見ている方を見れば、そこでは女の子が表情を歪めていた。…それも、悲しさや無力感、それに怒りも混じったような、酷く暗い表情だった。
「…え、ぁ…その、これは……」
「もー、ユニったらダメね〜。せっかくの呼び方をバカにされたら、いやな気分になるに決まってるじゃない」
「うっ、割と真っ当な事を…。…でも、そうですよね…ごめんなさい、軽率でした…」
「う、ううん!気にしないで!というか今のは…えーっと、悩み…っていうか、ちょっと考え事をしてただけだし!」
「えっ、ちがったの…?」
頭を下げるユニちゃんに対して、女の子はわたわたと返答。それを聞いたラムちゃんは、違ったらしい事に目をぱちくりとさせて…わたしは女の子の発言、その後半に疑問を抱く。
「考え事、ですか?」
「それは、その…あーっと……」
「…まいご?」
「いや、迷子じゃ…なくも、ないか……」
『……?』
どうもさっきから、ちょっと変な様子の女の子。迷子じゃなくもないって言葉には、聞いたロムちゃんも、わたし達も小首を傾げて…でもその数秒後、女の子の雰囲気が変わる。これまでの落ち着かない感じから、何かを決心したように。
「…ねぇ、ぎあちー、それに皆。変な事を訊くかもだけど、クエスト…って、分かるよね?」
「え?それはまあ、分かりますけど…というか、今から受けにいくつもりでしたし…」
「なら…あーしからの依頼、受けてくれないかな…?勿論、お礼はちゃんと用意するから」
依頼をしたい。そう言うと共に、女の子はわたし達へと両手を合わせる。お願い、というジェスチャーをする女の子の表情は真剣で…わたし達も、顔を見合わせる。
「こ、これって…ギルドをとおしてない、闇クエストってやつ!?」
「な、なんて表現してるのよアンタは…一応言っておくけど、何にも問題ないからね?ギルドは依頼する人とクエストを受けたい人とを繋げたり、やり取りが上手くいくようにしたりする組織であって、アタシ達はギルドと契約してる訳でもなければ、直のやり取りは禁止ってルールがある訳でもないんだから」
「あ、でも教会としては契約っていうか、協力関係だよね。どっちにしろ問題はない訳だけど。…えぇと、それで依頼っていうのは、具体的に何ですか?」
「うん。あーし的には、二つ頼みたくて…一つは、皆から…女神から、色々聞きたいの。あーし、暫く前から過去…に関わる活動をしてて、その為にどうしてもぎあちー達から色々話を聞きたくて……」
話を聞きたい。それはわたしの想像していた、モンスターの討伐や生活圏外での探し物とは全然違うお願いで、内心ちょっと驚いてしまった。でも勿論、それは意外に思っただけで、別に嫌って訳じゃない。…過去に関わる活動…歴史とか考古学関係の仕事をしてるのかな…?それか、デンゲキコさんやファミ通さんみたいな、記者の人だったり…?
「おはなし、するだけでいいの…?(きょとん)」
「うん、するだけで……あ、でも記録とか見せてもらえたら、もっと嬉しいかも」
「きろく…写真とか?それならこんなのどう?」
「わ、可愛い。これはハートキャッチ確実…っていやいや、あーしが言ってるのはそういう写真じゃなくて……」
ロムちゃんラムちゃんが、女の子と言葉を交わす。そういえば、前は二人共面識のない歳上(っぽい相手)とは積極的に話したりしなかったのに、今はもう違うんだなぁと感じて…いたところで、わたしを呼ぶのはユニちゃんの声。
「ねぇネプギア。依頼云々も含めて、この人の事どう思う?」
「どう…って、信用出来るかどうかって事?」
「えぇ。怪しい人には見えないけど、気になる部分がないかって言えば…アタシにはあるわ。ネプギアは自分も避けてて見えなかっただろうけど、この人ぶつかりかけた時、機敏な動きで躱してたし」
「そうだったんだ…じゃあ、もう少し話を聞いてみる?」
小声でユニちゃんと言葉を交わす。ユニちゃんの気持ちはわたしにも理解出来て、今話した限りだと、この人は普通の人…って印象じゃない。別に信用出来ないとかじゃなくて、この人には実力とか知識とか経験とか、とにかく『普通』の範疇じゃない何かがあるような…そんな気がする。…ま、まぁ…女神の皆とかパーティーの皆さんとかは、皆普通を超える部分が色々とあるし、普通じゃない部分がそこそこある位が、わたしにとっては『普通』なんだけど…。
とにかく、もう少し話をとわたしは提案。それにユニちゃんは頷いて、すぐに女の子へと話し掛ける。
「すみません。さっきお礼は用意するって言ってましたけど、具体的には何を考えてるんですか?」
