超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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第二十話 彼女との歩み、二つ目の依頼

 角で危うくぶつかりかける…まるで少女漫画みたいな出会い方をしたマホちゃんからの、二つの依頼。

 一つ目は、犯罪組織に纏わる話をしてほしい…っていうもの。これに関してはわたし達のしてきた旅の内容を話して、マホちゃんもそれで満足してくれた。その後はなんていうか、そもそもが依頼らしくない依頼って事もあって、半分位は雑談みたいな話を重ねていた。ギルドを介していないといっても依頼は依頼なんだから、今思えばもっと真面目に、色々資料を用意しても良かったような気もするけど…わたし達がした事も、間違ってはいなかった…と、思う。

 そして、二つ目の依頼。まだ聞いていなかった、もう一つの依頼は──。

 

「ごちそーさまっ!」

「おねえさん、おいしかったよ(にこにこ)」

 

 朝。一番の早起きなラムちゃんに起こされた(ラムちゃん、朝から元気一杯なんだよね…)わたし達は、顔を洗って身支度をして、皆でご飯を食べに行った。食後、食堂の調理場前を通る時に、ロムちゃんとラムちゃんはにこやかに声を掛けていて、声を掛けられた調理場の皆さんは、朗らかな笑顔を返していた。わたし達もご馳走様でした、とは言ってるし、女神って事もあって頭を下げられたりもするんだけど…やっぱり、二人からこんな事言われたら笑顔になっちゃうよね。

 

「はー、朝から食べた食べた。軒並み美味〜、って感じだったわ」

「それは良かった。でも、食べ過ぎは良くないよ?」

「だいじょぶだいじょぶ、あーしには摂取カロリーを計算したり、どの程度運動すれば良いかを提示してくれるソフトウェアもあるから!」

「…それ、仮にあっても使わなきゃ意味なくない?」

「たはー、バレたか〜。まほぺろっ!」

「あ、早速使ってる…」

 

 ぺろっ、と舌を出すマホちゃんに、わたしは苦笑い。わたし達より睡眠時間が少ない筈のマホちゃんだけど、今のところ眠そうだったり調子が悪そうだったりはしない。

 

「で、二つ目の依頼は何なの?一つ目みたいにやろうと思えばその場でもやれる、って感じの事ならいいけど、準備が必要になるなら、早く言ってくれないと困るわ」

「あ、うん。二つ目なんだけど……」

 

 取り敢えず部屋に戻ろうとする中で、廊下を歩きながらユニちゃんが訊く。それに対して、マホちゃんは答えようとして……けどその最中、わたし達はある人達と出くわした。

 

「お、ぎあっち達じゃないか。おはよう…って、うん?」

「あっ、うずめさんにくろめさんにウィードさん。おはようございます」

 

 わたし達がばったり出会ったのは、うずめさん達お三人。こっちに向かってたって事は、多分お三人共今からご飯で…けどそのまますれ違う事はなく、お三人の視線はマホちゃんへ。

 

「彼女はマホ、色々あって今アタシ達はマホから依頼を受けてる最中なんです。マホ、この人達はアタシ達の仲間で、うずめさんとくろめさんは女神なのよ」

「女神……。…って事は、彼がウィード、って人な訳ね。あーしはマホ、一応皆への依頼人…になるのかな。まあとにかく、よろよろ!」

「っと、おう。俺がウィードだ。俺は…まぁ、一応人間だ。厳密に言わず、ざっくり言えば人間…だと思う」

「…え?ぎあちー、この人いきなり謎な発言をしてきたんだけど、ちょっと不思議系なメンズなの?」

「い、いや…そうじゃないっていうか、ウィードさんにもかなり複雑な事情があるっていうか……」

 

 女神、と聞いてうずめさん達の事を暫く見つめた後、元の調子に戻って自己紹介をするマホちゃん。まず返答したのはウィードさんで…でもそれを聞いたマホちゃんは、怪訝な顔をしてわたしにウィードさんの事を尋ねてくる。

 確かに何も知らない人からすれば、今のは妙に感じる発言。でもウィードさん自身や、知ってるわたし達からすれば、「まぁそういう表現になるよね…」って感じで…どうしよう、説明した方が良いのかな…。けど説明するとなると、かなり長くなっちゃうだろうし…。

 

「ふぅん…ま、誰にも一つや二つ、簡単には語れない事情があるもんね。それより、この二人は見た目そっくりなんだけど?もしかして、ろむちーらむちーと同じく双子?」

「まさか、《俺》と双子なんて真っ平御免だよ」

「へぇ、気が合うじゃねぇか。《オレ》と双子なんざ、全身全霊でお断りだっつーの」

「あー…お二人は、訳有りな感じ…?」

「訳有りかどうかで言えば…大有り、かな……」

 

 何か察してくれたように、ウィードさんへの追求はしなかったマホちゃん…なんだけど、その際の一言で、途端にうずめさんとくろめさんは険悪な雰囲気に。それにはマホちゃんもまごついちゃって…どうしよ、こっちもこっちで説明の難易度が高いよ……。

 

「…ふん。俺は天王星うずめだ。ぎあっち達と違って今は真っ当な状態じゃねぇが、一応女神だ。宜しくな」

「オレは暗黒星くろめ。…まぁ、これは本名ではないんだけど、今はくろめで通している。ゆにっちはオレも含めて女神と言ってくれたし、それは否定しないが…《俺》以上に、真っ当な女神からは離れた存在さ。情けない事に、ね」

「いやくろめ…それは初対面の相手にする自己紹介じゃないって…そんな事言われても、困惑するだけだと思うぞ…?」

「やー、まぁ…ぶっちゃけ、それなっていうか、なんていうか…はは……」

「う…すまない…」

 

 これなんて返せば良いの…?状態なマホちゃんに、くろめさんはちょっぴりしゅんとした様子に。で、結果…なんとも微妙な雰囲気になってしまう。

 

「あ、え、えーっと…うずめさん達は、この後お仕事ですか?」

「へ?あ、おう。今日は多分、デスクワーク多めだな…」

「ですくわーく…お部屋の、おしごと…?」

「うずめさんって、お外でのおしごとの方が得意そーだものね!」

「なんかその評価はちょっと不服だ…全く否定は出来ねぇけど……」

「あ、それあーしも分かるかも。ソフトウェア開発ならずーっと机とか画面に向かっていられるけど、それ以外だと焦れったくなってくるっていうか、変なもやもや感が広がる感じ?」

「そうそうそうなんだよな。んで、それでも頑張ろうとすると、なんか背中が熱くなってくるっつーか…」

「それな!だから何時間も平然と続けられる人はマジかーってなるし、それだけでちょっと尊敬出来るっていうか…これ、分かる?」

 

 流れを変えようと発した言葉が功を奏して、微妙だった雰囲気は霧散。それに一度はほっとしたわたしだけど…今度は会話が、何か変な方向に。

 

「分かる分かる、超分かる!」

「マ?いやー、分かるかー、分かっちゃうかー。あ、じゃあさじゃあさ、自分がデスクワークでうがーってなってる時に、お疲れって感じで冷たい飲み物とか差し入れされると、思わずときめいちゃうのは分かる?」

「それも分かる〜!でさでさ、単に差し入れされるだけじゃなくて、差し出してきたのと逆の手で自分の分も待ってて、ちょっと一緒に休憩しない?ってなったら、もー心掴まれちゃうよね〜」

「ヤバっ、超理解出来るんですけど!何これ以心伝心?分かりみ深過ぎるっしょ!」

 

 元々の話から脱線しながらも、物凄く盛り上がるマホちゃんとうずめさん。しかもうずめさん、普段は隠してるゆるゆるモードが入っちゃってて…なのにマホちゃんも似たような何かを醸しているものだから、それが自然に見えるという前代未聞の状態に。

 雰囲気は悪くない。もう全然悪くない。…けど、何も言えなかった。独特過ぎて、とても入っていけそうにはなかった。

 

「…薄々感じてたけど…ひょっとして、マホちゃんとこういう状態のうずめさんって、性格的にかなり近しかったり…?」

「かもしれないわね…でも何となくズレてるっていうか、近しいけど開きもあるような気がするわ……」

 

 大いに盛り上がる二人のやり取りを、わたし達は眺めるばかり。テンション高めのやり取りは、その後も少しの間続いて…最終的に二人は、ぱーんと軽快にハイタッチまでしていた。…うずめさん、後で思い出して恥ずかしくなったりしないかな……。

 

「やー、こうやって話せる相手がいるとは思ってなかったわー。ほんともう、テンアゲマシマシ状態っしょ!」

「…マホさん、時々よくわからない言葉、言う…」

「うん、むずかしー言葉を言うのよね〜…」

「…ふ、ふふっ。これは難しいとはまた別ベクトルだろうけどね」

『…くろめ(さん)……?』

 

 機嫌の良さそうなマホちゃんの発言に、ロムちゃんとラムちゃんは困惑…というか、ちょっぴり眉を八の字にする。確かに聞き慣れない言葉を使うマホちゃんだけど、これを難しいと表現するのは何か違うような…と思っていたところで、聞こえたのはくろめさんの小さな笑い。それも、ちょっと含みを感じるような笑い声。何だろうと思って見てみれば、くろめさんはどこか懐かしそうな表情をしていて…言葉を、続ける。

 

「あぁいや、昔の…友達の一人が、君と少し似ていてね」

「昔の…あー、確かにちょっと似てるな。確か一人称も同じだったし」

「そう、なのか?なら、まほっちと俺とで割と話が弾んだのもそれが……」

「いや、そういう事ではないと思う」

 

 納得したようなうずめさんの返しを、ウィードさんがさらっと否定。あ、そ、そうなのか…と何とも言えない風な顔をするうずめさんに、わたし達は思わず苦笑いをしていたけど…その間も、くろめさんは昔の事を思い出すような、遠い目をしていた。

 昔の友達。それはきっと、くろめさんが守護女神だった頃の話。友達、という言葉を一瞬言い淀んだのは…簡単には語れない思いがあるから。でも、言い淀んだとしても「友達」って言ったって事は、その人や、その人との思い出はくろめさんにとって大切なもので……

 

「まさかこんな光景を見る事になるとは…君を見ていると、込み上げてくるよ」

「そなの?え、懐かしさが?」

「いや、吐き気が」

「なんで!?」

 

……あ、あっれぇ…?なんかいきなり、予想外にも程がある発言が出てきてない…?は、吐き気…?