「えー?ユニ、お礼目当てでお願いきくの?」
「そうじゃないっての。曲がりなりにも『依頼』って形を取るなら、目的や条件、報酬なんかははっきりさせておかないとトラブルの元になりかねないのよ。…って事で、教えてもらえると助かります」
「あっ…だ、だよね。実はあーし、ソフトウェア開発をしてたりするんだけど、お礼はデータとかでも大丈夫?」
それもそうだ、と女の子は携帯端末を取り出す。ロムちゃんとラムちゃんは、見せてー、と言って画面を覗き込む。そして当然、わたしも画面を、ソフトウェアを見せてもらって……
…………。
「わ、結構レベル高そうなソフトですね。ネプギアから見て、これはどんな感じ──」
「ユニちゃん、この人の依頼受けよう!いや受けます、受けましたっ!クエスト受注!」
「ちょおぉい!」
これは受けないと、受けるしかないよ!そう思って、女の子の手を握って答えるわたし。でもその直後、ユニちゃんに怒られてしまった。…うぅ……。
「ったく、機械とか電子関係になると、ネプギアはすぐそうなんだから…」
「で、でも…これ、ほんとに凄く気になるから……」
「そんなに、すごいの…?(きょとん)」
「うんっ!ロムちゃん、聞きたい?」
「え、えっと…(おろおろ)」
「止めなさいネプギア、オタクの語りは高確率で引かれるか辟易されるかの二択よ。…まあでも、ネプギアがこうも興奮してるって事は、既存のソフトウェアを自作の物だって語ってる訳じゃないだろうし……」
冷静な…尚且つそこはかとなく経験談感のあるユニちゃんに窘められて、流石にわたしもクールダウン。その後ユニちゃんは、顎に親指と人差し指を当てながら小声でぶつぶつと呟いて…それからわたしに、ある視線を送ってきた。
そこに籠っていたのは、信用してもいいかも、って意図。完全に、じゃなくて一先ずは、って感じだけど…わたしより冷静沈着なユニちゃんが、一先ずでも信用出来るって判断を出した。それが持つ意味は大きくて…わたしは、頷く。
「ロムちゃん、ラムちゃん。二人は、どうしたい?」
「んと…わたしは、受けたいな。女神は、困ってる人を助けるのが…おしごと、だもん」
「わたしもよ!ネプギアはどうなの?」
「うん、わたしも二人に賛成だよ。だから…お待たせしました。ご依頼、わたし達で良ければ受けようと思います」
「皆…そうだ、まだあーしの名前言ってなかったよね。あーしはマホ、よろよろっ!」
全会一致で、わたし達は受けると決定。それを受けた女の子は…ううん、マホさんは感激したような顔になって…それから笑顔で、自分の名前を教えてくれた。
「よろよろ?…ロムちゃんのまね?」
「あ、気にしないで。じゃあ早速、色々訊きたいんだけど……」
「流石に道端じゃ落ち着いて話せないですし、それは場所を変えてからにしませんか?どこかのお店か、それかプラネタワーでも……」
「それなら、プラネタワーがいいな。…えっと、ほら、他にも見せたいソフトウェアがあるし、その為には機材が揃ってる場所の方がいいし」
「ほ、他にも…!?」
「ネプギアー?」
思わず食い付いてしまったわたしに刺さる、ユニちゃんの視線。それにわたしは乾いた笑い声を漏らすばかり。…か、返せる言葉がないもん…。
「…まあ、プラネタワーにする事自体は構わないけどね。マホさん、すぐに移動でも大丈夫ですか?」
「もち!あ、それとあーしに敬語は必要ないって。女神に年齢なんて関係ないし、そっちの方が話し易いっしょ?」
「おもち…?(もちもち)」
「今のは勿論、のもち、だね。…えと…じゃあ、マホちゃん…って、呼んでも良いかな…?」
びしっ、とサムズアップで答えるマホちゃん。まだ少し話しただけだけど、良い意味で調子が軽い、快活って感じのマホちゃんは話し易くて…なんだか仲良くなれそう。そんな風に、わたしは感じていた。
*
「ふふん、ここがよく皆であそんでる部屋よ!いいながめでしょ?」
「なんでラムが自慢げなのよ…」
お話をする為にマホちゃんとプラネタワーに戻ったわたし達は、応接室…だと仰々しくなっちゃうよねって事で、お姉ちゃんとの共用部屋にマホちゃんを案内した。
「…………」
「あ、わたし飲み物淹れるね。何かリクエストはある?」
「へ?あぁ、っと…じゃ、ぎあちーのお任せで!」
それなら、と冷蔵庫の中からジュースを出すわたし。ジュースにしたのは、ロムちゃんとラムちゃんもいるからで…って、さっき出会ったばかりの人に、お任せを頼むなんてちょっと凄いなぁ…。あ、でもマホちゃんはわたしの事知ってるのか。
「さてと。じゃあ、質問してくれれば一つ一つ話していくけど…流石に、何でもかんでも話せる訳じゃないわよ?候補生って言っても、アタシ達は女神だもの」
「分かってるって。で、だけど…先に言うと、あーしが聞きたいのは、犯罪組織絡みの事なの」
それは理解しておいて、って風に言うユニちゃんの言葉に、マホちゃんは頷く。それからわたし達の事を軽く見回して…ふっと真面目な顔になると共に、言った。犯罪組織関係の話を、聞きたいって。
驚いた。過去に関わる活動って事だから、もっと昔の歴史とか、過去の出来事に対する意見とか、そういう事を聞きたいのかと思ってたけど…まさか、犯罪組織の事を訊かれるなんて。勿論話せない事じゃないし…というか、わたし達は当事者で、良くも悪くも前のわたし達から今のわたし達に変わっていったのが犯罪組織との戦いだったんだから、本当に色々な事を話せるとは思うけども。
「犯罪組織絡み…の、何を訊きたいの?ユニちゃんが言った通り、犯罪組織ってなると話せない事もそこそこあると思うけど……」
「うーんと…話せる事全部、って言ったら困る?」
「それは、困る…っていうか……」
「物凄く沢山話す事になりそうね…」
凄くざっくりしてる上に広範囲なお願いを受けて、わたし達は目をぱちくり。う、うーん……あ。
「…じゃあ、わたし達がしてきた旅の話をするのはどうかな?」
「……!うん、それで!流石ぎあちー、頭の回転がマジ高速!いやむしろ、女神だけに神速!」
「わー、予想以上に褒められた…あ、ありがとう…?」
そこまで賞賛される事かなぁ、と思いつつも、わたしは感謝の言葉を返す。…何だろう…何となく、違和感があるような…。
(…あ、そうだ。部屋に入った時の反応も、ちょっと変わってるんだ)
何故かな、と考えて気付く。この部屋は全体的にピンクと薄紫だったり、自室なのにベットがなかったり(それは共用部屋だからなんだけど)と、初めて来る人は大概驚いたり疑問を持ったりする見た目をしている…んだけど、マホちゃんは部屋に入った時、じーっと部屋の中を見るだけで、何かを言ったりするような事はなかった。まあ、絶対驚かれるって訳じゃないし、それ単体なら流しちゃうような事なんだけど、今の違和感だったり、さっきユニちゃんの言っていた身のこなしの事を考えると、どうにもマホちゃんの事が気になって……
「ネプギアちゃん…?」
「ほぇ?え、な、何?」
「何って…旅の話をするなら、ネプギアからに決まってるでしょ。一番始めの段階は、アタシ達いなかったんだから」
「あ…だ、だよね。えと…ならまず切っ掛けなんだけど、旅の話はイストワールさん達が進めてた事で……」
ロムちゃんに呼び掛けられ、我に返ったわたし。この話の提案はわたしがしたんだから…と疑問を一度脇に置いて、わたしは旅の事を語り始める。
ラステイションまでの話はわたし一人でして、そこからはユニちゃんと二人で話す。ルウィーからはロムちゃんとラムちゃんも交えて、わたし達自身も思い出しながら語っていく。
「それで、わたしたちはリーンボックスでコンサートしたのよ?だいせーきょーだったんだから!」
「おぉー!準備期間一日でステージに立つなんて、プロのパリピでも出来ない偉業だよ!」
「ぷ、 プロのパリピ…?…けど、今思えばあの場はイリゼさんが一緒に立っても良かったのよね。結果論だし、あの段階じゃ考えてなかったのかもだけど、後々演説でイリゼさんも大きくシェアを伸ばした訳だし」
「…イリゼさん?」
「……?イリゼさんよ、イリゼさ…って、あ…ごめん、オリジンハート…って言えば分かる?」
「あ、あー。オリハ様ねオリハ様。知ってる、ちょー知ってる」
「いや、そんな実は分かってましたみたいな反応しなくたって…」
ラステイションでMGを強奪された時の件とか、ルウィーの図書館での件とか、世間一般で公にされていない話はぼかすか飛ばすかしているけど、やっぱりあの旅は濃密なものだったから、長い長い話になる。
でもずっと、マホちゃんは真剣に聞いてくれた。笑ったり、驚いたり、時々ふっと考え込むような顔になったり…色んな表情を浮かべて、わたし達の話に耳を傾けていた。
「…それで、最後は皆で力を合わせて、全力を尽くして、何とか犯罪組織との戦いを終わらせる事が出来たんだ。…こんな感じで、良かったかな?」
「…うん。ありがとね、皆。凄く、良い話だった。…やっぱりぎあちー達は、ぎあちー達だね」
「うん。…そう、だよ?」