 

「は、吐き気…あーしを見て吐き気…そ、そんな吐き気する程仲の悪い相手だったの…?」

「そういう事じゃ、ないよ。吐き気がするのは、自分に対してだ。彼女は…皆は大切な友達だったのに、皆オレの事を思ってくれていたのに、そんな皆に対してオレは……」

「うぇ!?な、なんかめっちゃ落ち込んでる!?ぎ、ぎあちー!?これどゆ事!?あーしのせい…!?」

「い、いえ…これに関しては、まぁ…何というか……くろめさんは、そういう方なので…」

 

 急転落するくろめさんの精神状態に、テンパるマホちゃん。ちょっと失礼な表現な気もするけど、これをどういう事かと訊かれたら、そういう方、と返すしかなくて…ウィードさんもウィードさんで、くろめがすまん…と謝っていた。

 そして、またまた微妙になってしまう雰囲気。一応マホちゃんは飲み込んでくれたみたいだけど、それがまた微妙な雰囲気を加速させていて……

 

「朝から賑やかじゃないか。何かあったのか?」

「ほぇ?あ、マジェコンヌさんじゃない!」

「……!?」

 

 そこでまた、新たな声が聞こえてきた。振り向けば、そこにいたのはマジェコンヌさんで、ラムちゃんの声にマジェコンヌさんは手を振り返す。

 

「おはようございます、マジェコンヌさん。…もしかして、騒がしかったですか…?」

「いいや、そんな事はないさユニ。…ところで、彼女は?」

「あ…はい。この子はマホちゃんって言うんです。マホちゃん、この人はマジェコンヌさんっていう……マホちゃん?」

「…マジェコンヌ…マジェコンヌって言った…?」

「う、うん。マジェコンヌさん、だけど……」

 

 さっきのユニちゃんみたいに、わたしもマホちゃんとマジェコンヌさんそれぞれへ軽く紹介…をしようとしたけど、何やらマホちゃんの様子が変。マホちゃんは愕然とした表情で、マジェコンヌさんの事を見ていて…当然マジェコンヌさんも、その反応に怪訝な顔。

 

「…………」

「…私に、見覚えでも?」

「…同姓同名…?いや、でも…似てるような気も……」

「……あー…」

 

 じっと…どこか鋭さを感じる目でマジェコンヌさんを見つめていたマホちゃんは、考え込むような声で呟く。その返答とも言えない返答を受けたマジェコンヌさんは、珍しく困った顔になって…助けを求めるように、わたし達へと視線を向けてきた。

 

「ま、マホちゃんマホちゃん。マジェコンヌさん困惑しちゃってるから、ね…?」

「マジェコンヌ、さんと…お知り合い、なの…?」

「…あっ…え、えーとその…な、名前!マジェコンヌといえば、犯罪組織の名前っしょ?それと同じ名前の人がいたら、そりゃ驚くって!」

『…………』

「…あ、あれ…?」

 

 わたしとロムちゃんに呼び掛けられて我に返った様子のマホちゃんは、狼狽えたような顔をした後行動の理由を話してくれた。…くれたんだけど…その内容に、わたし達は顔を見合わせた。犯罪組織と同じ名前、って……

 

「よく知ってたわね、マホ。『犯罪組織マジェコンヌ』なんて、犯罪組織が台頭する前の、最初期にしか使われてなかった名前なのに」

「うん。確か、犯罪組織の実態…というか、真実を知らない人達の一部が、マジェコンヌさんの名前を勝手に使ってたんだったよね」

「あぁ。だが、嘗ての私は別段自分の名を次元中に発信していた訳ではない。魔王ユニミテスの時の様に、人前に出る事もあったが…十中八九、私が世直しなど目標にしていなかった事を分かった上で、人集めの為だけに私の名を使う事を考えた者がいたのだろうさ」

 

 犯罪組織は犯罪組織。勿論、『犯罪組織』って言葉は本来固有名詞とかじゃないんだけど、祭り上げられている存在が『犯罪』神って事もあって、犯罪組織は犯罪組織って呼び方が一般的になっている。マジェコンヌ、って呼び方をする人は珍しいし、そもそも知らない人だって多い筈。

 だから、マホちゃんの言った事には驚いた。昨日わたし達はマホちゃんに犯罪組織絡みの話をしたから、マホちゃんには犯罪組織について詳しくないイメージがあって、尚更びっくりした。…あ、でも逆もあるか。犯罪組織について独自に調べてて、女神の知識や見解を知りたくなったから、わたし達にお願いした…ってパターンもなくはないよね。どっちにしろ、今さっきのマホちゃんの発言は驚きだけど。

 

「あ、や、えっと…その……」

「んー…俺はその辺りの話よく分からねぇけどよ、まあ取り敢えずまじぇっちは悪いやつじゃねぇよ。悪いやつじゃねぇっていうか、普通に良い人だな」

「…それについては、オレも同意しよう。少なくとも、オレよりはずっと善性のある人間さ」

「…ありがとう、二人共。…だが、改まってそう言われると、何とも気恥ずかしいものだな…」

 

 こんな流れになるなんて。そんな様子でマホちゃんが動揺する中、助け舟…というか、話を変えようとしてくれたのはうずめさん。そこにくろめさんも乗って、二人でマジェコンヌさんをフォローして…良い人だと言われたマジェコンヌさんは、ちょっぴり目を逸らして頬を掻く。

 