「わたしたちがわたしたちなのは、普通のことじゃない」
「あぁいや、マホが言ってるのはそういう事じゃ…と、思ったけど…自分が自分なのは、普通の事…本当に当然の事ではあるけど、これって真理よね…」
語り終えたところでマホちゃんが口にしたのは、しみじみとした声。そこから話はちょっと脱線して…妙に深く考えるユニちゃんに対して、わたしとマホちゃんは顔を見合わせて苦笑し合う。
「じゃ、これで一つ目のお願いはたっせー?」
「クエスト、クリア?(どきどき)」
「あはは、ばっちりクリア。報酬はプレゼントボックスに送られるから、受け取り期限までに取っておくよーに!」
『はーい』
「なんでゲーム風なのよ…しかもソーシャルなやつ……」
「いやぁ、下手な例えよりこういうやつの方が伝わるっしょ?あ、それともイベ期間の内に回収するよーにの方が良かった?終了日の直前に受け取ろうとしたら、実はその日のメンテ前までが期限で、受け取り損ねたー、なんて事にならないよーにのパターンもあるし、好きなのを選んでくれればオールオッケー!」
何故かどんどん出てくるソシャゲネタ。まあ確かに伝わりはするけど…こう、どんどんゲームのたとえが出てくると、そこはかとなくお姉ちゃん感が…。
「えと、マホちゃん。じゃあ、二つ目のお願いを聞いてもいい?」
「っと、そうだったそうだった。二つ目は…あー……」
二つ目の内容を言いかけたところで、頬に人差し指を当てて視線を逸らすマホちゃん。何か気掛かりな事があるのか、それとも何かを考えてるのか、暫く「あー…」って言っていて……それから考えが纏まったように、指を下ろす。
「あのさ、もう一つのお願いは、明日でも大丈夫かな?そっちも結構時間がかるし…ほら、一つ目のお礼もまだしてないっしょ?」
「明日…?…あ…もう、こんな時間…(ぱちくり)」
「結構話し込んでたのね、アタシ達…なら、今日は泊まっていった方が楽だけど…ネプギア、良いかしら?」
「勿論!ロムちゃんとラムちゃんも泊まってって!…あ、それとマホちゃんも、良かったらどう?家が近いとか、もう泊まる場所決まってるとかなら、無理にとは言わないけど…」
「ほんと、いいの?やった、ぎあちー太っ腹!マジ感謝、感謝感激雨アラレ激甘っ!」
「…ネプギア、太いの?」
「ふ、太くないよ!?確かに二人よりはそうかもだけど、太ってはいないからね!?」
純粋な目で見てくるラムちゃんに、わたしは全力で違うよと返す。それからなんて事を、ってマホちゃんを見たけど、マホちゃん自身は「あ、ごめーん」位の表情。うぅ、確かにマホちゃんが悪いって訳でもないけど…ないけどもぉ……!
「よーし、じゃあ一つ目のお礼はこちら!画面の表示をタッチすると、神樹と接続して変身出来るソフトウェア!」
『勇者のやつ!?』
「あ、駄目?なら、No.7まである隠しレポートを読めるソフトウェアは?」
『拡張科学アドベンチャーのやつ!?』
「えー…だったら、やたら感度が高くて僅かに触れただけでもいちいち開く広告を止められるソフトウェアなら?」
『それは普通に欲しい…!』
次々出てくる変な…でもやたら凄いソフトウェア。中にはほんと、個人で作ったとは思えない程出来が良いものもあって、正直ただ話しただけのお礼としては、あまりにも豪華過ぎるとすら感じさせる。でもマホちゃんは良いんだと、わたし達の話はそれ位価値のあるものなんだと言って、わたし達に笑ってくれた。
言葉選び含めて、やっぱりマホちゃんはちょっと変わってる感じ。変わってるけど…こうやって見せてくれる笑顔は、わたし達と…皆と変わらない。そう、わたしは信じたい。
*
色々なソフトウェアを見せてもらった後、わたし達は改めて自己紹介をして、もっと沢山の…旅の内容としては語るまでもないような、ちょっとした出来事なんかも話して、その後は一緒にご飯を食べた。ロムちゃんとラムちゃんの提案でゲームをする事になって、その後はお風呂も一緒に入って…今日会ったばかりの相手とは思えない程、自然にわたし達は接していた。
「って訳で、今日はわたし達、ここで寝たいんだけど…いいかな?」
「もっちろん!マホちゃん、今日はゆっくりしていってね!って、もう十分ゆっくりしてるかー、てへねぶっ!」
「え、てへねぷ?何それマジヤバなんだけどっ、あーしも使おうかな?てへまほっ、なんて言っちゃったりしてー!」
何だか波長の合う様子を見せる二人。性格が似てる、って訳じゃないけど…こう、軽快な感じがお姉ちゃんとマホちゃんで近いのかな?