「あー、マジェコンヌさんてれてる〜」

「あんまり見ないかお、してる…(ぱちくり)」

「ちゅ、注目するのは止めてあげてね、二人共…。…っと、そうだ。長話になっちゃったけど、マホちゃん二つ目の件は大丈夫?もう急いだ方がいい?」

「え、っと…う、うん。まだ急がなくても大丈夫だとは思うけど、のんびりしてても大丈夫…って感じでも、ないかも…?」

「なら、アタシ達はここら辺で失礼するとしましょ。うずめさん達を、いつまでも引き止めるのも悪いし」

「別に気にする事は…まぁ、なくもないか…。まだ、朝食食べてねぇし…」

 

 ついつい話し込んじゃったけど、決してわたし達は暇だから話してた訳じゃない。そしてユニちゃんの言葉にウィードさんが答えて、わたし達は別れる事に。

 うずめさん達…それにマジェコンヌさんは、食堂へ。わたし達は、わたしとお姉ちゃんの共用部屋へ。そうして部屋まで戻ったところで、ロムちゃんとラムちゃんは「はふぅ…」と一つ吐息を漏らした。

 

「どうしたのよ、ため息なんて吐いて」

「…くろめさん…まだ、ちょっと…苦手、だから……」

『あー…』

 

 片手を腰に当てたユニちゃんが訊けば、ロムちゃんは言い辛そうにしながらも答えてくれる。言葉としては、苦手っていうざっくりとした表現だけど…そこに込められている気持ちは、理解出来る。

 

「そりゃ、今のくろめさんが悪いことしてないのはわかってるわよ?けど……」

「うん、ロムちゃんもラムちゃんも、そう思う気持ちは間違ってないと思うよ」

「くろめさん自身、そう思われて当然…って考えてるでしょうね。アタシだって、うずめさんやウィードさん、他の皆へ対しての感情と、くろめさんへの感情は、やっぱり違うし」

 

 複雑な感情がある。そんな風に言うラムちゃんを、わたしもユニちゃんも肯定する。わたしだって、くろめさんには色んな感情があるし、多分それはお姉ちゃん達も…うずめさんや、ウィードさんだってそうだと思う。

 

「…今は今、過去は過去。過去を理由に今の在り方をちゃんと見ないのは良くないけど、どんなに今が良くたって、それで過去が消え去る訳じゃない…当たり前の事だけど、凄く複雑な事だよね。過去も、今も、未来だって、繋がってるんだから」

「ネプギア…同感はするけど、そういう言い方じゃ難解に聞こえるわよ?」

「そ、そうかな?…うん、言われてみるとそうかも……」

「……どんなに今が良くたって、それで過去が消え去る訳じゃない…」

「え?マホちゃん、どうかしたの?」

「…や、ぎあちー深い事言うなぁって。はっ、これが女神の深イイ話ってやつ?」

『いやいやいや…』

 

 呟くように、わたしの言葉を繰り返すマホちゃん。それは静かな、でも重みのある声で…けどわたしが問い掛けると、すぐにマホちゃんは元の調子に。…深いかなぁ、今の…。

 

「…あ、そうだ、二つ目の件。いい加減この話しましょ」

「っと、そうだったそうだった。二つ目のお願いは…うーんと、道案内?或いは護衛?」

「…って、言うと……?」

 

 気を取り直すようなユニちゃんの言葉に、マホちゃんが答える。でも語尾は疑問形で、それについてわたしが訊けば、マホちゃんは一つ頷いて…言った。

 

「うん。…ぴーしー大陸。皆には、そこまで付いてきてほしいの」

 

 

 

 

 ぴーしー大陸。一つとなった四大陸とも、神生オデッセフィアのある浮遊大陸とも違う、四大陸外縁に多数存在する浮き島の中でも有数の面積を持つ大陸の一つ。別次元の話ではあるけど、ニトロプラスさんの出身地でもある、プラネテューヌからは遠く離れた場所。

 そこに今、わたし達は向かっている。マホちゃんの、二つ目のお願いに応える為に。

 

「…あ、もしかして……」

「ねぇねぇネプギア、ぴーしー大陸ってあれかしら?」

 

 わたし達は女神化をして、わたしがマホちゃんを抱えて、一直線にぴーしー大陸へ。ロムちゃんとラムちゃんの言葉を受けて目を凝らせば、大きな…って言っても、今はまだ小さく見えるんだけど…浮き島があって、方角的にもそこが恐らくぴーしー大陸。

 

「うん、多分あそこだね。マホちゃん、もう少しだけど大丈夫そう?」

「だいじょぶだいじょぶ!てか、無理って言ってもどうしようもないっしょ?」

「ま、ここは空だものね。せいぜいロムとラムの風魔法で浮かせてもらうとか、それ位しかないでしょ」

「あ、それは経験してみたいかも」

「え、やる?」

「い、今は止めておこうよラムちゃん…落ちたら大変どころの騒ぎじゃないよ…?」

 

 なんだか乗り気なラムちゃんに対して、わたしはやんわりと否定をする。

 幾ら二人が魔法のプロでも、ミスした場合のリスクが大き過ぎる。下に陸地なんて見えないからこそ、急降下すれば万が一落ちてもキャッチ出来ると思うけど…これはわざわざ負わなきゃいけないリスクじゃない。それに落ちる経験なんて、普通の人からしたら恐怖以外の何物でもないだろうしね。

 

「ネプギアちゃんと、ユニちゃんは、ぴーしー大陸って来たことある…?」

「ううん、わたしはないよ。ユニちゃんは?」

「アタシもないわ。他の浮き島もそうだけど、行く理由が出来る事自体がまずなかったし、試しに行ってみるには遠過ぎる距離だもの」

「じゃあ、最後にこういうところに来たのって……」

「タコの時以来、だね」

「タコ?」

 

 タコと聞いて目を瞬かせるマホちゃんに、残り少しの距離を飛ぶ中で前にあったタコの件を説明する。思えばあれも犯罪組織との戦いの合間にあった事で…「なにそれやばっ、あーしも参加してみたかったなー!」という、何ともマホちゃんらしい感想が返ってきた。

 

「じゃ、着地するよ。ゆっくり降りるけど、地面に脚が着くまで離れないでね?」

「大丈夫。あーしはこの手を、離さない…!」

「なんでそんな、シリアスなシーンみたいな言い方を……」

「よっと。うーん…広いわね!」

 

 中身のないやり取りをしながら、わたしは安全第一で降下。その間に三人は地面に降りて、女神化を解いて…最初にラムちゃんが言ったのは、見たままの感想。

 でも確かに、広い。他の浮き島と違って、島って感じが全然しない…名前通り、大陸って印象を受ける場所。

 

(…まあ、四大陸も浮遊大陸な訳だし、神生オデッセフィアのある大陸は四大陸よりずっと小さいけど大陸って呼んでる訳だし、ここも浮き島じゃなくて大陸って呼んでも良さそうな感じはあるよね)

 

 だって、大陸と島を分ける明確な基準なんてないんだし。…と、わたしも見回しながら一人思う。

 けど、ならぴーしー大陸と他の大陸は同じかっていうと、それは違う。ぴーしー大陸がどういう所なのかは、出発前にいーすんさんから聞いている。

 

「で、ここからはどうするの?ここでしか出来ない何かがあるとかなの?」

「ここでしか、やれない何か…?(きょとん)」

「わたしたちは五人だから……はっ、シンセダイホビーきょーぎ…?」

「いやいやいや、全然エクストリーム感ないっしょ…皆はアイドルっぽい事もしてるらしいからまだ分かるけど…。…まあ、あーしとしては…見て回りたい、って感じ…かなぁ」

 

 何故そうなったし…って顔で手を振るマホちゃんの突っ込みに、わたしは苦笑。それから続いた言葉を受け取って、発言を返す。

 

「…じゃあ、取り敢えず色んな所に行ってみる?わたし達もぴーしー大陸に来るのは初めてだし、歩いて回るんじゃ物凄く時間がかかっちゃうから、飛び回る位しか出来ないけど…」

「んーん、それでも十分だって!ここまで運んでもらって、更に頼んじゃって悪いけど、どうぞ宜しくお願いしますっ!」

「あっ、知ってるわ!こういう時はよろぴく、って言うのよね?」

「いやらむちー、それは流石に古いかなー…って。…っていうか、今更だけど、うずちーの言葉も微妙に古かったような希ガス…」

 

 と、いう事でぴーしー大陸を回ってみる事に決定。わたし達はもう一度女神化をして、改めて飛び立つ。

 

「んー…ここ、神生オデッセフィアとにてるかも」

「…そう、かな?」

「うん、自然ばっかりなとことか」

「そりゃ、まだこの辺りは端っこなんだから、自然ばっかりなのは当たり前でしょ。ルウィーだってそうじゃない」

「えー?たしかにそれはそうかもだけど、やっぱりルウィーとは違うっていうか、にてるのは神生オデッセフィアっぽいっていうか……」

「神生オデッセフィアかぁ…折角だし、あっちも行ってみればよかったかも…」

「…え、まさかとんぼ返りするとか言わないわよね?」

「えー?女神なのにとんぼ返り?って、これは別に上手くも何ともないかー…」

 

 暫くの間、続くのは自然の風景。初めはわたしもユニちゃんに同意見だったけど、段々分からなくもない…って思うようになってきた。

 四ヶ国だって、生活圏から離れた場所は殆ど自然だけになっている。でも四ヶ国の場合は、資源の調達だったり、モンスターへの対処だったり、場所によっては他国への交通網に組み込まれてたりで、多かれ少なかられ人(と女神)の手が加えられた場所も、結構ある。少なくとも、プラネテューヌの場合はそう。

 だけど、ここは違う。今見た限りだと、そういう風な場所は殆どなくて…多分それが、神生オデッセフィアと似てるんだと思う。神生オデッセフィアの場合は「まだ」手付かずなだけで、その点ぴーしー大陸がどうなのかまでは分からないけど…。

 

「…………」

(…マホちゃん、凄く真剣に見てる…何かを探してる、とかかな……)

 

 ここまではずっとネプギアに任せちゃってたし、って事で、今マホちゃんを抱えているのはユニちゃん。抱えられてるマホちゃんは、会話をする時は緩い雰囲気なんだけど、会話が終わるとすぐに真剣な顔でぴーしー大陸を見回して、その眼差しを向け続ける。

…それが、よく分からない。その眼差しの理由が…マホちゃんが、何の為にぴーしー大陸へ来たかったのかが。

 

「…あ、向こうに見えるのって…町?…と、いうか…村?」

「…行く?」

 

 更に暫く飛んで見えてきたのは、建物や田園。わたしがそっちを指差すと、ロムちゃんが「行く?」と言いながら小首を傾げてきて…わたし達は、顔を見合わせる。

 