「ネプテューヌちゃんもいっしょに寝る?」
「もっちろんpart2!…なーんてね。折角友達とのお泊まりなんだから、今日は友達水入らずで…ね?」
そう言って、お姉ちゃんは共用部屋から自分の部屋へ。そんな気を遣わなくても良いのに…と思ったわたしだけど、流石に追い掛けて引き戻す…なんて事はしない。
「にしても、流石はネプテューヌさんよね。マホの事を、『その子誰?』『友達だよ』『そっかー、今日はその子も泊まってくんだね』だけで済ませちゃうんだもの」
「懐が深いよねぇ。正に太っ腹なぎあちーのお姉ちゃんって感じ」
「ネプギア、ふとっぱら〜」
「ぱら〜(ふにふに)」
「ちょ、ちょっと!さっきも言ったけど、わたし太くないからね!?後、今度はマホちゃんわざと言ってない!?」
左右からつんつんと、ロムちゃんラムちゃんがわたしの脇腹をつっついてくる。つんつんから逃げつつわたしが見れば、マホちゃんは面白そうにわたし達を見ていて…わ、わざとだ…やっぱりわざとだよこれ…!
「お風呂入った後なんだから、走り回らないの。ほら、ネプギアも」
「わ、わたしは二人が追い掛けてこなかったら走ってないよ…!?」
「わたしたちだって、ネプギアが逃げなきゃ走ってないもーん」
「はいはい。…で、どうする?流石にまだ、寝るには早いでしょ?」
「えと…じゃあ、マホちゃんの…話…?」
「へ?あーしの話?」
目をぱちくりとさせたマホちゃんに、ロムちゃんがこくりと頷く。ご飯にゲームにお風呂にと、一緒に色んな事をしたおかげか、ロムちゃんもラムちゃんもマホちゃんへの抵抗はもうほぼなくて…ほっとする反面、なんだかちょっとジェラシーも感じる。わたしが二人と仲良くなるまではもっと時間も苦労もかかったのにーって、そんな気持ちになってしまう。
(…でも、それはロムちゃんとラムちゃんが変わったから、って事でもあるんだよね。それにほら、わたしやユニちゃんも一緒だから…って部分もきっとあるし、うん!)
「ネプギアちゃん…?どうして手をぐっ、ってしてるの…?(はてな)」
「あ…き、気にしないで。それよりマホちゃんの話しよ、マホちゃんの話」
「あーしの話…布団を囲んで寝る前の定番、コイバナならぬマホバナって事?てかマホバナって、ちょっとバナナの一種感なくない?ありよりのありじゃない?」
「マホバナ…食べると魔力がかいふくしそーな名前よね!」
「そんな架空の食べ物の話はしないから…妙な事言って自分の話を回避しようったって無駄よ?」
「むー、バレたかー…ゆにちーの鋭さマジまんぐーす…」
なんだかよく分からない事を言いながら、マホちゃんは頬を掻く。話を逸らそうとしたのは…やっぱり、自分の話をするのは恥ずかしいからかな?