「どうする?…と、いうよりマホ次第じゃない?」

「…あーしは…寄ってみたい、かな」

「なら、けってーね!ロムちゃん、あそこの田んぼまできょーそーよ!」

「あ、ま、待ってラムちゃん…!」

「ちょっ…アンタ達、一応マホからの頼みを受けて来てる事忘れるんじゃないわよ?」

 

 ぴゅーんと飛んでいくラムちゃんと、慌てて追いかけるロムちゃんの後に続くのは、呆れ混じりなユニちゃんの注意。一連の流れを見て、わたしとマホちゃんは苦笑し合っていたけど…わたしは見逃さなかった。寄ってみたいと言う直前、マホちゃんが思慮の表情をしていた事を。

 

(…やっぱり、マホちゃん…ぴーしー大陸に、何かが……)

 

 思うところがあるのか、考え込む理由があるのか。前に何かあったのか、これから何かしようとしてるのか。良い事なのか、悪い事なのか。わたしには、どれも分からない。分かる事があるとすれば…きっと、いや間違いなく、マホちゃんは強い思いがあってここに来るのを望んでいたんだ。眼差しや表情が、それを物語っているんだから。

 

「…ねぇ、マホちゃん」

「うん?ぎあちー、どったの?」

「まだちょっとしか回れてないけど…どう?ここに来たかった理由…目的は、果たせそう?」

「ぎあちー…。…心配すんなし、果たせるかどうかはあーしが決める事、ってね。けど気にしてくれてあざまる水産〜!」

 

 思いが伝わったのか、一瞬わたしを見つめたマホちゃん。だけど、その次の返答は、やっぱりマホちゃんらしいもので…本当にきっと、何かある。あるけど分からない。分からないけど……マホちゃんのお願いをやり遂げた時なら、少しは分かるかもしれない。そんな風に、わたしは思った。

 

 

 

 

 森や湖なんかも含む、一つの巨大な生活圏と、その外側とで分かれている五ヶ国と違って、ぴーしー大陸は各地に町や村が点在している。最初に見つけた村に立ち寄った後、わたし達はその町や村を回ってみようって事になって……最後の町に辿り着いた時、時間はもう完全に夜遅くとなっていた。

 

「つっかれたぁ…」

「つかれた…(くたくた)」

「一つ前の村で止めておくべきだったわね…」

 

 到着してすぐにわたし達がしたのは、宿探し。無事に泊まれる場所を確保出来た事で、部屋に入ったわたし達は腰を下ろす。

 戦いはなかったとはいえ、一日中飛んでは降りて、歩き回ってはまた飛んで…ってしてきたものだから、流石に疲れた。しかもここに来るまでは、もう遅くなっちゃって慌てて飛行したものだから、余計に疲れた…。

 

「皆、ごめんね…今日一日付き合わせる事になっちゃったし、しかもここに泊まる事になっちゃったし……」

「ううん、気にしないでマホちゃん。もうこの際、ぴーしー大陸を直接回って実情を見てきてほしい、っていーすんさんから言われてるし」

「うちもよ。さっきアタシ達、連絡取ってたでしょ?」

「あぁ、そういえば…ろむちーとらむちーは?」

「んと…とちゅうで投げ出すのは良くない、っておねえちゃんに言われたの」

「受けたなら、さいごまでやり切りなさい、って言ってたのよね。ミナちゃんには、遅くなる前にどこかに泊まって下さいね、とも言われたけど…」

『うっ……』

 

 ロムちゃんに続くラムちゃんの言葉で、わたしとユニちゃんとマホちゃんは、三人揃ってダメージを受ける。ご、ごめんなさいミナさん…流石に深夜ではないですけど、結構遅くなっちゃいました……。

 とまぁ、そういうやり取りをしてから、わたし達は晩ご飯に。

 

「ん、美味し♪これ、見た事ない料理だけど、結構好みの味かも」

「物理的に遠く離れてて、交流も少ない場所だからこそある発見よね。アタシもあまり見かけないスパイスが買えたし、マホには感謝しないと」

「いやぁ、感謝なんて要らないって。むしろ女神の腕の中なんていう特等席×4を今日一日体験出来るなんて、むしろあーしの方が感謝っていうか、サンキュー!…的な?」

「それはどっちかっていうと、凄く熱い芸人さん感があるね…」

 

 食事をしつつ、会話を交わす。今マホちゃんが言った通り、ロムちゃんやラムちゃんも途中でマホちゃんを抱えていて…あ、でも風魔法で〜、のやつはやってないよ?

 

「けど、ここってふしぎなところよねー。どうしてこんな、バラバラのところに住んでるのかしら」

「うん…皆いっしょに住むのは、いやなのかな…?」

「そりゃ、ぴーしー大陸…というか、浮き島には守護する女神がいないからでしょ。女神がいないから加護もなくて、加護がないからモンスターとか自然災害の関係で住める場所も限られてくる訳で。二人だって、流石にルウィーの街中が暖かい…とは言わないにしろ、割とどこも生活出来る程度の寒さで収まってるのは女神の加護のおかげだって事は知ってるでしょ?」

 

 二人で不思議そうにするロムちゃんとラムちゃんに対し、ユニちゃんが解説。ルウィーを実例に出したおかげで伝わったらしく、二人は「あー」と揃って言う。

 

「…そっ、か…やっぱりぴーしー大陸には、女神…いないんだ……」

「うん、少なくとも今はそうらしいよ。女神は人の思いで生まれる訳だから、実は今この瞬間にもぴーしー大陸に女神が…って可能性も、一応ゼロじゃないけどね」

「…女神のいない、完全に人の力だけで成り立っている環境…それが、あーしの今いるぴーしー大陸…」

 

 女神がいないのは、いーすんさんから聞いていた。これまで信次元で起きた色々な災いに、浮き島からの女神が現れたりしなかった事から分かってはいたけど、いざ聞くとやっぱり思うところはある。

 今日見てきた村や町も、それなりに活気はあったけど、五ヶ国に比べると社会としてこじんまりしているっていうか、不便な部分が多いと思う。それでも移住しないでこういう場所に住んでいるのは、少ないとはいえ五ヶ国との交流もあって、空路で行き来する事も不可能じゃないのにそうしないのは、今居る場所に愛着があったり、四大陸や浮遊大陸とは違う環境に価値を見出していたり、或いは女神の統治下に馴染めない…その外にいたいって思いがあったりするからだって話も、いーすんさんから聞いていて…実情を見てきてほしいって言ってたのは、言葉通りの意味以外にも、そういう人達を直接見る事で学べるものがあるから、って事でもあったんじゃないかとわたしは思う。

 

「…さてと。ここは温泉とか大浴場とかはないみたいだし、お風呂の順番決めないとね」

「えー、皆で入らないのー?」

「五人で入ったら狭いでしょーが。ここのは複数人でも入れるにしろ、全員で入れるような広さじゃないんだから」

「…ドラム缶のお風呂みたいになっちゃう?」

「ドラム缶…あ、これの事?そういえば、あの時は出られなくなって大変だったなぁ…」

「え、何これ何これ?ドラム缶云々よりも気になる要素があるんですケド?ぎあちーまさかの三姉妹説?」

「あはは、これはお姉ちゃんじゃなくて、大きいお姉ちゃんだよ」

「そっかぁ、大きいお姉ちゃんかぁ…ってやっぱり三姉妹!?」

「だ、だよねー…えっと、大きいお姉ちゃんっていうのは……」

 

 取り出して見せたドラム缶風呂の写真に、一番の反応をしたのはマホちゃん。まあ、他の三人は見た事ある写真だろうから当然だけど…確かに大きいお姉ちゃんの事を知らなかったら、三姉妹?って思うよねぇ。

 なんて、そんな話をした後、わたし達はお風呂の順番を決定して、順番に入っていく。まずはロムちゃんにラムちゃん、ユニちゃんの三人で、わたしとマホちゃんはその後の番。

 

「…皆、ほんと優しいよね」

「へ?」

 

 わたしがお風呂に入る準備をする中で、不意にマホちゃんが言った言葉。この時のマホちゃんは、わたしに背を向けていて…表情は、分からない。

 

「ゆにちーも、ろむちーも、らむちーも、ここまで急にやる事が決まったり、済し崩しで泊まる事になったりしたのに、ちっとも嫌そうにしないっしょ?ぎあちーのお姉さんも、うずちー達も、マジェコンヌ…さんも、初対面であーしの事を受け入れてくれたし…ほんと皆、優しいなぁって思ってさ」

「それは…うん、わたしもそう思うな。でも別に、皆は誰に対しても優しいって訳じゃないよ?勿論好き嫌いで差別したりは…ま、まぁ…絶対にないとも言い切れないけど、基本的にそんな事はしないにしろ、相手が失礼だったり、危害を加えてこようとする場合は、必要に応じた言動をするし」

「それは、まぁ…」

「だからね、マホちゃんにとって皆が優しく思えたなら、それは皆にとってもマホちゃんが悪い人じゃないって、良い人だって思えたからだって、わたしは思うな」

「ぎあちー…もう、困るなぁ。あーしが皆を優しいって言っただけで、そんな事言われたら…なんかもう、感動しちゃうじゃん?湧いたーってなっちゃうって」

「ふふっ、良い事には良い事が返ってくるものだよ。幸せはスパイラルするって言うでしょ?」

 

 良い人に対しては、自分も同じようでありたくなる。優しい言葉をかけられたら、優しい言葉を返したくなる。それは特別な事じゃなくて、普通の事だって…誰でも自然に思う事だって、わたしは思う。そして、マホちゃんが良い人だっていうのは、もう分かってる。わたし達は、昨日からずっと一緒にいるんだから。

 

「…でーきた、っと。ぎあちーぎあちー、ちょっとNギア見てもらえる?」

「え?…あれ、アップデートが来てる…これって、マホちゃんの……」

「そ。ぎあちーのって、独自に改造してるっしょ?だからぎあちーのNギアでも快適に使えるよう、ちょちょ〜っと調整をね?」

「あ…そっか、昨日Nギアを貸してほしいって言ったのは、わたしのNギアの仕様を確認する為だったんだね。けど、良かったの?マホちゃんだって、一日中あっちこっち行って疲れてるでしょ?」

「ぎあちーの為ならこれ位よゆーよゆー!それにあーしにも、作り手としてのポリシーがあるからね。あげる以上は、満足してもらえるものにしたいっしょ!」

「マホちゃん…うん、やっぱりマホちゃんも優しくて良い人だよ!ありがとね、マホちゃん!」

「いや照れる照れる!そんな満面の笑みで言われたらマジ卍だって!けど、嬉しいからもうちょっと言ってくれても良し!」

 