「あーしの話、したい?そんな面白い話なんて出来ないっていうか、ぎあちー達の旅の後じゃ大概の話は霞みんぐだよ?さっきっていうか、数時間前だけど」
「でも、仲良くなるにはお互いの事を知るのが一番でしょ?」
「それは、まぁ……」
どうしても嫌なら、無理に訊き出したりはしないし、それは皆だって同じな筈。けどマホちゃんは、少し考えてから「んー…分かった、りょーかい」と言って、わたし達へ話し始めてくれる。
「あーしはね…じゃないや。あーしも、実は旅をしてるんだ。でも皆みたいな旅とは違う、何度も行ったり来たりしてる旅を…ね」
「へぇ、今回の依頼もそれ絡みなの?」
「絡み絡み〜。…旅ってさ、楽しい事も、新しい発見も、色々な事もあって…けどやっぱり、辛い事もあるよね。辛い事、悲しい事…皆も、そうだったっしょ?」
トーンの落ちた声で言うマホちゃんに、わたし達は頷く。そもそもが辛くて悲しい事から、わたし達の旅は始まった訳だし、当然それは旅の中でもあった。お姉ちゃん達の旅も、きっとそうだったんじゃないかと思う。
「でも、あーしは止めない。諦めない。絶対に、この旅を完遂させるって、そう決めてるから」
「マホちゃん…」
胸の前に挙げた右手を握って、決して大きくはない…けど、強い感情の籠った声でマホちゃんは言い切る。
覚悟か、意地か、それとももう引き返せなくなってしまったからか。その根底にある思いまでは分からないけど…ただ頑張ろう、成功させようって言葉じゃ表し切れないような何かが、今の言葉からは感じられた。
「…ねぇ、アタシ達に手伝える事はある?」
「え?」
「マホの顔見てたら、その旅にどれだけの思いを懸けてるかなんて分かるわよ。分かるし…伝わっちゃったら、なら頑張って、で片付けられる訳ないじゃない」
「うん。わたしも、何かできるなら…して、あげたい」
「わたしたちは女神なんだもの、こういう時女神は力になってあげるものなのよね!」
「ゆにちー、ろむちー、らむちー…」
「ふふっ。大丈夫だよマホちゃん。ちょっと位…ううん、ちょっと以上の無理難題だって、わたし達は手伝えるから。ラムちゃんの言った通り、わたし達は女神だし…マホちゃんは、友達なんだから」
そんなマホちゃんへ向けて、ユニちゃんが訊く。ユニちゃんの言葉に、ロムちゃんとラムちゃんが続く。何か手伝えるなら、力になれるなら、そうしたいと思いを伝え…その気持ちは、わたしも同じ。女神だから放っておけないし、友達だから力になりたい。依頼とか関係なく、ただ純粋にそう思って…わたし達は、待った。マホちゃんの、答えを。
見つめるわたし達を、マホちゃんはじっと見返す。そのまま五秒、十秒と時間が経ち…マホちゃんは、言った。
「ありがと、そう言ってくれて。力になるって、言ってくれて。…でも、大丈夫。もうあーしは、皆にお願いを聞いてもらってるし…皆にも、やらなくちゃいけない事があるでしょ?この次元を守る事、国民の為に国を良くしていく事…それが、女神の務めっしょ?」
「…いいの?マホちゃん」
「いーの、というかシリアスな話になり過ぎ!折角皆パジャマで話してるんだから、もっと明るく楽しい話しようって!」
「い、言われてみると確かにシリアスな話になっちゃってたね…どうしてこうなったんだろう…」
「ネプギアが理由じゃない?」
「わたしのせい!?た、確かにわたしが主人公をやるとシリアスになりがちって印象があるけど、それは原作の話であって……」
「じゃあここはわたしの出番かなー!?」
『(お姉ちゃん・ネプテューヌさん・ネプテューヌちゃん)!?』
ばーん!と扉を開いて出てくるお姉ちゃんに、わたし達は全員で仰天。聞いてたの!?と反射的に突っ込んだわたしだけど、お姉ちゃん曰く「
「び、びっくりしたぁ…でもあーしとしてはやっぱ、こういう騒がしい位の方が好きだわ。シリアスを続けるのはもうやめたー!」
「マホちゃん、なんで錬金術士みたいな事を…」
「とにかく、もっと楽しい話しよ?それかもっとチルい系の話とかさー」
「なら、マホのもっと楽しい話とかして頂戴。後、チルいって言われると、イリゼさんのところのあの子を連想するわね…」
「うっ…しまった、ゆにちーの策略に嵌められた……」
いやいや嵌めてないから、と言いつつもにやりと笑っているユニちゃん。むむぅ、としつつも楽しそうなマホちゃん。それからマホちゃんは、旅とは違う…もっと何気無い、好きな食べ物とか趣味の話とか、後ソフトウェアの事なんかを語ってくれて、わたし達はのんびりと雑談を交わしていった。…ソフトウェアの話の時は、わたしとマホちゃん以外ぽかんとしてたけど…。
「ふぁ、ぁ…(うとうと)」
「ロムちゃん、もうねむい…ふぁー、ぁ……」
「ロムもラムも眠そうね…じゃ、今日はもうお開きにしない?」
「だね。マホちゃんもそれでいい?」
「あ、ALLはしない系?ってそりゃそうかー。正直あーしも眠かったし、問題ナシナシ!」
二人の欠伸を受けて、わたし達はここまでにする事を決定。明日何をするかはまだ聞いてないし、だったらちゃんと休んだ方が良い筈。…あ、っていうか今の内に、もう一つのお願いも訊いておこうかな?…うーん…けど、いっか。ロムちゃんとラムちゃんは眠くてちゃんと聞けないかもだし、マホちゃん自身がまだ言おうとしてないって事は、きっと一刻を争うような内容でもないんだよね。
「それじゃあ皆、お休み」
「えぇ、お休み」
「おや〜」
「…すぅ……」
「…くぅ……」
もう寝始めちゃったロムちゃんとラムちゃんに微笑み、わたし達も横になる。そうして目を閉じれば、わたしにも段々眠気が来て…明日も頑張ろう、そんな事を思いながらわたしは寝入った。
*
(……あ、れ…?)
ぼんやりと感じる、仄かな光。その光で、わたしはふと目が覚めた。
「…マホ、ちゃん……?」
「……!…あ、なんだぎあちーか…もう、びっくりさせないでよー」
「ご、ごめんね…って、それはこっちの台詞だよ…暗い中に小さい光と薄っすらとした人影があって、ちょっとびっくりしたんだからね…?」
「あー、じゃあおあいこ?」
わたしは身体を起こして、起きていたマホちゃんの隣へ。ユニちゃん達を起こさないように、わたし達は小さな声で言葉を交わす。
「マホちゃん、もしかして普段はもっと遅くまで起きてるの?」
「や、そういう時もあるけど、今日はちょっとやっておきたい事があっただけ。眠いのはマジだよ?」
「やっておきたい事…ソフトウェア関係?」
「まー、そんなとこ」
ソフトウェア関係?…と聞いたのは、携帯端末とか、他にも作業用の道具が幾つか出ていたから。わたしはどっちかっていうとハードが趣味の範疇で、ソフトはそこまでだけど…電子機器を筆頭に、現代の機械の多くはハードとソフトが切っても切れない関係になっているから、開発を含めて少しはわたしも知識がある。だからこそ、マホちゃんが作ったっていうソフトウェアも、それを作ったマホちゃんも凄いんだって、すぐに分かった。
「……ね、ぎあちー」
「どうしたの、マホちゃん」
「どうしてぎあちーは、まだ出会って一日も経ってないあーしの事を、友達だって言ってくれたの?」
まだ作業をするなら、ここにいちゃ不味いかな、と思っていたところで、不意にわたしは問い掛けられる。どうして、とマホちゃんに訊かれる。
確かに、それを訊きたく気持ちも分かる。というか、わたしがマホちゃんの立場だったら、わたしも訊いていたかもしれない。まだ出会ったばかりって言える相手を、その日の内に泊めている…それが普通じゃないって事位は、わたしだって理解してる。
「うーん…なんて言うのかな。友達って別に、長さが全てじゃないでしょ?すぐに仲良くなれる事もあれば、色んな経験して、やっと友達になれたって思えるような事だってあるし。だから少なくとも、出会ったばかりだからまだ友達じゃない…なんて事はないと思うの」
「…うん」
「…けど、これは考え方の話であって、マホちゃんへの答えとしては微妙だよね。だから、その……」
「その…?」
「…ごめんね、わたしはお姉ちゃん程真っ直ぐでも、芯が強い訳でもないから、『出会ったばかりでもマホちゃんは友達だよ!』…とは言えないんだ。だから…ほんとの事を言うと、友達…になれそうっていうか、友達になりたいって思ってるのが実際のところっていうか…うぅ、そういう意味じゃ安易に友達って言うのは駄目だったよね……」
恥ずかしさとちょっぴりの情けなさから、わたしは目を逸らす。頭では「友達に時間の長さは関係ない」と考えていても、心のどこかで「もう友達って言って良いのかな、それはマホちゃんに悪いんじゃ…」って思っちゃってて、ここでその不安を振り切れないのがお姉ちゃんとわたしの違い。そして、だからこそ…そう思ってるのに「友達」と先んじて言ってしまった事が、なんだか申し訳なくて……
「くぅぅ…!やっぱぎあちーマジ女神、女神オブ女神!可愛過ぎてきゃぱいって!おにかわ超えて最早おにただなんですけど!?」
「ま、マホちゃん!?大きい声出したら皆起きちゃうよ!?しかも近い近い!後、おにただは違うよね!?それに関してはむしろ、設定的に古いネタに該当するものだよ!?」
「どーどー、ぎあちーこそ声大きいよ?」
「それはマホちゃんのせいだよぉ…!」
噛みしめるような声を出したかと思った次の瞬間、勢い良く抱き着いてくるマホちゃん。しかもなんか凄い勢いで色々言ってくるし、顔近いしで、されたわたしは大慌て。きょ、距離感…物理的にも精神的にもマホちゃんは距離感がおかしいってぇ…!