 振り返ったマホちゃんに言われて、確認したわたし。もしかしたら、本当に簡単な調整だけだったのかもしれないけど…それでも今、わざわざしてくれた事には変わりない。だから嬉しくて、ありがとうって思いで言葉を返せば、マホちゃんも照れると言いつつ頬を緩ませていて……うん、やっぱり思いには思いで、優しさには優しさで返すのが一番だよね。だってそうすれば、両方幸せな気持ちになれるんだもん。

 

「お待たせ…って、どうしたのよ二人共。揃ってにまにましちゃって」

「何か楽しいこと、あったの…?」

「二人だけで何かしてたの?ずるーい!」

「別にそんな事ないよ。ただちょっと、マホちゃんって優しいな〜って思っただけ」

「だから何度も言われると恥ずいって〜!嬉しいけど、嬉しみだけど!」

 

 そうしてユニちゃん達が出てきた事で、わたし達もお風呂に入る。お風呂から出た後、マホちゃんは折角だからって事で、ユニちゃん達三人の端末用にもソフトウェアを調整してくれて…またまた感謝された事で、マホちゃんはにまにまが止まらなくなっていた。

 昨日と今日で見た、マホちゃんの色んな顔。そこから伝わるのは、マホちゃんもわたし達と…信次元にいる色んな人と変わらない、一人の女の子なんだって事で……それでもまだ、わたしには分からなかった。時々マホちゃんが見せる、静かで真剣な表情…その、意味が。

 

 

 

 

 凄くざっくり…というか限定的だけど、ぴーしー大陸を回る行程は、昨日の一日で終わった。深夜に長距離を、それも地上のない場所を飛ぶ事になるから、とその後は泊まった訳だけど…回り終わった今、次に何をするのかはまだ決まっていない。これでマホちゃんのお願いは完遂になるのか、それともまだ何かあるのか。そんな状態で、わたし達は朝を迎え…町の外に、出た。

 

「それで、マホちゃん。わたし達に話したい事って?」

 

 朝ご飯の後、どうするかの会議を…と思ったところでマホちゃんが言った、話したい事がある…って言葉。真面目で真剣な雰囲気を感じ取ったわたし達は頷いて、マホちゃんについていく形で町の外に。

 わざわざ町の外まで出たって事は…きっと、それだけの理由がある話なんだと思う。

 

「うん。まずは、ここまであーしに付き合ってくれてありがとね」

「依頼を受けたんだもの、当然よ。…それに、楽しかったしね」

「あーしも、凄く楽しかった。楽しかったし、感謝もしてる。皆がお願いを聞いてくれたおかげで、あーしは知りたい事を…確かめたい事を、確かめられたから」

「わたしも、楽しかった…よ(にこにこ)」

「わたしもー!…けど、そう言うってことは、もうお願いはおしまいなの?」

「そう、なるかな。けど、最後に伝えたい事があるの。あーしは……って、あれ?」

 

 先を歩いていたマホちゃんは、わたし達の方へ振り返って、言った。ありがとうって、楽しかったって。

 そう言ってもらえるだけでも、嬉しい。お願いを聞いて良かったなって思えるし、またいつでも頼ってねって返したくなる。けど、マホちゃんが言いたいのはそれだけじゃないみたいで、わたし達の方をじっと見つめ……急に、怪訝な顔をする。

 

「……?マホちゃん?」

「や、今、向こうで何か光って──」

 

 何だろうと思って、呼び掛けるわたし。それに対して、マホちゃんは上空辺りを指差して、わたし達が視線を上げた、上げようとした……その時だった。──突如、わたし達のすぐ側で爆発が起こったのは。

 

『な……ッ!?』

 

 反射的に、わたし達は飛び退く。散開して…気付く。マホちゃんの姿がない事に。マホちゃんがいた場所に…今、爆煙が上がっている事に。

 

「そんな…マホちゃんッ!」

「今のは…まさか、狙撃……!?」

 

 思考に浮かぶ最悪の可能性に、駆け出したくなる。けど、ユニちゃんの言葉で我に返る。今のがユニちゃんの言った通り、狙撃なんだとしたら…狙撃手が、いる筈。この爆炎を作り出した、その元凶が。

 わたし達は、視線を上げる。さっきマホちゃんが指差した、何かが光ったらしい場所へ。そして……

 

「…………」

「貴女、は……」

 

 上空。わたし達よりずっと上に存在する位置。そこへ視線を向けたわたし達は……見た。空に立つ、空に浮かぶ……真っ黒な髪と、紅赤色の瞳をした、一人の女神を。




今回のパロディ解説

・深イイ話
人生が変わる1分間の深イイ話の事。女神は皆色んな経験してますし、深イイ話は出来そうですよね。…ロムやラムの場合、深イイ話したら独特な空気になりそうですが。

・シンセダイホビーきょーぎ
Extreme Heartsに登場する競技、ハイパースポーツの事。些か強引に入れたパロディっぽくなってしまいましたが、仕方ありません。最終回記念で入れたかったのです。

・凄く熱い芸人さん
お笑いトリオ、パンサーの尾形貴弘さんの事。サンキュー、と熱い芸人、と書いたら彼の事を彷彿とするのではないでしょうか。

・「〜〜幸せはスパイラルする〜〜」
リトルバスターズ!に登場するヒロインの一人、神北小毬の提唱する幸せスパイラル理論の事。これは前にもパロディネタとして活用した覚えがあります。
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