「……自信を持っても大丈夫だよ、ぎあちー。ぎあちーだって、ねぷち…お姉さんに負けない位、真っ直ぐだし芯が強い女神だから。あーしは、そう信じてるから。断言出来るから」
「…マホ、ちゃん……」
暫くわたしをぎゅっとしていた後、離れてくれるマホちゃんだったけど…その直前、ふっと穏やかな表情になったマホちゃんは、そう言った。言ってくれた。送られた発言にわたしが目を見開くと、マホちゃんは笑って…すぐに、さっきまでの(友達云々の話をする前の)雰囲気に戻った。
…うん、そうだ。わたしがマホちゃんと友達になれそうって思ったのは、マホちゃんが壁を作らずにいてくれるからだ。マホちゃんの方から、まるで友達みたいに接してくれるからこそ…わたしも、友達になりたいって思ったんだ。
「ぎあちー、もしあーしが作業してたせいで起きちゃったなら、お前が言うな案件だけど、ぎあちーこそ寝なくて大丈夫?」
「あ…うん、そうだね。マホちゃんも、寝不足にならないようにね?」
「はーい。…そうだぎあちー、ちょっとだけNギア、触らせてもらってもいいかな?」
「え?うん、良いよ」
「あ、躊躇いなく渡すんだ…しかもそのまま布団に戻ろうとするんだ…あーし、これは流石に交流期間に対して信用され過ぎじゃね?というかむしろ、こうなると逆に悪い事出来ない…!」
「あはは、悪い事しようとしてたの?」
変な発言にわたしが冗談めかして言えば、マホちゃんは「たははー」と笑いながら後頭部を掻く。でも流石に、わたしだって渡したまま寝たりはしない。マホちゃん云々じゃなくて、これがユニちゃんやロムちゃん、ラムちゃんだって、わたしのプライバシーにも関わる端末なら、貸しっ放しにする事はない。そして数分後、マホちゃんが返してくれたNギアを受け取って、わたしはもう一度布団を被る。
「…マホちゃん、明日も宜しくね」
「こっちこそ宜しく、ぎあちー」
最後にもう一度言葉を交わして、わたしは再び眠りに就く。さっき抱き着かれたせいで、すぐに眠れる精神状態かって言われたら微妙だけど…嫌な気分じゃ、全然ない。
マホちゃんの話をする中で、マホちゃんは自分の旅を、辛い事や悲しい事もあるって言った。一つ目のお願いは賑やかに終わらせられたけど、もう一つのお願いを果たす中で、そういう事があるかもしれない。でも…たとえそういう事があったとしても、マホちゃんと…皆となら、全部終わった後、振り返った時…きっとわたしは、楽しい時間を過ごせたと思ってる。そう、信じたい。
今回のパロディ解説
・「〜〜群体系の能力を使えそうな呼び方〜〜」
ジョジョの奇妙な冒険 ダイアモンドは砕けないに登場するキャラの一人、矢安宮重清の愛称、しげちーの事。しげちーとぎあちー…まあまあ似てると思います。
・「〜〜画面の表示を〜〜変身出来る〜〜」
ゆゆゆシリーズに登場する用語の一つ、勇者システムの事。女神もVⅡ(R)では、ネクストフォームになる際展開した画面を操作するシーンがありましたね。
・「〜〜No.7まである隠しレポートを読める〜〜」
ROBOTICS;NOTESに登場するアプリの一つ、居ル夫。の事。これに関しては、MAGES.辺りが開発してそうな気もしますね。主に元ネタ的にですが。
・錬金術士
アトリエシリーズにおける代名詞的な要素(職業)の一つの事。直前の「シリアスを続けるのはもうやめたー!」は、一作目のキャッチフレーズのパロディのつもり…です。
・おにただ
弱キャラ友崎くんに登場するヒロインの一人、日南葵の代名詞的なフレーズの一つのパロディ。一見ギャル語風ですが、実際は作中の年代から見て昔のネタなんですよね。